胃と腸 6巻10号 (1971年9月)

今月の主題 便秘と下痢

主題

排便の生理学の最近の知見 中山 沃
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はじめに

 排便は,糞便がその貯留所ともいうべきS字状結腸をこえて直腸に入ってきた時に起こる.直腸が糞塊によって伸展されると,直腸の強力な正蠕動が発来し,便を肛門から排出しようとする.他方,直腸の伸展は便意を感じさせ,その結果,外肛門括約筋,肛門挙上筋,腹筋,呼息筋が肛門の開大,腹圧の上昇を起こし,排便を促進する.この排便を起こす機序に結腸および直腸内壁内神経叢が主役を演じ,仙髄排便中枢および高位の中枢(脳幹および大脳辺縁系)がこれを調節していると考えられる.そこでこれらのことについて,これまで得られた当教室の知見を混えながら,排便反射について考察してみたい.

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はじめに

 便通異常の実態を外来患者について調査してみると,表11)のとおりである.すなわち,都立豊島病院内科外来患者5,490名のうち,便通異常を訴えたものは377例(6.7%)で,このうち下痢が277例(4.1%),便秘が130例(2.3%),下痢・便秘交代が20例(0.3%)となっている.なお便秘患者は下痢患者より少ないが,便秘の場合には下痢と異なって,自宅療法を行ない,来院しない患者が相当にいると考えられる.

 便秘は腸疾患にもとづくことが多いが,必ずしも器質的病変によるとはかぎらず,機能的異常によることがむしろ多い.また全身性疾患の一つの症状として現われることもあるから注意しなければならない.

 便秘について,まず問題となるのは,その定義である.これについては諸家の意見を徴して検討を加えた.筆者らは,とくに治療を必要とするものを便秘症とよぶことにしている.なお便秘の発生機転,分類を文献的に検討し,各種便秘の特徴,症状を述べ,さらに診断については症例をあげて解説する.

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はじめに

 下痢は日常診療上,腹痛に次いでしばしば遭遇する症状であり,その原因となる疾患の診断およびそれに対する適切な治療は極めて重要である.

 最近2年間の筆者らの内科外来での集計では,腹痛を訴えた患者が24.5%を占めるのに対して,下痢を訴えたものは5.9%であった.

 松永ら1)の集計でも,下痢患者は全外来患者の7.6%を占めているが,約10年前の同様な集計(9.4%)と比較して減少の傾向を認め,それは社会状況の好転と自宅療法,とくに抗生物質により容易に治療できることが原因と考え,また,大学病院という特殊性による急性下痢の減少もその一つの要因として挙げている.

 このように,下痢は全体としては減少の傾向がみられ,とくに急性下痢では著しいが,逆に,抗生物質による下痢をはじめ,lactase deficiency,WDHA症候群などのように最近になってその病態が明らかとなりつつある下痢疾患もあって,下痢が依然として重要な症状の一つであることには変りない.

 ここでは,下痢に関してその病態生理のほか,原因疾患の診断,治療など臨床的諸問題について述べようと思う.

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 便秘と下痢は日常しばしば遭遇する症状であるが,その明確な定義の問題や原因疾患の診断,治療などの臨床的諸問題の解明は極めて重要である.

 とくに,治療に関しては積極的に外科的療法を施している大原先生に御出席いただき,手術術式やfollow upの成績などについてお話し願いました.

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はじめに

 便通は健康のバロメーターともいわれ,一般の人々の間での認識はかなり高いはずである.ところが,自分自身に相当の便秘がありながら適当に下剤を服用したり,自分で溌腸をして日常生活を過している人が意外に多いことも事実である. 近年,胃症状を主訴として外来を訪れる患者は目立って増加している.このうち,胃レ線検査,内視鏡検査,あるいは胆道系の諸検査を行なってみても特別の所見が見られない場合,さらに詳細な問診によって,便通異常や下腹部の膨満感のほか,多彩なしかも病悩期間の長い自覚症状を有しているものが多いことに気づく.しかも,これらの患者は多くの医師を歴訪して,数回に亘り胃腸管,肝,胆,膵系の検査をうけており,いずれもたいした器質的疾患の証明されないままに,胃カタル,便秘,ガス性大腸1)あるいは過敏性大腸2)~19)(irritable colon),腹部神経症,腹腔内癒着症などの病名をつけられ,保存的療法をうけるも緩解せず,患者自身は不満な感じをいだきながらも医師を繰返し歴訪する結果となる.

 患者自身は,これらの大腸症状やその他の不定の消化器症状が長い間持続し,また頻繁にくり返すことから,本人はあくまでも病的状態であると意識して悩み苦しんでいるのである.これらの患者に充分な検査を行なっても,器質的疾患は発見されず,腸の純機能異常と考えられるような,いわゆるirritable colon2)~19)の存在するという報告は多い.この過敏性大腸という病名は,1929年Jordan2)がJ.A.M.A.の誌上に発表したのが最初のようであるが,しかし,彼は当時,すでに前からあった用語として記載している.以来irritable colonという病名は,便利な病名として乱用されているきらいがあり,その概念に関してはなお混沌としている.しかし一般的には,「腸管の機能異常にもとづき,種々の不定な腹部症状を伴う便通異常が持続するもので,その取扱い上多くの場合,心身医学的立場からの考慮が重要な意味をもつ症候群14)」というように考えられている.すなわち,あくまでも腸管の機能異常によるものであって,症状の原因となるような器質的変化が腸管自身およびその他にも認められないということがたてまえである.このように,本来の意味合いは純機能的なものであり,器質的なものを除外していく立場にあるわけであるが,実際問題としては,器質的なものを厳密な意味で除外することは困難なことであろう.今日除外診断といっているのは現医学の診断のレベルにおいて,特にめだった器質的病変が見出されないというにすぎない.したがって,除外診断後にirritable colonとみなしたもののなかから,その経過の上で器質的なものを見出し得る場合もある訳である.

 また,ごくわずかの生検組織片では診断しえなかった粘膜の炎症像がいずれかの場所にあるかもしれないし,漿膜側のいずれかの場所に腹腔鏡検査でみつからなかった癒着があるかもしれない.しかしながら,このようなごく軽微の変化と臨床症状とを原因と結果として関連づけて病名をつけてしまえば,正常と異常の区別がつかなくなってしまう.このように炎症にしても,癒着にしてもあきらかな病的所見の場合はともかく,生体としてゆるされる範囲のものまで器質的変化として厳密に除外する必要はなさそうに思うし,どだいそれは不可能なことである.また,どこまでが生理的で,どれ以上が病的かということはむずかしい問題である.ここに過敏的大腸の概念が抬頭し,広く臨床家にむかえ入れられた理由がある.

 しかしながら1853年,Virchow20)が腸間膜にみられる白色星芒状の瘢痕が原因で起こると考えられる慢性便秘または下腹部痛に対してPeritonitis chronica mesenterialisと命名して以来,各国において結腸間膜瘢痕に対する報告がみられ,S状結腸囲周炎(Perisigmoiditis)瘢痕性結腸間膜炎(Mesocolitis cicatricans)などの病名でirritable colonと区別され,わが国においても石山21)~23),松永24)らにより早くから指摘され,治療までの検討がなされてきた.

 irritable colonの除外診断の過程の上で,この結腸間膜瘢痕性病変を器質的なものとしてあつかうことでは大方の意見10)~18)は一致しているが,それと思わせるようなレントゲン所見が得られてもその臨床症状との結びつきは慎重でなければならないとする考え方が多く,診断上はirritable colonとしてあつかわれる例が多かったように思われる.青山25)は早くからこの疾患の診断に注目し独自の方法で診断法を確立した.

 林田,大原ら26)は,便通異常と不定の臨床症状を有する症例1,335例について,全例に青山法による結腸レ線検査を行ない,腫瘍その他のいわゆる狭義の大腸の器質的疾患27例を除いた1,308例について,結腸の走行,位置,長さの異常,また間膜瘢痕による壁の“つれ”牽引像,狭窄などの所見と自覚症状,便通異常との関連性を検討した.その結果,両者の間に密接な関連性を認めることができたので,便通異常と不定の腹部症状や全身症状を訴えるもので,レ線学的に後述するような器質的所見のみられたものを結腸症候群という名前で統一し,irritable colonと区別した.

 一方,結腸間膜の瘢痕性病変,あるいはS状結腸過長症等に対しては,従来より瘢痕切除,あるいはS状結腸の部分切除などの外科的療法が試みられてはきたが,術後一過性に症状の改善はみられても,いずれは同じ愁訴が再来し,再開腹,再切除をうけるような症例が多く結局はpolysurgeryにおちいる結果となり,iatrogenic diseaseとして反省されるようになった.

 さきに林田27)~29)は,慢性便秘症の診断には経口的に投与したバリウムのレ線の追跡検査によるbarium intestinographyが機能異常を呈する大腸の部位決定に役立つと考え,いわゆる,Segmentar Theorieを提唱し,この部位の切除により慢性便秘が改善すると報告した.しかし,その長期のfollow-upにより,その成績は決して思わしいものでないことが判明し,大腸を部分部分として考えるよりは全体としての機能を考えるべきであるという考えに変り,一時結腸全剔出術を試みたがこれとて,術後の全身状態の回復や消化吸収の面での問題が多く,治療法として臨床上とりあげるに至らなかった.

 さらに林田31)は,このような患者の開腹時の詳細な所見の観察から,瘢痕性変化や長さや位置の異常などの所見は単一で存在することは少なく,多くは,これらの変化が合併して存在することに気づき,さらに,左結腸曲の位置や屈曲の異常および下行結腸の異常屈曲がその臨床症状の度合と密接な相関を有することが分った.また,本症の外科的治療にあたって,左結腸曲をふくめた広範な腸管切除群と,左結腸曲に瘢痕などを有しながらもこれを放置し,他の部位,たとえば横行結腸S状結腸の部分切除のみにとどめた症例との予後の比較では,前者が良好であるに比し,後者は不良であったことは極めて教訓的であった31).そこで本症に対しては,左半結腸切除と同時に,その他の走行異常や,屈曲異常,瘢痕等の変化をone-stageに修正し,大腸全体の形成術をほどこせば機能的異常が改善されるのではないかとの考え方に到達し,本法を施行し,好結果を得るにいたった.

 以上が結腸症候群の考え方であり,今日筆者らが行なっている外科的療法に至る歴史的な背景である.杏林大学外科教室においてはまだ日が浅く経験した症例は少なく,遠隔成績をだすに至っていないので,大原26),杉沢31)の研究を中心として本症候群の診断,手術,およびその予後についてのべる.紙面の都合で概略にとどまるが,詳しくは筆者26)らの他の論文31)32)を参照されたい.

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Ⅰ.症例

 患者:杉○太○ 51歳 男

 主訴:なし

 家族歴:特記すべき事項なし

 既往歴:赤痢(25歳)

 現病歴:1966年2月に肝腫大のため某医に於いて全身の検査を行なった結果,胃レ線像に異常所見ありといわれ,精査のため来院した.初診時連続3回レ線検査を行なったが確診が得られず,1966年4月に胃カメラ検査を行なった.その結果,胃体下部の小彎より後壁に小さな平盤状隆起を認めたが良悪性を定めることができぬまま観察することにした.66年11月および67年1月に生検を行ない,第2回目にようやく良性異型上皮を検出した.以後,ほぼ定期的に生検,レ線,内視鏡による経過観察を行なったが,ある時点で生検によりⅡa型早期胃癌(GroupⅣ)と診断されたため,1969年9月1日に胃切除を行なった.

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はじめに

 胃の細胞学的診断法の進歩は目ざましく,剝離細胞の形態的諸特徴から組織診に近いような正確な診断がくだせるようになってきた.しかし,剝離細胞像から組織学的背景を推定しようとする場合,細胞の採取法をも考慮した慎重な細胞所見の読みが必要である.本例は胃癌の1例であるが,術前の細胞診によって胃悪性リンパ腫を疑ったもので,臨床的にも細胞学的にも興味深い症例であったので報告する.

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はじめに

 いわゆる顆粒状細胞筋芽細胞腫,Granular Cell Myoblastomaは,1926年,Abrikossoff1)がはじめて記載して以来多くの報告がみられる.しかし,胃に認められた報告は非常に少ない2).筆者らは胃噴門部の壁内性腫瘤の診断で腫瘤の摘出術をおこない,その組織検査の結果,定型的なGranular Cell Myoblastomaであった症例を経験したので報告する.

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 1971年6月3~5日,チェコスロバキアの首府Prahaで,Urgent Endoscopy of Digestive and Abdominal Diseasesという主題の国際シンポジウムが,また6月6日にはKarlovyでSeminar of the International Society of Gastrointestinal Endoscopyが行なわれた.チェコスロバキア消化器病学会のCzeck and Slovak Endoscopic Commiteesの企画で,会長は,Z.Maratka教授であった.同教授とは最初1965年のBudapestの学会でお会いし,とくに近藤台五郎先生が親しくしておられ,1966年東京の第3回世界消化器病学会にはたしか助教授でKojecky教授とともに来日された.Maratka教授は学会開催のぎりぎりまで近藤教授が参加されることを心待ちされたが,ちょうど重なるOTCAの早期胃癌診断講習会などの関係で私が代って出席したわけである.

 今度のPrahaの学会でもっとも活躍されたのは京府医大の川井啓市講師であったが,われわれは東京女医大組7人,大原綜合病院2人,昭和大外科1人その他2名で,東京―Moscow直行便を利用,2日Prahaに入った.ハンガリー,ユーゴスラビアの学会に参加した経験をもとにいわゆる共産圏ではグループ行動した方が通関などでなにかと楽だと感じていたからである.チェコの学会といえば,日本から多数参加され,学会のあとでチェコ動乱が起こり一層Prahaを印象づけ忘れ得ぬものとした1968年を想い起こされる方が多いだろう.品格のあるPrahaの美しい「百塔の町」はどこでも写真撮影の対象になる.

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 タイ国の胃癌の低頻度とも関連して,胃内視鏡の普及も少なく,その専門家も極めて少ない.胃のルーチン検査は多くの場合間接X線のみである.外貨保有の乏しいタイ国では輸入品に対して極めて高率の関税が課せられ,たとえば,コロナスタンダードが約200万円になるという.表1は,胃内視鏡器械のタイ国における販売価格であって,日本の1.5~2.0倍であり,これが胃内視鏡の普及を妨げている1因であろう.胃カメラフィルムはアンスコ100が専ら用いられており,現像は多くの場合日本に郵送され,表のごとく,極めて高価につく.筆者の試験で,エクタクロームは一般の写真店でも現像してくれ,より安価で,期日も早いので,筆者が訪れた機にNCIでは胃カメラフイルムをエクタクロームに変更し,好評であった.日本以外では,現像が容易なエクタクロームに胃カメラフイルムを改める必要があろう.

 次に,タイ国立病院における胃内視鏡室の主任医師と胃内視鏡器械を表2に示す.太字で示した医師は,日本の国立がんセンターにおいて,胃内視鏡の研修をうけ,現在第一線において活躍している.内視鏡設備のある10病院中の半数までが筆者らの内視鏡室で育っている訳で,他の医学分野ではアメリカ一辺倒であるのに比して,日本の内視鏡の責任の重大さを痛感した.

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 アンデス山脈と太平洋にはさまれ南北に四千数百キロと細長くのびた国チリーは,わが国と並んで胃癌の多い国である.

 「チリーに胃癌が多いのは,火山が多く風光明媚で日本と同様にすばらしい国だから」と,サンチャゴの医師たちは冗談に話していた.米を食べ,魚類,ウニ,アワビなど新鮮で豊富な海産物に恵まれている点でも日本によく似ている.

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 大多数の解剖学や組織学の本には胃粘膜には胃小窩という小さい孔が胃腺分泌孔として無数に開口していると記載されている.しかし,拡大鏡や実体顕微鏡で観察すると,胃小窩と言う孔のみではなく,しばしば小さい溝として認められる.この状態は筆者の考案したAH法実体顕微鏡観察(8~40×)で極めて明瞭に認めることができる(方法:フォルマリン固定胃をアルシアンブルー,ヘマトキシリンで染め,水中に入れたまま実体顕微鏡で観察する.これは後の組織学的検索に支障をきたさないので便利である).図1のように,胃小窩のみが一定の配列をしている状態を胃小窩模様(Foveolar pattern,FPと略),図2のように小さい溝が一定の模様をなして配列しているのを胃小溝模様(Sulciolar pattern,SPと略)と命名し,図3のように両者が混合しているものをFSPの記号で表現している.正常胃でもFP,FSP,SPいずれのパターンを示すかは個人差があって一律には言えない.大ざっぱに言って体部腺域はFPを,幽門腺域はFSPあるいはSPを示す(幽門腺域でも時にFPを,また体部腺域でもSPを示すことがある).慢性胃炎があるとFPからFSP,SPへと変化する傾向がある.過形成性胃炎や,固有層の細胞浸潤または浮腫の強い胃炎ではパターンが粗大化する.図4のようになったものを網状SPと名付けた.これは,比較的軽度な慢性胃炎の時に見られる.図5のようになったものを脳回状SPと名付けた.これは図2のようなSPが極端に誇張されたもので,粘膜上皮の剝離,再生がくり返される間にSP化が更に進行してでき上るものと思われる.比較的はげしい胃炎のあとでは図6のように,SPの乱れがおこる.萎縮性胃炎に特有なFP,SPの変化と言うものはないが,大体例外なくSPを呈し,そのパターンは粗密不規則で形も乱れている.腸上皮化生部は粗大化した網状SP,あるいは脳回状SPを示し,非化生部より濃紫染する型と,ヘマトキシリンによく染まらない型(H不染型)とがある(詳細は胃と腸,6巻7号881~888頁参照).びらん部,潰瘍辺縁,早期癌,進行癌,ポリープなどは正常とは全く異なった像を示すが,これらについては次回以後に述べる.

技術解説

大腸X線検査法 吉川 保雄
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はじめに

 大腸X線診断学が胃X線診断学に比べて格段に遅れていることは諸家の指摘しているところである.この原因は大腸X線診断学の基礎となる病理学的概念が不明確であること,および,癌,ポリープ,潰瘍性大腸炎,大腸クローン病,憩室など主要な疾患が欧米に比べて少ないこともあるが,胃小区のような大腸粘膜面の微細構造を明瞭に現わせなかったことも大きな原因であると考えられる.

 最近,大腸X線検査が盛んに行なわれてくると,従来少ないと考えられていた上記疾患もかなりの頻度で発見されてきた.本邦においては早期胃癌研究の経験を生かして,いかに能率よく,盲点なく,微細変化まで描出するかに工夫をこらしているのが現状である.

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はじめに

 結腸ファイバースコープ法はわが国において開発された新しい内視鏡検査法であるが,その器械には筆者らが開発した町田製作所製のものと,松永らの指導によるオリンパス光学製のものとがある.すなわち,筆者らは昭和39年以来,町田製作所と共同で結腸ファイバースコープの開発にとりくみ,現在,世界にさきがけてこれを完成の域に達せしめているので,ここでは筆者らが現在用いているFibercolonoscope(FCS)とFibersigmoidoscope(FSS)の構造,実施方法,挿入成績について述べることにする1)~4)

 なお,大腸疾患の診療にあたって欠くことのできない直腸鏡検査については,別に詳述してあるので省略する2)

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はじめに

 早期胃癌の概念は,早くはEwing1),Gutmann2),Mallory3),Kohjetzny4)らの1930年代から40年にかけての記載にはじまり,Stout5)は,1942年,その論文の中で“Superficial SpreadingType”という語を使って,手術的に治癒する可能性のある癌があると述べた.Friesen6)らは,1962年,表在性の癌はStoutのいうごとく,Spreadするとは限らないとして“Spreading”を除いた“Supeficial Carcinoma”という語を使い,5年生存率93%を報告した.Stout,Friesenらの報告では,粘膜下に浸潤したものも一部含めているが,最近,Myren7)は,彼の“Early Carcinoma”の定義として“Confined to Mucosa”の癌といっている.このように,“Superficial”とか“Early”という語は各人各称の使い方で定義が一定せず,多くの場合は粘膜に限局した癌を取扱っている.

 一方日本では,1962年の内視鏡学会で,早期胃癌を次のように定義した.すなわち,リンパ節転移の有無に拘らず,癌浸潤が粘膜(m),または粘膜下層(sm)にとどまるものとした.殊に,粘膜下層に浸潤していても,固有筋層に達していないものまで含めることを明確にしたことはこの日本分類の大きな特質で,後に林田,城所8)による全国集計が物語るように,smのものでも5年生存率が約87%に見られたことから,smを含めた早期胃癌の考え方が肯定されよう.

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欧文目次

編集後記 石川 誠
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 腸管運動の生理学的研究では,正に第一人者であられる福原教授後継者の中山教授に排便のメカニズムについて御研究の結果を御教示戴けたことは感謝に堪えない.しかし,動物での粘膜内反射の機序は解明されても,さらに人間においての排便に関与する直腸の収縮の発来,この時の内括約筋の弛緩の機序や仙髄,さらに上位レベルの排便中枢の調節機序,大脳辺縁系の排便への関与などの詳細については,未だ不明の点が多いとのことであり,今後さらに,臨床と基礎との緊密な研究上の連携の必要性を痛感するものである.それにつけても,丁度15年前,ミシガン大の消化器病学科のH.M.Pollard教授のもとに学んでいた時,週1度の消化器病学ゼミナールに,Ph.D.ではあるが,M.D.ではない生理学のH.W.Davenport教授が参加され,臨床家のG.I.マン達と一緒に真剣に討議されていたのを昨日のように思い出す.誠に羨しい限りであった.

 なお,実際に多くの御経験のある吉川,渡辺博士らがそれぞれ,大腸レ線検査,内視鏡検査の手技の詳細について御解説下さったことは,実際に有用であると読者も喜こばれることであろう.また,何方も書き難いと思われる便秘についてお書き下さった名尾教授らをはじめ,今後の問題点を含んだ結腸症候群についての研究をお寄せ下さった相馬博士らさらに,シカゴ大消化器病学科での早期胃癌についての興味ある論文を御紹介下さった小林博士にそれぞれ厚く御礼申し上げ度い.

基本情報

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胃と腸
6巻10号 (1971年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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