先天性心疾患症例に対する小児医療スタッフによる診断能,薬物療法,外科手術療法の向上は,症例の寿命を伸ばし,結果として成人先天性心疾患患者数の増加をもたらした。そのため内科医は,それら症例の病状を正確に把握するため複雑な解剖および血流情報を理解しなくてはならず,そのための非侵襲的な画像診断は必須となった。一方で,小児期に診断がつかず,中高年で,原因不明の心雑音,胸部X線異常で内科を受診,経胸壁心臓超音波で心臓の左心または右心の量負荷,圧負荷などの間接所見は観察されるが,その原因が不明という症例が,精密検査の結果,複雑な先天性心疾患をもっていたこともしばしば経験する。先天性心疾患の診断には,聴診,胸部X線,心電図を参考に,経胸壁心臓超音波で診断するのが基本的な流れであるが,なかには複雑心血管奇形をもつ症例も多く,経胸壁心臓超音波でもその全体像の診断が困難な症例も存在する。小児の場合には,CT検査は放射線被ばくが問題となり,また冠動脈評価も,川崎病を除けば冠動脈起始異常の有無の評価が主になるためMRIで十分な情報が得られる。しかし,成人では放射線被ばくは小児ほどには問題にならない。2006年1)と2010年2)に発表されたアメリカ心臓病学会などによる心臓CTの適切使用のガイドラインで,最も不適切を1点,最も適切を9点とする9段階評価で(1~3点が不適切,4~6点がどちらともいえず,7~9点が適切とされている),冠動脈とほかの胸部動静脈血管異常の評価(冠動脈瘻など)などは2006年,2010年とも最高得点の9点で適切とされており,複合成人先天性心疾患の評価も両ガイドラインで適切とされているが,その得点は2006年の7点から2010年には8点に上がっている(表1)。また,成人先天性心疾患では年齢によっては動脈硬化性病変の合併もありうるため,心臓CTによる詳細な冠動脈プラーク,狭窄病変への評価も必要,とある。放射線被ばくがないMRIが,解剖学的評価,血流評価においてゴールドスタンダードであることに異論はないが,MRIで明瞭な画像を得るには,すぐれた機種,すぐれた技師と的確な撮影を指導する医師が必要である。CTは心電図同期可能な64列以上のCTが多くの施設で使用可能という社会環境があり,MRIより空間分解能に優れ,撮影法,造影剤の注入方法,画像再構成法などを工夫することで,MRIと同様に血流情報,さらに心筋の線維化の評価も可能となる。本稿ではCTを中心に,非侵襲的画像診断の成人先天性心疾患への診療の有用性を実際の画像診断を提示しながら述べる。