胃と腸 37巻12号 (2002年11月)

今月の主題 Ⅰp・Ⅰsp型大腸sm癌

序説

Ⅰp・Ⅰsp型大腸sm癌 下田 忠和
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 早期大腸癌に対する治療戦略において,深達度診断は極めて重要である.すなわち内視鏡治療か外科治療かの選択は,その深達度診断によって決定される.近年,表面型大腸癌が多数集積され,その深達度診断は通常内視鏡のみならず,拡大内視鏡や超音波内視鏡の発達によりかなり正確に行えるようになった.しかし,Ⅰp,Ⅰspといった隆起型早期大腸癌の深達度診断には未解決の問題が多い.

 まず第一点として,この中には腫瘍性格の異なったものが含まれているためと考えられる.大腸癌の中には,粘膜内で腺腫あるいは癌が粘膜内で管腔内に上行性発育するものと,小さいうちに表面型大腸癌が粘膜下層に浸潤するものがある.この両者はいずれも肉眼的には隆起型を示すが,基本的には異なった病変で,その鑑別が極めて重要である.前者は筆者らがpolypoid growth(PG)typeと後者はnon polypoid growth(NPG)typeとしたものに相当する.この病理組織学的違いは当然肉眼所見あるいは内視鏡所見に反映される.PG typeの隆起型は,周囲粘膜とは明瞭な境界を有した立ち上がりを示し,かつ隆起表面は分葉状ないしは分葉溝を有している.また組織学的には腺腫あるいは低異型度癌で占める割合が高い.これがsm浸潤を来した例の術前診断は困難なことが多いが,組織学的には低異型度癌に高異型度癌を併存していることで,その癌がsm浸潤している可能性がある.高異型度癌になるとその表面構造の消失傾向が現れ,さらにsm浸潤した部ではびらん形成を伴うことがある.

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要旨 大腸sm癌浸潤度測定においては,①癌の粘膜下層への浸潤により粘膜筋板が不明瞭化あるいは消失しているため粘膜内癌部と粘膜下層浸潤部との境界線が容易に判定できない病変をどのように測定するか,②形態の異なる腫瘍のsm浸潤度をどのように測定するかという問題点が挙げられる.特にⅠp・Ⅰsp型大腸sm癌では,粘膜筋板が錯綜しているためにその同定が困難であり,さらにその形態から表面型腫瘍に比較し浸潤度が大きく測定されてしまう.大腸癌研究会sm癌プロジェクトではこれらの問題点を解決するため,浸潤度測定に際して,粘膜筋板をその状態から5つのタイプに分類し,Ⅰp・Ⅰsp型については,head invasionを考慮に入れて基準線の設定を行い,浸潤度測定の統一化を試み,多施設にて浸潤度とリンパ節転移との関連を調査中である.この測定方法に準拠して当科のⅠp・Ⅰsp型sm癌61例について浸潤度測定を行った.リンパ節転移陽性群と陰性群でsm浸潤値に有意差を認め,転移陽性群のsm浸潤最小値は1,400ymで,head invasion症例にはリンパ節転移を認めなかった.今後,多施設調査の結果をもとに有用な浸潤度測定方法を確立し,リンパ節転移との関連を明らかにする予定である.

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要旨 外科切除Ⅰp・Ⅰsp型sm癌43例を用いて,起源粘膜内癌別にその病理学的特徴を検討し,sm浸潤量とリンパ節転移との関係を無茎性sm癌と比較した.Ⅰ型起源はⅠp・Ⅰsp型sm癌の86%(37/43),Ⅱ型起源は同14%(6/43)であった.Ⅰ型起源は腺腫を発生母地とし,粘膜内癌の段階で有茎化し,20mm前後の大きさでsmに浸潤したと考えられた.一方Ⅱ型起源はde novo発癌の可能性があり,10mm台でsmに浸潤した後に有茎化したものと,腺腫の偽浸潤と同様の機序でsmに進展したものとがあると推定された.リンパ節転移に対するsm浸潤量安全領域は,無茎性sm癌がVsm(sm垂直浸潤長)<1,000μmであったのに対し,Ⅰ型起源Ⅰp・Ⅰsp癌では3,000μm前後までと考えられた.一方Ⅱ型起源のsm浸潤量安全領域は,現時点では無茎性sm癌と同等にみなしておく必要があることが示唆された.

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要旨 大腸sm癌249例を肉眼型よりⅠp・Ⅰsp型(48例),Ⅰs型(96例),Ⅱ型(105例)の3群に分けて,sm深達度細分類の問題点,それらの臨床病理学的特徴,リンパ節転移の危険因子について検討した.sm深達度細分類においてHaggitt分類や相対分類(sm均等3等分法)はリンパ節転移の予測には有用でなく,粘膜筋板保持群では絶対分類(sm浸潤距離測定法)により評価し,粘膜筋板消失群は粘膜筋板保持群のsm3癌(浸潤距離1,000μm以上)と同等に扱うのが有用かつ実用的評価法と思われた.Ⅰp・Ⅰsp型sm癌は,茎を有する以外はⅠs型と悪性度など臨床病理学的にほぼ同様であり,またリンパ節転移率や転移危険因子は肉眼型により大差なく,他の肉眼型の癌と同様に取り扱ってよいと思われた.Ⅰp・Ⅰsp型sm癌のリンパ節転移危険因子は組織型(中~低分化型)と著明な間質反応のみが有意であったが,深達度,ly,簇出,著明なリンパ球浸潤の欠如も危険因子となりうることが示唆された.Ⅰp・Ⅰsp型sm癌の治療方針は,すべての粘膜筋板消失群と粘膜筋板保持群のsm3以上(浸潤距離1,000μm以上)では外科的切除が原則で,粘膜筋板保持群のsm1またはsm2かつリンパ節転移の危険因子が1つもない症例は,内視鏡的切除のみで根治できる可能性が考えられた.

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要旨 Ⅰp型とⅠsp型早期大腸癌301病変(Ⅰp型137病変,Ⅰsp型164病変)の深達度診断(m・sm1癌とsm2,3癌の鑑別)についてX線の立場から検討した.Ⅰp型(m癌104,sm1癌26,sm2癌7,sm3癌0)は,頭部の形態から長円形,類円形,短円形,不整形(結節状,杯状)に亜分類し,形態別に深達度診断を行った.長円形はm・sm1癌で,類円形から短円形,さらに不整形になるに従い,sm癌の頻度は増加し頭部形態と悪性度に相関が認められた.また,表面構造が平滑なものはm癌で,結節均一から不均一,結節状粗大になるに従いsm1癌,さらにsm2癌の頻度は増加しており,表面構造を加味すれば,深達度診断により有用であった.さらに,大きさや腺腫成分の有無も考慮すれば深達度診断はより向上した.また,X線計測による頭頸部比(頸部幅/頭部幅×100%)はmからsm1さらにsm2癌へと浸潤が増すにつれ増大し,m・sm1癌とsm2癌で有意差が認められた(p<0.05).以上から,Ⅰp型の亜分類は,深達度診断からみて十分臨床的意義があるものと考えられた.また,X線では,十分伸展された状態で病変頭部と茎が描出できれば,形態分類や表面構造はもとより,その計測値から,より細かな深達度診断が可能になると考えられた.一方,Ⅰsp型(m癌112,sm1癌18,sm2癌22,sm3癌12)では従来の無茎性病変(Ⅰs型)での深達度診断の指標が有用であった.深達度診断からみると,Ⅰsp型はⅠs型に含めて取り扱ってよいと考えられた.

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要旨 Ⅰp型ないしはⅠsp型大腸sm癌の3例を呈示した.いずれの症例も容易に内視鏡的切除が可能であったが,全例sm癌で追加手術が必要となった.有茎性ないしは亜有茎性ポリープで,①頭部の大きさに近い太い茎を有するもの,②頭部が緊満感のあるもの,③頭部と茎部の境界が不明瞭であるもの,④頭部や頂部に陥凹やびらんがみられるものはsm癌を示唆する所見と考えられた.

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要旨 早期大腸癌の深達度診断は,拡大内視鏡や超音波内視鏡の開発・実用化によりかなり精度が上がっている.しかし,隆起型,特にⅠp・Ⅰsp型病変においては,今なお表面型に比べ深達度診断に苦慮することが多い.今回,当院におけるⅠp・Ⅰsp型大腸sm癌185病変におけるリンパ節転移率・長期予後(再発率)の検討から,適切な内視鏡診断法と内視鏡切除の適応基準を各肉眼型別に検証した.まず,内視鏡的に明らかなstalkを有するⅠp型病変においては,stalk invasionを来したものや脈管侵襲・先進部低分化腺癌陽性例においてもリンパ節転移例が1例もなく(0%;0/56),また長期予後の検討においても内視鏡治療先行群は外科手術単独群とほぼ同等の予後が得られたことから,Ⅰp型早期癌は内視鏡切除を第一選択として良い病変であることが示唆された.一方,Ⅰsp型病変については,リンパ節転移率が12.0%(10/83)あり,安易な内視鏡切除は避けなければならない.また,再発率の検討から,再発を来した4例中3例がpolypectomyによる内視鏡治療を先行させた症例であること,さらに長期予後の側面からみた場合でも,内視鏡治療先行群においては,外科手術単独群に比べ有意差はないものの予後不良の傾向がみられたことなどから,明らかなsm浸潤癌と診断されるⅠsp型病変については外科切除を第一選択とするべきであると思われた.しかし,粘膜内癌,sm浸潤癌の深達度診断に迷うようなⅠsp型早期癌に限ってのみ,粘膜下局注を加えることなどの完全切除の試みを行った後に切除し,組織学的確診をもとに追加切除の必要性を決定するという方針が適用されると考えられた.

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要旨 Ⅰp・Ⅰsp型大腸腫瘍42病変を対象として,通常内視鏡と拡大内視鏡の深達度診断能を比較検討した.VⅠ型pitを輪郭明瞭なVⅠ型と輪郭不明瞭なVⅠ型に亜分類して検討したところ,拡大内視鏡による診断能は判定不能病変を除くと全体正診率:86.8%(33/38),sm2,3診断能〔感度:80.0%(8/10),特異度:89.3%(25/28),正診率:72.7%(8/11)〕と良好であったが,それでも通常内視鏡のほうがやや優れていた.さらに通常内視鏡診断を信頼度別に確診と疑診に分け,それぞれに拡大内視鏡診断を加味した場合,疑診病変は6病変から2病変へ減少し,確診病変におけるsm2,3診断能の正診率が77.8%(7/9)から84.6%(11/13)と向上した.以上より,通常内視鏡所見に加え拡大内視鏡による表面微細構造の観察を行えば,診断精度を向上させることができると考えられた.pit patternと病理組織との対比から,輪郭不明瞭なVⅠ型pitは,sm深部浸潤の影響により引き起こされる病変の被覆上皮の変性・脱落を染色性の低下により間接的に認識しているものと考えられた.

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要旨 拡大内視鏡によるⅠp・Ⅰsp型早期大腸癌の深達度診断指標を明らかにすべく,pit patternの不整さとピオクタニン染色によるpit間部分の染色性(SA pattern)の2つを指標に,組織所見との関係を検討した.フラクタル解析したpit patternの不整さは,腺管構造の複雑さ(p<0.0001),細胞異型(p=0.0412)を反映し高異型度癌の診断指標となりえたが,sm浸潤長との直接の相関は認めなかった.一方,SA patternはsm癌浅層の組織所見である表層上皮(p=0.0001),粘膜内部(p=0.0004),粘膜筋板(p=0.0005),desmoplasia(p=0.0059)の各状態を反映し,さらにsm浸潤度(p=0.0008)を反映しうる指標であることが示された.

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要旨 高周波超音波細径プローブ(HFUP)を施行した166病変を対象として,Ⅰp・Ⅰsp型大腸癌におけるHFUPの深達度診断能について検討した.①Ⅰp・Ⅰsp型大腸癌におけるHFUPの深達度正診率は71.9%,判定不能例を除けば79.3%であり,表面型に比べ低率であった.②HFUPの深達度誤診の主な原因は超音波の深部減衰であった.③Ⅰp・Ⅰsp型大腸癌におけるHFUPの深達度正診率は,内視鏡検査(75%),X線検査(78.3%)の正診率と同等であった.④内視鏡検査と比較してHFUPでは,sm2,3癌に対する深達度診断精度が高く,特に粘膜内病変が残存するsm浸潤癌の診断に有用であった.

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要旨 Ⅰsp・Ⅰp型早期大腸癌の深達度診断について通常内視鏡とEUSの立場から当科の成績をもとに肉眼型別に概説した.Ⅰsp型の通常内視鏡によるsm2,3の深達度診断の指標を表面性状より模索したが,びらん・潰瘍などの所見だけでは指標にならなかった.また内視鏡的伸展不良所見の検討ではⅠsp型のsm2,3で出現したものは7病変中1病変のみであった.この理由はⅠsp型病変では深達度sm2,3でも筋層付近まで大量に癌が浸潤していなければ可動性が残り,伸展不良所見を判断することが難しいためと考えられた.EUSによる深達度診断ではⅠsp型は隆起の頭部まで挙上したsm層の形態を描出することが大切で,良好に描出しえた場合にかぎり有用な補助診断となりうると考えられた.Ⅰp型の通常内視鏡による深達度診断でも,表面性状のびらん・潰瘍はm,sm1でも少なからず認められ診断の指標にならなかった.伸展不良所見はpenis like型の茎を呈した1病変のみが茎の柔軟性の欠如として判定できた.茎の形態でもpenis型を呈していればsm2,3と診断できるが,頻度は少なく他の茎の形態は診断の指標にならなかった.EUSによる深達度診断では茎から頭部への連続したsm層の描出が重要であると考えたが,その描出は極めて難しかった.そのため診断率は低率でⅠp型に対するEUSの有用性は低いと考えられた.つまり,Ⅰsp・Ⅰp型癌のsm2,3浸潤を診断する内視鏡的なよい指標は少なく,EUSも困難である.よって現時点では,診断に迷えばEMR後の病理診断でその後の治療を決定することが現実的であると考えられた.

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要旨 患者は40歳の女性.2001年1月ごろ便に血液が付着することに気付いた.5月に近医の注腸X線検査でS状結腸に病変を指摘され当院紹介となった.大腸内視鏡では25mm大のⅠp型のポリープで,陥凹局面を認めたためsm深部浸潤と診断し,腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.深達度はsm2で癌先進部は中分化型腺癌,リンパ管侵襲は陽性であったが静脈侵襲やリンパ節転移は陰性であった.術後に腫瘍マーカーの上昇を示し5か月後に単発の肝転移を認めた.大腸sm癌は転移の危険因子を検討する際に,浸潤量を表面型に則した絶対値や相対分類というパラメータを用いるため,表面型と同等の転移頻度である隆起型sm癌の特徴が不透明になる可能性がある.隆起型を別途に再検討することと,既存の病理組織学的所見に加え,分子生物学的な検討を蓄積することにより,内視鏡治療の拡大と追加腸切除症例の効果的な拾い上げが可能となるものと考える.

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要旨 症例は65歳,男性.初回の注腸X線,内視鏡検査および生検では,盲腸に長径13mmの隆起型腺腫が診断されていた.33か月後の最終の注腸X線,内視鏡検査では,初回検査と同じ場所に長径19mmの2型進行癌類似の形態を示したsm massive癌が診断された.回盲部切除が施行された.病理組織学的には,大きさ16×14mm,2型進行癌類似型,深達度sm3の腺腫を伴う高分化腺癌と診断された.発育形式は,ほとんどの部分がnon-polypoid growth(NPG)typeであったが,粘膜内のごく一部に周囲よりも丈の高い腺腫を認め,polypoid growth(PG)typeと判定された.adenoma-carcinoma sequenceによる癌化の形態変化のみならずPG-typeからNPG-typeへ移行する過程も捉えられた病変と推察された.なお,注腸X線フイルム上の計測から計算された体積倍加時間は,20.2か月だった.

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 〔患者〕 67歳,男性.主訴:貧血.家族歴:特記すべきことなし.既往歴:急性虫垂炎(30歳),十二指腸ポリープ(59歳).嗜好歴:特記すべきことなし.現病歴:1991年検診で十二指腸ポリープを指摘され,内視鏡的切除を勧められたが,本人の自己判断で来院せず経過観察となっていた。2000年5月中旬から立ちくらみを自覚し,症状持続するため,近医受診.貧血を指摘され,同院で上部消化管内視鏡施行.十二指腸下行脚に易出血性病変を認め,精査加療目的で当院紹介となった.

 〔入院時現症〕 身長167cm,体重60.Okg,眼瞼結膜に著明な貧血あり.腹部は平坦・軟.腫瘤触知などの異常は認めなかった.

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 はじめに

 大腸sm癌のリンパ節転移陽性率は約10%とされており,大半が内視鏡切除術や腹腔鏡下手術による局所治療により根治が可能である.しかし,現行の大腸癌取扱い規約に準拠すれば,多くの症例が,リンパ節転移がないにもかかわらず,リンパ節郭清を含めた外科的追加腸切除の適応と考えられてしまう.近年の内視鏡機器や手技の改良・進歩によって内視鏡治療の拡大が試みられている中で,いかなる症例にリンパ節郭清を伴う根治的切除術が必要であるかを判断するかは,患者の術後のQOLを考慮する面からも極めて重要であり,リンパ節転移のリスクを考慮した,さらに厳密な大腸sm癌の内視鏡治療後追加治療の適応条件が必要とされている.

 大腸sm癌のリンパ節転移の重要なリスクファクターの1つに粘膜下層への浸潤度からみた大腸sm癌細分類が挙げられる.この浸潤度細分類には相対分類と絶対分類に大別されるが,各施設問でいまだに一致をみていないのが現状である.sm癌の深達度診断という点では,相対分類の有用性は本邦での歴史的背景をみると明らかであるが,今後の大腸sm癌に対する内視鏡治療の適応拡大を考慮すると,共通用語としての深達度診断という点では絶対分類が必要である.

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欧文目次

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 腹腔鏡下大腸切除術が施行されるようになってから,欧米では11年,本邦では9年の年月が経過し,腹腔鏡下手術は大腸の良性疾患のみならず悪性疾患に対する手術にも欠くことができない低侵襲手術術式として定着してきている.腹腔鏡下手術を行うことにより,術創が小さく,術後の疼痛が少なく,また術後の癒着性イレウスが少ない特徴もある.

 腹腔鏡下大腸切除研究会編集の「腹腔鏡下大腸手術一アプローチ&スタンダードテクニック」は,大腸癌に対する腹腔鏡下大腸切除術式の手技を標準化することを目的として,わが国におけるこの領域のエキスパートによって共同執筆された単行書である.

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 最近,順天堂大学医学部腎臓内科の富野康日己教授編集による「腎機能低下患者への薬の使い方」が医学書院から刊行された。腎機能低下患者への薬剤投与は,臨床医にとり日常臨床の中でしばしば遭遇し,薬剤の特徴に応じ,また腎機能低下の段階に応じて投与量と投与方法を変えることを必要とされる,難解な領域の1つと考えられる.

 まず,薬剤の排泄部位が腎臓か肝臓かにより薬剤投与量が異なることになる.肝排泄性薬剤では通常投与量でよいが,腎排泄性の比率が高い場合には,腎機能の低下レベルに応じた投与量の減量が必要となる,蓄積により腎障害を引き起こす薬剤やその他の副作用を引き起こす薬剤があり,その薬剤ごとの有効血中濃度と蓄積による副作用の種類や発現との関連性を知る必要がある.一般に,腎機能低下レベルが大きくなるに従い,腎排泄性薬剤の蓄積が著しくなり,投与量,投与間隔を大きく変える必要がある.

編集後記 渕上 忠彦
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 早期大腸癌に関する多方面からの研究が盛んに行われているが,その多くはⅡ型,Ⅰs型に焦点が向けられている.本特集はⅠp・Ⅰsp型の臨床・病理学的特徴を明らかにし,治療方針の選択基準を明確にするねらいで企画された.この形態はsm浸潤度とリンパ節転移率,リンパ節転移危険因子も明らかではない.それらを検討するには多数例の分析が必要で統一されたsm浸潤度判定基準がいる.大腸癌研究会では絶対分類を統一するための基準線の設定が検討中である.臨床的には内視鏡切除例には応用できないが簡便な相対分類も捨てがたく,絶対分類か相対分類かの議論は学会に譲る.今回の特集で明らかになったことは,Ⅰp型にもリンパ節転移が少なからず存在し安易な内視鏡切除に警告が発せられた.病理学的なリンパ節転移危険因子は浸潤距離(執筆者で異なる),組織型,著明な問質反応である.形態的にsm深部浸潤を示唆する所見は,不整形な頭部形態,太い茎が挙げられ,拡大内視鏡,超音波内視鏡による深達度診断は他の肉眼形態ほどは有用ではない,ただし,林らによる拡大内視鏡によるpit間の染色patternの検討はpit patternのみでは今ひとつすっきりしなかった早期大腸癌の深達度診断に新たな展開が予測される.Ⅰpは,sm深部浸潤を疑う所見がなければ内視鏡切除を行い,病理組織学的所見にて追加切除の適応を決め,Ⅰspは,Ⅰsと同様な深達度診断を用い,治療方針を決めればよいとの結論と思う.

基本情報

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胃と腸
37巻12号 (2002年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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