胃と腸 11巻6号 (1976年6月)

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 病理組織学的に癌組織の広がりが長径1cm以内にとどまる早期胃癌を微小癌と定義すれば,現在までにかなり多くの症例が発見されている.今日ではすでに長径5mm以下のものすら診断されて,このようなものでなければ微小癌といえないとする人さえある.また微小癌に関するシンポジウムも学会ですでに2回にわたりもたれている1)2).しかし,これらはいずれも胃体中部から幽門部にかけての範囲に発生した微小癌についてであって,噴門部の微小癌の診断はやや立遅れたきらいがある.特に食道胃接合部に接した部位に発見された微小癌の症例は,この部位の診断上の特殊性もあり,あまり見当たらない.

 近年前方直視式のいわゆるPanendoscope型のファイバースコープが普及し,この食道胃接合部の観察も多くの人々に容易となってきた.このような現状から,われわれの食道胃接合部上ないしはこれに接した微小癌の症例を提示しつつ,この部位の微小癌の特徴,診断上の問題点等をさぐってみたい.

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 食道潰瘍は食道疾患のなかでも比較的稀なもので,X線上,下部食道に食道癌類似の狭窄,壁不整を示すものとして,従来癌との鑑別疾患として注意されてきた.しかし,最近になり一般の生活様式の変遷のためか,日常の外来診療でも患者数は増加しており,いろいろと消化器症状を有し,内視鏡検査の進歩で診断がそれ程困難でなくなってきている現在,鑑別疾患というだけでなく一つの疾患として,診断,治療の面であらためて注目されるようになってきた.

頻度

 食道潰瘍の頻度は,はじめ剖検例を中心に報告され,Berthold(1883)の9,633例中0.16%,Gruber(1911)の4,208例中0.6%とされ,臨床例ではJackson(1929)1)が食道鏡検査例4,000例中88例2.2%と述べている.われわれも,過去10年間の食道鏡検査回数9,726回で2.3%とJacksonとほぼ同じような頻度である.しかし,10年前の千葉大学第2外科での統計では,食道鏡検査回数5,005回中0.8%と少なく2),最近になり診断技術面の進歩もあるが,食生活の変化で,肥満,特に老人の肥満者の多いことなど,疾患の実数も確かにふえてきていると思う.

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 1929年MalloryおよびWeissは,飲酒後の嘔吐に引続いて吐血をきたし死亡した4例に共通して噴門部の裂創を認め,吐血の原因はアルコール性胃炎ではなく,嘔吐によって発生した噴門部の裂創を出血源とするものと推論し報告した1).その後の報告には飲酒・嘔吐・吐血をMallory-Weiss症候群のtriadとするものもみられるが,われわれは「嘔吐などにより腹腔内圧が急激に上昇し,噴門部近傍に裂創が発生し,これを出血源として顕出血をきたした例」をMallory-Weiss症候群と定義するのが妥当と考える.

症例の年齢および性別

 1972年より1975年までの4年間に東大病院(老人科,第1外科,放射線科),三井記念病院,平塚胃腸病院,真木病院の4施設において,われわれが上記の定義にしたがって本症と診断した例は63例に達する.63例中61例は内視鏡所見,他の2例は開腹時所見を参考として診断された.年齢的には14歳から78歳までみられたが,Table 1に示すように30歳台から40歳台に多かった.平均年齢は43.7歳で,男性は44.9歳女性は37.2歳であった.

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 食道胃接合部の機能は大別して2つあり,その1つは接合部開口機序,他の1つは接合部逆流防止機構である.これは接合部の運動機能が全く相反する機能を持っており,正常すなわち生理的には良く合目的的に使い分けられている.しかしながら何かを契機にこれら運動機能が障害されると接合部開口不全,すなわち無弛緩となり,食道アカラシアとなる.また,接合部逆流防止機構不全は食道裂孔ヘルニアに合併して認められる.両者は共に接合部の機能的疾患の性格をもち,したがってその診断も従来のX線,内視鏡検査に加えて食道の機能検査としての食道内圧pH測定が意義を持ってくる.著者は食道アカラシアの診断的事項に加えてその分類とそして食道裂孔ヘルニアについては,食道内圧pH測定の診断的意義について述べる.

食道アカラシア

 Achalasiaなる病名は1914年Hurst1)によって命名されたもので,いわゆる噴門痙攣症2)Cardiospasmus,あるいは特発性食道拡張症3)Idiopathische Ösophagus Dilatationなどと従来呼ばれてきた疾患である.

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 竹本(司会)本日は,諸先生たいへんお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました.早速「食道・胃境界部領域の病変の特殊性」というたいへん魅力的なテーマの座談会を開きたいと思います.

 人の消化管にはいくつかのbarrierがあるわけですが,そのなかでも,従来噴門といわれているところは,解剖学的にも,機能的にも複雑な問題をもっておりまして,現在なおミステリーに包まれている領域だと思います.最近X線,内視鏡などの診断法,あるいは消化管ホルモンの研究の急速な進歩によって,食道・胃境界部領域病変の特殊性というテーマもかなりおもしろく論議できるようになってきたわけです.

胃と腸ノート

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 T. S. 66歳 男

 レ線所見:立位充盈像では幽門輪に接して小彎側に強い陰影欠損をみる,欠損部の辺縁は不整な小凹凸を示す.図1の背臥位二重造影像でも幽門部から前庭部の半ばまで壁の伸展性,ふくらみが明らかに悪い.その後壁に不規則に蛇行,あるいは結節状を呈した隆起性病変が集簇してみられる.隆起の輪郭は鮮明で芋虫型に肥大蛇行した一部は病変の中心に引込まれ,ここに不整形のバリウム斑が見える.すなわち潰瘍性病変を合併している,病変部全体の輪郭は柔かい感じを与えるが,圧迫による変形はあまり見られない.内視鏡所見は,レ線像より硬化してみえる環状堤防状隆起と,その中に潰瘍,白苔,出血をみた.周辺には疣状胃炎を思わせる隆起性病変の散在はない.術前診断はBorrmann Ⅱ型の進行癌と診断.

 切除胃肉眼所見:図2,3の大彎切開の新鮮標本で,ほぼ幽門輪に接して小彎を跨ぎ梅花型に蛇行した隆起性病変が明瞭である.その隆起の立ち上がりはくびれを有し,周辺の粘膜とは明瞭に境せられている.蛇行したⅡaの内側は陥凹発赤しⅡcを認める.その中央に結節状の隆起があり,ここに向って蛇行状隆起を介して周囲から粘膜ひだが集中し潰瘍瘢痕を認める.一見蛇行型のⅡa様であるが,本シリーズで示してきたようにUl(+)のⅡcの辺縁でⅡa様発育を示したⅡc+Ⅱa型の早期胃癌と診断した.図4の切片は周辺のⅡa部と中心のⅡc部を示し,Ul-Ⅱsの潰瘍を伴い,大部分はmで,潰瘍辺縁でわずかにsmに浸潤していた.

 本例は病変部分が5.5×5.0cmでかなり大きい範囲の病変であるが,このような場合潰瘍が合併するとさらにレ線像で変形は著しくなりやすい.

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 潰瘍の肉芽形成を促進することをねらったアラントイン溶液は,何種類かの濃度のものをつくり種々検討してみた.その結果,アラントイン溶液の濃度が高いほどより効果的であるとはいえず,0.5%の溶液が組織反応の面からいっても,もっとも妥当であるとの結論に達した.現在使用している局注用の0.5%アラントイン溶液は,1アンプル2.0mlとしてキッセイ薬品に試作してもらっている.

 このようにして,現在では0.5%のアラントイン溶液の単独,もしくはこれとベーターメサゾンとの併用局注が,胃潰瘍の局所療法の基本であり,十二指腸潰瘍の局所療法は0.5%アラントイン溶液の単独局注を原則としている.

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 食道静脈瘤の内視鏡診断は,食道ファイバースコープの開発されなかった硬性食道鏡の時代では,ほとんど行われなかったのが実情であった.食道静脈瘤は食道鏡の禁忌とするものも,また検査を行いうるとしたものもあるが1),十分な観察は困難であったようで,詳細な観察所見の発表は少なかった.

 わが国において食道ファイバースコープの導入が行われたのは,著者らがアメリカンチストスコープ社製食道ファイバースコープを用いて,その結果を1965年春,第7回内視鏡学会に発表したのが最初であった2)

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 われわれは大腸疾患の細胞動態を検討する目的で,大腸粘膜の生検組織を用いてin vitro autoradiographyを行なった.

対象と方法

 対象 潰瘍性大腸炎23例(活動期18例,緩解期8例),肉芽腫性大腸炎1例,大腸ポリープ18例(腺腫性ポリープ9例,H型腺腫性ポリープ1例,絨毛腺腫1例,家族性大腸ポリポージス1例,過形成性ポリープ(Laneら1))5例,若年性ポリープ1例),大腸癌15例,および正常対照群21例,計78例である.

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 上部消化管大量出血の原因のひとつとして,1897年Dieulafoy1)は胃上部噴門直下に孤立性の微小な粘膜欠損を見いだし,これをExulceratio simplex(以後Esとする)と命名した.粘膜欠損の底部において動脈が破綻するため,大量の血液が噴出して,潰瘍形成は未熟なままに患者は急性の経過をとるものと彼は考えた.以後欧州圏では,このような胃上部にあらわれた粘膜欠損部よりの動脈性出血をEsと呼称するようになった.今回著者らもその1例を経験したので報告し併せて弱干の文献的考察を加えた.

症例

 患 者:46歳 男

 生来健康にて著患なく,既往にいわゆる胃症状を認めない.1月程前より風邪に罹患しアスピリンを連日服用していた.1974年12月11日,突然大量の吐下血をきたし当科へ緊急入院した.ただちに,緊急内視鏡検査およびガストログラフィンによる上部消化管緊急X線検査を施行したが,胃内に大量の血液が充満しているため出血源の診断は不可能であった.13時間に総量3,200mlの輸血を行なったが,血圧60/40mmHgヘマトクリット23%と改善されずショック状態におちいったため緊急手術を施行した.開腹すると,胃内に大量の凝血塊を認めるが,肝硬変および食道静脈瘤など門脈圧の亢進を示唆させる所見は認められなかった.胃を漿膜面より観察しても異常病変を発見できなかったので,胃体部大彎側寄りに約7cmの縦切開を加えた.出血部位は主に噴門側であることが判明したが,なお局在は不明であり,やむを得ず盲目的胃切除術(Billroth Ⅰ)を施行した.術後経過は良好で,第4病日に胃管を抜去した.

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 最近われわれは,胃のGlomus腫瘍を経験したので報告する.

症例

 患 者:小○カ○ 54歳 女 主婦

 主 訴:腹部腫瘤

 家族歴:特記事項を認めず

 既往歴:51歳の時,収縮期圧180mmHgの高血圧症を指摘され,以来毎日降圧剤を内服している.

 現病歴:自覚症は全くなかったが,1974年10月健康診断を受け,胃X線検査の結果,胃腫瘍といわれて当院を受診し,1974年11月1日手術の目的で入院した.

 現 症:体格中等度,栄養良,口唇に軽いチアノーゼが見られ,心尖部にRev. Ⅱ度の収縮期雑音が聞かれるほか,胸部・腹部・四肢には理学的に異常所見を認めない.

 検査所見:血液・尿・糞便に全く異常所見を認めず.赤沈値の軽度促進を認めるのみであった.なお心電図は正常であった.

 胃X線検査所見 立位充影像では小彎側・前庭部に軽い引きつれを認めるが,潰瘍あるいは腫瘍と認めるには不十分である.二重造影では小彎側・胃角部に辺縁平滑な隆起を思わせる腫瘍陰影を(Fig.1),立位圧迫と腹臥位では円形,辺縁平滑な陰影欠損像を認めた(Fig.2).

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 胃における悪性リンパ腫とリンパ細網細胞増生(Lymphoreticular hyperplasia)の組織学的鑑別や,リンパ細網細胞増生が悪性化するか否かに関しては,いまだ問題の多いところであり,元来良性悪性を明確に二分することが不可能な組織像を呈することから,あまり厳密な論議は無意味とする傾向があり,一般には悪性化は起こりうるけれども,その頻度はきわめて少ないと考えられている.われわれは44歳の男子で多発性の早期胃癌と診断され胃切除を施行された患者で,反応性リンパ細網細胞増生を伴った多発潰瘍病変の一部に細網肉腫細胞の混在した稀な症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

症例

 患 者:出○八○ 44歳 男子

 主 訴:心窩部痛

 既往歴・生活歴:特記すべきことなし.

 現病歴:約12年くらい前から,時々心窩部痛があり,開業医にて胃潰瘍の診断で内科的治療(ソルコセリール20本静注)を受けて症状は一時緩解したが,その後もたびたび症状の再発をくり返し,その都度内科的治療を受けていた.当科入院4カ月前頃から再び心窩部痛を来たし某医院に入院,ソルコセリール80本の注射を受けながら,X線および内視鏡による観察が行われているが,難治のため手術の適応ありとして当科を紹介された.

 現 症:身長174.8cm,体重78.0kg,眼瞼結膜に貧血なく,眼球結膜に黄疸は認められない.左側鎖骨上窩に小指頭大のリンパ節を触知するが,表面平滑で周囲組織との癒着なく癌転移巣とは考え難い,上腹部やや右側に圧痛および抵抗を触れるが,明らかな腫瘤は触知しない.肝および脾は触れない.

 臨床検査所見:末梢液所見:Hb 15.0g/dl,Ht 43%,RBC480×104,WBC5300,血小板20.2×104,肝機能検査:血清蛋白 7.7g/dl,黄疸指数3,総ビリルビン0.3mg/dl(直接ビリルビン0),s-GOT 42unit,s-GPT 35unit,Alk.Ph.6.5,LDH180,塩化コバルト R(3),血清電解質:Na 142mEq/l,K4.2mEq/l,Ca5.7mEq/l,Cl 104mEq/l,心電図正常,腎機能正常,胃液検査正酸.

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 早期胃癌研究のうちでも村上1)によって提唱された悪性サイクルの概念は最も重要なものの1つであるが,著者らは約2年3カ月にわたり経過観察を行ない,胃潰瘍様所見の再発を4回くり返し悪性サイクルをたどったと思われる1例を経験したので報告する.

症例

 患 者:T. M. 34歳 女(主婦)

 主 訴:心窩部痛

 家族歴および既往歴:特記すべきことなし

 現病歴:1972年6月中旬より心窩部痛あり某医に受診,約1週間にて軽快するも,7月上旬より再び心窩部痛を来たし,7月17日来院,レ線検査の結果胃潰瘍と診断され入院した.

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 われわれは,最近Polyarteritis nodosaの血管性変化により,腸管の壊死・穿孔を来した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

症例

 患 者:60歳 女

 主 訴:腹痛

 家族歴:特記すべき事項なし.

 既往歴:52歳の時,両側鼠蹊ヘルニアの手術を受けたが,術後,再発したまま放置していた.またその頃より高血圧症の治療を受けている.1974年1月頃より,両上下肢痛のため,某医で多発性神経炎として約2カ月間ステロイド剤(プレドニゾロンにして約600mg)の投与を受け,とう痛は軽減し,ときに訴える程度となったが,皮膚の硬結・発赤などの異常には気づいていない.

 現病歴:1974年8月25日,誘因と考えられるものなく軽度の発熱を伴った下腹部痛を来し,某医により鎮痙剤の投与を受けたが治癒せず,8月27日,外科的疾患として当科に紹介された.

 入院時所見:顔貌は苦悶,浮腫様.体温38℃.眼球結膜には黄疸なく,眼瞼結膜には軽度の貧血を認める.頸部リンパ節は触知せず.全身の皮膚は光沢なく,硬結・発赤などの異常は見られず.また胸部所見でも異常を認めず,下腹部の自発痛は消失し,び漫性の圧痛はある,腸雑音は減弱しているが,筋性防禦やブルンベルグなどの腹膜刺激症状はなし.直腸内指診は異常なし.

 検査成績:心電図(Fig.1)は,軽度の冠不全を認めるが,特に異常なし.腹部立位単純レ線所見(Fig.2)では,腸管麻痺を思わせる小腸内ガスうっ滞像をみる.血液検査では白血球増多(17,800/mm3)あり.尿・糞便検査では特に異常なし(Table 1).

 以上の所見より腹膜炎を考えたが,原因が全く不明であるので経過観察・保存的加療を行うことにした.

 入院後経過:腹痛は徐々に増強し,腹部全体に訴えるようになり,白血球増多(18,000/mm3),37℃前後の微熱が続いた.8月30目,突然腹部激痛とともに嘔吐を来し,筋性防禦など汎発性腹膜炎の症状を呈したため,緊急開腹手術を行なった.

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 原発性の小腸癌は,発生頻度も低く,また術前の確定診断は他の消化管の悪性腫瘍に比べて困難とされている1)~3).従来はレ線透視のみが有力な診断方法とされていたが,早期小腸癌の診断の難しさはもちろんのこと,かなり進行した小腸癌においても,術前に確定診断を得ることは困難なことがあり1)2)4)~7),小腸内視鏡の導入が期待されてきた2)

 著者らは,貧血と下腹部痛を主訴とし来院した40歳男性の原発性空腸癌を術前に確診しえたので報告する.

アフタ様大腸炎 吉川 邦生 , 森 克巳
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 腸管の炎症性疾患のうち,細菌,ウイルス,真菌,寄生虫等の病原体の同定できる感染症や,化学薬品,物理的原因,循環障害等の原因の明らかなものおよび非特異性の潰瘍性大腸炎や限局性腸炎は疾患概念として確立されており,診断も比較的容易である.

 他方,下痢を主徴とし,原因不明で(全ての下痢の30~65%は原因不明とされている1)),軽症のため病理学的裏付がないまま,臨床的に漠然と急性腸炎と診断されている一群の症候群が存在する2)3)

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欧文目次

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 これは1974年Georg Thieme Veragから出版された,“Synopsis der Leberkrankheiten―Lehrbuch und Atlas zur Diagnostik”の訳業である.編者らのまえがきには,次のような意図が述べられている.肝疾患の確診は,最終的には腹腔鏡検査と生検によることが多いことは周知の通りである.しかし,これらを集成した図譜は,すでに何種類か刊行されているし,また,肝疾患の診断には,このほかに,いわゆる機能検査,シンチグラフィー,ソノグラフィー,血管造影などが有用であり,多くのばあい,これらの組合わせによって,完壁な診断に到達することが可能となる.

 編者らは,急性・慢性肝疾患(胆道疾患を含む)を約30の病型に分け,それぞれについて,機能検査成績,シンチグラム,ソノグラム(時に血管造影),腹腔鏡所見,生検組織像および電顕像の,定型的ないし平均値的なパターンを掲げ,それについての解説註釈を加えた.この定型的あるいは平均値的という点は,各著者のかなりの苦心を要したところであるようで,それだけに,肝疾患の診断に当面している臨床家にとっては,稗益するところが大きいと思われる.

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 このたび,David C. Sabiston, Jr. によって編集されたDavis-ChristopherのText-book of Surgeryの日本語翻訳版が,東大,石川浩一教授,草間悟助教授の監訳で完成されたことは,まことに喜ばしいことで近来にない快挙というべきであろう.

 戦前の医学書の多くはドイツ語で書かれたものであったが,戦後,医学にも英語が主として用いられるようになり,以来私も,もっともすぐれた,信頼のある,手頃の教科書として,早くから講義や診療に本書のお世話になることがしばしばであったし,また学生に対しても常に推奨してきたものであった.

 本書の目次をみても容易に肯づけるように,外科学全般にわたって総論と各論を巧みに調和させて記述してあるだけでなく,外科学発展の歴史から,外科患者の代謝,麻酔,移植,小児外科,脳神経外科,手の外科,婦人科,泌尿器科,心臓血管外科等,一般外科の境界領域をも含め,さらに外科医の教育や倫理に至るまで,医学生や研修生にとって,まことに行き届いた配慮がなされている点では,おそらく本書の右に出るものはないと信じている.

編集後記 川井 啓市
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 今回の「食道・噴門境界部の病変」はやっと取り上げられたという感想がまず第一にする.本誌はその性格を誌名に反映させ,「胃と腸」とし,早期胃癌をメインに扱うことによって臨床家のup to dateの問題をとりあげ,直接明日の臨床に役立てることを目的にしてきていたが,その一面欧米に多い食道・噴門境界部の病変に関しては今迄のところ本誌の枠外にあるので,単に大学での研究のテーマとしかなりえなかったのも当然であろう.しかし,現在では癌,潰瘍,アカラシア,Mallory-Weiss症候群,ヘルニア等すでに臨床家にとってもなじみ深くなってきたことから,本誌においてこのあたりでひとつの整理をする時期にきたことを示している.特にこのテーマでの座談会は現在での問題点が浮き彫りにされていると思われる.

基本情報

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胃と腸
11巻6号 (1976年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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