臨床検査 32巻1号 (1988年1月)

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 近年,コンピュータ技術の一側面として各方面から"熱い視線"の送られている人工知能とは何か.その応用分野であるエキスパートシステムとはどのようなものか.そして,これらが医療の世界,とりわけ臨床検査の領域とどのようにかかわってくることになるのか—話題はこれからの情報の活用にまで及び,新春にふさわしく,新テクノロジーへの展望が夢をこめて語られる.

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 コンピュータ技術の二つの流れ,すなわち,一つは高速の科学技術計算,もう一つは知的処理の実現である人工知能のうち,後者について,その基本的な考え方や,分野を取りあげた.とくに,人工知能の応用であるエキスパートシステムについて,技術内容,システム構成方法を中心に,現状の技術がどのようなものであり,どのような計算機環境で実現されているかについてもふれた.

 人工知能の医療分野への応用は,医療エキスパートシステムと呼ばれているが,こうしたシステムの現状,および臨床検査との関係などについても検討し,今後の進む方向性をまとめた.

神経回路の情報処理 永野 俊
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 現在のコンピュータとは本質的に異なる並列分散形の情報処理様式をもつ神経回路によってどのような情報処理機能が実現されているかを平易に解説する.まず,基本エレメントである神経細胞のモデル化と,その神経細胞モデルから成る基本神経回路の性質を示し,それらが種々の情報処理に役だつ基本的情報処理機能をもつことを示す.また,神経回路による情報処理の大きな特色の一つである学習・自己組織の手法について説明を行う.次に,現在のコンピュータが苦手としているパターン認識,連想記憶,問題解決,自然言語の理解などの種々の機能について,神経回路によりその実現が容易に行えることを,具体例をひいて説明する.神経回路網研究がおかれている現在の情況と今後の方向についても言及する.

エキスパートシステム

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 コンピュータおよびその環境の発達にはめざましいものがあり,従来の"計算機"としての利用から,"情報提供機"としての利用というように変化しつつある.それに伴い,専門家と同じような判断のできるエキスパートシステムが開発されるようになってきた.この傾向は医療の世界においてもまったく同様である.

 ANTICIPATORは,感染症診断後の適正な抗菌薬の選択を支援するために開発されたシステムである.現段階では,内科領域の感染症を対象としているが,本システムは抗菌薬の選択のほかに,投与量のコンサルテーション,副作用情報の検索,薬品情報参照などのサブシステムを有している.本稿では,これらのシステムの利用例を含めて紹介するとともに,エキスパートシステムの開発および実用化における問題点についても考察する.

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 本解説では,年々複雑化する循環器疾患の管理に対して,人工知能の応用技術として発展したエキスパートシステムや知的情報処理のフィージビリティを考察し,内外の循環管理エキスパートシステムの現状を紹介する.とくに,循環器疾患の特徴を反映して,循環器疾患管理のエキスパートシステムにおいては,"生理的機構に基づいたメカニズム的な推論(physiologicalreasoning)"や,"物理的な定量的な思考と病態に対する因果的・概念的な思考の融合(qualitative-quantitative reasoning)"の実現が必要であることを強調し,不整脈監視システムCALVIN,病態論的なレベルでの"深い知識"に基づいた心不全の循環管理システムHeart Failure Program,人工心臓管理システムについて述べる.

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 臨床検査情報から病態診断にアプローチする試みのなかで,血液スペクトル法はもっとも歴史が古く,現在においても検査診断の原型といえる.それは,組合せ検査値からグラフを作り,各病態を視覚に訴え,パターン認識で判断する手法をとっている.検査項目は,約20種類の生化学検査より構成されており,全身状態の判定,肝・胆道,腎臓,膵臓など主要臓器の疾患における病態の把握,機能障害の検出,病名の診断などが主な機能になっている.本稿では,この血液スペクトル法の自動解析を中心に,最近の知見を混じえ,血液病理図法の自動解析と異常値例における予後推定の計量化について解説を加え,あわせて病態解析の自動化についての私見を述べた.

学会印象記 第34回日本臨床病理学会総会

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 第34回日本臨床病理学会総会は,1987年10月2日〜4日,東京のサンシャインシティ文化会館などで,井川幸雄東京慈恵医大教授を総会長として,多数の参加者を集めて盛大に開催された.各会場や展示会場が近くに集まっていたため,非常に移動しやすくて時間の無駄がなく,良い会場で開催されたと思う.

 総会は"生命へ贈る検査"という主題のもとに,特別講演,教育講演,シンポジウムおよびフォーラム,一般演題によって構成され,一般演題を除くその内容は,①近年の科学技術の進歩に伴う臨床検査医学の学問領域における新しい展望と研究態勢の模索,②技術の進歩に伴って生ずる検査診断の新しいパラメーター導入のための臨床検査項目の再評価,③ATLとAIDSに対する正しい知識の習得,などに重点がおかれた.

生物電気化学分析法・1

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電気化学的手法と生体系

 電気化学的手法が一番得意とする分析対象はおのずとあり,すべての分析に電気化学的手法が適しているといったことはありえない.しかし,電気化学分析のもっとも適した分野の一つが医学の領域であることは確かだと思われる.

 なぜならば,電気化学分析は酸化還元反応やイオンの選択的二相分配,膜透過などに伴う電流ないし電位を測定することにより,物質の分析を行うもので,それは生体反応と種々の面で類似の点があり,方法それ自体として生体試料の分析に発想上なじみやすいことがあるからである.またinvivo測定,超マイクロ測定が臨床分析の将来の方向だと考えると,いずれも電気化学測定が得意とするところだからである.

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 免疫電気向流法により抗ENA抗体の検出を試み,すでに抗ENA抗体検出法として有用性が認められている二重免疫拡散法および受身赤血球凝集反応の成績と比較検討を行った.その結果,免疫電気向流法による抗ENA抗体は55例中39例(70.9%)に陽性で,これらの血清には抗RNP抗体が36例に,抗Sm抗体が9例に認められた.しかも,二重免疫拡散法および受身赤血球凝集反応の成績とよく一致した.以上の成績より,免疫電気向流法による抗ENA抗体検出法は感度,特異性ともに良好で,スクリーニング検査方法として有用と考えられた.

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 von Willebrand因子(vWF)の機能の一つとして血小板のコラゲン粘着促進因子(コラゲンコファクター:CCo)を定量した.タイプⅠのvon Willebrand病(vWD)では0.20±0.15U/mlで,正常者(0.95±0.5U/ml)の約20%であった.タイプⅡのvWDではvWF抗原(vWF:Ag)に比して低値で,CCo/vWF:Ag比は0.08であった.vWF:Agのlargeマルチマーがコラゲンへの親和性が大であり,CCoとリストセチン・コファクターがよく相関していたことより,CCo活性にもlargeマルチマーの関与が大であると思われた.

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 新たに開発されたゼラチン粒子凝集法によるHIV抗体スクリーニングの自動化について検討した.本法はオリンパス自動輸血検査装置を使用した血液型,不規則性抗体,梅毒,HBs抗原—抗体,ATLA抗体検査との同時検査が可能であり,従来のELISA法に比較して非特異反応も少なく,短時間に多数検体処理も可能なことから,血液センターにおける献血者のHIV抗体スクリーニングには適した方法と考える.

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 墨汁法で莢膜の境界を明確にし,続いて菌体をクリスタル紫で染色することによって簡便に,細菌の保有する莢膜を肺炎球菌,肺炎桿菌に関して証明する方法を検討した.Hissの莢膜染色法に比べて,その手技が簡単なことや使用する試薬の準備に特別の手間が必要でないことなどから,ここに紹介した莢膜証明法は臨床検査において実用性があると考えられた.

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はじめに

 Acquired immunodeficiency syndrome(AIDS)は,human immunodeficiency virus(HIV)の感染によって生じる,細胞性免疫不全を主体とした,進行性かつ致命的な免疫不全症候群である1)

 本症の診断には,HIVそれ自体の証明が理想的であるが2,3),一部の施設を除きこれは不可能であるので,一般的には抗HIV抗体の検出が行われている.

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 〔問〕自動電気泳動装置では自動的に5分画処理されますが,リポ蛋白などがα1とα2の間に入った場合,どこで切ったらよいのでしょうか.また,自動的に5分画処理したほうがよいのか,自分の眼で膜を見て5分画処理したほうがよいのか,ご教示ください.

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 〔問〕癌におけるアセチルポリアミンの動態的変化と尿中アセチルポリアミン分画(アセチルプトレッシン,アセチルカダベリン,N1—アセチルスペルミジン,N8—アセチルスペルミジン,N1—アセチルスペルミン)の関係,および尿中アセチルポリアミン分画の最近の知見についてご教示ください.

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 〔問〕赤血球膜に存在するリン脂質の総量を求めたいのですが,簡便な方法をお教えください.また,無機リン化する測定用キットはあるのでしょうか.

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 〔問〕LGLの形態学的特徴,細胞表面の形質,機能についてご教示ください.また,LGL増多症の治療と予後,それに伴う検査値の変化についてもお教えください.

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 〔問〕現在,簡易偏光板を用いて関節液内の結晶の有無を確認し,化学的性状(酸,アルカリなどによる溶解性),ムレキシド反応,形状によって,ピロリン酸カルシウム,尿酸ナトリウム,薬剤などの結晶が疑われると報告していますが,最終決定ができておりません.補償偏光装置がないので偏光では区別できません.ルーチン検査における簡便な検索法と,どの程度の検索が必要で,どのように記載をすればよいか,ご教示ください.

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 〔問〕通常は直接濾紙に採りますが,抗凝固剤入りの血液においても検査できるのでしょうか.その場合,どのような抗凝固剤が適当か,データに問題はないか,濾紙に採るまでの時間はどの程度まで許されるか,これらの点についてご教示ください.

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 〔問〕ME機器カタログの安全性の表示については,本誌(vol.26, no.4,499ページ)に詳しく説明されていますが,そのほかの入力インピーダンス,弁別比などが何を意味するのか,簡明にご教示ください.

基本情報

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臨床検査
32巻1号 (1988年1月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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