胃と腸 1巻7号 (1966年10月)

今月の主題 ポリープ〔1〕

綜説

胃ポリープの考え方 中村 卓次
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Ⅰ.緒言

 最近胃ポリープに対する関心が急速に高まっており,昨年札幌で開催された日本消化器病学会秋季大会でシンポジウムに取り上げられたかと思うと,今年度の日本内視鏡学会総会においても,再び夜の研究討議会の議題として取り上げられ活発な討論が行なわれた.このような現象は最近の診断技術の進歩に伴なって胃ポリープ症例が増加していることにもよるが,もっと大きな原因は,胃ポリープの概念がいまだに明確にされていないことによると考えられる.

 この疾患名は最近では非常にpopularなものになっているにかかわらず,厳密にこれの定義を定め,その疾患名の下に包含すべき病変の範囲を規定することはそれほど容易ではない.また各研究者の研究材料の間に本質的なずれがあるのでますます意見の統一を欠く結果となる.

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 胃カメラによって普及された内視鏡検査が胃壁に存在する隆起の診断を容易にし,X線診断技術の進歩とあいまって,いわゆる胃ポリープの突出度,大きさの種々異なるものが日常の臨床診断に数多く取りあげられるようになって来た.したがって,従来からの,慣例的な,胃腔に突出した形成物のうちで癌でないものと言う意味での“胃ポリープ”と診断された症例の中には,病理組織学的にかなりの多様性をもつ分布図が生じたのは当然のことであった.

 しかし,病理組織学的には上皮性のポリープのみを“胃ポリープ”とよぶ傾向が強いので,臨床診断にたずさわるものも一日も早く境界症例を整理して病理組織診断に近づかねばなるまい.

展望

腹腔鏡 荒牧 長門
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はじめに

 わたくしどもが腹腔鏡検査法を手掛けてから早くも15年間の歳月が経過した.この間にスコープ,撮影器具,手技などの改良が行われ,また対象とした疾患は肝,胆,胃前壁,小腸,大腸の一部,脾,腹膜などの疾患,すなわちその炎症,腫瘍,結石,癒着などの変化,さらに一部血液疾患,後腹膜疾患,婦人内性器疾患などにおよんでいる.本検査法が今日のごとく広く用いられ,また高い精度をもつ診断法としてもてはやされるのは単に内視鏡としての特徴のみでなく本検査法に併用される補助診断法によって検査精度が向上し,さらに適応範囲が拡大したこと,および生検標本による組織学的診断のうらづけが得られたためである.本検査法の補助手段として主に直視下生検,穿刺,さらに直視下造影,超音波検査,同位元素の使用,門脈造影などがあり,記録手段として写真撮影のほかに映画,TV,2方向接眼鏡の使用などが試みられている.これら補助診断法の各種疾患に対する適応を第1表に示した.

 びまん性肝疾患の際には何といっても生検以外に確診はないが,超音波探触子の使用によって肝硬変,および肝内悪性腫瘍の症例などでは特有のechoを検出することも可能である.胆道疾患に対しては腹腔鏡の併用法のうち直接造影法と超音波法の優劣が問題となるが,後者の利点としては直視下の非観血的操作なので胆汁漏出などの危険は全くない.癒着下,漿膜面内部の変化を反射エコーより推測することも可能であり,完全閉塞の黄疸例ではその原因が結石か悪性腫瘍かの鑑別可能な症例もある.胆,肝疾患以外の実質臓器疾患にも応用されうるが,現在の段階では操作に一定の習熟が必要なこと,再現性が少いことなどの短所もある.直接造影法はこれに反して再現性にすぐれており,閉塞位置が確認できること,特に超音波法で確定しにくい下部胆管閉塞に際して威力を発揮はするが,細心の注意をはらっても,また刺入部位に対して接着剤の使用を行っても胆汁漏出の危険を有する.また胆囊壁をたしかめ,穿刺し吸引して胆汁が得られる場合以外は検査を進めることは不能であるなど厳密には両者の適応はややことなり互に補って使用さるべきものと考えられる.後腹膜疾患に対する本検査法の能力としては腫瘍の症例以外には診断的価値は少いが目的疾患が腹腔内のものであるか,後腹膜性かを鑑別するといった意味では有効であろう.腹腔鏡検査のみによる肉眼的診断率を生検,剖検,手術などによる最終診断で決定してみると現在までの全診断適中率は77.7%に達する.

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症例

 患者:64歳,男子,店員

 家族歴:父と妹が腸チフスで死亡しているほかに特記することはない.

 既応歴:20歳の時,腸チフスに罹患したことがある.

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まえがき

 最近われわれは胃および結腸直腸に広範なるpolyposisを有し,色素沈着,爪甲脱落,脱毛,低蛋白血症を伴なう珍らしい症例を経験し,不幸にも死亡し剖検する機会をえたので,ここにその症例を報告し消化管のpolyposisについて簡単なる考察をおこなってみたい.本症例は,Cronkhite,Canadaが1955年に報告した症例1)にきわめて類似しているものと考えられる.

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Ⅰ.まえがき

 早期胃癌診断の進歩はめざましく,かっては見落されていたようなごく小範囲の病変でさえも,今日ではほぼ確実に診断がつけられるようになった.しかしその反面,われわれはともすると所見のよみすぎによって良性のものを早期胃癌と誤診することがある.下記の症例は術前に早期胃癌に相違ないと診断し,切除胃の肉眼所見でもⅠ型ないしはⅡa型の早期胃癌と判定したものが,組織診断によって良性のものであることが証明されたものである.このような誤診例について検討することも意義のあることと考え,ここにその大要を報告する.

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 「レ」線,内視鏡検査,細胞診および生検の進歩により早期胃癌症例は急激に増加しているが,症例の大多数は表面陥凹型並に陥凹型病変で占められ,表面隆起型病変Ⅱaを示す早期胃癌症例は全例の約5%に過ぎない.村上忠重教授は本誌第1巻第2号にてⅡaを病理組織学的観点から解明されているが,本症例もⅡa+Ⅱcの早期胃癌で昭和41年7月19日,九大早期胃癌研究会で討議された症例である.

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Ⅰ.はじめに

 われわれは約1年間経過観察した表面陥凹型早期胃癌の1例を経験した.この癌は前庭部小彎やや前壁よりの8×10×0.5mmの小さいもので,胃X線圧迫法で,肉眼所見に比較的一致した像を描写することができた.以下,症例の詳細を述べるとともに,圧迫法などについて若干の見解を述べる.

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 司会(市川) 前回はレントゲン診断で胃潰瘍のUl分類を,どのくらい診断できるかという問題を話し合っていただいたのですが,大変お話が詳しく,また病理の方にも,相当深くまでお話が進んでしまいました.

 今回は,潰瘍の良性,悪性の診断についてお話していただくつもりですが,その前に,前回のUl分類の診断のことで言い落されたことはありませんか.藤間先生どうぞ.

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はじめに

 最近数年間における早期胃癌診断学の進歩は,目をみはるものがある.この分野でのX線,および胃内視鏡検査の重要性は,特にScreeningとしての役割を含めて極めて大であることは言うまでもない.細胞診は,以前は細胞採取技術と,細胞検鏡に可成りの習熟を必要とするため,その重要性は認められつつも一般への普及は,他の検査法に比して著しいものではなかった.しかし近年,わが国におけるFibergastroscope(FGS)の開発が進み,諸外国でも例をみない直視下生検用(B型),および直視下洗浄細胞診用(K型)FGSが作製されるにおよんで,小病巣よりの適確な細胞採取が可能となって来,またそれによる早期胃癌の細胞診成績がほとんど100%に近い適中率を示すことが報告1)2)3)されて以来,細胞診に対する関心は以前にまして急激に昂まって来,それと共に,従来より行なわれているAbrasive Balloon法や酵素液洗浄法の価値も又新たなる段階で再評価されつつある現状である.

 よって本稿では,技術解説という主旨にもとづいて,まず総論的に細胞処理を,次でAbrasive Balloon法と洗浄法の手技について述べ,次稿においてFGSによる直視下細胞診の方法を実際に則して説明したい.

 なお細胞染色検鏡法としては,

 1.May-Grünwald Giemsa法(M-G-Giemsa法と略記)

 2.Papanicolaou法

 3.Hematoxylin-Eosin法(H-Eと略記)

 4.螢光顕微鏡法

 5.位相差顕微鏡法

 6.干渉位相差顕微鏡法

などがあるが,詳細については後に述べる.

先輩訪問

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 竹本 近藤先生,たいへんお忙しいところをきょうは「胃と腸」の読者のために日本の内視鏡,特に胃鏡の黎明期のお話をお伺いしたいと思います.

 日本の胃鏡の歴史として冲中火山帯と桐原火山帯という2つの主な火山帯があってそれぞれ非常に御活躍なさったんですが,現在では桐原先生*の系統の方はあまり内視鏡にタッチしていらっしゃらなくて,冲中先生**の系統のみが現在活躍している状態と思います.中でも近藤先生はその1番の主峰でいらっしゃるわけです.まず日本で胃鏡検査が始まったところのことをおききしたいと思います.

滞欧記

ドイツでの2カ月 芦沢 真六
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出発まで

 それでは,今回のドイツ行のいきさつからまず申します.1964年,内視鏡学会理事長田坂教授がブラッセルの国際消化器病学会に行かれ,エルランゲン大学のHenning教授と会われたとき,日本の内視鏡の話が出て,それでは日本からだれか来て実際に見せてくれというような話になり,一応私が行くことにきまったわけです.旅費とか滞在費の話が,なかなか具体化せず,来てくれというのにこちらでそれらの費用を出すこともないと思っているうちに,Henning教授の御骨折で,D.A.A.D(Deutscher Akademischer Austauschdienst)から旅費と2カ月分の滞在費を出すから来いという手紙が来たので今年の5月頃には行けそうだと返事をしておきました.ところが春の学会で,私が上部胃癌のパネルをやった日(昭和41年3月24日)に,ルフトハンザの東京支店から電話があり飛行機の切符が払い込まれているからいつでも行けますよという連絡があり,まだ先のことと考えていたことが急に具体化したという思いで急いで仕度をして,4月28日に出発しました.

 そんな訳で初め話があってから実際に行くまでにだいぶ日がたつたものですから,その間に向こうの事情が変わってしまって招待してくれる主人公のHenning教授は定年で退職(その後大学の近くで開業)され,そのあとを同じ消化器を主としてやって居られるDemling教授がつぐことになり,4月1日にその交代が行なわれたばっかりでした.

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〈質問〉

千葉大学の白壁博士は,現在ルーチン検査ではどのくらいの枚数のX線フィルムを撮っておられますか.お教えいただけませんか.

編集後記 常岡 健二
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 本誌の発行部数が急速にのびた.すでに予定数を遙かにオーバーしてしまった.このことは読者諸兄に深く感謝しなければならないとともに,編集陣の責任が益々大きくなったことにもなる.数少ない専門雑誌として将来ますます発展するべく編集陣の意気は上っているが,それには読者諸兄の援助をいただかなくてはならない.本誌に対する御意見・御希望をどしどしお寄せ下さい.

 今回は胃ポリープを取上げた.著者はそれぞれの立場で,エキスパート,いろいろ教えられる点が多い.その他,座談会,技術解説,訪問記,症例報告など本誌ならではの内容の豊富さを誇ってよい.

基本情報

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胃と腸
1巻7号 (1966年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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