胃と腸 32巻12号 (1997年11月)

今月の主題 腺領域からみた胃病変

序説

腺領域からみた胃病変 西元寺 克禮
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 胃の腺構造は周知のごとく,噴門腺(cardiac gland),胃底腺(fundic gland),幽門腺(pyloric gland)から成る.噴門腺はその範囲も狭く,機能的には幽門腺と類似し,逆萎縮という現象を除けば,大きなトピックとはなりえない.したがって,本号の主題「腺領域からみた胃病変」は主として胃底腺と幽門腺を取り扱うこととなる.胃底腺は固有胃腺と呼ばれるように,胃の機能を考えるうえで最も重要なもので,被蓋上皮細胞と,増殖細胞,壁細胞(または酸分泌細胞),主細胞(または酵素分泌細胞),副細胞,内分泌細胞などから成る.壁細胞からは塩酸,主細胞からはペプシノーゲンが分泌され,内分泌細胞にはセロトニンを分泌するEC細胞(enterochromaffin cell),ECL細胞(EC-like cell)がある.一方,幽門腺は被蓋上皮細胞あるいは銀親和細胞で構成されている.幽門腺の特徴としてはガストリンを分泌するG細胞,ソマトスタチンを分泌するD細胞が豊富に存在することである.このように胃には機能を異にする腺が共存しており,それぞれの腺を背景として種々の疾患が発生してくる.胃底腺と幽門腺の境界部は徐々に移行し,中間帯を形づくる.中村は,腸上皮化生のない胃底腺粘膜を境界づける線をF境界線(F-line),巣状に出現する胃底腺粘膜を境界づける線をf境界線(f-line)を名づけている.中間帯の範囲は,このF-lineとf-lineの間とすることが普通となっている.この腺境界は周知のごとく,徐々に口側に移行していくが,これは固有胃腺である胃底腺の萎縮性変化が原因である.すなわち円形細胞の浸潤によって始まる慢性胃炎の変化は,主細胞や壁細胞などの胃固有腺の減少ないしは消失,粘液細胞の増加,更には胃底腺そのものの絶対数の減少へと進行する.粘液細胞は幽門腺の腺細胞やBrunner腺の腺細胞などと形態的に極めて類似しており,偽幽門腺と呼ばれる.慢性胃炎の結果,腸上皮化生,過形成性の変化などが起こってくることはよく知られた事実である.幽門腺領域に存在する多くの病変は萎縮性変化,殊に腸上皮化生と密接に関係することが知られている.

 腺領域と胃病変に関する研究はこれまでも精力的に行われてきており,以下に述べるような事実が積み重ねられてきた.

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要旨 胃の腺領域については多くの研究があるが,臨床病理学的には中村の分類が広く用いられている。けれども,腸上皮化生の有無で決定する定義に従うと,腸上皮化生のない萎縮した胃底腺の境界に悩むことも少なくない.胃底腺の萎縮度を胃底腺が1ないし数腺管単位で散在性に認められる領域,胃底腺が巣状に認められる領域,萎縮した胃底腺が連続して認められる領域,胃底腺は正常腺管であるがリンパ球浸潤がみられ腺管間がわずかに開大した領域,胃底腺が全く萎縮のない領域の5段階に分け,腺境界について33例の切除例を用いて検討した.境界線の拡がり方,F境界線との比較,肉眼所見,小さな癌の背景粘膜,胃底腺領域に発生した分化型癌などについて検討した結果,胃底腺領域を萎縮した領域,萎縮のない領域,その境界領域と分類することが臨床病理学的には整合性が高いと言えた.腸上皮化生の程度は胃底腺粘膜の萎縮度と相関があるものの,萎縮度で判定したほうがより的確に境界づけられ,中村の境界線との比較では,上記3領域を分ける境界線を新たにF境界線,f境界線とするほうが適当と考えられた.また,境界領域は移行帯あるいは萎縮移行帯と称するのがよいと考えられた.肉眼所見での対比では,F境界線は粘膜ひだで比較的捉えやすく,f境界線は血管透見,胃小区模様で捉えやすい結果であり,後者のほうが組織学的境界線とより適合した.

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要旨 腺境界の肉眼所見と組織所見の位置関係の比較には切除胃癌51例を用い,X線的胃小区と組織学的萎縮の程度との検討には1対1の対比が可能な36例(42区域)を任意に選択し,X線的な腺境界診断の指標を求めた.①肉眼的なF境界線(粘膜ひだ起始部の肛門側辺縁を結んだ)と組織学的F境界線は粘膜萎縮が軽度な胃では両者はほぼ一致するが,萎縮の程度が中等度な胃では必ずしも一致しない傾向がみられた.②X線的な腺境界診断は,粘膜ひだの肛門側起始部近傍あるいは,それより口側(大彎側)の粘膜に対しては,胃小区模様が指標になることがわかった.すなわち,顆粒の大きさの小型化,形の円形化,それらに大きさと形の不均一さが認められる場合には中間帯粘膜領域を考える必要がある.

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要旨 腺領域は,内視鏡的に識別が可能な萎縮性胃炎症例において,非萎縮胃底腺粘膜,萎縮胃底腺粘膜,萎縮幽門腺粘膜の3領域に区分して診断し,病態を検討する必要がある.胃底腺粘膜の萎縮性変化の強さは,粘膜菲薄化の指標である褪色と血管透見の程度で診断される.一方,萎縮境界と呼ばれる非萎縮・萎縮粘膜境界部分の存在部位で示される萎縮性変化の拡がりは,一般に木村・竹本の萎縮パターンで分類される.萎縮境界は,elicobacter Pylori持続感染症例で,加齢に伴って口側へ上昇するが,その変化は一定ではない.除菌治療で萎縮性変化が改善するか否かは,胃癌の予防につながる大きな問題であるが,今後の検討課題である.

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要旨 胃の良性病変は各腺領域の分布と発生部位に密接に関連している.われわれは内視鏡的コンゴーレッド法により酸分泌領域の拡がりと,各種胃疾患の関係を検討した.胃炎の拡がりは,年齢と強く関連しており,経過観察15例中5例(33%)に,平均観察期間14年6か月で胃炎の拡大を認めた.胃潰瘍は酸分泌境界近傍,特に遠位側に好発し,胃炎の拡がりとともに発生部位は噴門側に移動する.胃底腺ポリープは萎縮のない胃底腺領域内に存在し,ポリープ表面からも酸分泌がみられる.胃腺腫は萎縮の強い胃の非酸分泌領域内に発生し,表面の色素が褪色する.A型胃炎に合併した,高ガストリン血症を伴うカルチノイドは予後良好であった.

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要旨 組織学的に胃腺腫と診断された78例83病巣を対象として,組織学的に腫瘍の周囲粘膜に胃底腺を認めるF型腺腫と胃底腺を認めないP型腺腫に分け,両者を臨床病理学的に比較検討した.F型が26.5%,P型が73.5%で圧倒的にP型が多かった.F型,P型の平均年齢はそれぞれ72.3歳,66.9歳でF型はP型より有意に高齢者に多かった.腺腫の肉眼型,大きさ,他部位胃癌合併率に関してはP型とF型で差を認めなかった.F型はC領域,M領域の大彎寄りに多く,P型はA領域とC領域,M領域の小彎寄りに多かった.F型,P型ともに周囲の粘膜固有腺の萎縮が高度で著明な腸上皮化生を伴った粘膜を背景として発生しており,すべて腸型腺腫であった.ただし,F型,P型とも約30%は一部に胃型形質を混じる不完全型腸型腺腫であった.周囲の腸上皮化生に関してF型は完全型が多いのに対してP型は不完全型が多い点,F型がP型に比して高異型度腺腫が多い点から,組織発生においてF型とP型で相違がある可能性が示唆された.

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要旨 早期胃癌863病変(未分化型284病変,分化型579病変)と,そのうち微小胃癌80病変(未分化型17病変,分化型63病変),表層拡大型胃癌48病変(未分化型17病変,分化型31病変)について腺領域からみた検討を行った.早期胃癌の存在は幽門腺領域80%,中間帯領域14%,胃底腺領域6%と幽門腺領域に多かった.幽門腺領域の組織型,肉眼型,深達度をみると,分化型癌は74%,隆起型28%,m癌68%であった.胃底腺領域では未分化型癌の比率は83%,陥凹型95%,m癌38%と腺領域による頻度に違いがあった.更に,胃底腺領域の微小胃癌は全例が陥凹型を呈する未分化型癌であった.表層拡大型胃癌はC領域(38%)で小彎(73%)のものが多かったが,腺領域からみると全例が幽門腺領域を主座として拡がり,胃底腺領域への浸潤はまれであった.腺領域を知り観察することは,胃癌の存在,質,量を予測でき,臨床診断に大きく寄与するものと考えられる.

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要旨 1987年4月から1997年3月までに切除された胃癌症例を対象にして,癌組織型と背景粘膜およびF境界線との関係について検討した.胃癌の組織型は分化型癌541病変,未分化型癌277病変であった.未分化型癌と比べ分化型癌の症例は男性に多く,平均年齢も高く,腸上皮化生の程度も中等度~高度なものが多く従来の報告と同様であった.また胃癌とF境界線との関係を検討し以下の結果を得た.①未分化型癌で2cm以下の病変はF境界線近傍領域に多く存在した.②F境界線から離れた幽門線領域の未分化型癌は,2cm以下の病変の割合が他の領域より低く,悪性所見に乏しい発見されにくい病変の存在が考えられた.③1cm以下の分化型癌においてF境界線から2cm以内の領域に存在するものはその約2割がsm2以深に浸潤しており,それ以外の領域に存在するものに比べ深く浸潤している傾向がみられた,④胃癌においては同じ組織型であっても,その存在する領域で形態(悪性所見)や生物学的ふるまいが異なっていた.

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腺領域の定義・分類・変動

1.定義

 定義(1):胃粘膜を構成する胃固有の腺上皮にはいくつかの種類があり,それぞれの種類は胃の中で一定の領域に分布している.それぞれの腺上皮が占める各領域が“胃の腺領域”に相当する.したがって,用語“腺領域”は組織学的所見に基づいて定義された名称である(本来の腺領域).

 定義(2):腸上皮化生は突然正常の胃底腺粘膜に発生することはなく,幽門腺化生や偽幽門腺化生(粘液頸細胞の増加)を先行性変化として発生する.(偽)幽門腺化生や腸上皮化生が前庭部から連続性に胃底腺粘膜に及んだ部分(以前の胃底腺粘膜部分)は一般に前庭(粘膜)化(antralization)と呼ばれ,幽門腺領域に分類されている(拡大した幽門腺領域部分).

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〔患 者〕47歳,男性.主訴:下痢.

読影と解説

最終診断:びまん浸潤型大腸癌(“lymphangiosis type”).直腸(Rb)~S状結腸,22.5×8.0cm.低分化腺癌,一部に中分化腺癌を認める.深達度ss,ly3,v2,n4

 1.注腸X線所見(Fig.1a,b)

 直腸(Rb)からS状結腸のlong segmentにわたる管腔の軽度狭小化と辺縁不整像を認める.粘膜面は大小顆粒状で,いわゆる敷石状粘膜を呈している.明らかな潰瘍形成や限局性狭窄は認めない.壁の硬化像は目立たず,収束像や圧排像も認めない.

【Case 16】 磨伊 正義
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〔患 者〕68歳,女性.1年前から時々心窩部痛を認め,検査のため来院した.

読影と解説

最終診断:類似IIb型早期胃癌.深達度m,11×6cm.

1.症例

 近年多数の早期胃癌が手術されているが,その中には肉眼的に識別されたIIcまたはIIaの範囲よりはるかに広範囲に浸潤している粘膜癌,すなわち随伴IIbの症例にしばしば遭遇する.これは直接手術に携わる外科医にとって切除範囲決定に当たって慎重を要する.本例もその1例であるが,注意深い読影によってある程度まで診断が可能である.まず背臥位正面二重造影像(Fig.1,4)では胃体上部小彎から胃角部にかけて小彎の辺縁不整所見と胃体下部小彎への粘膜ひだの集中を読み取る必要がある.Fig.2,5の軽い第1斜位では集中する粘膜ひだが途中で途絶えていること,浅い陥凹面は胃小区が消失し,広い範囲で淡いバリウム斑で覆われている.Fig.8で示す切除胃レントゲノグラムではこの所見がより明瞭となり,癌巣部に一致して胃小区間溝の破壊に伴うアレアの不鮮明化と,のっぺりしたバリウムの付着が特徴的である.更に癌巣部と非癌部境界は拡大することによってより明瞭となる.

リフレッシュ講座 大腸検査法・1

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はじめに

 注腸X線検査は大腸内視鏡検査と同じように検査のコッをつかめば,簡単に全大腸の病変の有無を検索できる.大腸検査について前処置,造影剤,次いで大腸の撮影について述べる.

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要旨 患者は38歳,女性.黒色便と息切れを主訴に当院入院.小腸造影ではTreitz靱帯のすぐ肛門側の空腸に亜有茎性の比較的太い基部を有する隆起性病変を認めた.腹部超音波,CTでは左上腹部に約2cmの類円形の腫瘤を認めた.細径大腸ファイバースコープを経口的に挿入した内視鏡検査では光沢のある赤色調で,いわゆる亀頭様の隆起性病変を認めた.留置スネアを併用し内視鏡的切除を施行した.病理組織学的には炎症細胞の浸潤と線維芽細胞や膠原線維の増生を認め,inflammatory fibroid polyp(IFP)に矛盾しない所見であった.自験例は小腸IFPを内視鏡的に診断,治療しえた本邦初の症例である.

早期胃癌研究会

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 1997年6月の早期胃癌研究会は,6月18日(水),飯田三雄(川崎医科大学内科)と細井董三(多摩がん検診センター消化器科)の司会で開催され,5例の症例呈示と渡辺英伸(新潟大1病理)によるミニレクチャー“炎症性腸疾患の診断”が行われた.

 〔第1例〕64歳,女性.IIc型早期胃癌(症例提供:旭川厚生病院消化器科 太田智之).

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要旨 患者は45歳,男性.約2年前に受けた痔瘻根治術の手術痕に約2cmの黒色の腫瘤を認め,来院.擦過細胞診で,メラニン顆粒を確認し悪性黒色腫と診断した.腹会陰式直腸切断術を施行.術後の病理組織検査では腫瘍細胞は円柱状で腺管構造を形成し,中分化腺癌と考えられたが,その胞体内にはメラニン顆粒を含み,メラニン顆粒陽性肛門部腺癌と診断した.乳癌や皮膚科領域の悪性腫瘍細胞でメラニン顆粒を認める報告は散見されるが,消化器癌での報告がなく,まれな1例と考えられた.

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要旨 大腸癌のうち粘膜内癌(m癌)と粘膜下層にわずかに浸潤した癌(sm1癌)とは内視鏡治療(内視鏡摘除術)の対象とされ,粘膜下層に大量に浸潤した癌(sm2およびsm3癌)は外科的治療の適応と考えられている.われわれは,早期大腸癌119例(m癌31例,sm1癌29例,sm2癌24例,sm3癌35例)を対象として,m癌,sm1癌とsm2,sm3癌との鑑別がX線,内視鏡的に可能かどうか,smへの癌浸潤に起因すると考えられる病巣部の“伸展不良を現す所見”の有無を基準として検討した.IIa以外の肉眼型では内視鏡における"管腔の弧の硬化像"が最も有用な所見であった.また,X線検査では“画然とした硬化像”の有無が最も鑑別に有用であった.他の伸展不良所見も存在すればsm2以上に癌が浸潤していた.病巣の伸展不良を現す所見以外,例えば緊満感などの所見は少なからず偽陽性,偽陰性が存在した.また,“伸展不良所見”の有無を的確に判定するためには,①十分な空気量を注入し,②腸管の蠕動運動の影響をなくした写真で判定し,X線検査では側面像の描出,内視鏡検査では遠見での観察が必要であった.

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欧文目次

書評「3D解剖アトラス」 坂井 建雄
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 解剖学のアトラスで,何とも楽しい本ができたものだと思う.肉眼解剖の様子が,立体写真になって目の前に飛び出してくるのだ.こんなおもしろいものを作ってしまったのは,いったい誰だ,と思わずつぶやいて著者の名前を見たら,あのRohen-横地のアトラスの横地先生だ.

 バラバラと頁をめくって,手ごろな頁を開き,じっと眺めていると,解剖写真が飛び出してきて,思わずほほえんでしまう.そんな解剖写真セットが,頭部で10組,頸部で8組,呼吸器2組,心臓7組,腹部5組,骨盤部8組,背面2組,上肢4組,下肢3組,自律神経とリンパ管で3組,合計52組と,盛りだくさんである.そして値段が,税抜きで2,800円と,お手ごろなのもいい.鞄からこの本を取り出して開き,“解剖の写真が飛び出して見えるよ”などと言って素人に見せれば,大いに受けそうだなと,楽しみにしている.

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 本書の執筆者・工藤進英博士は現在の大腸内視鏡学を活性化させている最大の功労者の一人であり,IIc型早期大腸癌で世界に華々しくデビューした気鋭の研究者であることは紹介するまでもない.学会等で主張する工藤氏の診断理論は,頑ななまでの信念と自信に裏付けされたものであり,常に共感を呼ぶところが多い.

 その工藤氏が医学書院から「大腸内視鏡挿入法」なる純粋のテクニックに関する書籍を刊行したが,私にも早速,熟読する機会があった.長い序文とあとがきに本書にかける著者の情熱のほとばしりが感じられるが,X線を必要とせず,内視鏡だけで大腸癌の診断理論を確立したいという氏の積年の理念を完成させるためのステップとして,工藤流挿入手技を世間に広めるために企てた書籍である.

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 3年ごとの改訂を目標にしている「今日の診断指針」であるが,第4版を上梓するのにこの度は5年の歳月を要したという.

 ひもといてみて,その重厚な内容に長年月を要したのもむべなるかなの感が深い.

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 10月28日(火),ホテルニューオータニ博多で行われた第37回「胃と腸」大会の席上,第3回白壁賞と第22回村上記念「胃と腸」賞の受賞式が行われた.第3回白壁賞は西俣嘉人・他「Crohn病診断のための主要所見と副所見:縦走潰瘍―X線診断の立場から」(胃と腸31:465-478,1996)に,第22回村上記念「胃と腸」賞は末兼浩史・他「非腫瘍性胃RLHと胃MALTリンパ腫の経過観察例の検討―Helicobacter pyloriとの関連を中心に」(胃と腸31:973-986,1996)に贈られた.

 当日,司会の牛尾恭輔氏(国立がんセンター中央病院放射線診断部)から,まず白壁賞受賞者の発表があり,早期胃癌研究会代表の八尾恒良氏(福岡大学筑紫病院消化器科)から受賞者代表の西俣氏に賞状と賞牌が,医学書院からは副賞の賞金が贈られた.八尾氏は“白壁彦夫先生が,鹿児島の西俣先生ご一門を共同研究者として大変高く評価されていたことを思い出しますと,この度の受賞は白壁先生のご遺志に沿ったものと考えています”と述べた.

編集後記 細井 董三
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 胃病変の中には,胃癌の組織発生に代表されるように,その発生が背景粘膜の腺領域と密接な関係を持っていることが知られている.今回の企画の目的はそれらの胃病変と腺領域との関係をもう一度見直し,整理しておくことにあった.いずれの論文においても蓄積された十分な症例に基づいて,悪性,良性を含めて既に指摘されているいくつかの病変の発生が腺領域と一定の関係を有していることが再確認されており,それらの診断に背景粘膜の腺領域の見極めがいかに重要であるか理解されると思う.

 今回,腺領域との関係で新たに登場した病変はなかったが,腺境界領域に対する認識の仕方や診断法に新たな展開があった.特にHelicobacter pyloriと腺境界領域あるいは萎縮境界との関係は新たな問題として注目される.胃粘膜の萎縮が加齢に伴う生理的現象ではなく,Helicobacter pyloriの持続感染に伴う粘膜変化であり,必ずしも不可逆的なものでないならば,腺境界は除菌によって本来の位置に戻り,従来の腺境界領域と胃病変との関係も大きく変わってくることが考えられ,今後の展開に興味が持たれる.

基本情報

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胃と腸
32巻12号 (1997年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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