胃と腸 47巻12号 (2012年11月)

今月の主題 高齢者消化管疾患の特徴

序説

高齢者消化管疾患の特徴 清水 誠治
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高齢者の定義

 加齢現象は極めて個人差が大きく,しかも緩徐な変化であるため“高齢者”の基準を設定することは容易ではない.一般的には世界保健機構(WHO)が定めた65歳以上を高齢者とするという定義が用いられることが多い.ある国や地域において,高齢者が人口の7%を超えると高齢化社会,14%を超えると高齢社会,21%を超えると超高齢社会と呼ばれる.高齢社会白書(平成24年度版)1)によると,2011年10月1日時点でのわが国の総人口は1億2,780万人で,そのうち65歳以上人口の割合(高齢化率)は23.3%である.さらに高齢化率は今後も上昇を続け,2060年には39.9%に,75歳以上人口の割合も26.9%に達すると試算されている.わが国が世界に前例をみない超高齢化を迎えている今日,高齢者における消化管疾患の特徴を明らかにすることは極めて重要な課題であると言える.

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要旨 高齢者のがん診療に資する目的で,高齢者消化管癌の病理学的特徴を解析した.高齢者の食道癌は,非高齢者と比較して特別な臨床病理学的特徴を有していなかった.胃癌は,高齢者で胃下部発生例が増加し,隆起型の肉眼型を示すものが多く,早期癌の大部分が分化型癌であり,多発癌が多く認められた.大腸癌では,加齢とともに右側結腸発生例が増加し,直腸癌が減少した.また,胃癌,大腸癌では,胃充実型低分化腺癌,大腸髄様型低分化腺癌,大腸粘液癌などの一部で,マイクロサテライト不安定性を示し,臨床病理学的にもそれぞれ類似した特徴を有する組織型群が存在していた.これら高齢者消化管癌の特徴を理解し,その特徴に合わせたがん診療を行う必要があると考えられた.

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要旨 75歳以上の高齢者食道癌患者では,非高齢者に比較して循環器や脳血管疾患などの併存頻度が高く,また複数の併存疾患を有する割合が有意に高かった.治療方法では内視鏡治療の割合が高く,標準術式である右開胸開腹胸部食道切除術・頸部吻合など外科的根治術の割合が低下していた.食道癌根治手術は高齢者にとって大きな侵襲であるが,手術手技と周術期管理が向上し,手術適応と術式選択を慎重に判断することによって比較的安全に行われていた.非高齢者と比較してもその治療成績に有意差はないが,術後合併症として肺炎発症率が高く注意を要する.死亡原因としては原病死の割合に有意差は認めなかったが,他病死の割合が有意に高値を示した.高齢者食道癌患者の診療に当たっては,食道癌の諸因子に加え併存疾患や生理機能などの全身状態の因子を,慎重にチェックしたうえで患者本人の意欲や希望を尊重する必要がある.画一的な治療戦略は避け個別化治療を心掛けるべきであり,治療の安全性とQOLの向上を念頭に置くことが重要と考えられる.

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要旨 1998~2007年までに福井県立病院で経験した胃癌1,859例のうち,75歳以上の高齢者は,501例(26.9%)であった.うち98例は非切除となった.64歳以下の対照群と比較すると,男性に多く,進行癌が多かった.対照群では早期癌が67.7%であるが,80歳以上では51.4%と半数まで低下した.高齢者胃癌は形態では隆起型が多く,胃下部領域に多い傾向にあった.リンパ節転移は高齢者群で多いが,切除例のみの検討では差がなかった.早期癌のみで検討すると,リンパ節転移率や粘膜癌の比率は対照群と差はなかった.高齢者群での治療方法別に検討すると,胃癌死亡や粗死亡において生存率に差はなかった.高齢者には併存疾患,重複癌や多発癌が多く,治療方針の決定には個別の対応が必要と考えられた.

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要旨 当科で治療が行われた75歳以上の大腸癌375病変を高齢者群,75歳未満の大腸癌1,068病変を対照群として,臨床病理学的に検討した.高齢者群では女性の割合,右側大腸癌の割合,併存症率,重複癌率が有意に高かった.根治度に差はなかったが,高齢者群で郭清度は低く,手術時間も短かった.さらに高齢者群では術後合併症,特にせん妄と呼吸器系の発症率が高く,術後在院日数も長かった.予後はStage II,IVで高齢者群が不良であり,他病死の割合が高かった.術前には,併存症や重複癌の有無の検査を行ったうえで治療方針を慎重に決定し,可能ならば根治度を落とさない手術を行い,術後はせん妄や肺炎などの合併症に十分な注意を払う必要がある.

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要旨 高齢者の消化管には老化に伴う生理的変化と病的変化がみられる.この両者は基本的には区別されるべきものであるが,必ずしも明確に区別できないことも多いうえ,両者が複合的に病態を起こすこともある.消化管の生理的老化として,腺・筋層の萎縮,神経叢の機能低下が代表的変化であり,消化管の分泌機能の低下,蠕動運動や内圧の異常を生じうる.一方,腫瘍以外の病的変化として,動脈硬化に伴う虚血,Lewy小体病やアミロイドーシスをはじめとする全身疾患の一環としての変化,薬物の影響などが挙げられる.高齢者は一人で多くの疾患を抱える多病(polypathy)と言われる病態が恒常的に存在するので,一つの疾患の治療が,ほかの疾患の増悪因子となりうる.高齢者では,潰瘍,虚血などの変化に出血が伴いやすいこと,薬物の副作用が現れやすいことなどが病理学的特徴として挙げられる.これらの病態は直接死因に結びつく可能性があり,不測の事態に備え,予防的に診療に当たることが重要である.

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要旨 近年,逆流性食道炎(RE)およびBarrett食道は増加しているが,LSBE(long segment Barrett esophagus)およびBarrett食道からの腺癌の発生はまれである.加齢に伴うRE重症化因子として,下部食道括約部(LES)の機能低下,食道裂孔ヘルニアの合併,食道の蠕動運動の低下などがある.高齢者ではLES圧を低下させる薬剤の服用により,さらに女性は閉経後の骨粗鬆症により,REの増悪を来しやすい.プロトンポンプ阻害薬(PPI)による長期加療が必要となることが多いが,PPI長期服用による骨折などの副作用に注意する必要がある.また食道胃接合部およびBarrett食道の定義が欧米と本邦で異なるが,発癌ハイリスク因子としての特殊円柱上皮(SCE)の診断に,NBI(narrow band imaging)拡大内視鏡が有用である.

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要旨 高齢化に伴う全身状態の悪化などの合併症や薬剤起因性潰瘍の増加,さらに加齢による胃酸分泌能の変化などにより,高齢者の消化性潰瘍では特有の病像を呈する.今回の筆者らの検討では,高齢者消化性潰瘍症例ではNSAIDや低用量アスピリン服用例が多く,また十二指腸潰瘍より胃潰瘍が多く,胃体部より口側の病変が多く認められ,潰瘍径は大きい傾向を認めた.臨床症状では腹痛が少ないのに対し,吐血・タール便・貧血などの出血症状が多かった.内視鏡治療では,高齢のためクリッピングによる止血が困難であったことから,soft凝固法を用いた症例が多かった.高齢者潰瘍では重篤な合併症により全身状態が悪化することも多く,有効な予防策を講じる必要がある.

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要旨 高齢者炎症性腸疾患患者の臨床的特徴について検討した.65歳以上の高齢者の割合はUCで19.3%,CDで9.5%であり,UCのほうがCDより有意に高齢者の割合が高かった.治療法では,高齢者のほうがタクロリムス・抗体製剤の使用歴の割合が有意に低かった.UC入院例9例中7例で臨床症状の改善が認められたが,多くは寛解導入の治療としてステロイドが使用されていた.サイトメガロウイルスの再活性化が認められた症例は3例(33%)であったが,全例で抗ウイルス薬の投与が行われていた.手術例は2例(22%)のみであり内科治療でコントロールされている例も多かったが,重篤な感染症・糖尿病の悪化なども認められたことより,高齢者の炎症性腸疾患では治療効果判定をより早期に行うことが重要であると考えられた.

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要旨 炎症性腸疾患を除く高齢者小腸疾患の特徴について述べた.当科におけるカプセル内視鏡およびダブルバルーン小腸内視鏡検査の検討では,高齢者と非高齢者で所見陽性率に差はなかった.ダブルバルーン内視鏡検査による診断では,高齢者では非高齢者と比較し腫瘍性病変と血管性病変が多く,炎症性疾患が少なかった.炎症性疾患(炎症性腸疾患を除く)では,NSAIDs起因性小腸病変,腸結核などの頻度が高かった.合併症を有する高齢者では,虚血性小腸炎や日和見感染によるcytomegalovirus感染症が認められた.診断が困難な症例としては,arteriovenous malformationや血管炎に起因すると思われる原因不明の小腸潰瘍などがあった.高齢者の小腸疾患は,非高齢者と背景や疾患種別が異なっており,その臨床的および内視鏡的特徴を知ることが診断確定のために重要と考えられた.

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要旨 虚血性大腸炎280例について高齢者(109例)と若年者(47例)の比較と狭窄型(20例)と一過性型(260例)の比較を行った.虚血性大腸炎は高齢者に多かったが,若年者にも比較的多くみられ,高齢者特有の疾患ではなかった.血管側因子は狭窄型で有意に多かったが,腸管側因子は狭窄型,一過性型で差がなかった.これらのことより,虚血性大腸炎の病因として腸管側因子が本質的なものと考えられた.また,虚血性直腸炎4例について臨床的検討を行った.4例とも65歳以上の高齢者であり,3例は男性であった.虚血性直腸炎は高齢者男性に多く,動脈硬化や腹部血管の手術と密接に関係する疾患であり,血管側因子が重要と考えられている.今回経験した4例中2例は重度の動脈硬化性疾患をもっていたが,2例は高血圧のみであった.4例中3例では腸管側因子が誘因と考えられた.虚血性直腸炎は血管側因子が強く関与しているが,その一部には腸管側因子が関与する症例がみられることが明らかとなった.

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要旨 急性出血性直腸潰瘍は,寝たきり状態の高齢者が突然に無痛性の大量出血を呈し,下部直腸に全周性の潰瘍が確認される特徴的な臨床像を示す救急疾患である.直腸の病変は,内視鏡を直腸内で反転しないと全体像が観察困難な歯状線直上に局在し,動脈硬化を背景に,仰臥位寝たきり状態となることで下部直腸粘膜血流量が減少し惹起される.治療では主に内視鏡的止血術が行われるが,側臥位への体位変換も再出血予防や治癒期間の短縮に有用である.代表的な鑑別疾患として宿便性潰瘍とNSAID坐剤起因性直腸病変が挙げられるが,サイトメガロウイルス直腸炎にも注意が必要である.

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要旨 患者は68歳,男性.2002年7月,腹痛を主訴に当院へ紹介となった.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部から前庭部に不整形潰瘍が多発し,CT検査にて腹腔内に複数のリンパ節腫大を認めた.胃生検よりDLBCLと診断され,腫瘍細胞はEBER-ISH陽性であった.Lugano国際会議分類II2期でありCHOP療法8コースで完全奏効を得たが,治療後3か月で再発し救援療法の効果なく初回診断後11か月で死亡した.本症例は胃原発の加齢性EBV関連B細胞リンパ増殖症である.加齢性EBV関連B細胞リンパ増殖症は,加齢に伴う何らかの免疫機能低下の関与が示唆されるDLBCLの一亜型であり,通常のEBV陰性DLBCLより予後不良である.

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要旨 横行結腸に発生し早期癌として発見された髄様型低分化腺癌の1例を報告する.患者は78歳の女性で,貧血の精査の結果,内視鏡的に横行結腸癌が発見され,生検で髄様型低分化腺癌と診断された.切除された腫瘍は病理組織学的に明瞭な核小体をもつ類円形核と豊富な好酸性胞体をもつ細胞から構成され,腺腔形成に乏しい充実型低分化腺癌であった.腫瘍内部にはリンパ球浸潤が目立ち,腫瘍の周囲の腸管壁にはCrohn's-like lymphoid reactionが高度にみられた.免疫組織化学的に,腫瘍細胞はMLH1陰性,MUC5AC陽性を示し,髄様型低分化腺癌と診断された.髄様型低分化腺癌は高齢女性の右側結腸に集積がみられ,比較的予後良好とされる.術前の生検の組織像でも診断可能であり,たとえ低分化腺癌と診断されたとしても,特異な臨床病理像を的確にとらえ,対応することが重要である.

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要旨 患者は83歳,男性.腰椎圧迫骨折にて入院し,第12胸椎の椎体形成術と第10胸椎から第1腰椎の後方除圧固定術を受けた.術後16日目から下痢,粘血便が出現したため当科を受診した.消化管内視鏡検査で直腸に単発の輪状潰瘍,胃幽門前庭部に打ち抜き様の大きな単発潰瘍を認めた.サイトメガロウイルス(cytomegalovirus ; CMV)感染症を疑い,胃の生検にてCMV感染症と診断した.本例は重篤な基礎疾患や免疫抑制剤・ステロイド剤の服用がなかった.抗ウイルス療法を行わず,胃と直腸の潰瘍は軽快した.本例は高齢者で免疫不全を認めなかったが,手術が誘因となりCMV胃腸炎を発症したと考えられた.

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要旨 十二指腸潰瘍に対する手術標本にて,老人性全身性アミロイドーシス(senile systemic amyloidosis ; SSA)を診断しえた症例を報告する.85歳,男性が十二指腸潰瘍に対する開腹止血術時に胃部分切除を施行された.組織学的に切除標本にアミロイド沈着を認め,免疫組織学的検査にてトランスサイレチン(transthyretin ; TTR)アミロイドと判明し,SSAと診断された.SSAは高齢者において最も頻度の高い全身性アミロイドーシスで,主に心臓,肺に沈着するが,全身の血管壁や間質にも沈着を伴い,手術検体にて偶然発見されることがある.高齢者の組織標本を検索する病理医はTTRアミロイド沈着にも留意する必要があり,沈着を認めた場合は,ほかの全身性アミロイドーシスとの鑑別診断に加え,心アミロイドーシスの評価を臨床医に助言すべきである.

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要旨 患者は55歳,男性.近医で2次検診の内視鏡検査にて直腸病変を指摘され紹介となった.大腸内視鏡精査にて,直腸下部に65mm大の顆粒状を呈した平坦な隆起性病変を認め,中心部には10mm大の発赤調の結節を伴っていた.中心部のNBI拡大観察では異常血管やavascular areaが認められ,クリスタルバイオレット染色後の拡大観察では内腔狭小,辺縁不整,輪郭不明瞭なVi高度不整pitを呈していた.周囲の平坦な顆粒状の部位は一様にシダの葉状を呈していた.以上から鋸歯状腺腫に合併したSM深部浸潤癌と診断し腹腔鏡下超低位前方切除術を施行した.病理所見では中心の結節部でSM 6,000μmに浸潤した鋸歯状腺腫内癌であった.

画像診断道場

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症 例

 患 者 : 70歳代,男性.

 主 訴 : 自覚症状なし.

 既往歴 : 前立腺癌.

 現病歴 : 2010年1月,食道表在癌に対しESD(endoscopic submucosal dissection)を施行された.経過観察時の上部消化管内視鏡検査で,胃体下部後壁に扁平隆起性病変を認め,生検を施行したところ,Group 5(高分化腺癌)と診断された.同病変のESDを目的に同年3月入院となった.

早期胃癌研究会

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 2012年2月の早期胃癌研究会は2012年2月15日(水)に笹川記念会館国際会議場で開催された.司会は長浜隆司(早期胃癌検診協会)と蔵原晃一(松山赤十字病院胃腸センター),病理は岩下明徳(福岡大学筑紫病院病理部)が担当した.

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 残暑厳しい中にもようやく秋の風を感じ始めた2012年9月19日(水),東京の笹川記念会館で開かれた早期胃癌研究会の席上にて,第18回白壁賞と第37回村上記念「胃と腸」賞の授賞式が行われた.第18回白壁賞は江副康正・他「Magnifying Narrowband Imaging Is More Accurate Than Conventional White-Light Imaging in Diagnosis of Gastric Mucosal Cancer」(「Gastroenterology」 141 : 2017-2025, 2011)に,第37回村上記念「胃と腸」賞は西倉健・他「胃上皮性腫瘍の拡大観察像と病理学的所見」(「胃と腸」 46 : 825-840, 2011)に贈られた.

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欧文目次

第19回「白壁賞」論文募集
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 「胃と腸」編集委員会では,故白壁彦夫先生の偉業を讃え,「白壁賞」を設け,優秀な研究・論文を顕彰しております.今回は「白壁賞」の論文を下記の要領で公募いたしますので,奮ってご応募ください.英文誌に発表された消化管の形態・診断学に関する論文が応募の対象となります.

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 芳野 純治
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 本号の主題は「高齢者消化管疾患の特徴」である.わが国はこれまでにない高齢化社会を迎えた.2012年9月17日(敬老の日)の中日新聞朝刊では「65歳以上3,000万人突破」をタイトルとして,「敬老の日」を前にした2012年9月15日時点での総務省による最新の推計を引用して,65歳以上の人口は3,074万人(男性1,315万人,女性1,759万人)と,本年に初めて3,000万人を突破したとしている.これは“団塊の世代”の先頭グループ(1947年生まれの人)が今年になって仲間入りしたため,前年より“高齢者”が102万人増加したことに起因しており,総人口に占める割合は24.1%と過去最高を更新した.また,75歳以上は1,517万人(総人口の11.9%)と,75歳以上が1,500万人を超えるのも初めて,と報道している.このような状況下での診療においては,高齢者の消化器疾患の臨床的特徴,病態を把握しておくことは不可欠と言える.

 本号の主題論文11編のうち,7編が原著形式で書かれている.海崎は食道癌318例,胃癌2,180例,大腸癌1,665例を対象として病理組織学検討を行っている.特に,高齢者では胃腺窩上皮型胃型腺癌,胃充実型低分化腺癌,大腸髄様型低分化腺癌,大腸粘液癌のように,臨床病理学的にも類似の特異的特徴をもち,予後も良好である組織型群が存在する.そして,高齢者のがん診療にこそ,それらの特徴に合わせた診断・治療が必要であると述べている.また,大腸髄様型低分化腺癌の1例を櫻井が症例報告している.東京都健康長寿医療センターでは,同疾患50例の病理組織学的検討を「胃と腸」45巻11号(2010年)にて行っているため,併せてご一読いただきたい.食道癌は千野,胃癌は宮永,大腸癌は松田と,いずれも外科が担当している.食道癌445例の検討では,高齢者に内視鏡治療例が多く,外科的切除術の割合が低下していた.また,手術適応と術式選択を慎重に判断することにより,治療成績に差がない.胃癌1,859例では,リンパ節転移は高齢者に多いが,切除例では差がなかった.胃癌死亡や粗死亡では,早期胃癌に対する外科治療法別に生存率の差は認められなかった.大腸癌1,443例では根治度に差はないが,郭清度が低く,根治性を考えながら患者の状態に合わせて縮小手術を選択しているため,手術時間は短かった.また,小腸病変では平井がカプセル内視鏡検査220例,ダブルバルーン内視鏡検査475例を検討し,ともに炎症性疾患が少なく,腫瘍性疾患と血管性疾患が多いとしている.

次号予告

基本情報

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胃と腸
47巻12号 (2012年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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