胃と腸 12巻10号 (1977年10月)

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 多発性胃潰瘍を合併したⅡaとⅡbの重複癌を経験した.両癌巣は組織型を異にし,癌の存在様式も散在性,点状で癌の多中心性発生を示す興味ある所見を呈したので,臨床診断学的ならびに病理組織学的に若干の検討を加えて報告する.

症例

 患 者:H. K. 51歳 男性

 主 訴:心窩部痛

 家族歴:父が胃癌で死亡

 既往歴:16歳時虫垂切除術を受ける

 現病歴:4力月前より空腹時に心窩部痛があったが節食で軽快していた.2週間前から痛みが増強してきたので近医を受診した.胃透視,内視鏡検査の結果,胃潰瘍を指摘され精査の目的で当科を受診した.

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症例

 患 者:25歳 女性

 主 訴:心窩部膨満感

 術前診断:胃体部前壁のスキルス

 手術:1975年9月7日

 術後診断:Borrmann4型(粘膜面陥川部の大きさ7mm×6mm,周辺隆起部の大きさ56mm×36mm)深達度ss,poorly.diff. adenocarc.,scirrhous.浸潤範囲の大きさ62mm×53mm.

 X線検査所見

 Fig.1(立位正面充盈像):胃体部大彎のふくらみは悪く,矢印間に辺縁の直線化がみられる.

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 近年の早期胃癌の発見はめざましいものがあるが,各施設における肉眼分類のばらつきが指摘され,肉眼分類の再検討が議論されている.

 われわれは集検にて発見された早期胃癌でⅡc内にⅡa集簇様隆起を認め,その隆起が非癌粘膜から成り立っている症例を経験したので報告する.

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 胃癌の組織発生とその進展を検討する方法の1つとして,retrospective follow up studyが重要視され1),これに関しての多くの知見が得られている.従来の報告によれば,陥凹型早期胃癌はⅡbより発育する2)3)か,ないしは悪性サイクルを示すものがほとんどであり4)~7),隆起型胃癌より進展した症例の報告は見当らない.しかしわれわれは,約3年7カ月の経過観察にて胃角前壁のⅠ+Ⅱb型早期胃癌がⅡc+Ⅲ型早期胃癌となったと思われる興味ある1例を経験したので報告する.

症例

 患 者:72歳 男

 主 訴:心窩部痛,嘔気および少量の吐血

 家族歴:特記すべきものなし

 既往歴:18歳腸チフス,64歳肝硬変症

 現病歴:1972年7月14日より約2カ月間,肝硬変症の診断の下に本院内科へ入院,その際,胃透視にて角小彎の隆起陸病変を指摘されたが,そのまま放置した.退院後たいした自覚症状なく過ごすも,1976年1月21日心窩部痛,嘔気とともに少量の吐血をきたし,同年1月29日本院内科を受診,再び胃透視にて異常を指摘され,精査加療のため,同年3月1日入院した.

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 Glomus腫瘍はおもに四肢の皮下,爪下に好発する淡紫色ないし桃色の腫瘍で,胃に発生することは稀である.その報告例はKanwar4)によると世界で67例(本邦例6例を含む)であり,本邦では庄司5)の報告以来十数例の報告があるのみである.

 われわれは胃幽門前庭部に発生した粘膜下腫瘍で,選択的腹腔動脈造影で特異な像を呈し,術後組織学的にglomus腫瘍と診断した症例を経験したので,以下にそれを報告し,併せて若干の文献的考察を行なう.

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 わが国における胃診断の飛躍的発展により,胃粘膜下腫瘍の報告を数多くみる.胃粘膜下腫瘍の鑑別診断はその特有な所見について,X線的に,また内視鏡的に諸家の報告が多くみられるが,ときに十二指腸内に脱出し嵌頓した場合,その鑑別は困難である.われわれは胃穹窿部に基を有する粘膜下腫瘍が反覆して十二指腸内に逸脱した症例を経験したので報告する.

症例

 患 者:沢○セ○ 63歳 女性

 主 訴:左季肋部痛,摂食時嘔気,嘔吐

 既往歴・家族歴:特記すべきことなし

 現病歴:1972年2月頃より時々腹部膨満,心窩部不快感あり,他医にて胃X線検査をうけ胃隆起性病変を指摘される.以後放置していた.1974年11月,突然左季肋部激痛,嘔吐をきたし胃X線検査の結果,胃の著しい変形を指摘され当院に紹介入院す.激痛は鎮痙鎮痛剤の頻回にわたる投与後に軽快したが,2日後再び激痛,嘔吐を繰返した.

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 胃にみられる非上皮性悪性腫瘍には,悪性リンパ腫がその約半数を占め,次いで平滑筋肉腫が多いといわれる.1962年,A. P. Stout1)は,胃に発生した平滑筋腫瘍を検討し,その中で臨床的に良性経過をたどり,組織学的には腫瘍細胞が非常にbizarreな形態を呈するものを選んだ.これらの腫瘍は,従来neurogenous tumor,vascular tumorなどの範疇に入れられていたものであるが,これをBizarre Leiomyoblastomaと名付け,その組織学的特徴を述べた.本邦では,1965年に久保らが3例の同症例を報告2)して以来,第62回日本病理学会で田中らが発表した5例を含めても20例に足りない.今回,われわれは,26歳という若年の男性例を経験したので,組織学的特徴および電顕的所見を中心として,文献的検討も加え報告する.

症例

 患 者:26歳 男性 事務員

 既往歴・家族歴:特記すべきことなし

 主 訴:空腹時の心窩部重圧感と嘔気

 現病歴・入院時所見:1976年2月に主訴が増強したため来院.痩身だが,結膜の貧血などはない.また,主な臨床検査成績は,赤血球495×1044白血球8,200,HB95%,血圧120~80であった.

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 直腸に径2.0×2.0cmと径0.3×0.2cmの2病巣が併存し,腹会陰合併直腸切断術を行ない,傍直腸および上直腸動脈周囲のリンパ節転移を認めた直腸カルチノイドの1例を経験したので報告するとともに,本症の治療上の問題点についての文献的な考察を加えてみたい.

症例

 患 者:59歳 男性 農業

 主 訴:肛門不快感

 家族歴:特記すべきことなし

 現病歴:肛門不快感があり,1976年1月,痔核手術をうけたが,肛門不快感が持続するので来院,肛門指診で肛門輪より5cm口側6時の部位を中心に可動性のない腫瘤を触知した.

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 胆囊に発生する良性腫瘍,とくに多発するものは稀とされている.われわれは,種々のタイプからなる多発性ポリープの1例を経験し,2,3の興味ある所見を得たので報告する.

症例

 患 者:52歳 女性

 家族歴:特記すべきことなし

 既往歴:25年前に胃潰瘍で内科的治療をうける.

 現病歴:数年前より食後の嘔気があり,1974年11月,当院第5内科受診,軽度の肝機能異常を指摘され経過観察中,1976年11月上旬より右季肋部痛が激しくなった.胃透視,DICなどの検査で胆囊結石と診断され11月24目入院した.

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 大腸癌が腺腫に由来するか,あるいは,いわゆるde novoに発生するかは,興味のある問題として,従来それぞれの立場から,多くの研究,主張があるところである.大腸癌が腺腫に由来すること,すなわち大腸腺腫の癌化の可能性は,一般に広く認められていると考えられる.事実,近年本邦においても多く報告されるようになった,いわゆる大腸早期癌のほとんどは隆起型であり,まだ典型的な陥凹型早期大腸癌の報告をみていないといえる.

 最近われわれは,家族性大腸ポリポージスという隆起性病変を主体とする疾患において,典型的な微小なⅡc型早期大腸癌を認めた,きわめて興味のある症例を経験した.この症例にっいて,診断的立場から報告する.

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 家族性大腸腺腫症は高率に癌化する無数の大腸腺腫を有する遺伝性疾患として知られ,従来諸家の関心はもっぱら大腸病変に向けられてきた.しかし1953年骨腫と軟部腫瘍(Gardner症候群)1),1959年脳腫瘍(Turcot症候群)2),1962年歯牙病変3),1968年甲状腺癌4)などの合併が報告されたほか,近年わが国において胃5)~7),十二指腸8),空・回腸9)10)病変なども高率に合併することが指摘され,本症を大腸の限局性疾患として扱ってきた従来の考え方は改められつつある.

 先にわれわれは合併胃病変の病理学的検討を報告した11)が,今回はそのX線・内視鏡像の特徴や診断上の問題点さらに胃病変の経過などについて検討を加えた.

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 実験胃癌の研究は,1967年,杉村ら1)がN-methyl-N''-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)を用いてラットの腺胃に高率に胃癌を作ることに成功して以来,急速な進展を示している.

 われわれはヒトの胃癌のモデルとして1969年よりイヌにMNNGを投与し,これまでに多くの胃癌を作ることに成功した2)3)5).われわれの研究目的はヒトの胃癌の組織発生と発育進展の過程を追求し,さらには治療モデルとして応用することであるが,イヌに発生せしめた胃癌はヒトにみられる胃癌のほとんど全ての形を含んでおり,ヒトの胃癌の研究材料としてきわめて有用であることが実証された.

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 本誌は8月号,9月号で胃癌の浸潤範囲と深達度の判定をテーマに特集を組んできました.今月は,そのしめくくりの意味で,判定の方法や「線引き」問題から,癌の分類規定まで幅広い論議をお願いしました.

 白壁 早期胃癌浸潤範囲の決定,また深達度の推定を行なってから10年以上経過しました.

 昔はmとsmの区別がつかないということで,両者を早期癌の範疇の中に入れました.いまは診断も進んで5年生存率も違うので,mとsmとを分ける診断も行なわれています.

 少なくとも90%以上の5年生存率をうるということであれば,mとsmは一緒にしてもいいかと思いますけれども,最高の診断をするということになると,mとsmを区別する診断も大いに成立していいわけです.不可欠なことは,m,smと,もっと深いpm,sとの鑑別,区別ということが大きくなると思います.

 今日は,まず浸潤範囲の決定の討論を願いまして,あとから深達度の診断の討論をお願いしたいと思います.

 浸潤範囲の決定で,総論から入りたいと思います.まず八尾先生から.

胃と腸ノート

Colonoscopyと固定点 長廻 紘
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 colonoscopeの挿入において通過の難かしいのはS状結腸・下行結腸の境界部と肝彎曲の2カ所である.通過が難かしいのは,これらの部位が“固定点”だからである.ここにいう固定点とは,腸間膜を有して可動性のある部分(S状結腸,横行結腸など)から後腹膜腔にあって可動性の乏しい部分(下行結腸,上行結腸)への移行部のことであり,具体的には前記のS状・下行結腸移行部と肝轡曲である.これらの部位は個人差はあるが一定の場所に固定(比較的ではあるが)していて,スコープを挿入していく途中で変位することはない.すなわちスコープが必ず通らねばならない特定の点である.したがってスコープができるだけ大きな曲率半径でこの部を通過するほど挿入が容易である.

 ①S状・下行結腸移行部

 S状結腸ではどのような挿入方法をとっても短時間のうちにスコープ先端が下行結腸下端に達する.そしてα-loopのように,下方からこの固定点に向かう場合は容易に通過しうる(図の左).しかし図右のように,スコープがいったんこの固定点より上方にカーブを描き,先端が上から固定点へ向かうような場合は,固定点を越えるのは難かしく,生じたカーブがだんだん大きくなるだけで先端は固定されたままである.いうなればこの固定点がブロックになる.このカーブが極限に達してからやっとスコープ先端が先(下行結腸)へ進む.被検者の苦痛は大きいし,この部の漿膜に裂傷を作りやすい.

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 患者は40歳の女性.約6年前より右季肋部に鈍痛があり,胆石症と診断されたが放置.本年5月,右季肋部にとう痛があり受診.経口胆囊造影にて胆囊内に数コの陰影欠損があり,これらは体位変換や圧迫を加えるも移動しないことが認められた.ERCPでも胆囊内に同様の所見が得られ,総胆管,膵管に異常所見はみられなかった.エコー検査では胆石症と診断した.後目,摘出により,細い茎を有するコレステロールポリープスと判明した(Fig.7).

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(前号より続く)

 EPTの合併症

 次にEPTの合併症およびその処置をTable 4に示す.出血27例,穿孔20例,胆管炎25例,膵炎24例,結石嵌頓5例およびドルミアバスケットの嵌頓2例であり,計103例に合併症の発生をみている.うち保存的に治療されたもの64例(62%),内視鏡下に処置されたもの6例(6%),開腹手術の必要とされたもの33例(32%)となっている.

 EPT後の合併症発見の時間的検討をTable 5に示す.出血,穿孔はEPT直後に多い.胆管炎は24時間以内に17例,24~48時間4例,48時間以後にも4例出現している.膵炎は大多数の例に24時間以内に出現している.

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 情報の氾濫は医学の社会でも同じことで,興味ある多くのレボートがJournalに氾濫しているが,その評価は実際になお一卜分検討を要するものが多い.その点,本書のような“Recent advance in……”的な編集はある程度,選択があり,業績もかなり集大成された仕事であり,それだけ内容もひきつける.このような本の編集にあたって,まず課題の選択に頭を悩ますであろうことは,EditorのDr. Bouchierが序で述べている通りである.

 本書は最近,急速に発展した分野と,興味ある課題をふんだんに紹介しているが,これはDr.Bouchierの見識の広さを物語るものであろう.

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欧文目次

書評「病理学図譜」 赤崎 兼義
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 Wilhelm Doerr教授とその協力者らによって刊行されたAtlas derpathologischen Anatomieは近来まれに見る名著である.

 Doerr教授は循環器病理学の権威として世界的に有名であるが,その講義もまた素晴らしい.早朝7時に始まる講義では2~300名を収容出来る講堂がいつも学生で一杯になるということからも,彼の講義の魅力的なのをうかがえよう.

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Efficacy of Prophylactic GammaGlobulin in Preventing Non-A, Non-B Post-Transfusion Hepatitis: R. G. Knodell, M. E. Conrad, A. L. Ginsbers, C. J. Bell(Lancet, March 13, 1976, p557~p561)

 この研究は,γ-グロブリン(以下γ-gと略)の予防的投与が,輸血後肝炎の程度と頻度に好影響をもたらすかどうか,そして高力価のHBs抗体γ-gと市販のr-gとの間に,予防効果の優劣があるかどうかを知るために行なわれた.

 平均12本の輸血を受けた279人の心臓外科患者を対象とし,高力価HBs抗体γ-g,普通のγ-gおよびプラセボ(アルブミン)のうちの1つが,手術前に無作為に選ばれた患者に筋肉注射された.術後9カ月間の経過観察がなされ,うち47人(全体の17%に相当)に,術後14~180日に著明なSGOTの上昇がみられた.これらの内訳は,プラセボグループの94人中24人,正常グロブリングル一プの93人中12人,高力価グロブリンでは,92人中11入の発症をみた.このうちB型肝炎の感染の証拠のあがった者はわずか3名で,他はCytomegalovirus感染者が3名,A型肝炎あるいはEpstein-Barr virusの感染例は1例も認めなかった.

編集後記 市川 平三郎
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 「ああ,今月は症例研究特集号か」と,題目をさらっとみて,目についたのを拾い読みして,「あとはいつでも読めるから」と,積んでおくことが多くはないだろうか.私も今月は全部じっくりよんでみた.

 編集部に送られてくる投稿症例は多い.特に最近のは,選び抜かれたものだけに,味わいが深く,コクがある.よく読むと必ず何か得られるものがある症例が多い.

基本情報

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胃と腸
12巻10号 (1977年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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