呼吸と循環 15巻6号 (1967年6月)

巻頭言

近頃思うこと 北村 和夫
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 昨年10月,思いもかけず,一生の恩師でもあり,伴侶でもある山川邦夫教授の急逝に遇い,以来約半歳,講座担任代行を命ぜられて,諸種の難問が,巨濤のように,一時に,押しかぶさってきて,目のくらむ思いで立ちすくんでいる実情である。

 内科専門医制度,内科講座制度のあり方についても,陰ながら故山川教授に進言もし,一緒に討論もしてきたが,故教授の急逝後,順天堂大学においてはにわかに具体化し,学長・医学部長の強い要望で内科一本化,専門別講座化が進められるに至った。この構想は,実は山川教授がもっとも実質的な推進者であったのだが,本邦内ではいわば最初の試みであり,むずかしい問題を含んでいる。慶応大学内科,京都大学内科がやや似た形式ではあるが,実情は必ずしも真の専門別化,これを総合した一本化ではないようであり,従来の講座制度に対する考え方をある程度根本的に変改せねば,この制度は成立しないように思われる。大学の講座制は教育を表看板にするものであるが,その実質は研究を主体にしており,内科医の教育,診療の面では運営に矛盾の生ずることがある。

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序にかえて

 Dr. Charles M. Fletcherはロンドン大学のPostgraduate Medical SchoolにあたるHammersmith Hospitalに働く教授である。

 昭和41年4月20日,日本医師会長武見太郎氏の招きにより夫妻で来日,東京をはじめ,京都,広島を訪問,4月29日に離日した。

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はじめに

 冠循環は血行力学的因子,神経性ならびに体液性因子,心筋代謝性因子,冠血管自身の自動調節機能などによって調節され,個々の因子は他の諸因子と複雑な関連をもって互いに影響しあっていて,それらの総合的な効果があらわれるものと考えられる。したがって神経性あるいは体液性因子だけを純粋にとり出して観察することは必ずしも容易ではなく,実験方法が多彩であることとともに,この問題について意見の別れる大きな理由になっているように思われる。

 以下,これらの諸点を考慮し,できるだけ妥当な結論を導き出すよう努力した。

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I.Lactate Ringer's solutionの成分

 1929年にAlexis F. Hartmann1)が,生理食塩水のClが血漿中のClより多すぎることを不利と考え,さらにbicarbonateを補うために処方したものである。最初のHartmann's solutionはsaline-lactate  solutionでNa 0.6%, sodium lactate 0.55%の溶液であるが後に修正され,lactate Ringer's solution (Hartmann moditied solution)となった。

 これに含まれるsodium  lactate (NaC3H5O3)は体内において,lactateは肝内でglycogenに変わりNaが残される。Naは血中の炭酸と結合してNaHCO3となる。lactateイオンは同量のHCO3を生じるとみなしてよい。

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はじめに

 一般に肺性危機とは,重篤な症状をもって発現した急性呼吸不全といいかえることもできよう。しかしながら麻酔および外科の分野においては,症状をもって肺性危機を考えていくことは困難である。なぜなら,麻酔・手術中およびその前後の生体機能は,吸入麻酔剤を始めとする各種麻酔剤,筋弛緩剤,前投薬に用いられる薬剤などの薬理作用により,また,出血・組織破壊などの病態生理因子によって大幅な修飾をうけており,古典的基準による呼吸不全症状は著しく抑制されている。したがって,こうした領域において肺性危機というものを症候論的にとらえることは意義が乏しく危険なものである。近年,この分野での病態生理学的研究が進み1)〜3),生理学的指標と臨床症状との隔離が明確にされてくるとともに,病態生理学的把握の必要性が認識されてきた4)。本稿においては,麻酔・手術中およびその前後における一般的な問題として,換気障害,低酸素血症,高炭酸ガス血症の三者を論じ,ついでそれに関連してやや特殊な問題にふれる。本稿中呼吸機能に関する略号は慣用による4)5)

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はじめに

 外科的立場よりみた心性危機といえば心動停止(ca—rdiac standstill),心室細動(ventricular fibrilla—tion)をふくめた心臓制止(cardiac arrest)と一部の不整脈であろう。これらはきわめて迅速かつ適切な処置が要求されるものであり,またこれらに対する研究は,とくに外科治療面で心臓外科の進歩に伴い著しい発達をみせた分野である。著者らは外科的立場よりこれら心性危機の発生ならびに対策について述べ,若干の考察を加えてみたい。

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はじめに

 酸素飽和度は肺機能を評価する一つの指標として,あるいは血液の酸素運搬能を知るために用いられている。これは大気圧下にある人間では,酸素運搬が主として血色素(ヘモグロビン)によって行なわれているからである。血液の酸素含有は血漿や血球中の液体成分に溶解して存在するものと,ヘモグロビンと結合している分があるが,1気圧下では酸素は155mmHgで,肺胞気では100mmHgとなり,肺胞毛細管の血液では95mmHgとなっている。この条件下では,溶解酸素は一定の血液でわずかに3.0mlで,これのみで毎分250mlの酸素消費を果たそうとすると,132lという心拍出量を必要とすることになる。最近は高圧環境を利用して酸素を投与することが試みられているが,これは溶解酸素を多くして酸素需要をまかなおうとするもので,このさいには酸素飽和度は指標とならない。しかし大気圧下での肺機能評価では,PHや温度などの因子を含めた酸素飽和度の表現を用いることによって比較が容易であり,障害度の判定も容易となる点から利用されるべきものである。

 酸素飽和度は血液中のヘモグロビンがどれだけ酸素と結合しているかを示す指標であって,溶解酸素に関与していない点に注意しなければならない。

ジュニアコース

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はじめに

 すでに3回にわたって"一回呼吸法"シリーズをとりあげてきた。すなわち,第1回は拡散能力,第2回は死腔量,ガス分布,残気率,そして第3回はガス交換を話題として,それぞれ,その方面の專門家によって詳しく解説されたわけである。もちろん,これで一回呼吸法のすべてを尽したというのではなく,努力性呼出曲線の解析,ラジオアイソトープ・トレーサーを用いる一回呼吸法などこのほかにもいろいろあり,今後もますます新しい方法が工夫され,実用化されてくるであろうと思われる。とりあえず,ごく普通に,病院の肺機能検査室でとりあげられているもので,読者にもすでに,一回呼吸法としておなじみのものを,まず紹介したわけである。

 今回は,このシリーズの一応のまとめとして,これらの一回呼吸法に共通する問題点について考えてみたいと思う。

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 房室中枢が自動をおこす場合としてあげられるのは,次の二つである。

 1)洞機能低下や伝導障害などのために洞興奮が下方まで伝わらず,その結果受動的に房室結節の活動がおこる場合,すなわち補充リズム。

 2)房室結節の自動性の能動的な充進により,その刺激発生頻度が上位中枢のそれを上まわる場合。発作性房室性頻拍がこれに属する。

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緒言

 感染症とくに急性感染症の心臓合併症は,近年の血液生化学的検査ならびに心電図学の発達普及により少なくないことが明らかにされた。この心臓合併症の一つである心筋炎は細菌,ウィルス1)2),リケッチア3),プロトゾア4)らによっておこり,細菌によるものは通常心内膜炎を伴うとされている。心筋炎の存在が一般にみとめられるようになったのはSaphia5)6), Gore7)による多数の剖検例の報告以来であるが,その後de la Schapelle8),Lustok9), Blankenhorn10),らの同様の報告がある。Goreは多数の剖検例で1,402例(3.5%)の心筋炎を発見したが,その3/4は臨床的に診断されていない。これは心筋炎の多くが不顕性発症で診断根拠となる症状をとらえにくいこと11),心筋の状態を反映する検在法に乏しいことが原因と考えられる。

 最近われわれは上気道感染後発症し,ステロイドホルモンが奏功したウィルス性と考えられる急性心筋炎の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

基本情報

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呼吸と循環
15巻6号 (1967年6月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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