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慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension;CTEPH)は器質化した血栓による肺動脈の狭窄や閉塞が原因で,肺高血圧症を呈する疾患である。かつては血栓内膜摘除術(pulmonaryendarterectomy;PEA)がCTEPHに対する唯一の治療法であった。しかし,2012年にバルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty;BPA)の有効性がわが国より報告され,2014年には肺血管拡張薬であるリオシグアトの使用も承認された。これら新しい治療オプションの登場は,PEA手術適応外のCTEPH患者に対する福音となっている。これまで,CTEPHにおける肺灌流の評価は,主として肺血流シンチグラフィにより行われてきた。CTEPHに対する診断感度が96~97%であることから,現在でもCTEPHの最重要スクリーニング検査である。他方,肺血流シンチグラフィは相対的評価が主であり,定量性に乏しいこと,解像度の低さのために,血流欠損が末梢など,ごく一部にのみ存在する例では診断が困難な場合もあることなど,解決不可能な問題も多かった。近年,dual-energy CT(DECT)を使用したlung perfused blood volume(PBV)CTが登場し,CTEPH診断における有用性が報告されてきた。Lung PBV-CTとは,異なる管電圧で同時に撮影した2つの画像のCT値の差を利用して,肺灌流血液量マップ(ヨードマップ)を作成することで,肺野の血液量の分布を定量的にとらえることを可能にしたモダリティである。単純CT画像による気管・肺野,あるいはCT pulmonary angiography(CTPA)による肺動脈の狭窄・閉塞といった解剖学的情報と組み合わせることで,肺血流シンチグラフィでは得られないさまざまな情報を得ることができる(図1)。CTEPHを含めた肺循環疾患の診断において,DECTが大きな役割を担うようになるであろうことに疑いの余地はない。本稿では,CTEPHに対するBPA治療を念頭に,DECTの有効な活用法を概説する。
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