印象記
タイ国の胃内視鏡(2)
小黒 八七郎
1
1国立がんセンター病院内視鏡室
pp.1324
発行日 1971年9月25日
Published Date 1971/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111578
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タイ国の胃癌の低頻度とも関連して,胃内視鏡の普及も少なく,その専門家も極めて少ない.胃のルーチン検査は多くの場合間接X線のみである.外貨保有の乏しいタイ国では輸入品に対して極めて高率の関税が課せられ,たとえば,コロナスタンダードが約200万円になるという.表1は,胃内視鏡器械のタイ国における販売価格であって,日本の1.5~2.0倍であり,これが胃内視鏡の普及を妨げている1因であろう.胃カメラフィルムはアンスコ100が専ら用いられており,現像は多くの場合日本に郵送され,表のごとく,極めて高価につく.筆者の試験で,エクタクロームは一般の写真店でも現像してくれ,より安価で,期日も早いので,筆者が訪れた機にNCIでは胃カメラフイルムをエクタクロームに変更し,好評であった.日本以外では,現像が容易なエクタクロームに胃カメラフイルムを改める必要があろう.
次に,タイ国立病院における胃内視鏡室の主任医師と胃内視鏡器械を表2に示す.太字で示した医師は,日本の国立がんセンターにおいて,胃内視鏡の研修をうけ,現在第一線において活躍している.内視鏡設備のある10病院中の半数までが筆者らの内視鏡室で育っている訳で,他の医学分野ではアメリカ一辺倒であるのに比して,日本の内視鏡の責任の重大さを痛感した.
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