胃と腸ノート
Colonoscopyと固定点
長廻 紘
1
1東京女子医科大学消化器病センター
pp.1314
発行日 1977年10月25日
Published Date 1977/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112514
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colonoscopeの挿入において通過の難かしいのはS状結腸・下行結腸の境界部と肝彎曲の2カ所である.通過が難かしいのは,これらの部位が“固定点”だからである.ここにいう固定点とは,腸間膜を有して可動性のある部分(S状結腸,横行結腸など)から後腹膜腔にあって可動性の乏しい部分(下行結腸,上行結腸)への移行部のことであり,具体的には前記のS状・下行結腸移行部と肝轡曲である.これらの部位は個人差はあるが一定の場所に固定(比較的ではあるが)していて,スコープを挿入していく途中で変位することはない.すなわちスコープが必ず通らねばならない特定の点である.したがってスコープができるだけ大きな曲率半径でこの部を通過するほど挿入が容易である.
①S状・下行結腸移行部
S状結腸ではどのような挿入方法をとっても短時間のうちにスコープ先端が下行結腸下端に達する.そしてα-loopのように,下方からこの固定点に向かう場合は容易に通過しうる(図の左).しかし図右のように,スコープがいったんこの固定点より上方にカーブを描き,先端が上から固定点へ向かうような場合は,固定点を越えるのは難かしく,生じたカーブがだんだん大きくなるだけで先端は固定されたままである.いうなればこの固定点がブロックになる.このカーブが極限に達してからやっとスコープ先端が先(下行結腸)へ進む.被検者の苦痛は大きいし,この部の漿膜に裂傷を作りやすい.
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