日本災害看護学会誌 14巻2号 (2013年2月発行)

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【巻頭言】

日本災害看護学会組織会員への期待望月　律子 14巻2号 , 2013年2月 , pp.1

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　日本災害看護学会の特徴の一つとして組織会員が位置付けられています。

　それぞれ設置目的が異なる組織会員が有機的に結びつき、災害への備えや活動・支援に関する情報を共有し相互啓発を推進することを目的にしています。

【会長講演】

東日本大震災から16ケ月経た今、改めて問う　その前・その時・その後の災害看護の役割と責務臼井　千津 14巻2号 , 2013年2月 , pp.2-11

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【はじめに】

　日本災害看護学会第14回年次大会を2012年7月28日・29日に名古屋の会場にて開催いたしました。会長講演では「東日本大震災（3・11）から16ケ月経た今、改めて問う〜その前・その時・その後の看護の役割と責務〜」を演題といたしました。

【寄稿】

災害看護学の次への発展と教育機関の課題南　裕子 14巻2号 , 2013年2月 , pp.12-24

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1．はじめに

　1995年1月17日に発災した阪神淡路大震災、そして同年3月20日に東京での地下鉄サリン事件の経験をもとに1998年に創設された日本災害看護学会から17年が経過しました。その間には多くの災害が発生し、その度に看護職の皆様は前線で被災地の人々の支援活動を行い、その経験を積み上げながら災害

看護学の発展が促されてきています。それは世界の看護界に大きく貢献するものでもありました。阪神淡路大震災までの災害看護と比べると隔世の感があるほどの発展がされたという誇りが2011年のはじめまでは私にはありました。

　しかし、2011年3月11日に発災した東日本大震災の衝撃以降、看護は新たな局面に至ったと第13回の学会に参加しながら強く思いました。それでも被災地の前線で活動された看護職の皆様は、創造的で建設的な工夫

をされたり、活動経験をもとに新たな提言をされたりされていました。被災をされた看護職の方々は、非常に厳しい状況下でありましたが、精一杯の模索をされていて、胸を打たれました。

　今回の学会でもまた、その時にまだモヤモヤしていたものが更にクリアになり、次への示唆を頂くことになるのではないかと思います。私は非力ですので、具体的な次への示唆を語れる段階ではありませんが、最後の方でキーワードのような形で、お話しできたらと思います。

　災害看護学会の基礎は学者の集団から始まったわけではなくて、誰も災害看護学という知識を体系的に持っていた人はいなかった時から自分たちの経験を集めながら、その経験をシェアすることの中から次への考え方やシステムが開発されていったというように思います。経験から学びながら災害看護学をどう育ててきたのか、そしてどこへ行こうとしているのかについて少しお話をさせて頂きたいと思います。

　経験から学ぶということでは、個人的経験からその意味を模索することも大切ではないかと思います。たとえば、私の個人史なのですが、三歳の時に第二次世界大戦で父親を失いました。戦争の被害者の家族であります。四歳の時に高知で南海大地震を経験して、おぼろ気ながら瓦が飛んでいる様子を覚えてい

ます。六歳の時に左上半身の火傷を負うという事故に遭遇しました。自ら招いた事故なので誰をも咎めることは出来ないのですが。それから高知にいましたので小学校から大学まで毎年台風に出合いました。大きな台風もあれば、小さい台風もあって、しかし高知の人間として台風に備えるということを身体が覚えました。これが後に随分と役に立っています。いいことなんですけれど、高知は最近あまり台風が来なくなりました。28歳の時に高知では台風10号に遭遇し、死傷者160人、全半壊1万3千816世帯が被災しました。30歳でイスラエル留学中にテルアビブのロード空港で日本赤軍による銃乱射事件が起こりました。自分は空港にはいませんでしたが、小さな国の表玄関を日本人のテロが襲ったという衝撃を受けました。34歳で高知の台風17号に遭遇しました。このときは、高知に帰っていましたが、「非常事態宣言」がされて、すぐそばの川の堤防が決壊し、教員宿舎の2階ま

で浸水するという経験をしました。そして「神戸は地震が来ませんから」と誘われて、兵庫県立看護大学立ち上げのために神戸で住むようになりました。そして1995年、53歳で阪神淡路大震災を経験を致しました。このときにはこれは天命だと思いました。ちょっと古臭い言い方で申し訳ないのですが、それまでは精神看護学や外科系成人看護学にかかわっていたのですけど、私自身はこのときには自分

の専門がシフトしたなというふうに思いました。なぜ私が個人的なことを申し上げるかというと、やっぱりそれぞれが歩んだ道は自分の個人的な体験から培ってきて、その中から意義を見出していくのだと思います。先程申し上げた第二次世界大戦の後遺症は、私は自分の父親が死亡した32歳まで背負って生きていました。そこである事件があって自分は抜けられたなという体験です。大災害の後遺症は長く続くというのを身をもって感じているので皆様方と一緒にこの学会を立ち上げた

時、この学会が焦点を当てるのは直後のものだけではなくて、中長期的なことに焦点を当てていきたいというのが最初からの願いだったのです。

【報告】

平成16年新潟県に設置された応急仮設住宅の室内環境と居住高齢者の健康への影響齋藤　君枝 , 青木　萩子 , 藤原　直士 , 後藤　雅博 14巻2号 , 2013年2月 , pp.25-34

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抄録

【目的】平成16年新潟県に設置された応急仮設住宅の室内環境と居住者の生活状況を把握し、高齢者の健康に与える影響を検討する。

【方法】対象は平成16年豪雨水害被災地域4世帯、中越地震被災地域5世帯で、そのうち高齢独居世帯は6世帯であった。調査は梅雨期、残暑期、晩秋期、寒冷期に、各世帯1週間程度の室内温湿度測定と生活状況、健康状態の聞き取りを行った。分析は高齢独居と家族同居の温湿度比較についてノンパラメトリック検定を用いた。

【結果】室内の平均温湿度は、梅雨期と残暑期、晩秋期と寒冷期がほぼ同値で、晩秋期と寒冷期は高齢独居が家族同居より温度が低かった。残暑期の温湿度変動は世帯間で類似したが、寒冷期は大きく異なり暖房器具の使用法が影響した。

【結論】応急仮設住宅の温湿度調整は難しく、高齢者の低体温や熱中症など健康障害の可能性があり、四季を通し生活環境調整の指導や保健福祉サービスの充実が望まれる。

乳幼児の看護に携わる看護職の防災に関する意識田崎　知恵子 , 久保　恭子 , 及川　裕子 , 今井　家子 , 岡部　惠子 , 大森　綏子 14巻2号 , 2013年2月 , pp.35-48

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抄録

　本研究は、乳幼児の看護に従事する看護職を対象に、災害に対する意識を明らかにし、災害時における対応能力の育成を図るプログラムを検討することを目的に、2010年2月〜5月、首都圏および新潟県中越地区、関西地区の病院の看護職を対象に、病院等での防災訓練への参加の有無や入院児の避難場所に関する知識を問う質問紙調査を行った。倫理的配慮として、依頼文に研究

の目的、方法について説明を記し、返信をもって同意を得たものとした。分析は、記述統計およびχ検定を行った。有効回答数は503部であった。災害時、乳幼児の避難場所を知っている者は353名で70.4％を占めたが、知らない者も149名あった。避難場所を知らない者は、病院・病棟での防災、避難訓練に参加していない割り合いが、避難場所を知っている者に比較して有意に高く、また、病棟の防災マニュアルを読んだことがないと答えていた。避難場所を知っているか否

かと各自の被災体験や災害看護の経験については有意差を認めなかった。乳幼児が医療機関で被災した場合、生命の安全は全面的に看護者にゆだねられるが、看護職が避難場所を知らなければ、重大な混乱を招く。これを防ぐには、臨床現場での防災訓練や災害看護の現任教育が重要であることが示唆された。危機管理の一環として、日常の看護業務とともに防災、避難訓練を積んでお

くことが不可欠である。

中山間地における一人暮らし高齢者の災害に対する備えとソーシャルサポート三宅　弘枝 , 中谷　久恵 14巻2号 , 2013年2月 , pp.49-57

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抄録

目的：本研究の目的は、一人暮らし高齢者の災害に対する備えとソーシャルサポートとの関連を明らかにすることである。

方法：調査対象者は、65歳以上の一人暮らし高齢者142名である。独自に災害の備えを測定する25の質問項目を作成し、無記名自記式による任意のアンケート調査を行った。性別、災害体験、IADL、ソーシャルサポートと災害に対する備えとの関連について重回帰分析を行った。

結果：アンケートの回答は132人からあり、欠損値のない118名（89.4％）を分析した。平均年齢79.2±7.3歳で、性別による年齢差はなかった。災害に対する備えに影響する要因には、近隣よりも家族・親戚のソーシャルサポートがあること（p＜.01）、災害体験者（p＜.01）、男性であること（p＜.01）、IADLがよいこと（p＜.01）が影響していた。

考察：一人暮らし高齢者は家族・親戚が日頃から援助を行っていることがうかがえた。一方で、突然の自然災害時に備え、近隣とのつながりを一層強化する必要性が示された。

災害図上訓練（DIG）を行ったＡ市高校生の防災意識と訓練の効果についての一考察造田　亮子 , 尾山　とし子 14巻2号 , 2013年2月 , pp.58-69

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要約

【研究目的】

　防災セミナーに参加した高校生の防災意識と災害図上訓練（Disaster Imagination Game：DIG、以下DIGとする）の効果、若年層の防災意識・地域防災力の向上への手がかりを明らかにすることを目的とした。

【研究方法】

　平成22年10月〜11月にＡ市内高校生向けに防災セミナーを開催し、参加した51名を対象とした。防災の知識と防災意識を問い、単純集計と質的に分類した。

【結果および考察】

　防災への興味は半数以上が持っているが、セミナーに半数以上は他者からの勧めで参加していた。防災の知識を約半数は持っておらず、備えをしていない割合が8割以上であった。DIGを行った事を9割以上が肯定的に考えていた。DIGによる考えの変化は、「防災意識の必要性の認識」「災害についての興味関心」「新たな知識の獲得」「共助の必要性の認識」のカテゴリーに分類された。参加者が災害の恐怖や危険性を体験することで正しい知識・防災への認識を高め、行動に移せるようなプログラムを実践していく。

【緊急レポート】

平成24年7月九州北部豪雨災害　調査報告立垣　祐子 14巻2号 , 2013年2月 , pp.70-74

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はじめに

　平成24年7月11日から14日にかけて、本州付近に停滞した梅雨前線の影響で西日本から東日本の広い範囲で大雨となり、特に九州北部地方においては、雷を伴う激しい雨が降り、記録的な降雨量を観測した。14日未明には、福岡県、熊本県、大分県、佐賀県の4県で約12万人に避難指示・避難勧告が出される等、広範囲かつ大規模な避難状況が生じた。気象庁は、この大雨を「平成24年7月九州北部豪雨」と命名した。以下、深刻な被害を被った福岡県、熊本県、大分県、佐賀県の4県の被災状況について、行政資料等をもとに整理

したので報告する。

九州北部豪雨災害における初動調査報告〜熊本広域大水害〜酒井　明子 , 漆崎　誉子 , 佐藤　和美 14巻2号 , 2013年2月 , pp.74-78

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1．はじめに

　2012年7月11日から14日にかけて、本州付近に停滞した梅雨前線に向かって南から湿った空気が流れ込み、九州北部を中心に大雨となった。熊本県阿蘇市では、阿蘇の外輪山内壁に雨雲が衝突し、外輪山に沿って局地的な豪雨となった。7月11日0時から14日24時までに観測された最大1時間降水量は108.0ミリ、最大24時間降水量は507.5ミリとなり、それぞれ観測史上1位の値を記録し大水害となった。また、12日早朝の猛烈な雨により、阿蘇カルデラ北東部に位置する熊本県阿蘇市一の宮町手野〜坂梨周辺で、数多くの斜面崩壊が発生した。阿蘇の外輪山を囲む黒川と白川は左右に走り立野で合流するが、

黒川が氾濫したため立野地域に浸水被害が発生した。

　このため、日本災害看護学会では、甚大な被害を受けた熊本市内の病院、支援を行った熊本県庁健康福祉部、熊本県看護協会、熊本県内の病院に調査を依頼し協力を得て、水害発生から約3週間後の8月2日、3日に初動調査を行った。

学会だより

日本災害看護学会第14回総会議事録 14巻2号 , 2013年2月 , pp.79-83

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日本災害看護学会平成23年度会計報告 14巻2号 , 2013年2月 , pp.84-88

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日本災害看護学会平成24年度会計収支予算書 14巻2号 , 2013年2月 , pp.89-90

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日本災害看護学会会則・細則 14巻2号 , 2013年2月 , pp.95-99

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日本災害看護学会役員・評議員選出に関する実施細則 14巻2号 , 2013年2月 , pp.100-102

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日本災害看護学会役員・評議員名簿 14巻2号 , 2013年2月 , pp.102

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日本災害看護学会誌投稿規定 14巻2号 , 2013年2月 , pp.103-105

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日本災害看護学会査読者一覧 14巻2号 , 2013年2月 , pp.106

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編集後記 14巻2号 , 2013年2月 , pp.107

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基本情報

日本災害看護学会誌
14巻2号
(2013年2月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1345-0204 日本災害看護学会

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