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編集後記
細井 董三
pp.1664
発行日 1997年11月25日
Published Date 1997/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105257
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胃病変の中には,胃癌の組織発生に代表されるように,その発生が背景粘膜の腺領域と密接な関係を持っていることが知られている.今回の企画の目的はそれらの胃病変と腺領域との関係をもう一度見直し,整理しておくことにあった.いずれの論文においても蓄積された十分な症例に基づいて,悪性,良性を含めて既に指摘されているいくつかの病変の発生が腺領域と一定の関係を有していることが再確認されており,それらの診断に背景粘膜の腺領域の見極めがいかに重要であるか理解されると思う.
今回,腺領域との関係で新たに登場した病変はなかったが,腺境界領域に対する認識の仕方や診断法に新たな展開があった.特にHelicobacter pyloriと腺境界領域あるいは萎縮境界との関係は新たな問題として注目される.胃粘膜の萎縮が加齢に伴う生理的現象ではなく,Helicobacter pyloriの持続感染に伴う粘膜変化であり,必ずしも不可逆的なものでないならば,腺境界は除菌によって本来の位置に戻り,従来の腺境界領域と胃病変との関係も大きく変わってくることが考えられ,今後の展開に興味が持たれる.
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