胃と腸 3巻2号 (1968年2月)

今月の主題 胃集団検診と早期胃癌

綜説

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Ⅰ.はじめに

 胃癌患者の早期発見,早期治療には,癌に対する正しい知識の普及をはかるとともに,一般住民のスクリーニングから専門的検査を経て,さらに治療に至るまでの一貫した癌の医療体制を整備する必要がある.

 定期的な検診に地域住民を恒常的に参加させるために,あるいは事業所において,職場衛生管理の一環として逐年検診を行なうためには,どうしても専従して検診を企画し,実施する組織体制が必要である.

 宮城県では東北大学医学部山形内科と宮城県対がん協会が表裏一体となり,胃集団検診に関する一連の業務を担当してきている.

 現在われわれは集検から精検,事後管理までを一貫した方針で実施しているが,いわゆる宮城方式とよばれている検診方式について,昭和40年度(40.4~41.3)の成績を中心に具体的にのべてみる.

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Ⅰ.はじめに

 胃集検の現況については,昭和39年から逐年,全国的な規模で胃集検学会が集計,報告している.一方各種の集検術式,方法など,実施上の諸問題は,多数の研究報告を基礎とし,またそれぞれの専門研究班が取りまとめている.その結果,集検術式に関する限り,大まかなところ,現状での標準化は達成されつつあるものと考えられる.しかしながら,その他の実施上の諸問題については,各地区の特殊な事情,実施機関における胃集検の研究目的が異っていることから,それぞれの地区にふさわしいと思われる方法で解決がはかられている.このような傾向は,胃集検を漸進的に,また円滑に拡大するためと,各地区の特徴を生かした調査研究実施のためには,画一的な方法より,かえって望ましいものであろう.すなわち,それぞれの地区で胃集検の特徴を浮きぼりにして,疫学的な知見の開発に資すると共に,それぞれの集検方法を総合した場合,いかなる点を考慮すれば,よりよき集検効果を期待し得るかなどが,明らかになると考えられるからである.胃集検協議会は,昭和40年来,毎年1回研修会を行ない,各地区のおもな実施担当者に胃集検現地報告を依頼し,情報を交換している.また胃集検学会においても,消化器病学会,内視鏡学会との合同シンポジウムの一つのテーマとして,胃集検の地区での現況が,昭和42年の秋季大会に討議され,筆者もそれについて報告1)した.

 小文では,上述の諸点を考慮して,大阪地区の胃集検の現況を概括するとともに,われわれの大阪成人病センターの実施している胃集検方法の二三の特徴について言及する.

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Ⅰ.はじめに

 胃の集団検診が普及するにつれて,間接X線による胃の診断が頻繁に行なわれるようになってきた.しかし,間接X線の診断というものは,直接X線の診断に比較して,本質的に相違がある.すなわち,間接X線では疑診がつけられればよいのであって,質的診断を下す必要はない.間接X線では異常者群と正常者群とにふるいわけて,異常者群については,次に行なう精密検査によって質的診断を行なうのが通例である.

 このように間接X線は直接X線に比較して,1階級低い診断能を持っているのではあるが,その診断能を向上させることが大切なことは当然であろう.診断能向上に関係するものは,機械的問題と,技術的問題とに別けることができるし,さらに技術的問題を別けると,撮影技術の問題と読影技術の問題とすることができよう.撮影技術については,診断しやすいようなフィルムを作るように技師を訓練することによって,解決されると思われるが,読影技術はフィルムの良し悪しにも関係してくるが,多くの場合,読影者の読影能力によって間接X線の判定が異なるという一面も考慮しなくてはなるまい.もちろん病変が大きいものであれば,誰しも見逃さずに異常所見を指摘できると思うが,病変が小さくなり異常所見が極くわずかになると,読影医師の判定も分散してくるであろうし,また,微細な病変,特に,早期胃癌を捜そうとしていると,正常者のX線像のうちでも,わずかな所見を異常としてとり上げるような傾向になってくる.すなわち,間接X線を読影するときの読影態度というようなものも,その判定に大きな影響をおよぼすことになってくる.

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Ⅰ.まえがき

 胃の非上皮性腫瘍の確診は,種々の検査法の発達した現在でもかなり困難な場合が多い.ここに直視下生検によってもなお診断が困難であった胃穹窿部平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.

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Ⅰ.まえがき

 早期胃癌症例の増加と共に,潰瘍性病変のあるものは経過観察中にX線ならびに,内視鏡所見が著しく変化し,初回検査時良性潰瘍と診断され,その後の検査により早期胃癌の所見を呈してくる例,あるいは潰瘍が縮少ないし消失する例などが多く報告されるようになった.私共は胃集検により胃潰瘍疑診とされ内視鏡検査により幽門部前壁の良性潰瘍と診断,内科的治療により潰瘍の消失をみたが,検査を重ねてゆくうらに,Ⅱc型早期胃癌としての所見が明らかとなった例を経験した.

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症例

 患者:木○昌○ 59歳 ♂

 初診:昭和41年11月21日

 手術:昭和42年4月26日

 主訴:昭和41年11月19日突然眩暈,嘔吐を来した.

 既往歴:昭和40年12月胃のX線検査を受け,幽門部潰瘍と診断され,3カ月ごとに検査を受け,潰瘍は縮小してきたといわれていた.

 昭和41年7月,胸部X線撮影により,肺結核と診断され,SM,PAS,INAHの三者併用化学療法を受けた.しかしPAS内服により胃の具合は悪かった.

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Ⅰ.はじめに

 早期胃癌の発見能力の進歩は最近著るしく,数多い症例の経験とその集積は早期胃癌の各種のパターンの整理と相俟って,興味の中心はより小さな早期胃癌またはより診断の困難な部位の早期癌,または発生論的に興味のある早期癌の発見えと発展して来た.

 したがってこのように小さなまたは浅い早期胃癌をX線または内視鏡検査で診断する手がかりは,もはや異常所見をとらえるというよりは,むしろ正常でない粘膜像の分析というほど軽微な変化をも問題にしなければならなくなった.

 次に示す症例は1)診断の手がかり,2)病巣の大きさ,3)各種検査方法の多面的応用による綜合診断,4)早期胃癌の発育等の点で興味ある知見をえたのでここに紹介する.

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Ⅰ.症例

 患者:佐○ミ○エ 52歳,女.

 主訴:心窩部痛.

 既往症:昭和39年7月急性肝炎に罹患3カ月入院加療.

 家族歴:特記するほどのものはない.

 現病歴:昭和38年12月頃より,時々心窩部痛をおぼえるようになったが,売薬などをのんですごしていた.ところが,昭和40年6月にいたり,心窩部痛がつよくなり,さらにはきけがあらわれてきたため,精査を希望して,同年7月14日内科に入院した.

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 症例:57歳,女子

 主訴:貧血並びに腹部膨満感

 家族歴:特記すべきものなし.

 既往歴:生来聾啞,46歳子宮筋腫の手術.

 現病歴:約2年前より貧血,腹部膨満感があり,貧血の治療を受けていたが,昭和40年10月腹部腫瘤を指摘され当院に入院す.食思良好で便通1日1行,全経過を通じて腹痛,消化管顕性出血(吐血並びに下血),嘔吐,むねやけ,げっぷ,発熱並びに黄疸は認めない.

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Although numerous cases have been diagnosed as tertiary syphilis of the stomach, as judged from the reports in the world literature, gastric involvement of secondary syphilis is said to be extremely rare. The present paper concerns a patient who was initially diagnosed as gastric sarcoma by X-ray and gastrofiberscope, and who was eventually confirmed to have secondary gastric syphilis by direct-vision gastrofiberscopic biopsy.

上部早期胃癌の症例 秋山 吉照
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Ⅰ.まえがき

 早期胃癌の中でも噴門部あるいは噴門に近接する胃体上部に限局するものの診断はかなり困難であって,当病院でも昭和39年度までに手術された早期胃癌(癌深達度が粘膜下層までのもの)60例の中にはわずかに1例が含まれるに過ぎなかった.しかし,多くの先輩や学会で啓発されて,又内視鏡検査を併用して該部の診断にもなれてきたためか,昭和40年と41年度にはすでに7例の早期胃癌を発見することができた.従って,現在までに当病院で手術された早期胃癌117例中,いわゆる胃上部に限局していたものは8例,7%を占めることになった.今回はその中の1症例について報告したい.

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 患者:曾 ○ 薫 59歳,女,農業

 初診:昭和41年9月26日

 手術:昭和41年12月2日

 主訴:心窩部不快感,食欲不振,嘔吐.

 家族歴:母,42歳時胃疾患で死亡.父,62歳時下痢で死亡.同胞5人.そのうち一人胃癌にて死亡.

 既往歴:著患なし.

 嗜好品:酒,煙草を嗜まず,菓子を好む.

 現病歴:昭和41年7月頃より心窩部不快感,9月初旬より食欲不振,悪心,3日に1回位の嘔吐あり.

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Ⅰ.緒言

 1950年から1953年にかけて,アメリカの遺伝学者Gardner一派は1~4,109人の同一家系におけるfamiliar colonic polyposisの検索を進める間に,さらに2つの特有なabnormal growthの合併に注目した.すなわち,osteomaおよびexostosisの“hardtumors”と,sebaceous cyst,epidermoid cyst,fibromaその他種々の皮下軟部組織における“softtissuetumors”とである.

 以来これをGardner's Syndromeと呼んで,欧米においては続々と追加発表せられてきたが,本邦では,最近の井上ら5)および木原6,7)の報告があるのみである.

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市川(司会) 「胃集団検診と早期胃癌」という題でございますが,先づ集団検診をやっておられる途中で一番悩んでおられることの中できょうはぜひ一つ話したいというようなことがございましたら,そういう話題を一つづつ提供していただきまして,それを中心に先生方の御意見を拝聴したいと思いますが,北川先生から一つお願いいたします.

研究会紹介

青森胃腸同好会 長谷川 秀郎
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 桜の花が,まさに咲かんとする「みちのく」青森の地に,県内で,胃と腸殊に胃の診断学に積極的に関心のある医師達が集まり,第1回研究会の発足をしたのは,昭和39年4月下旬,春とはいえ,まだ肌寒い日でした.夫々に持ち寄った,生の胃レ線フィルムを提示し,それを討論し合い,時間のたつのも忘れる位でした.会員も当初は,一応のレベルにあると互いに認めあった二十数名の方々で,従って,普通のいわゆる学術講演会と違い,デスカッションがとても活発で,仲々楽しい雰囲気がつくられました.そうして,暗黙の中に次の約束事が成立しました.1)会員は余り増やさない.2)連続3回以上欠席したら,以後,例会の通知をしない.3)胃レ線は原則として生のフィルムとする.4)出来るだけ結論のでない空議論は避ける.5)二か月に一回開催する.このようにして,ともかくも手をつないで,ほそぼそと歩き出しました,第3回の例会に,白壁彦夫先生においで頂き,二重造影法及び早期胃癌のお話しをお聞きするに及んで,我々は更に大きな幅を持つ発端となりました.次いで山口博士,松永教授の御講演があり,かくして,漸く基礎は固まって来ました.以後は,例会の度に,我が国で最も権威のある一流の先生方の御来青を頂く事が出来まして,我々は,とても幸な道を歩む事が出来ました.東野教授(整形),青山博士,城戸博士,村上忠重教授,山田博士,野崎教授,市川博士,崎田博士,野辺地博士,熊倉博士,佐野博士,多賀須博士,五ノ井博士の諸先生方で,中には,2度も3度も御講演を頂いた先生方もございました.この間,会員も次第に増え,帰りの汽車のない遠方よりも集まり,昭和42年末,第22回例会時には,五十数名となり,内科,外科,病理と多彩です.毎年夏には,村上教授,白壁先生を囲んでの懇親会で,12月には松永教授を中心の忘年会での,平生ではお伺い出来ない色々のお話しを,お聞きするのも又楽しみの一つです.

山陰胃腸疾患研究会 野田 良吉
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 毎月第3土曜日午後5時半,厚生会館(鳥取大学医学部)で,石原内科田中講師の司会で山陰胃疾患研究会が始まる.間もなく缶ビール,軽食がどこからか差入れられて,第1例が提出される.まずは型の如く,レ線の読影で,先陣を承わるのは医局の新鋭,立位充満像から順に,時には明快に,時には上り気味に読む.ついで病院からあるいは開業の先生など数名がそれぞれの診断を下す.勿論診断が二派に分かれたり,附帯意見がついたりする.軽くビールが入り,口がなめらかになって内視鏡の読影に移り,レ線と同様に行なわれる.ここで一応綜合診断がつけられ,司会のまとめがあって,切除胃,組織が開かれる.切除胃,組織所見は,常連の綾部外科古賀助教授,前田講師の御意見を聞く.又,術前患者のレ線,あるいは内視鏡所見から爾後の検査法とか,手術をどうするかなどの相談が提出されて,討議が行なわれる.5例,6例と進むうちに夜が更けて,手持の症例が次回に繰越されることも屡々である.時には特別講義として,症例の外に関連各領域のエキスパートから30分程度のレクチャーが組込まれる.例えば最近では大腸のレ線像,大腸ポリポージス,膵の検査法などがあった.又各機関での胃検査法の比較検討をしたり,特殊撮影法の披渥があって,反転撮影の名手が現われたりする.

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編集後記 川井 啓市
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 本誌が発刊されてすでに3巻2号とは本当に早いものだと思います.早期胃癌研究会終了後開かれる編集会議は,毎回12時を過ぎ,「午前様」となるのが殆んどですが,時間も忘れて本誌の特徴を示す綜説のテーマや,編集内容に,村上教授を中心に熱心な討議がかわされます.

 他の医学雑誌と比較して特色あることは編集員の数多いことで,常に第一線の読者の意見を反映するよう努力しています.しかしそれでなくとも「胃と腸」といったせまい領域のなかで,マンネリズムにならぬよう今回からは更に9名の編集協力者の積極的な意見を仰ぐことになり,単に同人雑誌の弊におち入ることなく,新鮮な,有益な話題を雑誌に反映させ,私達の手による,私達のための雑誌に育てて行きたいと思います.ところで本号は本邦で最近特に話題の中心になっている胃集団検診をとりあげました.胃集検もやっと単に学問的,研究的な興味としてのみでなく実用的な胃集検へと育って来ました.ここで発見される早期胃癌は早期胃癌診断学の進歩のために数多くの問題を提供してくれますし,更には胃潰瘍・胃ポリープ等の動態も解明されるでしょう.この方法こそが胃癌対策としての早期発見・早期手術を満足させてくれるものであり,一層の普及を願って止みません.この道で最も経験も古くかつ数多い山形教授の綜説,この分野で指導的役割を果している癌センター集検部の間接フィルム読影に関する基礎的検討,及び愛川博士による大阪地区での胃集検の実際,外来集検のあり方など,将来の展望も含め問題の核心が明らかにされています.更に市川氏の名司会による座談会が問題点を要約し錦上花をそえてくれます.

基本情報

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胃と腸
3巻2号 (1968年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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