2頁の知識
アルコール中毒
島崎 敏樹
1
1東京醫齒大
pp.24-25
発行日 1950年1月15日
Published Date 1950/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906594
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酒に醉うと,「抑え」がとれて,自分の思うことしたいことを生地のままに行動に現わせるようになることは,醉つた人を見たり,自分で醉つた經驗から誰でも知つている。氣分がうきうきとして,言葉がなめらかに湧きだし,まわりの人とわけ隔てなく話ができ,平常以上に快適である。しかしまわりから眺めれば,振舞につつしみが缺け,平常以下に下等な態度をあらわすのが普通である。醉いが深いと,瞬間瞬間に起る氣持の動くままに「衝動的」に行動するようになり,こまかい運動やからだの釣合をとる機能が麻痺して,からだがふらふらしてくる。もつと進めばうとうとし始め,最後は昏睡にまで至る。この過程が「酩酊」とよばれるものであることはいうまでもないがとりも直さずそれが「急性アルコール中毒」である。
ごくわすかの酒でひどい酩酊を起す「飲酒不堪症」の人もある。また酒を飲むと尋常ならぬ醉い方をする人もある。酒が廻つてくると,意識が霧のなかにいるようにもうろうとなり,ムラムラと湧いてくる狂暴な衝動性の動くままに非常な亂暴を働くような人がそれで,本人はあとで醉いがさめて意識が戻つてからは,その間のことをほとんどおぼえていない。そうした意識混濁のうちに,器物を壞したり人を傷つけたり火をつけたりする。こういうのを「病的酩酊」とよぶ。
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