発行日 1950年1月15日
Published Date 1950/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906598
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
學生時代に親しい友の一人が胸を病んで療養生活をつづけていた時,しばしば訪れて其の内容に多少ふれていた結核療養所を,先日久々に他の用事があつて訪れた。
武藏野獨特のあの雜木林の紅葉して,美しい靜かな環境をつくり出している農村,散歩の時間なのであろう2,3人連れだつた患者とおぼしい人人が林の中を靜かに歩いていた。この村には以前から結核療養所がいくつかあるときいていたが,其の中の1つ,かつて訪れた時は東京市の經營であつたものが,戰後國に移されて所謂國立となり厚生省の指導監督をうけるようになつた或療養所の,眞白いペンキ塗りの低い觀音開きの門を入る。入口に程近く眞紅にお化粧した紅葉の木が2本,朝日に映えて印象的だ。前庭は餘り廣くなく入るとすぐ木造二階建の本館があるが,此處からはじまつてずつと奧に幾棟もの病棟がつづいていることが想像される。
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.