レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う
深達度診断に苦慮した大腸癌の1例
斉藤 裕輔
1
,
牛尾 恭輔
2
1旭川医科大学第3内科
2国立がんセンター中央病院放射線診断部
pp.570-572
発行日 1995年3月25日
Published Date 1995/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105386
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症例 患者は83歳,男性.1993年10月ごろから便秘傾向と血便が出現したため林医院を受診し,精検の結果,直腸癌と診断された.当院第2外科に手術目的で1994年1月12日入院した.注腸X線検査では,中部直腸左側壁に27×24mm大の隆起性病変を認める.病変は分葉し,中央にはバリウムの溜まりを伴っている(Fig. 1a).腹臥位では壁の変形と,側面像でニッシェ様の毛羽立ち像を認める(Fig. 1b).X線上はsm2癌と診断した・大腸内視鏡検査では,中部直腸に立ち上がりが明瞭な隆起性病変を認め,X線検査で認められたバリウムの溜まり,側面像のニッシェ様の所見は隆起の谷間と考えられた.色素撒布像と合わせても腫瘍は全体に柔らかい印象で,大きさからsm1と診断した(Fig. 2a,b).同時に施行した細径超音波プローブ検査(病変中央部付近でのスキャン)では粘膜筋板が描出され,かつ保たれており粘膜内癌と診断した(Fig. 3a,b).X線的にsm癌が否定できないためtranssacral resectionで外科的に切除した.病理組織学的には粘膜内に限局する高分化腺癌(ly0,v0)であった(Fig. 4).
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