胃と腸 26巻11号 (1991年11月)

今月の主題 膠原病と腸病変

序説

膠原病と腸病変 小林 絢三
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 膠原病は単一の病気ではなく,全身の結合組織,特に膠原線維にフィブリノイド変性などの共通の病変がみられる疾患群であり,また,代表的な自己免疫疾患でもある.強皮症(PSS),全身性エリテマトーデス(SLE),皮膚筋炎(DM),リウマチ様関節炎(RA),結節性動脈周囲炎(PN)などが,いわゆる古典的膠原病として知られており,更に大動脈炎症候群,Behçet病,特発性血小板減少性紫斑病なども膠原病の類似疾患と考えられている.

 膠原病の示す初期症状から本症を疑い確診に至った例を多数経験している人はそれほど多くはない.数か所の医療機関を受診しているうちに多彩な全身症状が出現し,本症が疑われ,血液所見などから確診が可能となる例がほとんどではないかと考えられる.しかし,一度典型例を経験すれば,その特有の症状ないしは所見から本症を疑うことは決して難しいことではない.

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要旨 進行性全身性硬化症(PSS)患者12例を対象とし,消化管病変の特徴を小腸を中心に検討した.X線所見では食道・十二指腸・空腸の拡張を各6例(50%)に,大腸のhaustraの消失・減少を5例(46%)に認めた.充満像および二重造影像の検討では,空腸拡張像を認めたPSS群は正常対照群と比べ腸管幅が有意に大きく皺襞谷幅が有意に小さかったが,皺襞山幅には差がなかった.PSS症例の充満像と二重造影像を比較すると,二重造影像において腸管幅は更に拡張し,皺襞谷幅は更に縮小した.小腸X線像の経過が追えたPSS例では,経過と共に腸管幅の拡大と,皺襞谷幅・山幅の縮小が観察された.生前腸管の拡張が著明であった剖検例の組織像では,全消化管の粘膜下層・固有筋層に膠原線維の沈着と慢性炎症細胞浸潤を認めた.筋線維の消失・減少は,特に十二指腸・空腸の内輪筋において顕著であった.以上の結果から,PSS患者の小腸X線像では腸管幅の拡張と皺襞谷幅の縮小に注目することが診断上重要である.更に,拡張の程度は腸管の組織障害の程度を反映していると考えられ,病変の進行度を客観的に評価するうえで,小腸X線検査は有用であると思われた.

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要旨 腸病変を合併した全身性エリテマトーデス(SLE)5例を報告した.年齢は16~44歳(平均33歳)で,男性1例,女性4例であった.SLEの病悩期間は8か月~20年(平均7.2年)であった.合併腸病変は,虚血性腸炎型(3例),蛋白漏出性腸症型(1例),大腸多発潰瘍型(1例)の3型に分類できた.虚血性腸炎型では,突然の腹痛で発症し,X線上全小腸に及ぶ皺襞浮腫像(一部に母指圧痕像)が描出された.蛋白漏出性腸症型では,比較的緩徐に発症し,多発性結節状陰影を主体とするX線像を示した.大腸多発潰瘍型も比較的緩徐に発症し,直腸~S状結腸に類円形の多発小潰瘍を認めた.3例で施行できた生検では血管炎の所見は捉えられなかったが,腸病変がSLEの活動期に発生していること,副腎皮質ホルモンの投与あるいは増量によって症状および腸病変の改善を認めたことなどより,これらの病変がSLEによる血管炎に基づいて生じたものと推測された.以上の成績より,活動期SLEの患者では,腹部症状の出現に留意し,腸病変の早期発見と早期治療に努めるべきであると考えられた.

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要旨 慢性関節リウマチ(以下,RA)患者でアミロイドーシスを伴わず大腸な

いし小腸に潰瘍性病変を認めた5例について,その形態学的特徴,成因を検討した.病変部位は,4例は大腸で左半結腸に生じ,S状結腸には4例とも病変が認められた.残り1例は小腸で終末回腸であった.潰瘍の形態は縦走潰瘍とアフタ様ないし円形潰瘍の混在で,1例を除いて多発していた.更に,潰瘍の境界は鮮鋭で,介在粘膜には明らかな異常所見は認められなかった.RAの病期,病悩期間,活動性および治療薬と潰瘍発生には,明らかな因果関係は認められなかった.成因については,小腸病変の1例は組織学的に血管炎が証明された.大腸病変の4例中1例は虚血性大腸炎に一致する組織像を呈し,残り3例では確診は得られなかったが,臨床像は虚血性の変化と多くの共通点を有していた.潰瘍の成因としては,RAに起因した血管炎などによる慢性的な末梢血管の循環不全の関与が示唆された.

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要旨 外科切除あるいは剖検された7例の結節性動脈周囲炎(PN)の腸を病理学的に検索した結果,PNにおける小腸潰瘍の肉眼的特徴は以下のごとくであった.①多発性で,潰瘍間に軽度浮腫状またはほぼ正常の粘膜を残す,②腸間膜付着対側に好発する,③形は主に不整形,大きなものでは腸間膜側に拡がる傾向があり,亜輪状,輪状となるが,概して腸間膜付着対側で幅が広い,④腸管長軸方向の長さの長いものは少なくほぼ3cm以下である,⑤深さは浅い(Ul-Ⅰ~Ⅱ).以上の結果に加え,潰瘍以外の腸病変として動脈瘤からなる粘膜下腫瘍様小結節と血腫を指摘した.これらを基に,組織学的所見および文献的知見を加味し,また,PNにおける腸潰瘍の肉眼的特徴,成因,鑑別診断について考察を加えた.

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要旨 大量下血により死亡した全身性進行性硬化症の1例を経験したので報告する,患者は39歳女性で,13年前から手指関節痛,足関節痛が出現し,皮膚硬化像,指尖の化膿性創傷,手指の屈曲拘縮,両側下肺野線維症が進行し,上腹部痛,食欲不振,嚥下困難を主訴に入院した.入院後,水様下痢便と頻回に出現する腹痛を認めていたが,突然,大量下血を来し,ショック状態となり死亡した.剖検では腸管やその他の全身臓器に壊死性血管炎を認めた.特に小腸では壊死性血管炎による多発潰瘍が認められ,大量下血の原因と考えられた.

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要旨 患者は75歳,女性.発熱,末梢神経炎,筋力低下,白血球増加症,好酸球増加症,下腿紅斑に,腹痛,タール便の消化器症状を合併し,結節性多発動脈炎(PN)を疑った.腹部症状発症後23日目の小腸造影で回腸に盲瘻,回腸瘻を形成した炎症性の所見を得た.発症2か月後の小腸造影で回腸の病変部は長い狭小像に変化し,虚血性小腸炎の診断がついた.切除標本の病理学的検討で全層性の動脈炎の所見を得,PNに合併した虚血性小腸炎の診断を得た.

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要旨 患者は53歳,男性.1969年に進行性全身性強皮症と診断された.それ以来,逆流性食道炎,および食道潰瘍による胸やけ・吐血を,また偽腸閉塞による上腹部痛,嘔気,嘔吐を再三起こし,入退院を繰り返している.食道X線検査,内視鏡検査で食道中部から下部にかけての拡張,凹凸不整な粘膜を認めた.十二指腸・小腸X線検査で十二指腸下行脚から水平脚にかけての拡張を,空腸上部に狭窄と拡張を認めた.7年後の再検では,十二指腸の拡張に変化はみられなかったが,空腸には所見を認めなかった.本症例のX線所見について若干の文献的考察を加えて報告した.

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要旨 患者は29歳,女性で,全身の筋肉痛・筋力低下を主訴に来院した.臨床所見,検査所見より皮膚筋炎と診断された.悪性腫瘍合併の検索のため大腸X線・内視鏡検査を施行したところ,横行結腸に2型大腸癌を認め,またUS・CTから肝左葉に孤立性の転移巣が疑われた.横行結腸癌肝転移と診断し,横行結腸切除術兼肝左葉切除術を施行した.病理組織学的には大腸原発性の高分化腺癌および肝転移と診断された.患者は術後31か月現在,外来で経過観察中であるが,皮膚筋炎の症状は消失しており癌再発も認めていない.以上,大腸癌の発生が皮膚筋炎発症の何らかの要因となったと思われる若年女性症例を若干の文献的考察を加え報告した.

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要旨 患者は31歳,女性.11年前よりSLEの診断で緩解・増悪を繰り返し,ステロイド剤で長期治療を受けていたが排便困難,下腹痛が出現,内視鏡検査で直腸に多発潰瘍を認めた.潰瘍は境界明瞭で下掘れ傾向の著明な全周性潰瘍とほぼ円形の潰瘍で,中心静脈栄養で経過観察していたが潰瘍の縮小・治癒傾向が乏しく,潰瘍確認24日後穿孔を来した.切除標本では3.5×7.2cmの全周性潰瘍(穿孔部0.4×0.2cm)と1.4×2.0cmの多発潰瘍を認めた.組織学的には潰瘍は下掘れする打ち抜き状の潰瘍で,潰瘍底部や漿膜下の小動脈に高度の動脈硬化および血栓形成(静脈にも高度)と炎症細胞浸潤を認め,動脈硬化とSLEの血管病変による循環障害から潰瘍および穿孔を来したと考えられた.

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要旨 患者は27歳,女性.他医で1983年に診断された小腸大腸型のCrohn病患者である.経過観察中に回腸およびS状結腸に潰瘍を認め,また,回腸直腸瘻,肛門部に盲瘻孔を認めた.典型的な縦走潰瘍,非乾酪性肉芽腫はみられないものの当科においてもCrohn病と診断された.1989年5月,顔面の蝶形紅斑,手指背面の円板紅斑,関節痛,発熱を訴え入院となった.免疫学的検査ではLE test,DNA test 陽性,抗核抗体は320倍陽性でspeckled-diffuse型混在であった.血清補体価はCH50 20.9U/ml,C3C 35mg/dl,C4 9.1mg/dlと低下していた.ステロイドパルス療法が行われ,後療法としてpredniso-lone 30mgの投与が行われ,解熱,関節痛の消失,皮膚の紅斑の消失,白血球,補体価の上昇が認められた.

今月の症例

食道粘膜内癌の1例 八巻 悟郎 , 海上 雅光
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 〔患者〕33歳,女性.

 現病歴:会社の健康診断で上部消化管X線検査を行い,食道の異常を指摘された.内視鏡検査の結果,食道癌の診断であったので,精査,治療のため当院に紹介された.

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要旨 患者は55歳,男性.難治性下痢と腹部膨満感の精査加療目的で入院.左鎖骨上窩リンパ節腫大と腹部USおよびCTで腹腔内リンパ節腫大と腹水を認めた.血液検査では白血球数8,400/mm3で分画には異常を認めなかった.血清抗HTLV-1抗体陽性でLDHは高値であった.消化管X線検査では十二指腸から小腸および大腸にかけてポリープ様隆起が多発してみられた.十二指腸の隆起性病変の生検組織で非Hodgkin悪性リンパ腫(T細胞型)と診断された.以上から消化管浸潤を伴った成人T細胞白血病と診断し,化学療法を施行した.リンパ節腫大,ポリープ様隆起および腹水は消失し,症状も改善した.本例はmultiple lymphomatous polyposis様の消化管浸潤を呈した成人T細胞白血病の1例と考えられた.本例を含め成人T細胞白血病の消化管病変の特徴につき文献的考察を加え報告した.

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要旨 先天性虹彩欠損症を有する16歳の女性.嘔気,嘔吐を主訴として入院.上部消化管透視,内視鏡検査,腹部CTなどにより口側空腸に腸重積症を見出した.手術の結果,重積部を中心として約20cmにわたり多発性のポリープを認めた.組織学的には粘膜上皮細胞の異型性は認められなかったが,粘膜下層の浮腫,粘膜上皮の絨毛の消失・癒合・乳頭状増生,表層上皮の過形成など多彩な所見が認められ,従来報告されている腸腫瘍のいずれとも合致しなかった.リンパ球を用いた染色体分析では異常を認めなかったが,近年,無虹彩症とWilms腫瘍の合併例が多いことが報告されており,ポリープの発生に遺伝子異常が関与している可能性も考えられた.

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要旨 下咽頭癌を同時性に重複した胸部食道表在癌の4例を経験した.全例に共通する事項として,①50歳台の男性,②梨状陥凹部原発の進行癌(Stage Ⅳ),③胸部食道に長径3.5~10cmの深達度ep~smの表在癌の存在,である.〔症例1〕は胃の早期多発癌を,〔症例3〕は口腔底癌を更に重複した.現在まで,口腔・咽頭・喉頭領域腫瘍の3.7~57%に胸腹部食道癌の重複が報告されている.筆者らの施設においては,食道癌切除例の3.9%(5/128),下咽頭癌切除例の21.1%(4/19)にそれぞれの癌の合併を認めた.根治手術(頸部郭清,非開胸食道抜去,喉頭全摘,下咽頭胃あるいは結腸吻合術)および術前後の集学治療にもかかわらず全例2年以内に死亡し,食道癌あるいは下咽頭癌の単発例に比較し著しく予後不良であった.4例の診断過程および病理所見を検討し,口腔・咽頭・喉頭領域腫瘍の治療に当たっては多発癌の観点から食道病変の十分な精査を行い,予後の向上に努めるべきことを強調した.

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要旨 患者は61歳,女性.1964年に子宮頸癌根治手術と術後放射線照射を受けた.1984年にS状結腸狭窄を指摘され,X線,内視鏡検査,生検で放射線大腸炎と診断された.1987年に狭窄部生検で癌と診断され,S状結腸切除術を受けた.切除標本では,狭窄部中央に陥凹があり,陥凹肛門側には細胞異型が高度な小さい高分化腺癌が存在した.陥凹の大部分では,粘液を産生する異型に乏しい細胞からなる腺管が,腺管内粘液貯溜や筋層内粘液塊形成を伴い粘膜下層に至るまで侵入しており,colitis cystica profunda(CCP)に類似していた.しかし,上皮の構造異型と破壊性増殖と脈管侵襲を呈することから,やはり高分化腺癌と診断した.周囲には軽度のCCPを伴う典型的晩期放射線性大腸炎が認められた.

初心者講座 胃X線検査のポイント―私の精密検査法

10.微小癌 渕上 忠彦
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 1.はじめに

 X線検査による微小胃癌の診断は容易ではなく,内視鏡検査が優れると言う論文が多い.私は,質の悪いX線検査は確かに質の良い内視鏡検査に劣るし,逆に質の悪い内視鏡検査は質の良いX線検査に劣ると考える.それでは「質」(検査の精度)とは何かということになるが,胃小区像,微細模様がどの程度描出されているかにより決まると思う.また,微小胃癌をX線検査で診断するには(内視鏡検査でも同じであるが),それがどのような形態学的特徴を有するのか熟知したうえで検査・読影に当たる必要がある.

 1.陥凹型微小胃癌の形状

 切除標本肉眼像からみた陥凹型微小胃癌の形状分類をFig.1に示す.陥凹部の形により点状(2mm以下)をⅡc-P,星芒状をⅡc-S,線状をⅡc-Lとした.Ⅱc-U型は一見して病変の指摘は難しいが,よく見ると不規則で極めて浅い陥凹があり,陥凹部には小区様構造が残存している病変で,Ⅱbとして取り扱っている施設も多い.Ⅱc-Dは病変の指摘が容易な比較的大きな病変である.

10.微小癌 西俣 寛人 , 瀬戸山 史郎
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 切除標本上0.5cm以下の癌を微小癌と呼んでいる.われわれの教室では切除標本を0.5~0.7cm間隔で全割し,病理組織学的に検討している.過去5年間で56病変の微小癌が病理組織学的に発見されているが,単発の臨床で発見した微小癌は11症例である.56病変の肉眼形態はⅡc 43病変,Ⅱb 12病変,Ⅱa 1病変である.臨床での発見例は全病変Ⅱcである,形態学的診断にはその肉眼型を十分に知ることが必要である.

 X線診断は陥凹部にはバリウムを溜め,隆起部は,隆起の辺縁でバリウムをはじかせ,そのX線像で病変の存在と,質的診断を行っている.現在のX線診断能であれば,肉眼形態的に陥凹,隆起をはっきり指摘できる病変であれば,0.5cm以下の病変でも描写可能である.われわれの教室で病理組織学的に発見された微小癌の大半はⅡcであるが,切除標本上では病変を指摘できないものが大半である.単発で臨床的に発見された病変の中にも切除標本上病変を指摘できる病変と,できない病変とがある.本稿では,X線診断の容易な微小癌と,切除標本上病変を指摘できない症例のX線像を供覧して,微小癌のX線診断について述べる.

10.微小癌 三輪 洋人
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 1.はじめに

 一般に,精密検査を行う場合,病変の存在診断に加えて質的診断が可能なX線写真を得る必要がある.5mm以下の小さな変化である微小癌を対象とする精密検査の場合,これを的確に描出することは最も根気のいる作業となる.

 検査にはいくつかのポイントがある.前処置(われわれの施設での方法は本誌26巻4号のこのシリーズで既に詳述),撮影の技術,撮影手順に関する頭の中での組み立てなどである.また,撮影条件もX線の出来を左右する大きな要素である.微小病変では精緻な至適条件での撮影が要求されるため,放射線技師の協力が不可欠となる.更に微小癌の撮影は時間のかかる作業であるため,患者の協力も必要である.これは検者の熱意が患者に伝われば自ずと得られるものと考えている.

 以下,微小癌の撮影の実際を述べる.

早期胃癌研究会

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 〔第1例〕55歳,女性.表在食道癌0-Ⅱc(症例提供:都立駒込病院内科 加藤).

 読影は八巻(虎の門病院放科)が担当.X線では胸部中部食道に結節状隆起と粘膜集中像がみられ,中心にバリウムの溜まりがある(Fig.1).内視鏡でも同様であるが,境界は明瞭であり,内視鏡のほうが全周性であることがわかる.病変は単発で変形が強いので,深達度smの陥凹型の癌とした.これに対して鈴木(岐阜大放科)は,変形の状態と粘膜集中像の存在はsmにがっちりと浸潤している典型像とは異なり,pmも考えたいが,sm量は少なくfibrosisがかなり強いのではないかとした.病理は加藤(駒込病院)により解説された.大きさ4.5cmで,表面の平滑な部分と,その肛門側を取り囲むように顆粒状の隆起が存在し,この部分でsmにmassiveに浸潤する中分化型の扁平上皮癌で,強いfibrosisを伴い,周囲には所々にepの拡がりとmmの部分があるとした.渡辺(新潟大病理)から生検によるfibrosisか否か,白壁からこの病変の分類についての質問があり,これに対して吉田(駒込病院)から,生検の同定は困難であるが,通常,生検により引きつれをもたらすほどのflbrosisは非常にまれである,分類は困難で大雑把に陥凹と隆起の混合型と言えるが,従来の分類では無理であろう,との意見が出された.

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欧文目次

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 ミシガン大学内科のTadataka Yamada教授の編集による「Textbook of Gastroenterology」が出版された.山田教授が今年春の第77回日本消化器病学会総会の招待講演者として来日されたのは記憶に新しい.氏は日本で出生されたが,御父上(世界貿易センター理事長)から国際舞台での活躍を期待され,中学校から米国へ留学し,その後米国の消化器病学会のリーダーへと登りつめられたと聞く.ミシガンへ移られる前は,UCLAの胃潰瘍研究センター(通称Cure)で故Grossman教授の愛弟子として活躍され,その追悼が本書の謝辞に記されている.

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書評「超高速CT」 松山 正也
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 この度,医学書院から『超高速CT』が出版された.著者は舘野,飯沼,相澤,斎藤,亀井,松浦,井上諸氏の共著によるもので,それぞれの得意分野の分担執筆の形となっている.舘野,飯沼両氏はCTの原理や臨床応用などについて大変造詣の深い方々であり,代表著者の相澤氏は,循環器領域の画像診断,特にCT診断に取り組んでおられる有望なcardiologistである.

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 各病院で新人の研修医を迎え,入門のカリキュラムが始まったころ,この時期に活用したくなるような本が出版された.新潟県医師会によるこの本は,簡潔でポイントをついた臨床医の心得集であり,臨床医にとって最も重要な基本的姿勢,心構え,実践的かつ具体的なアドバイスが述べられている.

 初めに,今日の医療が組織的集団的な実践であるという認識に立って,先輩や同僚医師,看護婦などコメディカルスタッフとの良好な協力関係をつくることの大切さを述べている.私たちの病院でも,新人医師に院内すべての職場を回って見学・手伝いをさせるようにしている.相手の仕事や発想・行動様式を理解することなしに,良いチームワークを組めるわけがないのである.

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 本書の底流にあるものは,残り少ない生を生きる癌患者に対する著者のいとおしみといつくしみの心であり,癌患者の医療における全人性の追及の書であると言えよう.本書の初版がわが国の癌患者の終末期医療に果たした役割は,麻薬使用のタブー視からの解放を始めとして計り知れないものがある.

 今回の改訂版は初版から6年経っていることもあり,かなり書き改められている.特にオピオイド鎮痛薬の分類のしかたや,それに対する反応性による痛みの分類などが新しくされ,モルヒネ徐放錠が各項で追記されている.また,日常よく遭遇するリンパ浮腫が独立した項目で扱われている.日頃意に留めていなかった,または如何ともしがたいと半ばあきらめていた患者の苦痛や苦悩への対応について,実際的な知恵が随所に散りばめられている.肉体的のみならず精神的な苦痛,苦悩をいかに和らげ,患者が質の高い余生を送るのをいかに援助していくかについての,長年の研究と経験とに裏打ちされた腐心の内容である.

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 臨床医学教育は大変難しい.欧米においては様々な試みがなされ,卒前医学教育の早い時期から,病棟および外来で患者に接して行うのが最も効率的であるということが明らかになっている.そしてその方法が多方面から研究されてきた.

 わが国でもその方向に進んでいるが,この新しい医学教育の科学的システム作りに努力されている佐賀医科大助教授福井次矢先生を中心として,若い世代の諸先生によってこの本が書かれていることは特筆に価する.これら若い先生方の簡潔で内容のある記述を読んで,臨床に徹した老大家の箴言(aphorism)ではないかと思われるような部分も多く,感銘を受けた.また,私はこれら著者に強い影響を与えている北米の伝統的医学教育の幅の広さ,奥深さを再び感じた.

編集後記 牛尾 恭輔
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 かつて,膠原病でみられる腸病変のX線像と言えば,バリウムの通過遅延,蠕動の低下,狭窄などといった大まかな所見であり,その像も充盈像,粘膜像や不完全な二重造影像が主体であった.それが今回の特集号では二重造影法で検討され,直接所見と間接所見の区別もなされてきている.膠原病の腸病変も,二重造影法によってようやく"確かな所見"として登場してきて,微小病変,X線像の経過など,控えめだが新知見に富む特集となった.この特集を支えた八尾グループの業績には感服せざるを得ない.

 ところで,この編集後記を書くため,すべての原稿を読み終えた日に,青崎らの症例「multiple lymphomatous polyposis様の消化器浸潤を呈した成人T細胞白血病の1例」と全く類似の注腸所見を示した患者の検査を担当し,ATLと診断しえた.カルテを見ると,はたして末梢血で白血球が18,200,腫瘍細胞が95%でATL抗体も陽性であった.これだから,臨床にすぐ役立つ形態診断学はやめられない.

基本情報

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胃と腸
26巻11号 (1991年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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