臨床検査 64巻6号 (2020年6月)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

小谷 敦志
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 超音波所見や計測値をただ羅列するだけのレポートは,良い報告書(レポート)とはいえません.超音波検査の実際は,決まった部位を描出し,正常や異常を明確に判定できるような直接所見ばかりではなく,得られた所見の累積から描出画像を追加することで診断に結び付くことが少なくありません.検査者が変わっても必要な項目が漏れなく記載されていることに加え,診断根拠となる有用な所見を記載し,検査目的に対する検査者のコメントを沿えて報告することが良いレポートといえます.

 本特集は,検査に必要な検査手順や基準値,重症度などは最小限にとどめ,各領域の代表症例によるレポートの書き方の良い例・悪い例,報告に必要な代表画像に主眼をおきました.診断に導くためのレポート作成技術を習得していただければ幸いです.

Ⅰ.心臓超音波

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本疾患の超音波検査の進め方

■基本手順

1.大動脈弁の形態評価・上行大動脈の観察

(1)傍胸骨左室長軸断面や短軸断面大動脈弁レベルを用いて,弁・交連部や弁輪の石灰化,弁の可動性や開放制限,弁尖数を観察する.弁の収縮期ドーミングを認める場合は,大動脈二尖弁も疑って観察する.

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本疾患の超音波検査の進め方

■基本手順

1.僧帽弁の弁葉の表記法に従い,表記する

 僧帽弁各部位の表記は,Carpentierら1)が提唱した僧帽弁の解剖学的名称が用いられる(図1)1).これは,内科医や外科医の相互理解が得られるように簡略化されたものである.

高血圧性心疾患 登尾 薫 , 川井 順一
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本疾患の超音波検査の進め方

■基本手順

(1)傍胸骨左室長軸断面または短軸断面を用いて,左室基部における心室中隔および後壁の拡張末期径と収縮末期径の計測を行う.

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本疾患の超音波検査の進め方

■基本手順

 肺高血圧症を疑う患者や肺高血圧症を合併する可能性がある疾患(膠原病など)に罹患する患者に対しては,積極的に心エコー検査でスクリーニングを行うことが推奨されている4)

Ⅱ.腹部超音波

急性肝炎 丸山 憲一 , 内村 智也
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本疾患の超音波検査所見

 急性肝炎とは,主に肝炎ウイルスが原因で起こる急性のびまん性疾患であり,肝炎ウイルスにはA,B,C,D,E型の5種類が確認されている.肝炎ウイルスではないものの,EBウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)による伝染性単核球症やサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染に伴う肝障害も知られており,さらには,急性肝炎様に発症する自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)や抗菌薬,解熱鎮痛抗炎症薬,精神神経領域薬などで肝障害をきたす薬物性肝障害(drug-induced liver injury:DILI)も存在する.

 超音波検査では,まず閉塞性黄疸の鑑別として胆道系(肝内胆管や総胆管,膵頭部癌や十二指腸乳頭部癌など)の閉塞病変について確認することが重要である.胆道系の閉塞病変がみられなければ,次に急性肝炎(肝障害)を鑑別として考える.

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本疾患の超音波検査所見

 原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)は肝内外胆管のびまん性壁肥厚や拡張・狭窄が特徴とされている.超音波検査では,通常胆管壁の層構造は確認できない場合が多いが,PSCにおいては胆管壁に内側低エコーと外側高エコーの層構造が保たれた壁肥厚を認め,内膜面は整で均質な肥厚であることが多いとされる.胆管造影では特徴的な所見があるが,超音波検査では肝内胆管は限局的な拡張としか描出されないことも多い.胆管以外の所見としては胆囊腫大,肝門部・胆管周囲のリンパ節腫大を認めることがある1)

 原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis:PBC)では,肝内小型胆管が選択的に障害されるのに対し,PSCは肝外胆管と比較的太い肝内胆管が障害される.PSCが進行するにつれ,肝実質の不整がみられる場合がある.

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本疾患の超音波検査所見

 自己免疫膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)は自己免疫機序が関与する特異な膵炎で,血清免疫グロブリンG4(immunoglobulin G4:IgG4)値が高率かつ特異的に上昇し,IgG4陽性形質細胞の浸潤を病変組織に認める.中高年の男性に多く,膵の腫大や腫瘤とともに,しばしば閉塞性黄疸を認めるため,膵癌や胆管癌などとの鑑別が必要である.

 超音波検査は臨床の場で広く行われており,腹部症状・所見を有する患者に対して最初に行われ,AIPを診断するきっかけとなる検査法である.実際に,AIPが検診で発見されることも報告されている.

腎盂腎炎 内村 智也 , 丸山 憲一
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本疾患の超音波検査所見

 腎盂腎炎において,他の合併症(糖尿病などの基礎疾患や前立腺肥大症,尿路結石などの器質的疾患)のない典型的な急性単純性腎盂腎炎で,抗菌薬治療によく反応すれば,特に画像検査の必要はないとされる.72時間以内に良好な反応が認められないときに,第一選択として単純および造影CTが施行されるが,被曝がなく,ベッドサイドで施行可能な超音波検査を依頼されることは多い.ただし,超音波検査では微細な病変は2割程度しか検出されないといわれている1)

 超音波検査所見は,水腎症,腎腫大,腎洞脂肪の消失,腎髄質エコーの低下,浮腫や出血に伴う腎実質エコー輝度の変化がみられる.カラードプラおよびパワードプラでは,病変部の腎小葉に一致した楔状あるいは扇形の血流低下領域がみられるとされる2).Rosenfieldら3)により,1979年に画像診断として報告された急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN)は限局した腎感染症により生じた液状化(膿瘍)を伴わない腫瘤性病変と定義されるが,上行性尿路感染から生じた急性腎盂腎炎が膿瘍化に至っていない段階とする考え方や,皮膚膿瘍や骨髄炎,細菌性の関節炎等遠隔感染巣から,血行性に伝播したものとする考え方などの所説がある.結局のところ,AFBNは急性腎盂腎炎より重症度の高い状態で,画像検査により腎実質に限局性病変が確認されたものであり,小児急性腎盂腎炎患者の20%弱,成人でも15%程度との報告がある4)

Ⅲ.血管超音波

頸動脈ステント留置後 小谷 敦志
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本疾患の超音波検査の進め方

■基本手順1)

・左右の総頸動脈(common carotid artery:CCA),頸動脈球部(洞),内頸動脈の最大内中膜厚(maximum intima-media thickness:max IMT)を計測する.

下肢深部静脈血栓症 小谷 敦志
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本疾患の検査の進め方

■基本手順1)

 下肢深部静脈の区分と分類を理解し,検査を行う(図1)1)

下肢静脈瘤 小谷 敦志
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本疾患の超音波検査の進め方

■基本手順

 立位あるいは坐位において,表在静脈を鼠径部から下方に向かって評価する.大伏在静脈(great saphenous vein:GSV),副伏在静脈,小伏在静脈(small saphenous vein:SSV)(Giacomini静脈を含む)を描出し,肉眼的に観察される静脈瘤との連続性を確認する.そのうえでドプラ法を用い,観察部部位より末梢部を血流誘発法(ミルキング手技あるいはValsalva負荷)で同静脈の逆流の有無を観察する.また,穿通枝ではDodd穿通枝を含む大腿部穿通枝,下腿穿通枝においてはBoyd穿通枝を含む傍脛骨穿通枝(paratibial perforator),高位,中位,低位Cockett穿通枝を含む後脛骨穿通枝(posterior tibial perforator)などが検査対象となることが多く,血管拡張が認められた場合には,ミルキング手技により弁不全の評価を行う.これら以外の非典型例では,静脈瘤側から大腿部,膝窩部,下腿不全穿通枝,陰部静脈瘤,骨盤内静脈などへの静脈瘤との連続性を評価して原因となる静脈弁不全を探す.

末梢(下肢)動脈閉塞症 小谷 敦志
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本疾患の超音波検査の進め方

■基本手順

 下肢動脈エコー検査において,動脈硬化性病変の異常検出を目的とするスクリーニング検査では,腹部大動脈,総大腿動脈,膝窩動脈,後脛骨動脈,足背動脈の血流波形をパルスドプラ法で記録し,それぞれの最高血流速度(peak systolic velocity:PSV)および最高血流速度到達に要する時間である収縮期加速時間(acceleration time:AT)を計測する.

Ⅳ.体表超音波

浸潤性乳管癌 硬性型 前田 奈緒子
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乳房超音波検査の進め方

■基本となる体位と手技

(1)体位は仰臥位を基本とし,上腕を頭上まで挙上させるかタオルを入れるなどして,外側部の走査スペースを確保しつつ乳房を伸展させる.

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甲状腺の超音波検査の進め方

■体位と基本走査

(1)検査時は患者を仰臥位(または座位)とし,顎を挙げて十分に頸部を伸展させる.

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唾液腺(大唾液腺)の超音波検査の進め方

■体位と基本走査

(1)耳下腺および顎下腺については,甲状腺検査の側葉検索時と同様に,検査対象側と反対側に顔を傾けて検査する.これによって走査がしやすくなり,超音波ゼリーが後方に垂れるのをある程度防ぐことができる.舌下腺については,顎を挙げて十分に頸部を伸展させる.

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頸部リンパ節の超音波検査の進め方

■体位と基本走査

(1)顎を挙げて頸部を伸展するようにしてもらう.オトガイ下の検索時には正面の状態で,顎下部や側頸部の検索時には反対側に少し顎を傾けるようにしてもらうと,超音波ビームが入射しやすくなる.

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目次

書評 志水 太郎

「検査と技術」6月号のお知らせ

次号予告

あとがき 山田 俊幸
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 今月号の特集は,「超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例」です.模範例だけでなく,改善が必要な例も示すというユニークなものです.報告書のサンプルを読んでいくと,なるほどと考えさせられることが随所にあります.超音波検査以外にも応用可能と思われますのでぜひ参考にしてください.

 言うまでもなく私たちは,良い例(成功例)と悪い例(失敗例)を学びながら成長してきています.より印象づけられるのは後者のほうかもしれません.前者は“良い”から“普通”までを含み,目立たずに当然のように学んできているためと思われます.私の施設では学生教育のなかで,地域医療で活躍しているOBに経験談を聞くという講義がありますが,講義後のアンケートには必ず,“失敗談も聞きたい”という意見があります.もっともこれには,真に教訓的なことを学びたいという気持ちだけでなく,他人の失敗を見聞きして自分を安心させたいという心理もあると思われます.それはそれで不適切なことではなく,今回の特集にもそのような効果があればと思います.

基本情報

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臨床検査
64巻6号 (2020年6月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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