胃と腸 4巻9号 (1969年9月)

今月の主題 胃癌の5年生存率

綜説

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愛知県がんセンター病院

大阪府立成人病センター

大阪大学 陣内外科

癌研究会附属病院 外科

九州大学 勝木内科

国立がんセンター病院

昭和大学 外科

順天堂大学 外科

千葉大学 三輪内科

千葉大学 綿貫外科

東東医科歯科大学 川島外科

東京医科大学 内科

東京大学分院 外科

東北大学 山形内科

藤間病院

鳥取大学 石原内科

鳥取大学 綾部外科

虎の門病院

名古屋大学 青山内科

新潟大学 堺外科

日本大学 有賀内科

横山胃腸科病院

 この報告は上記22施設の早期胃癌2,364例を集計し,昭和44年3月,第11回日本内視鏡学会総会において発表したものに手を加え,若干の考察を加えてまとめたものである.この論文はここに掲げる22施設の共同発表である.

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緒言

 胃癌にはいろいろな型があり,まず表層進展を主とするもの,あるいは粘膜固有層(m),粘膜下層(sm)にとどまる表在癌(superficial ca.)と固有筋層以上に達する深達癌(deeply developed ca.)とにわけられる.

 現在一般に表在癌は早期癌(early ca.)深達癌は進行癌(advanced ca.)とよばれている.その妥当性については本誌胃と腸(Vol.3,No.8,1968)において早期胃癌と誤診した進行癌の症例を提示した時に,併せて早期癌と進行癌の相関を述べながら論及した.

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Ⅰ.症例

 患者:T・M65才男

 主訴:心窩部痛

 初診:42年6月20日

 手術:42年8月4日

 切除胃所見:

  1)深達度mのⅡc型早期胃癌(幽門前庭部).

  2)Y字形の潰瘍瘢痕(胃角部).

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Ⅰ.はじめに

 Ⅱc様所見を呈する広範な陥凹性病変と,粘膜下腫瘍を思わせる隆起性病変の共存した症例で,術前X線および内視鏡診断では,Ⅱc型早期胃癌の進行せるもの,または悪性リンパ腫あるいは良性の胃のReactive lymphoid hyperplasiaなどを考慮したが,確診は得られず,手術を施行した症例である.

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Ⅰ.はじめに

 早期胃癌の診断は近年長足の進歩をとげ,その症例数は急カーブに増加しており,私達巷の開業医でも発見する機会が多くなってきた.したがって早期胃癌と他の病変,特に良性病変との鑑別に充分なる注意と検査がますます必要と思われる.その鑑別すべき病変の1つにatrophic lymphoblasrnatoid gastritis,reactive lymphoreticular hyperplasiaがあり,その判別は困難を感ずることが多い.最近私達はX線検査および内視鏡検査でⅡcまたはⅡa+Ⅱc型の早期胃癌と考えて手術し,なお切除胃の肉眼的所見からも同様に思われた症例が病理組織学的に上記reactive lymphoreticular hyperplasiaと診断された例を経験したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 本症は1888年のMénétrierの記載以来,各国で症例が報告されているが,1964年までにその数は100例を越えないという.わが国でも数例の報告が見られるが,蛋白漏出が証明された例はまだ少ない.

 しかし1959年Gordon testが開発されて以来,本症の診断は容易になった.最近われわれは胃症状と浮腫を主訴として来院した1例につき,I131PVPを用いてその胃内への漏出を確認した.そして巨大胃粘膜皺襞と低蛋白血症とよりMénétrier病と確診し,胃切除を行ない良好な結果を得た.以下に本症例を報告するとともに,若干の検討を加えてみることとした.

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Ⅰ.はじめに

 食道に原発する悪性腫瘍のうち,肉腫はごく稀な疾患とされている.文献上でも0.1%から2.2%といわれ(第1表),本邦文献上でも31例を数えるにすぎない.当消化器病センターで,昭和40年2月から43年6月までに切除した350例の食道噴門部悪性腫瘍のうちでも,僅か2例(0.6%)にすぎない.一方,ほぼ同期間の,食道鏡検査総数からみると,1,866例のうち2例で,0.1%にあたる(第2表).

 今回は最近経験した食道平滑筋肉腫の1治験例を報告する.

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 林田(司会) 本日のテーマは,胃癌の5年生存率ということですが,これは内視鏡学会で今年全国集計がありましたものを,私が代表として過日学会で発表させていただいたもので早期胃癌の遠隔成績という題で本誌の綜説の一つとなっております.また2番日の綜説は,進行胃癌に重点を置いて癌研の西先生がお書きになっています.そういうことで,これでお分かりのように大体今日のお話は早期胃癌と進行胃癌に分れて,まずそれぞれの担当の方に話していただきます.

 その後どちらも皆様でdiscussionしたり追加して結構です.よろしゅうございますね.

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Ⅰ.はじめに

 1950年,宇治らにより胃カメラが開発されて以来,胃疾患の診断は一段と進歩してきた.ごく最近になり優れたファイバースコープが出現し,微細病変の診断,動的観察が客易になったが,なお撮影が簡便であり,広角で焦点深度の深いカメラ像は捨てがたく,現在でも広く使われている.

 胃カメラ普及の当初,中山教授は噴門部,胃体上部の盲点を解消するために,それまでにあった中山式逆視式胃鏡の原理を胃カメラに応用し,1956年,Ⅱ型胃カメラのアングルをup80°まで屈曲できるように改良した逆視式胃カメラを考案した.以来長年にわたり噴門部の撮影に用いてきたが,Ⅱ型胃カメラは胃カメラとして軸も太く,かたく,さらにこまかい点で不便なところが多く,現在はV型カメラにアングル効果としてup80°まで屈曲できるようにしたVb型胃カメラを用いている.

 胃ファイバースコープを含め,現在のすぐれた胃内視鏡では,穹薩部への反転は容易で,routineとして噴門部を観察することが可能になった.しかし,Vb型胃カメラでとらえ得る噴門,胃体上部の像は近接した正面像として得られ,反転法とはちがったニュアンスをもっているので,われわれは現在でも特殊撮影用として他の内視鏡と併せて使用している.

 以下,Vb型胃カメラでの噴門部の撮影につき実際的な面からのべてみるつもりである.

診断の手ほどき

Ⅱa 芦沢 真六
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 今回の症例はレ線或いは胃内視鏡を少し手がけた方ならその存在の診断は比較的容易ですが,その性状の診断ということになりますとかなり熟練した人でもむしろ熟練し,胃のいろいろの病態を知れば知る程一困難を感ずることのある小さなⅡaの例です,

 症例は59才の男性で,主訴は心窩部重圧感,胃液は低酸,糞便潜血反応は陰性です.(他の検査成績は省略しますが年齢,胃液酸度その他の検査成績が時々診断の参考となることがあることを忘れないで頂きたいと思います.)

国際委員会報告

TNM分類について 市川 平三郎
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1.TNM分類委員会について

 国際対癌連合,UICC(Union Internationale Contre Le Cancer),これは方々の参加国が会費を出しあい,日本も参加している世界の癌学者の集まりである.このUICCの中に種々の委員会が多数あって,日本からもそれぞれの委員会において多くの方が委員となっておられる.以下に述べるTNM分類委員会は,Commission on Clinical Oncology,臨床癌医学に関する委員会(委員長はフランスのDr. Denoix)に属する1小委員会である.Committee on TNM Classificationは,癌の臨床分類に関するもので,現在は(1966年以来),英国のDr. Harmerが委員長であり,世界10力国の代表が集まって,人間のすべての癌を治療前に分類しようというものである.

 ここでTはTumourのT,すなわち腫瘍の原発巣の略であり,NはRegional LymphnodeのN,すなわちリンパ節の転移を示し,MはRemote MetastasisのM,遠隔転移のことである.このTとNとMを記号化することにより,原発巣がどういうもので,どのくらいの転移をもっている癌であるのかということを治療前に臨床的に分類するのである.つまり,TはTOからT4まで,NもMも0から1まで分類して,大体1人の患者についての癌の進行程度を表わそうということなのである.どの程度の病変を1とし,どの程度のものを4とするかということに関しては,人によってそれぞれ意見が違うので,それを国際的に協調して決めようというわけである.

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 左記のような原稿が春日井委員を通じて編集委員会にもたらされた.相談の結果,これは早期胃癌という言葉を私どもが用いている限りつきまとう閥題であるので,この際,手紙に対する返事のような形で私どもの考えを表明しようということになった.ことに日本で用い始めた医学用語が外国に輸出されることは比較的稀なことなので,それなりに十分な配慮というか,それが生まれてきたいきさつ,ないしは背景をある程度詳しく述べておくことが必要であるように思われる.

 私どもも現在,すなわち1969年の時点に立ってこの種の胃癌を学問的に正しく命名せよといわれれば,あるいはsuperficial carcinoma,もしくはlimited carcinomaという言葉を選んだかもしれないと思う.しかし予後のよい胃癌,切れば100%に治る胃癌を早期胃癌という旗印の下に求めて,長い間暗中模索し,その後,次第に手懸りを得て,ある種の症例をグループ化し,その概念をまとめあげて,それにもっともよく適合する定義として「癌のひろがりが粘膜層または粘膜下層までで限局しているもの」という組織学的な約束を作り上げるに至ったさい,それでは最初に掲げた旗印の表現が少し非論理的になったからといって,そう簡単に変更できるものではない.いいかえれば,私どもも始めからすべてを知っていたのではなく,治る癌をと追い求める長い間の努力によって次第に現行の概念へと近づいたのである.そして私どもは,その結果生じた論理と名称の食い違いを多少残念だとは思うけれども,学問ことに医学の進歩というものには,ことに臨床や公衆の健康に関係する知識の進歩には,多少の食い違いが生ずることは止むを得ないのではないかと考えている.私どもが日頃用いている言葉の中にもそれに類する沢山の医学用語を多数見出すことができるからである.

印象記

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 1966年東京で開かれた第1回世界内視鏡学会および第3回国際消化器病学会において,わが国の内視鏡は世界的にクローズアップされました.体格,風習が日本人に類似し,かつ非常に親日的なラテンアメリカ諸国は,ひと昔前の目本のように,早期胃癌は勿論,進行癌の診断も思うようにならぬ現状で,日本の内視鏡技術の導入の必要を痛感した,とこの学会に参加した医師たちは述べていました.

 私は,1967年秋,ペルー国政府とパンアメリカン消化器病学会の招請により,ペルーのリマで,また本年1月サンパウロ大学医学部およびブラジル消化器病研究所の招請により,計2回「ラテンアメリカ胃内視鏡講習会」を行ないました.その後,アルゼンチン,パラグアイ,チリー,ベネズェラ,ドミニカ,メキシコの各国において,講演および実技指導を行なって来ましたので,各国の内視鏡事情,また,一昨年の訪問時と,今回との2年間における診断技術の進歩などについて,御報告したいと思います.

研究会紹介

岐阜県消化器病研究会 林 慶一
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 岐阜大学乾教授の御提案によって初めて本研究会がもたれたのは,昭和39年12月であります.当初,消化管のみならず広く消化器疾患を対象とし,勤務医,開業医がなるべく多く集り得る研究会にしたいという趣旨で,「岐阜県消化器病研究会」と名付けられ,川島震一,白壁彦夫両先生を迎えてそれぞれ「世界消化器病学会について」,「胃X線診断における最近の諸問題」と,本会の発会にふさわしい御講演を願い,百数十名の会員が参加して盛大に発足しました.当時すでに名古屋市内で胃疾患研究会が開催されていて,当地からも有志のものは参加していましたが,多くは胃の微細診断に直接接するのが初めてで,新たに驚異の眼を見張ったものであります.

 その後,村上忠重先生に「早期胃癌について」,堀江英陸,秋山吉照,小林敏雄先生に「胃のX線診断」,青山大三先生に「胃のレ線診断」,大原順三,青山大三先生に「大腸のX線診断」,崎田隆夫先生に「胃癌の内視鏡診断における2,3の問題点」と消化管疾患の講演を,他方,小坂淳夫先生に「慢性肝炎の診断と治療」,三好秋馬先生に「胆囊疾患の診断」と肝・胆道疾患の講演を願い,会員一同,多大の感銘を受けました.この間,会員のうちからも山内(山内胃腸病院長,胃癌の胃カメラ像),鬼束(元岐大外科教授,胃・腸管のポリープ),奥(県立岐阜病院放射線科部長,胃X線診断について),飯沼(岐阜市民病院放射線科部長,胃のX線診断),西岡(岐大放射線科助教授,胃充満像の読み方),林(胃直視下生検と細胞診),青山(岐大乾内科講師,肝機能検査法特に肝炎の診断について),山田(山田病院長,肝疾患の診断),早野(岐大外科助教授,食道静脈瘤の処置),林(慢性胃炎の胃カメラ像),杉浦(岐大乾内科講師,胃直視下擦過細胞診)の諸氏がそれぞれ演者となり会を重ねて18回をかぞえるに至りました.

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 数年前であろうか,四国を廻られた白壁教授が「未だ四国はMagenの不毛の地だ」と仰言った.不毛の地であるということは,また反面には此の後に期待されるという意味であろうか.

 昭和42年4月,徳島大学油谷内科より転勤した筆者を待ちうけていたものは,胃カメラ同好会の発足であった.香川県では,県医師会として香川県内科医会と称する学術研究会を有し,種々の研究会を開催していたが,消化管のみに限定された研究会は未だ存在していなかったわけである.かくして森棟現岡山鉄道病院長(当時四鉄病院内科部長)の発案により,胃カメラ同好会が42年6月発足,この種の研究会は初めてのこととて,ごく基礎的なことから,更に,また会の運営についても喧喧ゴウゴウであった.定例的に毎月会合を持つわけであるが,時には深夜に及び会場管理者から追い出しを喰わされることもあり,それでも毎回出席者は30~50名と,香川県内科医会の研究会としては稀にみる好成績であった.

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欧文目次

編集後記 五ノ井 哲朗
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 消化管の中に首をつっこんだような,精細な診断の話,疾病の話が展開されてきたく胃と腸〉各号の中で,本号は,その首をあげてまわりを見まわしたような趣のものである.

 テーマは〈胃癌の5年生存率〉で,2つの綜説と1つの座談会が,まことに豊富な論点を提供している.読者もそれぞれの立場,視点から,多多の感懐があるはずである.この中で,胃癌の「多くの症例は外科医の手にゆだねられ,手術が終了した時点において予後が決定づけられているといっても過言ではない」と述べられているが,「多くの胃癌患者の予後は,その癌が診断された時点において決定づけられている」と言い変えることもできるだろう.ある意味では,この問題を語りたいがために,早期胃癌の臨床的追求のすべてがあったのだということもできる.

基本情報

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胃と腸
4巻9号 (1969年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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