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書評「末期癌患者の診療マニュアル―痛みの対策と症状のコントロール 第2版」
松井 征男
1
1桜町病院・内科
pp.1310
発行日 1991年11月25日
Published Date 1991/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102699
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本書の底流にあるものは,残り少ない生を生きる癌患者に対する著者のいとおしみといつくしみの心であり,癌患者の医療における全人性の追及の書であると言えよう.本書の初版がわが国の癌患者の終末期医療に果たした役割は,麻薬使用のタブー視からの解放を始めとして計り知れないものがある.
今回の改訂版は初版から6年経っていることもあり,かなり書き改められている.特にオピオイド鎮痛薬の分類のしかたや,それに対する反応性による痛みの分類などが新しくされ,モルヒネ徐放錠が各項で追記されている.また,日常よく遭遇するリンパ浮腫が独立した項目で扱われている.日頃意に留めていなかった,または如何ともしがたいと半ばあきらめていた患者の苦痛や苦悩への対応について,実際的な知恵が随所に散りばめられている.肉体的のみならず精神的な苦痛,苦悩をいかに和らげ,患者が質の高い余生を送るのをいかに援助していくかについての,長年の研究と経験とに裏打ちされた腐心の内容である.
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