胃と腸 31巻13号 (1996年12月)

今月の主題 大腸腫瘍の自然史

序説

大腸腫瘍の自然史 武藤 徹一郎
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 消化管の分野では腫瘍の自然史に興味を持つ者は少なくない.かつては胃癌の自然史に興味が注がれ,多くの臨床家,病理医が研究を競いあった結果,胃癌の発育・進展の動態がかなり解明され,胃癌の組織発生の研究に一石を投じたのであるが,この際に症例の長期観察によって臨床家が果たした功績は目覚ましいものがあったと思う.昨今,その興味は大腸に転移してきた.胃と異なり大腸には腺腫もあれば癌もあり,前者には隆起型もあれば表面型もある.いずれの病型も腺腫として発育したり,腺腫から癌へ発育・進展したり,癌から癌へ進展したりする.自然史の対象となる病変が多岐にわたっているために,整理整頓が必要であるが,それだけにおもしろくもある.腺腫と癌の両方を含めた「大腸腫瘍の自然史」という本企画のねらいもまさにここにある.

 腫瘍の自然史の研究手法は3つに分けられる.第1は組織学的検索による方法である.大腸の場合には初期の病変である腺腫,m癌(腺腫内癌),sm癌を多数集めて,その形態学的相似性から自然史を推定するものであり,昔から用いられている手法である.

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要旨 大腸腫瘍の自然史は病変ごとにそれぞれ異なっている.だが,大腸腫瘍の自然史,特に進行大腸癌への自然史には,共通性もみられる.X線像による遡及的検討の結果,6mm以上の病変では,無茎や扁平な表面隆起型の病変から進行癌に発育するのが,主経路であろうと再確認できた.今回更に,①同じ個体で同じ部位に発生した腫瘍でも,それぞれ発育・進展とdoubling timeは異なっている.②Is型の早期癌には形態的にみて,主に分葉状,結節状およびその中間状の病変がある.結節状のⅠs型癌は,癌がsmに深く多量に浸潤した病変が多く,また早急に進行癌へ推移しやすい.③潰瘍浸潤型(3型)に推移した3病変の初期形態は,それぞれⅡa型,結節集簇から成るⅡa様,Ⅰs型病変であった.④画像とともに組織学的な経過が得られた2症例3病変の検討で,すべて経時的に異型度が増していた.また,腺腫から腺癌へ進みうる症例があることを実例をもって示した.

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要旨 進行癌の大多数を占める2型癌が表面陥凹型起源か否かを検討するため,逆追跡例を用いて進行癌の初期像の分析を試みた.対象は初回X線像が早期癌と推定された45病変.その初回X線像は,表面陥凹型(Ⅱc)11病変,表面隆起型(Ⅱa)11病変,隆起型(EL,Ⅰp,Ⅰsp,Ⅰs)23病変であった.最終時の切除標本の病理像から早期癌15病変,mp癌10病変(PG7病変vsNPG3病変)とss以深癌20病変(PG10病変vsNPG10病変)に分け,それぞれの初回X線像と発育形式とを対比した.その結果,早期癌では病理学的なNPG癌の初回X線像はⅡcで,PG癌のそれはⅡaとELであった.またPG進行癌の初回X線像はEL・Ⅱaであった.しかし,病理学的にmp-NPG癌と診断された病変はELとⅡcから発育・進展し,ss以深-NPG癌はEL・Ⅱaから発育・進展したものが多かった.病理学的なPGとNPGの判定は早期癌に限定されるべきである.進行癌では初回PGと推定される病変が,NPGへと無視できない頻度で変化した.逆追跡例からみると,2型進行癌は隆起型・表面隆起型病変から発育・進展するものが多いと考えられる.

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要旨 手術が行われたsm以深の大腸癌のretrospective study,生検でadenoma(一部cancerと診断されたものを含む)と,診断された5mm以上10mm未満の大腸ポリープ(Ⅰp,Ⅰsp,Ⅰs,Ⅱa)のfollow-up studyおよび実体顕微鏡による大腸正常粘膜の検索から次のような結果を得た.①smからsまたはaに達するのに約2年を要する.②mに存在する期間はかなり長く,数年を要する.③Ⅱb,Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa,Ⅱa+Ⅱcなどの表面平坦,陥凹型から発育・進展するde novo carcinomaが大腸癌発生のメインルートであり,その早期のものはX線,内視鏡とも見逃されやすい.④いわゆるポリープ(Ⅰp,Ⅰsp,Ⅰs,Ⅱa)は発見されやすいが,10mm以上に増大するものは少なく,10mm未満の腺腫またはポリープは多数存在し,多発(同時性,異時性)するものが多く,ポリペクトミーの絶対的適応とはならない.

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要旨 大腸腫瘍45病変(表面型38病変:隆起型7病変,腺腫33病変:癌3病変:病理学的確診なし9病変)を平均15.1か月間,内視鏡的にprospectiveに経過観察を行い,その形態学的変化を検討した.更に,これらの病変の細胞増殖(%GF)と細胞消失(アポトーシス,%Apo)からみた細胞動態の視点で,形態変化に関与する因子について検討した.その結果,腫瘍径にはほとんど変化は認めなかった.肉眼形態の変化は,表面型腫瘍では不変か隆起傾向を認めるものが80%以上と多くを占め,病変の消失を3病変に認めた.隆起型腫瘍では,推定深達度SM'癌1病変を除き,腺腫はすべて不変であった.また,癌3病変では浸潤癌の2病変は,陥凹を形成し2型となった.経過とともに病変の隆起したものの%GF/%Apo比は,不変のもの,陥凹したものに比べて大きく,また表面型腫瘍では隆起型腫瘍に比べて小さかった.以上から,表面型腫瘍(主に腺腫)は経過をみても形態が不変か隆起する傾向が強く,それは細胞動態的にアポトーシス分画よりも相対的に増殖分画が高いことが関与していると考えられた.

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要旨 6か月以上の期間にわたって内視鏡的に経過観察した腺腫を対象に,肉眼形態,大きさについて検討した.対象は199病変で平均観察期間は18か月,初回観察時の肉眼形態はⅠp8病変,Ⅰsp42病変,Ⅰs47病変,Ⅱa77病変,Ⅱa+dep20病変,Ⅱb1病変,LST4病変,LSTを除くものの腫瘍径は10mm以下で,微小病変が隆起型で71%,表面型で97%を占めた.肉眼形態について明らかな変化はないが,Ⅱa+depで隆起傾向のみられるものがあった.腫瘍径については1mmまでの変化のものが95%を占め,変化のあったとしたものも誤差による可能性が高いと思われた.治療した146病変に癌はなく,すべて腺腫であった.表面隆起型で5mm程度の大きさでamorphismのないⅢL pitを示すものは経過観察でよいと思われた.

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要旨 外科的に切除された大腸sm癌162病変を用い,癌の粘膜内増殖態度からPG癌,NPG癌に分類し,大腸癌の発育・進展につき検討した.NPG癌は,sm1の段階では表面型の肉眼型を示し,sm浸潤度が深くなるに従い隆起型,2型類似型に形態を変化させた.NPG癌は,少なくとも20mm以下の進行癌の形成に直接関与しているものと考えられた.一方,PG癌は,21mm以上で進行癌になるものが多いと考えられた.sm2,3の病変数からみると,少なくとも半数以上の進行癌はNPG癌に由来すると考えられた.NPGsm1癌では,陥凹を示す病変が多く,表面型癌における陥凹の意義について検討し,陥凹を示す表面型m癌の発見と治療が重要であることを述べた.

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要旨 大腸早期癌165病変と陥凹型腺腫35病変の臨床病理学的特徴とp53蛋白発現を解析した.非隆起型癌(non-polypoid growth carcinoma; NPG癌)は隆起型癌(polypoid growth carcinoma; PG癌)に比べ男性に多く,右側結腸発生率が高く,長径が小さく,腺腫合併率が低く,両者の組織発生の違いが示唆された.更にNPG癌のうち粘膜内成分が表層全層型のものは,陥凹型腺腫と性差,発生部位,組織構築の点で共通性があり,それらの組織発生の関連性が示唆された.また,NPG癌,PG癌ともに腺腫内癌より純粋癌で脈管侵襲とリンパ節転移が高率であった.以上から,組織発生の違いにより発育進展様式や悪性度が異なると考えられた.p53蛋白発現は組織構築や悪性度とは相関はなかった.

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要旨 どのような肉眼型と組織学的特徴を有するm(粘膜内)癌が進行癌へ進展しやすいかを明らかにするために,m部腫瘍がほぼ完全に保存されているsm癌101病変を用いて検討した.このsm癌の由来肉眼型(m部病変)はⅠp・Ⅰsp型が19.8%,Ⅰs型が36.6%,Ⅱa型が18.8%,Ⅱa+Ⅱc型が8.4%,Ⅱc+Ⅱa型が12.9%,Ⅱc型が3.0%であった.進行癌の由来肉眼型もほぼこの割合と推定された.この割合は腺腫,低異型度癌,および高異型度癌の量と高異型度癌の出現時期に大きく左右されると推定された.

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要旨 経時的変化が捉えられた大腸腫瘍として,第44回大腸癌研究会に報告された症例の集計から,大腸腫瘍の自然史について考察した.2型ないし3型進行癌の初期病変としては,表面隆起型(Ⅱa,Ⅱa+Ⅱc)ないし無茎性病変(Ⅰs)が全体の2/3を占めていた.また,表面隆起型が隆起型へ形態変化することはまれではないことが明らかとなった.しかし,表面陥凹型(Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa)の自然史については報告例が少なく,十分な検討はできなかった.大腸腫瘍の自然史の解明のためには,内視鏡による表面陥凹型病変の発見と,prospectiveな経過観察が必要であろう.

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 八尾(司会)本日は,「大腸腫瘍の自然史」についての座談会を行いたいと思います.

 以前はadenoma-carcinoma sequenceが定説になっていたのですが,中村恭一先生の批判があり,陥凹型早期大腸癌が見つかるようになって随分事情が変わってきました.大腸に陥凹型大腸癌があるということは,まず狩谷淳先生が,familial polyposisの症例で報告され,その後で西沢護先生が,切除された大腸のマクロを実体顕微鏡で検索されて,白壁彦夫先生は“虫眼鏡でもって高速道路に落ちたコンタクトレンズを捜した”と表現されたのですが,ものすごい努力をされて,平坦型,あるいは陥凹型の大腸癌,大腸腫瘍があるということを発見なさった.その後に工藤進英先生が臨床例で,たくさんの陥凹型癌を発見され,今日に至っているという歴史があります.大腸腫瘍の自然史に対する考え方は15年前とは,大きく変わっていると思います.現在では臨床的,病理学的解析にとどまらず,遺伝子解析の手法も加わってきています.今日は,歴史的な背景を踏まえて,大腸腫瘍のメインルート,すなわち,2型進行癌に至る早期癌からのメインルートを主なテーマにしたいと思います.今日は,臨床経験の多い先生方を中心にお集まりいただきました.そして病理面から加藤先生,大倉先生に臨床の先生と異なった厳しい意見を頂戴するやり方で議論を進めていきたいと思います.加藤先生,よろしくお願いします.

今月の症例

直腸型Crohn病の1例 櫻井 俊弘 , 八尾 恒良
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 〔患者〕36歳,男性.主訴:肛門痛,腹痛.既往歴・家族歴:特記事項なし.現病歴:1988年3月ごろから主訴が出現し,食思不振,体重減少(7kg)もみられ,同年4月,近医を受診した.大腸X線・内視鏡検査で直腸の狭小化を指摘されたが診断は確定しなかった.診断不明のまま完全静脈栄養療法を1か月間施行されたが病変の改善がみられず,精査加療のため当科を紹介され受診した.入院時検査成績:CRP(-),血沈8mm/1時間と炎症所見はなく,血算および血液生化学にも異常はなかった.

リフレッシュ講座 膵管像の読み方・4

膵癌の膵管像(2) 小越 和栄
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 膵癌のERCP

 前号では典型的な膵癌のERCPについての説明を行ったが,実際の臨床では必ずしも典型像が得られるとは限らない.

 今回は非典型的な症例や特殊な症例での膵管像を説明するとともに,膵管像で膵の浸潤範囲がどこまで読めるかについて解説したい.

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欧文目次

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 CottonとWilliamsによる「Practical Gastrointestinal Endoscopy」の第4版が出た.初版は1980年の発刊だから,その評判のほどがよくわかる.

 著者の2人は,いずれも1970年代前半にその名が斯界に知られはじめた,英国を代表するinternational endoscopistである.Cottonは1971年に訪日し,新潟県がんセンターと愛知県がんセンターでERCPを見学して,帰国後早速応用し,その後英国でERCPの牙城を築いた.現在は米国のSouth Carolina医大で教鞭を執るかたわら,米国内視鏡学会で活躍している.Williamsは早くから大腸疾患で有名なロンドンのSt. Marks病院に勤務し,1970年代初頭に武藤徹一郎博士と共に大腸ポリペクトミーを始めた.以後研鑽を積み,独自の大腸内視鏡学を確立した.2人が本書を書いたきっかけは,1970年代後半に登場した数々の内視鏡的治療法を消化器内視鏡における一大変革としてとらえ,技術開発における先達として,それらの技術を後進に伝えておきたかったからである.以後第4版(1996)に至る16年間に超音波内視鏡,腹腔鏡下胆摘術などの進歩があったが,それぞれに詳しい解説書が世に出ているので,本書には含めず,第3版をもとにその後の新治療法を若干追加するにとどめている.

書評「C型肝炎」 織田 敏次
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 医学書院からこの度,林紀夫,清澤研道両博士の編集による「C型肝炎」が上梓された.現在,活発に肝炎の臨床に専心しておられる両博士である.同好の士あい集い,現状がより克明にとらえられている.ぜひお薦めいたしたい.

 国を挙げてのわが肝炎研究陣も,B型には一応のメドを……,さては非A非B型肝炎と,行政の支援もとりつけた矢先の1988年秋,筆者に1通の招待状がカイロン社のRutter氏から届く.非A非B型肝炎ウイルスの診断法を開発したので評価してほしいと言われる.早速にNIHでの会合に向かうのだが,内心穏やかではない.しかし,本物ならば1日も早く手に入れなければならない.その秋にはRutter氏が来日し,西岡久壽彌博士とともにさるホテルで朝食をとりながら,交渉に熱が入る.おかげでC100-3抗体をいち早く手に入れ,数か月後にはわが国での全貌をほぼ把握し,輸血によるC型肝炎は激減,不幸中の幸いと言わねばなるまい.

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 Gastric fundic gland polyps: A morphological study including mucin histochemistry, stereometry, and MIB-1 immunohistochemistry: Odze RD, Marcial FMA, Antonioli D, et al.(Hum Pathol 27: 896-903, 1996)

 胃底腺ポリープ(fundic gland polyp)は,胃底腺領域に発生する特徴的な腺の増生と拡張を示すポリープである.このポリープは過誤腫であるという説がこれまで主流であったが,その発生の様式は現在まで不明であった.加えて家族性大腸腺腫症(FAP)の患者に胃底腺ポリープが高頻度で発生することも知られており,FAPでない人のものとの違いはこれまで明らかではなかった.本論文では胃底腺ポリープにおける増殖細胞の分布と粘液組織化学的所見から,FAPでのものとの違いとその組織発生を考察している.

書評「MRI診断演習」 高橋 睦正
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 山梨医科大学・荒木力教授が「MRI診断演習」をご出版になったが,このようなMRI読影力涵養のための入門書が最近求められていたときでもあり,誠に喜ばしい.

 本書は医学書院刊行の月刊雑誌「medicina」に“MRI演習”として掲載されたものに全面的な改訂を加えて再編集し,出版されたものである.本書では,まず症例を呈示し,設問に解答することによってその章がスタートする.この設問はその症例の最も基本となる所見についての設問であり,読影上の最も重要なポイントを示すものである.次にその所見を示す疾患や鑑別診断について詳しい解説がなされている.鑑別診断は特に詳しく記述され,同様なMRI所見を示す疾患がよくまとめられている.その疾患の理解に必要な文献が挙げられているほか,その画像や症例に関する解説が表や図を用いてなされている.また,その疾患についての必要事項が所々にNoteとして追加してある.

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 初版の出版以来,学生に根強い人気を持つ山田英智,石川春律,廣澤一成・訳「機能を中心とした図説組織学」の第3版が出版された.初版以来の編者であるPaul R. Wheater博士が38歳の若さで夭折したのを機会に,共著者らは今回から彼の名をタイトルに入れ,「Wheater's Functional Histology―A Text and Color Atlas」Third Edition, Churchill-Livingstone(1993)として出版されたものの日本語版である.この本の製作は,原版と同じく香港の工場で図と写真のみを印刷し,その用紙を日本に輸送して医学書院が日本語の文章を刷り込む方式で出版されたものと聞く.従来から,本書のカラー顕微鏡写真のシャープさ,精密さとそのセンスのよさには定評があったが,今回の改訂では更に精選された,主に電子顕微鏡写真が加わり,またレイアウトも工夫が凝らされて,格段に読みやすくなっている.

 組織学の教科書は,電子顕微鏡による新知見の導入により全く革新されてしまった.更に近年の分子生物学を基盤とした,細胞生物学・免疫学・発生学などの発展と成果は,組織学の領域にも大きな影響を及ぼし,それらの理解のうえに組織構築の解明が進められている.タイトルに「機能を中心とした」とあるとおり,本書にもそのような学問研究動向が随所に反映されており,本改訂版では特に免疫系臓器に関する内容が一新され,頁数もほぼ倍増している.また体外受精や胚操作の発達に伴い,これらの基本的理解に不可欠な女性生殖器の組織構造,とりわけ受胎・着床に関連した図や標本が10頁以上新たに付け加えられており,動物種差が極めて大きい胎盤や絨毛膜の形成過程が特にヒトについて明解な図とメリハリの利いた表現で記述されている.すなわち,本書は単に見事な顕微鏡写真による組織図譜というだけではなく,極めて現代的な視点に立った簡潔な記載の組織学教科書とみなすべきであろう.訳者は,日本を代表する3人の組織細胞学の碩学の方々であり,原著で不十分な箇所には適切な補足説明が加えられている.ただ1つ残念な点として,血球の分化は近年研究が進んでいるが,造血過程の模式図が旧版のままであり,次回の改訂をぜひ期待したい.

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 質問「胃と腸」31巻3号(図説形態用語の使い方・使われ方)を拝見しましたが,343頁に掲載されている“牛眼像”につきまして,これを最初に用いた研究者の発表と若干違うと考えます.最初に“bull's-eye”の用語を用いたのはPomerantz H & Margolin HN(Metastases to the gastrointestinal tract from malignant melanoma. Am J Roent 88: 712-717, 1962)であろうかと思います.辞書を開いてみますと“bull's-eye”とは“標的”とか“金的”の意味であり,“bull's-eye(雄牛の眼)”とする記述はありません.Pomerantzの原著をみても,bull's-eye or target lesionとされていますが,どこにも“雄牛の眼”とする記述はありません.またnative speakerによりますと“牛の眼”という表現であれば“cattle-eye”が正しいであろうとのことです.更に独語の“Bullauge(n)”は“舷窓”の意味ですので,ここにも牡牛の眼の意味はありません.

 蛇足ながら小生の知り合いの農獣医学部の専門家にうかがったところでも,雄牛も雌牛も眼の形は同じであるとのことでした.私自身は牛眼像という表現自体は意訳としてとれば決して悪いことではないと考えますが,原著に従ってこれを“target sign”と名付けたらいかがかと思います.初めて唱えたauthorsの意図するところは,正確に後世に伝えたいと思いますので,あえて意見を述べさせていただきます.

編集後記 下田 忠和
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 大腸癌の自然史はいまだ不明なことが多い.しかし表面型腫瘍の発見頻度とその病理学的解析が進むにつれ,早期癌から進行癌に至るいくつかの経路が判明してきた.本号ではこの点につき最近の研究の結果が凝集されている感がする.

 臨床的には経過追跡例の検討から,多くの進行癌は扁平隆起あるいは無茎性病変からのルートが,ポリープ病変からのルートよりも多いことが示されている.なかでも経過追跡例の検討から表面陥凹・平坦病変が浸潤癌の初期病変として重要であるとの報告(西沢)は,臨床面からは極めて重要である.またm癌の時期は意外と長く,smに浸潤するとその発育速度が速いことが報告されたが,このことはいかに早期発見が重要であるかを物語っている.

基本情報

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胃と腸
31巻13号 (1996年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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