日本腎不全看護学会誌 10巻2号 (2008年11月発行)

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【原著】

1．血液透析をしながら働く壮年期男性の周囲の人々との関係―非糖尿病性腎症患者の場合鈴木　美津枝 , 稲垣　美智子 10巻2号 , 2008年11月 , pp.56-63

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　本研究は，血液透析をしながら働く非糖尿病性腎症の壮年期男性が周囲の人々との関係をどのようにとらえ，どのような取り組みをしているのかを明らかにすることを目的とした．11名の血液透析をしながら働く非糖尿病性腎症の壮年期男性患者を対象とし，半構成的面接でデータ収集を行った．分析は，StraussとCorbinらによるグラウンデット・セオリー・アプローチを用いて質的帰納的に行った．その結果，血液透析をしながら働く非糖尿病性腎症の壮年期男性の周囲の人々との関係は，【透析をしている自分と周囲の人たちとの関係を自分が調整する】をコアカテゴリーとする仕組みとして説明された．患者は，【世の中の人は透析を知らない】と社会の透析に対する考えを見据えながら，【周囲の人たちが透析前と変わらない】，【透析をしながら普通の人と同じように楽しい時間を過ごせる】，【透析をしながら普通の人と同じように働ける】ために，【透析をしている自分と周囲の人たちとの関係を自分が調整する】という取り組みをしていた．この取り組みは，【透析しながらの生活は特別ではない】と感じることにつながっていた．また，【透析をしながら普通の人と同じように働ける】は，【透析をしながら働くことが難しい】と感じながらも，【過去の経験が現在の働くことへつながる】，【透析は羽休めである】というとらえに関連していた．【透析は羽休めである】は，【体調を支えてくれる医師の存在がある】ことによって成り立っていた．以上のことより，血液透析をしながら働く非糖尿病性腎症の壮年期男性が就労を継続していくためには，これらの仕組みを成り立たせること，および仕組みのバランスを保っていくことが看護ケアの活用の可能性として示唆された．

2．透析患者の出産経験の認識―後方視的検討岩崎　和代 10巻2号 , 2008年11月 , pp.64-72

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　本研究の目的は，透析患者の出産経験の認識を聞き取り調査により後方視的に明らかにすることである．対象は1986年から2005年の19年間に出産経験した17名．調査時の平均年齢41.1歳，20年以上の長期透析者が26.7％を占め，出生児の8割が年齢相応の発育を遂げていた．出産時の透析歴6.7年，在胎週数は31.9週，出生体重は1,596.6gであった．約6割は望んだ妊娠であり，3割が不妊治療の経験者だった．最初に妊娠相談をした人の7割は妊娠を肯定する反応を示し，妊娠継続の迷いをみると，2000年以降群はそれ以前に比べ有意（χ² = 4.65，P ＜ 0.1）に迷ったと認識していた．妊娠継続にかかわる情報提供は，1996年以前群では医師から，2000年以降群では自分で検索の割合が高く，妊娠生活を2000年以降群は主体的に受け止めたとする割合が高かった．出生児との早期接触（χ² = 3.43，P ＜ 0.1），母乳哺育の経験（χ² = 4.73，P ＜ 0.05）は2000年以降群で有意に高かった．妊娠・出産の経験は9割が豊かな経験と認識し，子どもの存在は社会復帰や生きがいの対象であると全員が認識していた．多様な困難を経験しても，子を得た出産は豊かな経験であり，わが子の存在は社会復帰の重要な指標であることが示唆された．

3．慢性腎臓病における患者教育プログラムの経済性に関する文献研究高橋　さつき , 岡　美智代 , 李　孟蓉 , 恩幣（佐名木）　宏美 10巻2号 , 2008年11月 , pp.73-79

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　【目的】本研究の目的は，慢性腎臓病における経済性の優れた患者教育プログラムを見出すために，プログラムの目的，内容と実践，患者への効果，経済性について明らかにすることである．【研究方法】研究方法は文献研究である．医学中央雑誌Web版を用いて検索し，キーワードは“患者教育”，“血液透析”，“経済学”とし，論文の種類は“原著論文”とした．PubMedではキーワードを“patient education”，“renal dialysis”，“economics”とした．そのなかでプログラムの内容が記載されている文献のみをレビューの対象とした．【倫理的配慮】本研究は文献研究であるため，倫理的配慮は該当しない．【結果・考察】わが国では，慢性腎臓病における経済性の優れた患者教育プログラムはなかったが，海外では6編の報告があった．プログラムの目的は，在宅血液透析の実践と継続，腎代替療法の導入時期の延長，腎代替療法治療様式の事前決定であった．その内容・実践は集団による講義形式のものが多く，病期に応じて複数のクラスを設けたり，プログラムのなかに個別対応する内容を組み込んで工夫しているものがあった．各文献では，患者への効果と費用削減の効果があったと述べられていたが，費用を具体的な数値を用いて報告していなかったり，算出項目に不足がみられた．患者教育プログラムの経済性を明らかにするには，介入効果と費用の把握を精確に行うことが重要で，経済的評価法を用いて研究することが必要である．

4．EASEプログラムに関する文献研究―介入効果とEASEプログラムを実践する看護者に必要な要素の検討恩幣（佐名木）　宏美 , 岡　美智代 , 山名　栄子 , 李　孟蓉 , 柿本　なおみ , 後藤　真希 , 高橋　純子 10巻2号 , 2008年11月 , pp.80-85

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　【目的】本研究の目的は，プログラムの質の確保に向けての示唆を得るために，「EASEプログラム」に関する文献から，介入効果と看護者に必要な要素を抽出することである．【方法】「行動変容プログラム」と「EASEプログラム」に関する論文を，医学中央雑誌とPubMedを使って検索し，さらにハンドサーチも行い文献を抽出した．抽出した文献を精読し，EASEプログラムによる介入効果を，設定した目標の達成状況から明らかにした．また，看護者がEASEプログラムを実践する際に必要と思われる要素を論文内から抽出し，特徴と共通点を明らかにした．【結果】「行動変容プログラム」と「EASEプログラム」に関する論文は94論文であった．論文を検討した結果，EASEプログラムによる介入の効果は検証されたが，一部論文において活用方法の誤用が認められた．また，実践する看護者に必要な要素として最も多かったのが，コミュニケーション技術であった．【考察】EASEプログラムの効果は検証されたが，活用方法の誤用は患者へセルフマネジメントを強要することにつながる．それを防ぐためには，患者と相談しながら適切な技法を選択し，実施することが重要である．また，EASEプログラムを実践する看護者が，患者の価値観や生きがいを引き出すコミュニケーション技術を習得することが，EASEプログラムを円滑に進めるためにも必要であると考える．【結論】EASEプログラムの効果は88.6％であった．また，EASEプログラムを実践する看護者に必要な要素は，コミュニケーション技術であった．

【研究報告】

長期留置型カテーテル挿入患者の自己管理への思い長尾　佳代 , 中谷　美子 10巻2号 , 2008年11月 , pp.86-89

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Ⅰ．はじめに

　血液透析患者は安定して長く治療を受けることができるように，日々の生活のなかで自己管理による努力を行っている．医療者は患者の合併症を予防し，安定した安楽な透析の提供を心がけている．しかし，高齢化や長期透析患者の増加に伴って，さまざまな合併症が出現している．施設内の外来通院中の患者が心不全の合併症によりシャント作成ができず，心臓の負荷を軽減するために長期留置型カテーテル〔Tesio twin catheter（以下，長期カテーテルと略す）〕を留置して透析治療を継続している例もある¹⁾．長期カテーテル挿入患者は，シャント管理とは異なったカテーテルの自己管理が求められている．個々の患者に合った自己管理の方法をすすめるには，患者のニーズを満たし，患者の生活パターンに合った医療者からの一方向の指導だけではなく，患者の能力を引き出し，協働するケアの実施が重要である．

　長期カテーテル挿入患者のカテーテル操作や感染については報告されている．しかし，長期カテーテルを挿入した患者の体験世界について「日常における実際の生活」²⁾に注目した研究は見当たらなかった．医療者が自己管理しながら通院する患者の長期カテーテルへの思いを知ることによって，患者自身に添ったケアができると考えられる．そこで，今後も増加が予測される長期カテーテルを挿入している患者の，日常における自己管理の内容を分析することにより，患者に適切な指導ができると考え，調査を行った．

【実践報告】

1．CAPDからHHD（在宅血液透析）に移行した患者の看護村瀬　智恵美 , 牧野　範子 , 西谷　佐智子 , 宮下　美子 10巻2号 , 2008年11月 , pp.90-93

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　目的

　CAPDは在宅でできる透析療法として，より高いQOLが期待できる治療法である．1998年に保険化となった在宅血液透析（HHD）も，現在ではCAPDに並んで高いQOLが維持できる治療法である．今回，CAPDの離脱を余儀なくされた患者が，これまでの生活スタイルを変えたくないと在宅治療の継続を希望した．患者にはHDの経験がなかったものの，HHDに無理なく移行することができた．その要因を探るとともに，その間の看護を振り返る．

2．重症認知症患者の胃瘻チューブによる栄養小湊　範子 , 山本　愛 , 友利　淳子 , 青木　由美子 10巻2号 , 2008年11月 , pp.94-98

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　Ⅰ．はじめに

　2006年，透析導入患者の平均年齢は66.4歳¹⁾となり，透析患者は年々高齢化している．透析患者の高齢化に伴い，認知症を以前より多くみかけるようになってきた．今回，認知症が進行し，食事の自力摂取が困難となって，るいそうが著明となり，誤嚥性肺炎を繰り返す患者に胃瘻チューブを導入した．それにより栄養が改善して体重が増加し，誤嚥性肺炎が終息したので報告する．

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第12回日本腎不全看護学会学術集会・総会のお知らせ 10巻2号 , 2008年11月 , pp.99

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日本腎不全看護学会会則 10巻2号 , 2008年11月 , pp.100-102

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日本腎不全看護学会入会のご案内 10巻2号 , 2008年11月 , pp.103-106

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日本腎不全看護学会正会員（都道府県別）入会状況および透析療法指導看護師（DLN）全国分布 10巻2号 , 2008年11月 , pp.107

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日本腎不全看護学会誌投稿規定 10巻2号 , 2008年11月 , pp.108-109

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日本腎不全看護学会誌　投稿原稿表紙 10巻2号 , 2008年11月 , pp.110-111

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日本腎不全看護学会の研究に関する倫理的配慮 10巻2号 , 2008年11月 , pp.112

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日本腎不全看護学会第3期評議員名簿 10巻2号 , 2008年11月 , pp.113

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日本腎不全看護学会賛助会員 10巻2号 , 2008年11月 , pp.114

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編集委員／査読者 10巻2号 , 2008年11月 , pp.115

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編集後記 10巻2号 , 2008年11月 , pp.116

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基本情報

日本腎不全看護学会誌
10巻2号
(2008年11月発行)

電子版ISSN：2758-8203 印刷版ISSN：1344-7327 日本腎不全看護学会

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