看護学雑誌 7巻1号 (1950年1月)

口繪 明けゆく看護界
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 病院の窓に看護婦さんの姿が見える。ロングフヱローが「ランプを持てる女人」とたゝえたナイチンゲールの博愛精神が燃えている。日赤や聖路加で看護婦が送り出されてから既に半世紀をけみした。

主張 看護婦の社會的地位
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 手術室のガーゼ洗い,病棟の床掃除,お醫者樣の鞄持ち,婦長さんの小間使い,書きあげれば數限りないが,これが徒弟式訓練をうけていた日本の看護婦の姿であつた。患者との接觸は,1日數回の檢温と投藥,それすらも附添の家族に委せる場合が多く,廻診時の介補が唯一の仕事として何年續けられて來たのであろう。それが今日新しい法律の制定となり,大學制の看護婦教育に變り,その専門職業たる基磐が確固として築かれたのである。

 社會的には特權階級にあつた從來の醫師の隷屬的存在としてのみ看護婦は位置づけられていたので,獨自性など全く考えられてなかつた。歐米醫學の日本輸入と同時に入つて來た筈の歐米看護の職業は,男性中心の封建的社會組織の犠性となつかものと言えよう。今や封建制は覆えされ,民主日本の自主制が輝やかしく浮び上つて來た時,看護婦は敢然立つてその社會的地位の確保向上に努力すべきである。社會的には性の區別を全く認めなくなつた筈の今日,參政の權も平等に,高位要職に就くことも自由である。第1回の民主國會に27名の婦人代議士も送られ,先輩國アメリカを驚かした。次官も局長も出た。併し,何れも個人としての女性の地位であつて職業的地位の向上にはなつていない。

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生理衞生と精神衞生

 「病氣」と昔から,日本では「病」に「氣」を附加する習慣になつている。それで,或る種類の病氣は「氣」を癒さないと到底病はなおらない。

 殊に慢性病の患者は大抵,神經衰弱になつているから,病氣の治療の爲めに,神經をも治療しなければならない。今日までの病院はあまりに生理,病理に囚われて,人間が心理的存在であることを忘れ過ぎている。

精神身體醫學とは 日野原 重明
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 これを一口で定義すると『精神が身體に,身體が精神に如何に作用し,影響を與えて,人間を病人にするかということを研究する醫學』である。そLて之は特に19世記以降の醫學が無視た精神作用を正しく評價し人間の心理學を醫學に充分にとり入れて行こうとする立場である。

ストレプトマイシン 島村 喜久治
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 ストレプトマイシンは,1943年アメリカのワクスマン博士によつて發見された,放線状菌の産物で,ペニシリンと同じく,抗菌性物質と呼ばれます。日本でも豫防衞生研究所の梅澤濱夫博士などが作つていますが,まだ製品化されていません。

 それで,今,日本で使われているものは,連合軍の好意で輸入された5,000人分と,米國にいる知人から個人的に送られるものと,ララ物資として來たものと,あとは闇とにせものです。

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 人工妊娠中絶とは,人工的に胎兒やその附屬物(胎盤,卵膜,臍帶,羊水)を母體外え排出させることで,胎兒が母體外で生存できぬ期間に行うことを,人口流産といいそれ以後を人工早産という。

 普通は妊娠8カ月以前では,胎児は生れても生存の可能性がないので,妊娠第7カ月の終り(妊娠第28週)までの分娩を流産といい,それ以後を早産という。

衞生教育の技術講座・1

集會の技術 石垣 純二
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日本人は集會の技術の低い國民である。いろんな意見の持主が集つて,和やかに意見の交換をし合い,お互に啓發し合うといつた民主的な手續きに慣れない國民である。その端的な現れが國會である。たとえ自分と反對の見解の持主であるとわかつていても,言うべきところは言わせ,聞くべきは聞いて,然る後自分の見解を納得させるよう努力してみるということは,結論明瞭で無駄に見えて實は非常に大切な順序である。というのは正しい見解というものは誤つた見解があることによつて成長するのである。或は二つの見解の論争の過程に於て,益々正しいものゝ論點が明確になつてくる。この相互作用は正しいことを普及するためには缺くことの出來ない手順なのである。面白い例がある。ある英人がタイプを打つときに,どうしても治らない悪い癖があつた。THEと打つべきところをHTEと打ち損うのである。どうしても癖がなおらない。困つていた。ある時思い付いて,反對にHTE HTE……と間違つたスペルをうんと打つてみた。するとぴたりとTHEの打誤りが止んだそうである。

 私たちは反對論を觀迎しなければいけないのである。というよりは廣く集會の民主的な運營全般になれて,もつと有效な集會の開き方,進め方を身につけねばいけない。衞生教育にはいろんな手段がある。その中でも母親教室とかPTA總會とか,或は婦人會,女子青年團,赤十字奉仕團の會とか,樣々の會合によつて衞生知識をひろめることが段々とふえてきた。だから集會の技術はますます主要になつてきた。集會といつても,講演會と座談會とでは全く違う道理ではあるが,しかしそうしたものに共通の要素があると思うので,それを抽出してみて參考に供そうと考えた。もちろんこの他にも私の思い付かない要素が多いとは思うけれども。

2頁の知識

アルコール中毒 島崎 敏樹
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 酒に醉うと,「抑え」がとれて,自分の思うことしたいことを生地のままに行動に現わせるようになることは,醉つた人を見たり,自分で醉つた經驗から誰でも知つている。氣分がうきうきとして,言葉がなめらかに湧きだし,まわりの人とわけ隔てなく話ができ,平常以上に快適である。しかしまわりから眺めれば,振舞につつしみが缺け,平常以下に下等な態度をあらわすのが普通である。醉いが深いと,瞬間瞬間に起る氣持の動くままに「衝動的」に行動するようになり,こまかい運動やからだの釣合をとる機能が麻痺して,からだがふらふらしてくる。もつと進めばうとうとし始め,最後は昏睡にまで至る。この過程が「酩酊」とよばれるものであることはいうまでもないがとりも直さずそれが「急性アルコール中毒」である。

 ごくわすかの酒でひどい酩酊を起す「飲酒不堪症」の人もある。また酒を飲むと尋常ならぬ醉い方をする人もある。酒が廻つてくると,意識が霧のなかにいるようにもうろうとなり,ムラムラと湧いてくる狂暴な衝動性の動くままに非常な亂暴を働くような人がそれで,本人はあとで醉いがさめて意識が戻つてからは,その間のことをほとんどおぼえていない。そうした意識混濁のうちに,器物を壞したり人を傷つけたり火をつけたりする。こういうのを「病的酩酊」とよぶ。

世界のナース・1 イタリヤ

Villa Biancaの想い出 原田 和歌子
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 誰でも言うことですが外國で何が困るといつて病氣になつた時が一番みじめです。どこでも醫療制度が發達して居ますから施療患者になればただも同樣で行屆いた治療を受けられますが,外國人ではそういうわけにも行かず,普通のお醫者にかゝれば莫大なもの入りです。

 日本で娘3人あれば婚資の爲に倒産すると言いますが,外國で1度入院すれば借財で首が廻らなくなるとよく言われて居ます。こういう經濟的な痛手ばかりではなく,苦しい時によく言葉が通じなかつたり,さらりとしたお粥に梅干がなつかしい時に,油こいスープなどいやでも飲まねばならない苦痛は人知れないものです。その時せめて優しい行き屆いた看護を受けることが出來れば病人の幸,不幸は決定的と言えましよう。

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 「夜の帳にささめき盡きし星の今を下界の人の鬢のほつれよ」—これは「みだれ髪」卷頭の第1首である。與謝野晶子の名は「みだれ髪」ときりはなすことはできず,その「みだれ髪」はこのような濃艶な情感で全卷がみたされている。人間の本能をしばるあらゆる封建的なものからの脱出,因襲道徳への反抗,ほとばしる戀愛感情,ほしいまゝな感情,自然にたいする浪曼的人間化,奔放で多彩な空想の亂舞が「みだれ髪」を貫くテーマであつてみれば,晶子が和泉式部いらいの情熱歌人とうたわれたのも,もつともなことである。

 このような情熱歌人の名が今日クローズ・アツプされるのは,しかし,1卷の「みだれ髪」だけをもつてするのではない。「君死にたまふことなかれ」の詩は,おそらくは,日本が丈化國家として新生のスタートをするにさいして,肺肝に銘ずる強さと格調をもつてひびくものであろう。「君死にたまふことなかれ」の詩によつて,愛と美の歌人はさらに自由の詩人としてその名を永く記憶されるであろう。

中道 千鶴子
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 これはあちらの話ではない。

 それは明るくて簡素な生活である。ちり一つとゞめない清潔と毎日使う必要なものだけが部屋の中におかれ,あとの要らないものは屋根裏と地下室に藏つてある。

ルポ 或る國立療養所で…。 M生
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 學生時代に親しい友の一人が胸を病んで療養生活をつづけていた時,しばしば訪れて其の内容に多少ふれていた結核療養所を,先日久々に他の用事があつて訪れた。

 武藏野獨特のあの雜木林の紅葉して,美しい靜かな環境をつくり出している農村,散歩の時間なのであろう2,3人連れだつた患者とおぼしい人人が林の中を靜かに歩いていた。この村には以前から結核療養所がいくつかあるときいていたが,其の中の1つ,かつて訪れた時は東京市の經營であつたものが,戰後國に移されて所謂國立となり厚生省の指導監督をうけるようになつた或療養所の,眞白いペンキ塗りの低い觀音開きの門を入る。入口に程近く眞紅にお化粧した紅葉の木が2本,朝日に映えて印象的だ。前庭は餘り廣くなく入るとすぐ木造二階建の本館があるが,此處からはじまつてずつと奧に幾棟もの病棟がつづいていることが想像される。

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新制度による第1回の國家試驗が本年は行われます。受驗者の皆樣はこの登龍門にそなえる準備はいかがでございますか。本誌ではそれぞれの權威者にお願し國家試驗の各項目についての問題を提出簡單なヒントを附していただくことにいたしました。この問題によつて十分試驗對策を練り輝しい榮冠を獲得されるよう御祈りいたします

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 私達老夫婦は,唯1粒の眞珠を得たい爲に日々苦難の生活を鬪つて居る。

 ガラス玉に太刀魚の皮をかぶせた僞物でなく,たとえそれがいとも小なる1粒であつても,ピンクの天然眞珠を欲しいと願つている。

生活に文化を 江上 フジ
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 評論家の古谷綱武氏は,日本の文化を向上させるには第1に婦人に充分睡眠を與えることだと云われた。一見非常に突飛なようだが日本の文化は先ずこんな所から出發すべきであろう。

 “ザン切リ頭ヲ 叩イテミレバ 文化文 化ト音ガスル”

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 A子「今日は,先生」先生「今日は前回では母音の研究をし,これで3回にわたつた發音の基礎練習もあらかた終りましたから,今回からいよいよ本格的な英語の勉強にとりかゝることゝ致しましよう。と言つて發音は英語の何よりのもとですから,例の子音と母音の一覽表はかならず離さず持つていて下さい。皆さんは今日,持つてきましたね。エ丶,よろしい。では皆さん看護學雜誌6卷4號29頁をおあけ下さい。そこからまず最初の文章を勉強してみることゝしましよう。

基本情報

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看護学雑誌
7巻1号 (1950年1月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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