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Ⅰ.緒 言
我が国の高齢化率は上昇を続け、それに伴い認知症高齢者も増え続けている。2012年の認知症高齢者数は全国で462万人、2025年には700万人となり、高齢者の5人に1人が認知症になると推測されており(内閣府,2012)、国民の医療や介護の需要が増加することが見込まれている。このような社会背景から、厚生労働省は2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進している(厚生労働省,2017)。したがって、地域で暮らす高齢者を支えていくためには、近隣住民・地域で働く人たちの理解及び支援も重要な社会資源になると考えられる。
厚生労働省と関係省庁は、地域で暮らす認知症高齢者への支援の1つとして、共同で「認知症施策推進総合戦略 〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)」を策定した。「認知症サポーターキャラバン」は、新オレンジプランに含まれている「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」の一環として実施されており、その中で「認知症サポーター」が育成されている。「認知症サポーター」は、認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り、支援する応援者として、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりを目指している。認知症サポーターは、2015年12月時点で全国に約713万人が誕生しており、厚生労働省が掲げる2017年で600万人の目標を達成している(認知症サポーターキャラバン,2016)。
認知症サポーターに関する先行研究(金ら,2011)では、認知症サポーター養成講座受講者232名に養成講座の効果について自記式質問紙調査を行い、7割の認知症サポーターが認知症の人の見守りの重要性の認識や認知症に対する情報への関心を挙げていることが示されている。また、受講後に認知症啓発イベントやボランティア活動に参加した人は、高い認知症受容度を保持している傾向が認められ、自分たちにできることを模索したサポーターの発想により、地域の実状に即した見守り、オレンジカフェの開催、傾聴等、認知症の人を支える多彩なボランティア活動が行われている(菅原ら,2016)。一方で、実際には養成講座終了後、7割の人が活動をしていないという報告もある(荒川ら,2012)。
認知症サポーターとしての活動の志向性には、1回以上の講師経験に加えて、養成講座受講後の活動意欲、活動経験、活動で感じる楽しさが関連することが示されている(若山ら,2010)。また、認知症サポーター養成講座修了者659名に質問紙を用いた研究(荒川ら,2012)では、活動意欲に関連する要因として活動に費やせる時間・内容、首尾一貫感覚(Sense of Coherence;SOC)の有意味感、サポーター養成講座からの学びが関連すると報告されている。さらに、認知症サポーターの認知度と関心度について204名の看護学生を対象に質問紙調査(三浦ら,2013)を行ったところ、認知度が4.4%と低く、若者へ認知症サポーターという存在が浸透していないことが明らかにされている。
しかし、認知症サポーターの目的である、認知症の人や家族を温かく見守り、支援することを達成するために認知症サポーターが地域で活動を継続していく要因を経時的に明らかにした研究は見当たらない。そこで、本研究では、認知症サポーターの活動への語りから活動継続要因を活動開始・活動維持・活動発展の視点で明らかにすることを目的とする。本研究において、認知症サポーターの活動継続要因を検討することで、認知症サポーターが養成講座での学びを生かし、地域での活動を継続できることで、認知症高齢者が暮らしやすい地域づくりの一助になると考えた。
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