胃と腸 4巻1号 (1969年1月)

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Ⅰ.はじめに

 現在,胃体部大彎側の陥凹性病変をまともに取り上げることは極めて因難である.それというのも,第1に,陥凹性病変というと,わが国では,まず早期胃癌Ⅱcを考えるであろうが,胃体部大彎側のⅡcはまだごく少数しか発見されていないからである.それかといって,他の部位のⅡcや胃体部大彎側の進行癌や潰瘍で代理できるものでもない.第2に,大彎側の良性潰瘍の頻度がごく少ないからである.文献を調べてみても,大彎側の良性潰瘍のX線診断について,かなり多くの報告はあるが,ほとんどが症例報告の形をとっており,そして,ついでに良性・悪性の鑑別診断にふれるといった程度のものばかりである.このさいの大彎側潰瘍は,あくまで胃全体の大彎側潰瘍であって,胃角部や幽門部のものも含まれている.胃体部大彎側と限定した文献は見当らない,なお,大彎側の潰瘍性病変についての文献は,その大部分が英語または仏語であるのも1つの特徴といえよう.

 私どもの最近の症例を集めてみても,胃体部大彎側と限定すると,潰瘍にしても,陥凹性の早期癌(ⅡcやⅡc+Ⅲなど)にしても,症例が少なすぎて,とても総括的な議論はできそうにない.このようなことを前提にして,できるだけ多くの文献を調べ,また,私どもの経験例にもとづき,胃体部大彎側の陥凹性病変のX線診断について検討することにする.

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Ⅰ.はじめに

 胃の大彎側疾患は比較的少なく,ことに胃体部大彎側では稀れである.内視鏡の立場から胃の大彎側疾患について,綜説的な報告は,まだみられず,ときに症例報告がみられるに過ぎない.

 われわれは過去3年間の胃カメラ,Fiberscopeの成績を整理し,大彎側病変の統計的事項および内視鏡的特徴について述べる.

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Ⅰ.緒言

 最近数年間の胃内視鏡の目ざましい進歩によって胃内の絶対的な観察盲点は完全に克服された.すこしきつい言い方をすれば,もし病変を見落したとすると,それはどんな症例でも常に胃内全体をくまなく検査するという胃内視鏡検査の基本をくずしたためである.もはや病変の見逃しを胃内視鏡の器械的制約にのみ原因を求めることは不当であろう.とはいっても,胃内全体の観察がより容易に,しかも確実にできるような器機の改良進歩に対するきつい要求はあくことをしらない.

 ファイバースコープが次第に普及したことによって,胃内病変の姿をただ1コマ位の写真フィルムで強引に憶測したり,結論づけたりすることにはずいぶん憶病になってきた.そして胃内病変を動的,多面的に把握したうえで診断することがごく当り前のことになっている.

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Ⅰ.緒言

 早期胃癌のなかでもⅡc+Ⅲ型はすでに診断容易なものとなっており,今日の早期胃癌診断学の興味の焦点からはずされている感がないでもない.しかし非定型的な揚合には依然としてX線,内視鏡診断上なお多くの問題を残している.

 われわれは,胃集団検診で胃潰瘍を発見され,内視鏡検査で早期胃癌Ⅱc+Ⅲと診断,生検で癌と確診した手術例において,その肉眼所見は普通のⅡcと異なり陥凹の周界がやや不明瞭であり,病理組織学的にも癌の拡がりは陥凹に一致していなかったという非定型的なⅡc+Ⅲ型早期胃癌を経験したのでその概要を報告する.

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Ⅰ.はじめに

 大彎側微小病変の発見および微細所見の観察はレ線,内視鏡および生検検査の上でそれぞれ容易,あるいは困難であると論ぜられている.私は最近,胃体下部大彎やや後壁に位置する大きさ1.1×0.8cmのⅡc型早期胃癌を経験したので,その諸検査所見および病理組織学的所見を供覧しレ線,内視鏡の生検所見について検討を加え報告する.

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Ⅰ.緒言

 大彎側の前庭部に発生した早期胃癌にはしばしば遭遇するけれども,前庭部より口側の大彎側に発生した早期胃癌は比較的稀である.著者らは胃体下部大彎側の早期胃癌の1例を経験したのでここに報告する.

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Ⅰ.症例

患者:岸○江 44歳 女

主訴:空腹時の上腹部痛

現病歴:昭和40年11月頃より空腹時の上腹部痛が出現,某院を受診.胃X線検査,胃カメラ検査で胃潰瘍といわれ,約40日間,投薬をうけたが,上腹部痛は消失せず,昭和41年1月,精査のため当科外来を受診した.

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Ⅰ.はじめに

 胃体部大彎の癌といっても大彎のとりかたによって大分変ってくる.又それに前壁や後壁の大彎側まで入れて数えれば更に変ってくるわけである.勿論胃癌研究会の胃癌取扱い規約によればよいわけであるが,臨床診断の場では,かならずしもこれが容易でないことがある.従ってここでは小彎に対応する線を大彎に想定し,その線上に病巣があるもの,或いは一部でもこれにかかっているものに限ってしらべてみた.

 進行胃癌はその10.3%が大彎に存在し,早期胃癌では71例中9例12.7%がこの狭義の大彎にあり,そのうち体部が3例,幽門部は6例であった.

 この体部大彎の早期胃癌3例中2例は体下部で,高位にあったのは1例にすぎなかった.本症例は3年半程以前に経験したものである.

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Ⅰ.はじめに

 現在,胃疾患に関する診断技術の進歩は著しいものがあるが,胃の大彎側病変に関しては,前壁と同様その存在診断及び微細診断は容易でない.われわれは,この度大彎側の比較的小さい表面陥凹型(Ⅱc型)早期胃癌症例に遭遇したので,ここにそのX線像,内視鏡所見及び病理組織学的所見を供覧し,あわせて大彎側病変について2,3の検討を加えたので,報告する.

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Ⅰ.症例

1)症例1:胃体上部大彎側の多発性潰瘍

患者:46歳 女

昭和43年8月17日初診,同年9月6日手術施行.

一般検査所見:赤沈1時間値17,2時間値44.中等度の貧血(赤血球数333万.血色素量68%)を認め,検尿・肝機能検査などに異常なく,ワ氏反応陰性.

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中島 開業医が司会なんて申しわけないんでございますけれども,きょうは聞くほうの立場ということでやらしていただきたいと思いますのでひとつどうぞよろしくお願いしたいと思います.まず大彎の定義ということでひとつお話ししていただきたいと思うんですが,レントゲンそれから内視鏡それから病理というような方々から御発言をお願いしたいと思います.熊倉先生からひとつどうぞ.

技術解説

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Ⅰ.はじめに

 大彎側のX線診断に関する文献は,きわめて少ない.その理由の1つは,大彎側の病変,特に陥凹性病変の頻度が少ないこと,いま1つは,大彎側の病変は悪性が多く,ことに陥凹性病変のほとんどは悪性であり,良性か悪性かの鑑別を,そのつど厳密に行なうまでもないといった観念が支配的であったためと思われる.

 しかし,近年になって,Palmer,Bockusらが大彎側良性潰瘍がまれではないという数値を,常岡が大彎側良性潰瘍のX線,内視鏡所見を,さらに村上らが,大彎側病変に関する詳細な報告を発表し,改めて,大彎側のX線診断上の諸問題を検討する意義や必要性がでてきたわけである.

 大彎側のX線診断の上での問題点を,文献や,われわれの経験から,X線撮影の面,X線読影の面からあげてみると,次のような項目になる.

X線撮影の面では

 1)確実に病変が拾いあげられる撮影法

 2)病変の性状をよく現わすような撮影法

 X線読影の面では

 1)病変を確実に拾いあげるための読影

 2)正確に質的診断するための読影

は,実際上どのようにしたらよいか,ということになる.

 そこでわれわれは,以上の諸事項について,実際の症例をとり出して検討してみた.

 なお,大彎側病変は,頻度の上では隆起性病変が多いが,隆起性病変については,X線診断の面では,隆起性病変一般の診断理論をそのままあてはめることができ,大彎側病変であるからといった特異性は少ない.そこで今回は,大彎にあるために,良性,悪性の鑑別がより困難である陥凹性病変をとりあげてみた.

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Ⅰ.はじめに

 1950年本邦で胃カメラが試作されて以来,現在迄たえず器械の改良・工夫がなされ,胃疾患の診断上欠くことのできないものの一つであることは,周知の事実である.しかしながら,いまだ未解決の問題も多く,その一つとして当教室では唯一回の挿入で胃内を広範囲に撮影し,盲点部位をなくすと言う考えから,1961年にV型を改良した試作V-A型を臨床に応用していた.その利点として大彎側,噴門部周辺,穹窿部,胃体上部後壁及び胃前庭部小彎側の粘膜像を容易に得られるようになったが,しかしその反面,操作の複雑性,器械による接続部の撓み,傾きによるレンズ方向のずれを生ずることもわかり,これらの欠点をなくす目的で現在のV-A型が一応完成され広く臨床に応用されている.即ちV型よりも接続部を15cm長くし,従来の関節部をなくし,その代りに先端レンズより約10cm手前で屈曲度が120度に近いUp及びDownが得られるようにし,反転操作も容易で,Up及びDownを適当に組み合せることにより胃内の目的とする部位の撮影が容易となった.当教室では現在このV-A型を主に内視鏡検査に用い,従来の盲点部位を含めた胃内広範囲撮影をルーチンとして行ない,病変の存在診断のみならず質的診断にも役立たせている現状である.胃上部撮影法は他の内視鏡によっても撮影可能であるが本稿では特にV-A型にょる胃上部の撮影法について若干の考察を加えながら述べてみたい.

研究会紹介

旭川胃癌集談会 松尾 忠良
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 早期胃がん発見,早期治療を痛感し,旭川でも集談会をもち研さんしようではないかと,沼崎・唐沢・西野らが発起人となり,同好の士をあっめて,第1回の旭川胃癌集談会をもったのが昭和41年5月で,43年8月までに集回は27回を数え世話役が司会をしている,

 そして月1回,例会を第3火曜日の午後6時からと決めて毎月集まっている.会員は約100名で旭川市だけでなく近接市町村から熱心な人達が集まっており,43年からは第3金曜日に決めている.

京滋胃腸研究会 中野 融
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 本会の誕生は昭和41年5月である.学都京都の開業医としては大変な立遅れで,誠にお恥かしい次第であるが,大学が2つ,日赤が2つ,国立,市立の諸病院以下病床数百の病院が数多くあるのでこれらに対する町医の依存度が大きく影響していることは否めない.

 しかし胃癌王国であるが故に,斯学でも世界にぬきんでているわが国で,いつまでも,第一線医が,手をこまねいて,本研究を白亜の塔や,大病院に閉じ込めて置くべきでなく,「遅れ馳せでも皐くわれわれが身につけなくては…」と気がっいたのは,ロ本医師会主催の医師再教育のための大学見学が動機であった.もっとも開業医で斯学を以前から手掛けておられた先覚者はもちろん数は少ないがおられた.

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欧文目次

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 かって大学の医局時代,病気になった先輩の診療所を助けにいったことがある.患者は多種多様で生まれたての新生児から,大切な顔にカルブンケルを出した妙齢の女性も来るということで,かけ出しの内科医として大分面くらったことであった.頭をしきりに左右にふっている幼児に往診して,てっきり結核性脳膜炎かと思ったところ,翌日にはケロリと治っていたのには全く自信をなくしたものである.

 元来,実地医家は,あらゆる初期傷病を扱い,診断が難しいばかりでなく,その診療は傷病の予後に決定的な影響をもっている,したがってその仕事はなかなか難しいこととは覚悟していたものの,実際にあらゆる種類の患者について待ったなしの応接をしてみると,これは聞きしにまさる仕事であることを身にしみて感じたことであった.

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 内科医が患者に一枚の処方箋を渡すとき,あるいはまた,外科医が手術の適応を決定するとき,はたして心の底から患者の真の幸福を願って行なっているだろうか,もちろん,そうするべきであり,また,そうなければならない.

 新らしい薬が次から次へと,あたかも洪水のはんらんのように世の中に出てくる今の時代に,とくにこの問題は,もう一度あらためて反省すべきであろう.

編集後記 白壁 彦夫
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 大彎側病変の診断にかんして,こんなにもり沢山な貴重な研究が呈示されたことは,類をみないことである.執筆された方々に心から敬意を表したい.

 「犬馬は難く,鬼魅は易し」

 鬼や怪物にくらべると,犬や馬のように見なれているものは画にしやすいようで,実はむずかしいという意味だそうで,改たまっていざ発表するとなると平凡なところに落ちつくものだそうである.大彎の診断法の理論を考えると,そんな気がする,それも,話のかたまったいまの気持であって,2~3年前は,実に不安な気持にかられながら診断を行なっていたものである.よくもここまで煮つめてくれたものである.

 座談会の内容は,非常に高度なもので,司会と論議は明快である.在来の座談会の内容とは,時代が変ったとの感を深くする座談会である.他誌にはみられない脱皮があるわけである.といって油断はできない絶えざる努力と脱皮こそが,「胃と腸」誌を支えることになるわけである.

基本情報

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胃と腸
4巻1号 (1969年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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