耳鼻咽喉科・頭頸部外科 67巻11号 (1995年11月)

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の画像診断

1.側頭骨・頭蓋底

1.側頭骨のCT 1)正常 船井 洋光
  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 高分解能CT (High Resolution CT:HRCT)の発達は側頭骨画像診断に大きな進歩をもたらした。検出器数,サンプリングデータ数の増加や,スライス厚の縮小,さらには辺縁を強調するためのアルゴリズムの採用などによって,極めて微細な構造までが判別できるようになった。情報の豊富さ,撮影の手軽さから単純X線検査や,多軌道断層に取って代わる日常検査となりつつある。高分解能CT画像によって描出される,側頭骨微細構造に慣れ親しむ必要がある。

 われわれの施設で使用しているCTスキャンは東芝CTスキャナTCT−900Sである。通常はドイツ水平面に平行な軸位断を採用し,必要に応じてREID基準線に対して110°の冠状断を付け加える。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に対して実施する側頭骨CT検査は,鼓室形成術を前提として行うことがほとんどである。CT画像からは,骨,軟部組織,含気部を明瞭に識別することが可能である。特に1〜2mmの断層幅での高分解能CT(HRCT)画像からは,単純X線写真や多軌道断層X線の数十倍の情報を得ることができる。

 慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの中耳病変の画像診断では,中耳構造物の状態と病巣の存在部位と拡がり,周辺組織への浸潤あるいは侵入を読影することが必要である。中耳構造物としての鼓膜,耳管,鼓室粘膜,鼓室腔,乳突洞,乳突蜂巣,耳小骨などの読影が可能である。病巣と半規管骨部,天蓋などの周辺組織との関係も手術プランを立てる際に重要なポイントとなる。

  • 文献概要を表示

 1 奇形

 高分解能CT (High Resolution Computed Tomography,以下HRCT)による側頭骨内の病変の把握は,骨病変の把握にある。したがって骨との関連性のない小脳橋角部の病変については別項目で述べられるMRIのほうが診断能力が勝っている1)。ここでは代表的な中耳,内耳の奇形,腫瘍の例を挙げて,そのHRCTの診断のコツについて述べる。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 聴器は耳介,外耳道,中耳,内耳,内耳道と続き,中耳から内方は側頭骨内に位置するため外部からの観察が困難であり,画像診断が有力な手段となる。最近,鼓室形成術その他の中耳の手術の普及に伴い,中耳の解剖,病態の把握に対してCT(特に側頭骨高分解能CT),MRIの有用性が取り上げられるようになってきた。これに対し内耳の病態に対しては不明な点も多く,CTやMRIなどの画像診断をもってしても確実な診断は困難であった。さらに,内耳の疾患の中でも聾を含む高度難聴者に対してはこれまで特に有効な治療法もなかったため,内耳の画像診断もそれほど積極的に試みられなかつた傾向がある。ところが近年,聾者または補聴器が使用できないほどの高度難聴者に対し聴覚を回復せしめる人工内耳手術が普及するに至り,画像診断による内耳の病態,解剖の正確な把握が必要となり,CTやMRIなどの画像診断の内耳への応用が再度注目されるようになってきた。本稿ではまず簡単に人工内耳につき説明を加え,特に人工内耳への適応を念頭に置き,側頭骨特に内耳の画像診断につき述べる。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 現在実用化され頻用されているMRIは,原理的にはプロトンすなわち水素原子核の分布により画像を構成するものであるから,水素を含まない骨および空気は信号を発さず,画像上では無信号となる。したがって,骨と蜂巣内の空気がほとんどを占める側頭骨は画像ではほぼ無信号,言い換えれば「透明」(図1c)であり,ここに病変が生じればそのまま画像に現れることになる。また,骨が無信号のためそれに隣接する小脳橋角部はX線CTのようなアーチファクトが無く,この部の診断にもMRIは不可欠である。ここでは側頭骨本体および小脳橋角部とその周辺の病変のMRI所見につき,代表例を提示しつつ述べることとする。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 最近ヘリカルスキャンによる3次元CTの耳鼻咽喉科領域,特に耳科領域における臨床報告が増えてきている。2次元表示によるCT像を3次元像としてとらえる試みは,臨床上多くの有用性があり今後頻用されるものと予想される。本稿では中耳・内耳病変を中心に側頭骨の3次元CTを紹介し若干の解説を加える。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 新しいCT撮影法としてのHelical scanning CT (HES-CT,ヘリカルCT)を用いて頭蓋底の2次元および3次元の画像を描出し,従来のthin slice CT (マルチスライスCTスキャン)による画像と比較してみた。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 近年,慢性副鼻腔炎の手術方法が鼻外手術(Cal-dwell-Luc法など)から,より生理的な鼻内手術に移行し,さらに鼻内手術に内視鏡的手術が導入され,慢性副鼻腔炎をできるだけ生理的に,かつ微細なレベルで手術することが薦められている。この方式はminimally invasive surgeryと呼ばれているが,鼻腔,副鼻腔の内視鏡的手術を施行するためには,手術前に複雑な副鼻腔の構造を正確に把握し,さらに個々の症例について,正確な解剖学的異常や病変の程度とその範囲を把握しておくことが不可欠である。

 これら詳しい鼻腔,副鼻腔の状態を把握するには従来の単純撮影や断層撮影では必ずしも十分ではなく,菲薄な骨板をも写しだすCTが最も適しており,副鼻腔の内視鏡的手術にはCTが不可欠な検査とされている。ここでは内視鏡的副鼻腔手術(Endoscopic Sinus Surgery;エス,以下ESS)を施行するために必要なCT所見の読影についての基本的事項についてのべる。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 鼻副鼻腔は複雑な形態をとるうえ,周囲を骨に囲まれているため耳鼻咽喉科的な一般診察において所見をとるのに非常に難しい制約がある。そこでどうしても画像診断の助けを必要とするが,その際大きな援軍となるのがCTスキャンである。単純X線や断層撮影でははっきりしない微細な読影も可能となり,特に腫瘍の進展範囲を判定するうえで大きく役立つ1)

 本稿は鼻副鼻腔に多くみられる上顎癌を中心として,他の腫瘍,鼻腔腫瘍などについても触れることとする。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 外傷性骨折の原因としては労働災害,交通事故,打撲,墜落などがあるが,特に労働災害や交通事故は社会の発展につれ年々増加している。その中でも頭部,顔面の受傷する確率は高いと考えられる。そして頭部外傷を合併すれば緊急が要され,また顎骨などの骨折は顔貌に多かれ少なかれ影響を与えることとなる。このため,迅速でより正確かつ詳細な診断を行うことは治療上非常に重要なことである。診断は視診,触診で大略をつかむことも大切であるが,最終的にはX線学的診断が決め手となる。

 本稿では上顎骨骨折についてCTを中心に述べる。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 わが国の鼻副鼻腔へのMRIの応用は,1984年,橋本らによって初めて行われた1)。彼らは副鼻腔疾患のMRI所見を報告し,悪性腫瘍と炎症との鑑別が可能であることを示した。その後,MRIの機器の普及とともに,鼻副鼻腔病変の診断について多くの報告が行われている2〜6)。また,内科,脳神経外科などで脳疾患の精査のために頭部撮影をする機会が多く,その際に鼻副鼻腔も同時に描出され,偶然に副鼻腔病変を指摘され,耳鼻咽喉科に紹介される症例も見られている7)。本法では,X線CTと異なり放射線を全く使用しないので放射線障害の心配がなく安全である。傾斜磁場の選択により,被検者の体位変換なしで容易に任意方向の断層像が得られる。骨,非磁性金属,空気,ガスなどによるアーチファクトが少ないため,骨に囲まれた副鼻腔や頭蓋底,後頭蓋窩,側頭骨領域などの病変の診断に有利であるなどの特徴を有する。軟部組織間のコントラスト分解能が高く形態的に精確な情報が得られるうえに,質的診断が可能であり,病変の変化も的確に把握できる。したがって,粘膜肥厚,ポリープ,貯留液,腫瘍,真菌などの鑑別が非観血的に可能である8)。しかし,通常のスピンエコー(SE)法ではガドリニウム(Gd-DTPA)の増強によっても病変部と正常組織の組織分解能には限界があり,最近では,Gd増強効果の経時的変化を見るダイナミックMRIが行われるようになってきた9)。また,高磁場の下で,リン,ナトリウム,炭素などによる原子密度,緩和時間,化学シフトを測定し,エネルギー代謝の変化を知る方法も開発されている10)

 CTは骨情報中心,MRIは軟部組織情報中心であり,それぞれ得られる情報が異なっている。副鼻腔疾患の診断においては,MRIはCTの情報を補う検査として捉えるのが望ましい11)

3.唾液腺

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 CTの発達により,唾液腺と隣接軟部組織の画像診断も飛躍的に向上し,さらにCTとsialogra-phyの併用(CT-sialography,以下sialo-CTと略す)は,唾液腺内あるいは隣接して存在する腫瘤病変の診断に非常に有用とされている。従来のsialographyと比較したCT,あるいはsialo-CTの有用性については1980年代初期に多数報告されている。一方,近年MRIが登場し一般化されるにつれ,唾液腺病変についても病変の性状,局在,拡がりがさらにより正確にimagingされるようになり,特にsialo-CTの意義については変化しつつある。本稿では,まずCT読影の立場から正常唾液腺の解剖を概説し,ついでsialo-CTの手技,意義,さらに問題点についてまとめてみた。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 唾液腺腫瘍は頭頸部腫瘍の約3%と比較的稀な腫瘍であるが,その種類は実に多彩で,1991年に改訂されたwHOの分類基準1)ではadenomaだけで14,carcinonnaで18もの組織分類が示されている。さらに良性腫瘍の約70%を占める多形腺腫が,良性でありながら細胞播種の危険があるため,唾液腺腫瘍はopen biopsyが困難という特異性がある。したがって術前の画像診断の重要性は他にまして高い。

 近年高画質で高速連続スキャンが可能なヘリカルCTが普及し,より精度の高い画像が手軽に得られるようになった。ここでは耳.下腺腫瘍のCT画像についてその特徴を述べ,耳下腺腫瘍の術前検査としてのCTの適応と限界について述べたい。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 われわれ耳鼻科医は「食事に際して唾液腺に疼痛を伴う腫脹を繰り返す」といった経過を聴取した場合に唾石症を疑うことは困難なことではない。このような症例の検査方法は触診,単純X線(歯科用の咬合撮影,オルソパントモ撮影など),唾液腺造影であり,また症例により超音波検査が行われる。唾石症にCT撮影は通常は行われないが,症例により治療の選択に重要な検査法となりえる。本稿は唾石のCTということであり,普通のCT撮影以外に,現在のCT撮影装置でどれだけの情報を得られるのかを示す。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 MRI (Magnetic Resonance Imaging)は今日,全身の全ての臓器に対して画像診断として臨床応用がなされている。唾液腺に対しては主に耳下腺疾患の診断において不可欠となってきている。その理由としてMRIは軟部組織のコントラストに優れ,特に腫瘍性疾患の局在診断や顔面神経との位置関係を知るのに有用であるだけでなく,良性・悪性の質的診断や腫瘍の組織診断にも応用が可能であることなどを挙げることができる。これらの点について具体的に解説する。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 唾液腺疾患の画像診断法には,種々のものがあるが,これらは唾液腺腫瘍の診断のために進歩したと言える。本稿の主題である超音波エコー検査(以下US)は,軟部組織内の周囲との音響特性の異なる腫瘤性病変を描出することに優れているため,他の検査法と同様唾液腺においては腫瘍の診断,特にその良性・悪性の鑑別のために主として行われている1)

 以下においては,使用装置,検査方法,得られる画像,さらに本検査法の利点欠点,他の検査法との比較における本法の有用性について述べる。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 近年,超音波(US),CT,MRIなどの画像診断法が出現し,かつ急速に発展してきたため,RI検査のみが非侵襲的に臓器をイメージする手段ではなくなってきた。また,それらの画像の解像度はRI検査をはるかに上回り,形態的診断法として非常に威力を発揮する。しかしながら,RI検査はRIが特定の臓器組織に分布する機序を通じて,その臓器,組織の機能を画像化する。したがって,他の画像検査とは質的に異なる情報を含み,この点においてRI検査の持つ情報が価値あるものになるのである。

4.甲状腺

1.甲状腺のComputed Radiography 中山 明仁
  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 1896年にレントゲン博士が最初のX線撮影を実現してから約100年,X線による撮影技術は目覚ましい進歩を遂げてきた。今日主流となっている増感紙とX線フィルムを組み合わせたアナログ方式の画像に加えて,1980年代に入り,デジタル過程を通して画像処理を行い表示するDigital Radiography (DR)がエレクトロニクスとコンピューター技術の進歩と共により身近なものとなった。ここではDRの1つの方法であるComputed Radiography (以下CR)について,特にその甲状腺疾患の診断における有用性を中心に解説する。なおCRの具体例として当大学東病院で使用しているFuji Computed Radiography(FCR−7000,富士メディカルシステム社,東京.以下FCR)を用いた。

2.甲状腺のCT 湯本 英二
  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 結節性甲状腺腫の診察に際しては,癌との鑑別や悪性度の診断を含めた腫瘍の性状,局所進展度と隣接臓器への浸潤,頸部リンパ節転移,遠隔転移の有無などについての診断が必要となる。イオパミドール,イオヘキソールなどの造影剤を点滴静注しながらCTを撮影し,腫瘍内部の造影効果を観察することで,ある程度以上の大きさの腫瘍では良・悪性の鑑別に有用なことがある。しかし,CT検査の意義は,組織型の鑑別よりも,腫瘍の局在と隣接臓器との関係を知ることにある。癌の場合には気管,食道,大血管などの隣接臓器への浸潤や縦隔への進展の有無を判定するのにCT検査は必須である。

 本稿では結節性甲状腺腫の代表的疾患を取り上げ,そのCT像を紹介する。なお,稀な疾患では古い症例があるので,撮影に用いられたCTの機種,撮影時のスライス幅や造影剤の種類などが一定でないことをお断りする。

3.甲状腺のMRI 加納 滋
  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 MRIはCTと比較して新しい画像診断方法であるが,今までの診断技術に取って代わるものでなく,従来の方法では得られなかった情報を新たに追加する1つの補助診断方法であることを常に念頭においておく必要がある。また,撮影方法(シークエンス)が多くそれぞれ内容の異なる画像が提供されるために,読影には撮影条件のチェックから必要となるなど他の画像診断法と異なる点が多い。またCTとは異なる質の情報を提供するものであり,その意味では互いに相補的な診断方法であり,どちらか一方のみで十分な情報が得られると考えるべきではない。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 甲状腺は耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域のなかで,エコー検査が最も早くから定着した臓器であり,現在も甲状腺腫脹に対するエコーの有用性は高く評価されている1,2)。甲状腺疾患に対するエコーの役割は,腫瘍の質的診断や触知不能な腫瘍の存在診断のみならず,腫瘍と周囲臓器との関係,リンパ節転移の把握など多岐にわたる。ここでは甲状腺および周囲臓器の正常像,甲状腺の良性腫瘍,悪性腫瘍所見を中心に述べる。使用した超音波診断装置はとくにことわりのない限りアロカ社製エコーカメラSSD−650またはSSD−650CL,探触子はリニア型UST−5515-7.5(7.5 MHz)である。超音波画像の上縁や側縁にあるスケールの一目盛は1cmに相当する。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 甲状腺シンチグラフィーは超音波やX線CTなどと比べ,分解能が悪い。したがって,腫瘍の局所診断法としての役割は少なくなっている。しかし,形態と機能の両方の情報を同時に得ることができる特徴を有しているので,これらの特徴を十分理解して用いれば,多くの情報を得ることができる。ここでは甲状腺腫瘤の診断を中心に述べる。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 MRIおよびCTは,上気道を描画するのに最も適した画像診断法である。MRIは,CTに比較して優れた柔部組織のコントラスト分解能をもち,任意断面での撮像が可能で,かつ一度の撮像で複数の画像が得られる。MRIは,造影剤の投与なしに血管を描画できることからリンパ節病変の検出にも有用である。CTは軽微な骨皮質病変を明瞭に描画する点で優れているが,MRIは他の画像で描画し得ない軽微な骨髄病変の検出に有用な検査法であることも忘れてはならない。以下,画像を中心に正常解剖や上咽頭癌の病期診断を解説する。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 中咽頭癌を画像で確認する場合には,その大きさを知ることのほかに周辺組織への浸潤の有無を調べることが重要である。ゆえに画像上,咽頭腔や副咽頭間隙がはっきりと写し出されることで,中咽頭とその周囲組織との境界が明らかにされることが必要である。これらはCT,MRIの性能や造影剤によるコントラストの鮮明さ,および被検者の体型また治療内容によって違いがでてくる。肥満者の場合は咽頭腔が狭く,中咽頭の前壁,側壁,後壁の区別が判断しづらくなることが多い。病気や治療により浮腫状になっている場合も同様である。造影剤に関しては,CTにしてもMRIにしてもその造影効果により血管を含めた周囲組織が鮮明となり,腫瘍のコントラストが周囲の正常組織と差がつきやすく,境界がわかりやすくなる。それゆえ,常に造影剤を使用して検査を行うのがよい。また咽頭腔は歯の影響を受けることが多く,中咽頭のCTでは,歯のアーチファクトで良い画像を得ることが難しい場合がある。一方MRIではそれを避けられることが多い。実際の撮影方法としては,われわれ癌研頭頸科では,CTの場合,ヨード剤は0.5〜0.8ml/secの速度で100〜130ml注入しながら撮影する。MRIの場合はガドリニウムを10ml使用する。原則として造影時のみのフィルムを撮影し,単純フィルムは必要に応じてとしている。CTもMRIもスライス幅は5mmである。初期診断に対してはMRIは原発巣を中心に検索を行い,CTでは原発巣に加えて頸部リンパ節の検索も行うようにしている。撮影方向はMRIでは水平断に加えて,病変が正中にある場合は矢状断を撮り,そうでなければ冠状断を撮ることが多い。CTでは軸位断のみのことが多く,進行癌の場合に冠状断を加えることがある。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 下咽頭・頸部食道癌は,頭頸部悪性腫瘍だけでなく全臓器癌のなかでも予後が不良なことで知られる疾患の1つである。したがって治療成績の向上には他領域疾患以上に早期発見・早期治療が大切であるが,必ずしも容易なことではない。下咽頭・頸部食道は,外部からは見えない部位であり,嚥下障害や嚥下時痛などの症状が出現したときはすでに病期が進行していることが多いからである。また日常診療のなかで下咽頭など上部消化管を直接観察し,診断を行うのは耳鼻咽喉科医だが,そのわれわれも早期発見の機会を逃したり誤診をすることが多いのが実情である。最近になってファイバースコープが一般臨床でも容易に行えるようになり,早期診断されるようになったが,病巣の進展範囲や治療に結びつく情報はどうしても画像診断に頼らざるを得ない。

 CTやMRIは新しい画像診断法として頭頸部領域でも急速に普及してきたが,下咽頭・頸部食道については内視鏡や造影X線などが有効で他の頭頸部疾患ほど定着していない傾向にあった。しかし検査機器の性能の向上に伴ってその有用性はますます高まっており,本稿では著者らの経験を中心に下咽頭・頸部食道のCTおよびMRIによる診断について述べてみたい。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 喉頭癌の診断に際して,粘膜面での癌の浸潤の評価には内視鏡検査に勝るものはないが,粘膜下への進展や軟骨への浸潤,喉頭外への進展の評価にはCTやMRIが優れ,内視鏡とCT,MRIとは相補的役割を果たしている1)。CTの有用性についてはすでに多くの報告があり,必須のものとして確立した観がある。MRIについてはCTと同等2)かそれよりも有用とする報告3,4)も見られるようになってきたが,喉頭癌にルーチンにMRIを利用している施設はいまだ少ない5)と考えられる。ちなみに,久留米大学で1990年1月から1994年12月までに加療した声門癌,声門上癌の初治療例は142名(声門癌107,声門上癌35,男性134,女性8,平均68歳)で,T分類別には表1のごとくである(Tisは除く)。CTを術前に撮影した症例数は93例で,T別に見るとT2以上ではほぼ全例に施行していると考えてよい。一方で,MRIの撮影は少なく,声門癌では3例(3%),声門上癌で13例(37%)であった。

 MRIが汎用されていない理由は呼吸や嚥下によるアーチファクトが生じやすいこと,空間分解能がCTより劣り,1〜2mmの薄いスライスでの撮影ができないこと,骨や石灰化は無信号となるために評価が難しいこと,検査効率が悪くて時間がかかることなどが挙げられる。しかし,MRIは矢状断,冠状断など任意の切断面での撮影が可能である点は大きな魅力である6)。一方で,CTは被曝の問題が不可避である。

 さて,昨年の健康保険法改定で同一部位のCT,MRIを撮影した場合,後から施行したほうは半額しか請求できなくなったこともあり,CT,MRIそれぞれの長所短所を十分理解しておくことが必要となってきている。

 本稿では,まずCT,MRIの両方を撮影した症例を提示する。次いで久留米大学で施行したCT,MRIについてその診断率を述べ,それぞれの誤謬点を述べる。

2.頸部のCT 宮下 久夫
  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 頸部のCTは上気道や上部消化器病変の進展範囲を検討すること,および原因不明の頸部腫脹や腫瘤性病変の検索に用いられる。前者は既述されているのでここでは主として後者の症例を提示する。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 MRIは骨破壊の描出においてはCTに劣るが,軟部組織の濃度分解能が良好で病巣の描出に優れているので,病変の性状や進展範囲を明瞭に理解できる。また,水平断のみならず,冠状断,矢状断が容易に撮像できること,歯の充填物からのアーチファクトが少ないこと,放射線被曝がないこと,などから近年では頭頸部腫瘍性疾患における第一選択の画像診断法となりつつあり,なかでも,頭蓋底や顎下部病変,鎖骨上窩や上縦隔に病変が及ぶ場合に特に有用である。

 最近の知見とわれわれの経験に基づき,各種頸部疾患におけるMRI像とその役割,適切な診断手順について述べる。

  • 文献概要を表示

 ■はじめに

 頸部の超音波断層法(以下US)は頸部腫瘤の診断には不可欠な手段である。頸部腫瘤は頭頸部外科領域の重要な臨床所見であるにもかかわらず,従来は触診によって診断され,手術によって確かめられてきた。画像診断法の進歩によって,頸部腫瘤の部位的診断,質的診断は大きな発展をとげてきた。その結果,手術計画は立てやすくなり,また不要な侵襲を避けることが可能となった。画像診断のうちでも,USは操作が簡単かつ安全のため,外来でも容易に施行でき,触診で得られた診断の精度を向上させるのに役立ってきた。本稿では,頸部USの正常像を示した後に,日常臨床で遭遇する頸部腫瘤のUS像について述べることにする。なお,装置は横河メディカルRT 4600,探触子は電子リニア型7.5MHzを使用した。

基本情報

09143491.67.11.jpg
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
67巻11号 (1995年11月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

前身誌

文献閲覧数ランキング(
5月25日~5月31日
)