CLINICAL CALCIUM 27巻4号 (2017年3月発行)

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特集　カルシウム感知受容体作動薬 Update

Review

カルシウム代謝調節機構大薗恵一 27巻4号 , 2017年3月 , pp.483-490

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　陸生動物においては，カルシウム（Ca）は不足しがちであるが，骨を貯蔵庫とし，骨と細胞外液の間で素早くCaの受け渡しをすることにより，Ca・リン（P）の恒常性を維持している。血清Ca値の上昇を司るのが，ビタミンDおよび副甲状腺ホルモン（PTH）である。PTHの作用における受容体，G蛋白質，環状アデノシン一リン酸（cAMP）を介するシグナル伝達機構と，その異常症が明らかとなっている。ビタミンDの作用機構も明らかとなり，異常症も知られるが，ビタミンDの欠乏症の増加とその対策が重要と認識されている。Ca調節機構が破綻すると，低Ca血症，高Ca血症をきたすので，その原因を明らかにして，治療しなければならない。

ミネラル代謝調節におけるカルシウム感知受容体の機能木下祐加 27巻4号 , 2017年3月 , pp.491-497

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　Ｇ蛋白共役受容体であるカルシウム感知受容体（calcium-sensing receptor：CaSR）は，カルシウム（Ca）代謝調節に関わる重要な蛋白の一つである。CaSRは，血中Caイオン（Ca2＋）濃度に応じて副甲状腺ホルモン（PTH）分泌を調節する受容体として同定された。さらに，CaSRは腎尿細管におけるCa2＋やマグネシウムイオン（Mg2＋）などの各種陽イオンや，水の再吸収の調節にも関与することが明らかにされた。本稿では，副甲状腺，腎臓，腸管におけるCaSRの機能をミネラル代謝調節の面から概説する。

ミネラル代謝調節以外のカルシウム感知受容体の機能井上大輔 27巻4号 , 2017年3月 , pp.499-505

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　カルシウム感知受容体（calcium sensing receptor：CaSR）は，細胞外CaイオンをはじめとするカチオンなどをリガンドとするG蛋白共役型の膜受容体である。CaSRは副甲状腺に最も強く発現されており，Ca代謝に重要な役割を果たしているが，Ca代謝臓器以外にも全身の様々な組織，細胞に発現されている。本稿では，最近注目されているインフラマソームとの関連や，消化器，呼吸器，神経，膵臓などにおけるCaSRの役割について概説する。

Seminar

原発性副甲状腺機能亢進症の病因と病態山内美香 , 杉本利嗣 27巻4号 , 2017年3月 , pp.507-514

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　原発性副甲状腺機能亢進症（pHPT）は頻度の高い内分泌疾患で，カルシウム（Ca）調節機構の異常により高Ca血症をきたす。pHPTの原因は腺腫が最も多く８割以上を占め，約15％が過形成，１％以下～５％が癌とされる。多くは散発性に生じるが，ごく一部は家族性に発症するなど遺伝性を示し，これを家族性副甲状腺機能亢進症と呼ぶ。pHPTの病因・病態には，サイクリンD1シグナル（CCND1，CDC73，CDKN1Bなど）や，Wnt/βカテニンシグナル（MEN1など），Ca感知受容体（CaSR，GNA11，AP2S1）のシグナル伝達に影響を及ぼす遺伝子異常が関わる。また，ビタミンＤ不足・欠乏やCa感知受容体（CaSR）の機能低下などが疾患重症度に関与する。pHPTの病因・病態の解明は日々進歩しており，新たな治療薬の開発やCa調節機構のさらなる解明につながると考えられる。

二次性副甲状腺機能亢進症の病因と病態河原崎宏雄 27巻4号 , 2017年3月 , pp.515-520

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　二次性副甲状腺機能亢進症（secondary hyperparathyroidism：SHPT）は，カルシウム・リンの恒常性維持の結果として生じる代償性機構である。SHPTの代表的病因であるビタミンD不足・欠乏と慢性腎臓病は，骨代謝のみならず心血管合併症やADL（activities of daily living），QOL（quality of life）との関連が示唆され，SHPTはそれらの病態に密接に関連した重要な病態またはマーカーであることが分かっている。

カルシウム感知受容体遺伝子変異による疾患と類縁疾患道上敏美 27巻4号 , 2017年3月 , pp.521-527

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　細胞外カルシウム（Ca2＋）濃度の感知においては，Ca感知受容体（CaSR）とともに下流のシグナル分子であるＧ蛋白質α11サブユニット（Gα11）やCaSRのclathrin依存性エンドサイトーシスの制御に関わるadaptor-related protein complex 2（AP2）が重要な役割を担っている。CaSRの機能喪失型変異はfamilial hypocalciuric hypercalcemia type 1（FHH1）やneonatal severe hyperparathyroidism（NSHPT）を引き起こし，一方，機能獲得型変異はautosomal dominant hypocalcemia type 1（ADH1）やBartter syndrome type Ⅴの原因となる。近年，Gα11やAP2のσ-サブユニット（AP2σ）の機能喪失型変異によるFHHの家系が同定され，それぞれ，FHH2，FHH3と分類された。また，ADH家系の中にGα11の機能獲得型変異による症例（ADH2）が存在することも明らかとなった。これらの疾患に対するcalcimimeticsやcalcilyticsの有効性が示されつつあり，新規治療として期待される。

Topics

経口calcimimeticsによる心血管イベント抑制濱野高行 27巻4号 , 2017年3月 , pp.529-535

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　EVOLVE研究のintention to treat（ITT）解析では，シナカルセトの複合アウトカム（死亡，非致死性心筋梗塞，不安定狭心症，心不全，末梢血管イベントによる入院）に対する有意な効果はなかったが，心不全抑制効果が認められた。また，年齢などを補正したITT解析や脱落を考慮に入れたlag-censoring解析では，複合アウトカムに対して有意な効果があった。シナカルセト群における心血管イベント抑制は，介入後20週時点で線維芽細胞増殖因子23（FGF23）の30％以上の低下の有無で予測できた。また年齢別post-hoc解析では，65歳以上においてのみ有意な効果があった。日本のMBD-5Dコホート研究では，介入前のiPTHが500 pg/mL以上の患者では全死亡は51％低下していた。またiPTHが300 pg/mL以上の患者では，心血管入院または全死亡のリスクは29％低下していた。

世界初の非経口calcimimetics；エテルカルセチド塩酸塩の発見と研究開発井上敦人 , 原田一恒 27巻4号 , 2017年3月 , pp.537-545

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　エテルカルセチド塩酸塩は，注射剤として世界初のcalcimimeticsであり，副甲状腺ホルモン（PTH）の分泌を抑制する，二次性副甲状腺機能亢進症（SHPT）の治療薬である。患者は透析終了後の返血時に透析ラインから投薬を受けるため，服薬負担のない治療が可能である。本稿で紹介する薬効薬理試験では，in vitroカルシウム感知受容体（CaSR）に対するアロステリック作動活性及びPTH分泌抑制作用，in vivo血中PTH低下作用に加えて，慢性腎臓病ラットにおいてSHPTで併発する諸症状（副甲状腺過形成，骨障害及び異所性石灰化）の抑制作用が確認された。エテルカルセチド塩酸塩は，毎透析時に確実に投与可能な注射剤のcalcimimeticsとして，新たな治療選択肢を医療現場に与えると期待される。

Calcilyticsの作用と適応遠藤逸朗 27巻4号 , 2017年3月 , pp.547-552

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　カルシウム感知受容体（CaSR）は，副甲状腺，腎，腸管などに発現し，カルシウム（Ca）の恒常性に重要な役割を果たしている。CalcilyticsはCaSRの阻害作用を有し，副甲状腺ホルモン（PTH）分泌促進作用を示すことから，骨粗鬆症治療薬としての開発が進んできたが，十分な臨床効果が得られなかったことから，開発は中止されている。現在calcilyticsは，常染色体優性低Ca血症などに対する臨床応用の可能性について，検討が進められている。

Therapy

原発性副甲状腺機能亢進症の治療とcalcimimetics 竹内靖博 27巻4号 , 2017年3月 , pp.553-559

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　原発性副甲状腺機能亢進症（PHPT）は有病率の高い内分泌疾患であり，治療の第一選択は責任病巣の外科的摘除である。しかしながら，患者の多くは自覚症状に乏しく，生命予後が良好な疾患であり，その内科的治療の確立が期待されている。内科的治療としては，calcimimeticであるシナカルセト，ビスホスホネート製剤およびデノスマブについて検討されている。これら薬剤の治療効果の手術療法との比較における評価については，今後の検討課題である。

二次性副甲状腺機能亢進症の経口calcimimeticsによる治療今西康雄 27巻4号 , 2017年3月 , pp.561-566

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　二次性副甲状腺機能亢進症は，維持透析患者において全死亡，心血管死亡，そして骨折等のアウトカムを助長する。従来の治療法であるリン吸着剤や活性型ビタミンD製剤では，十分に副甲状腺ホルモン（PTH）を抑制できない症例が多く存在する。Calcimimeticsは，副甲状腺カルシウム感知受容体（CaSR）にアロステリックに作用することで，PTH分泌を抑制し，二次性副甲状腺機能亢進症によるアウトカムを改善する。

二次性副甲状腺機能亢進症の非経口calcimimeticsによる治療濱野直人 , 深川雅史 27巻4号 , 2017年3月 , pp.567-572

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　慢性腎不全においてリン吸着薬，活性型ビタミンD製剤などを使用してもコントロール困難な二次性副甲状腺機能亢進症（SHPT）に対して，内服のcalcimimeticsであるシナカルセトの有用性が報告されている。しかし消化器症状などの有害事象のため服薬が中止されたり，自己中断されたり，増量が困難な例もあり，問題も残されている。近年開発された静脈投与製剤であるエテルカルセチドは，このような有害事象が軽減され，ひいては中等度以上のSHPTに対する治療効果の更なる向上が期待されている。シナカルセトと比較して，静脈製剤であるという以外にどのような有益性があるかについては，今後更なる検討を要する。

Preface

巻頭言～カルシウム感知受容体の機能とカルシウム感知受容体作動薬～福本誠二 27巻4号 , 2017年3月 , pp.481-481

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理解を助けるトレーニング問題（本号特集「カルシウム感知受容体作動薬 Update」関連）

副甲状腺，腎臓におけるカルシウム感知受容体の作用について木下祐加 27巻4号 , 2017年3月 , pp.574-574

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（2017年４月号特集：「カルシウム感知受容体作動薬Update」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

二次性副甲状腺機能亢進症の病態について河原崎宏雄 27巻4号 , 2017年3月 , pp.575-575

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連載　注目の海外文献（60）

１．椎体楔状変形の病因：２段階の経過によって生じるのか？２．女性におけるBMIの違いによる椎体強度と推定骨折リスク３．有痛性の急性期骨粗鬆性椎体骨折に対する椎体形成術の効果と安全性：多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験宮腰尚久 27巻4号 , 2017年3月 , pp.578-580

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１．椎体楔状変形の病因：２段階の経過によって生じるのか？２．女性におけるBMIの違いによる椎体強度と推定骨折リスク３．有痛性の急性期骨粗鬆性椎体骨折に対する椎体形成術の効果と安全性：多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験

BACK NUMBER 27巻4号 , 2017年3月 , pp.599-603

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特集予告（5月号、6月号） 27巻4号 , 2017年3月 , pp.605-605

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基本情報

CLINICAL CALCIUM
27巻4号
(2017年3月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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