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編集後記
丸山 雅一
pp.596
発行日 1995年3月25日
Published Date 1995/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105393
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科学の絶対主義が復活してきたような雰囲気がある.しかし,一方では,進歩とは集団幻想にすぎないという見方も成り立つ.進歩ということに対する現象的なアンチテーゼとして,地球上から消滅した細菌はないことを挙げるべきか.結核菌50年周期説に先見の明ありというべきか.あるいはまた,進歩ではなく,変化したにすぎないとみるべきか.少なくとも,地球は餓えており,そこに住む多くの人類は,宗教戦争に走っていることを事実として認めないわけにはいかない.結核菌に対して無防備な体制は着々とできつつある.集団幻想に酔いしれている分だけ,われわれは退歩しているような気もする.
現実に戻ると,結核の内視鏡所見は格段に見やすくなった.これは進歩の名に値するのではないか.X線診断について言えば,しぶとく自己主張する担い手がいまだに存在することに安堵する.結核の活動性・非活動性についてだが,これらの定義はどうなっているのだろうか.成書や権威ある論文を紋切り型に引用するのではなく,臨床診断と病理の乖離について疑問の余地はないのか.萎縮瘢痕帯といえども,その下層には炎症性細胞浸潤が存在する.
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