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■はじめに
喉頭癌の診断に際して,粘膜面での癌の浸潤の評価には内視鏡検査に勝るものはないが,粘膜下への進展や軟骨への浸潤,喉頭外への進展の評価にはCTやMRIが優れ,内視鏡とCT,MRIとは相補的役割を果たしている1)。CTの有用性についてはすでに多くの報告があり,必須のものとして確立した観がある。MRIについてはCTと同等2)かそれよりも有用とする報告3,4)も見られるようになってきたが,喉頭癌にルーチンにMRIを利用している施設はいまだ少ない5)と考えられる。ちなみに,久留米大学で1990年1月から1994年12月までに加療した声門癌,声門上癌の初治療例は142名(声門癌107,声門上癌35,男性134,女性8,平均68歳)で,T分類別には表1のごとくである(Tisは除く)。CTを術前に撮影した症例数は93例で,T別に見るとT2以上ではほぼ全例に施行していると考えてよい。一方で,MRIの撮影は少なく,声門癌では3例(3%),声門上癌で13例(37%)であった。
MRIが汎用されていない理由は呼吸や嚥下によるアーチファクトが生じやすいこと,空間分解能がCTより劣り,1〜2mmの薄いスライスでの撮影ができないこと,骨や石灰化は無信号となるために評価が難しいこと,検査効率が悪くて時間がかかることなどが挙げられる。しかし,MRIは矢状断,冠状断など任意の切断面での撮影が可能である点は大きな魅力である6)。一方で,CTは被曝の問題が不可避である。
さて,昨年の健康保険法改定で同一部位のCT,MRIを撮影した場合,後から施行したほうは半額しか請求できなくなったこともあり,CT,MRIそれぞれの長所短所を十分理解しておくことが必要となってきている。
本稿では,まずCT,MRIの両方を撮影した症例を提示する。次いで久留米大学で施行したCT,MRIについてその診断率を述べ,それぞれの誤謬点を述べる。
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