特集 地域の医療を残すために—病院の統合・再編
地方紙記者から見た兵庫県丹波市の病院統合
足立 智和
1
1丹波新聞社編集部
pp.345-350
発行日 2019年5月1日
Published Date 2019/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210955
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●2004年度に始まった新臨床研修制度に端を発し,兵庫県丹波市にある県立柏原病院と柏原赤十字病院は,大学の医局員引き揚げにより極端な医師不足に見舞われ,いわゆる医療崩壊が顕在化した.
●2病院という「箱」でなく,医療を残そうと考え,筆者らは病院統合の必要性を早くから訴え続けたが,病院統合は長く議論の俎上に上がらなかった.病院建替え時期に未到達だったこと,統合で生じることが予想される職員処遇,負債の清算などの諸問題など主に開設者側の事情による.
●「県立柏原病院の小児科を守る会」「丹波医療再生ネットワーク」「たんば医療支え隊」をはじめ市民総がかりで医療を守る活動を展開し,「医師ら医療関係者にとって温かい地域になろう」との思いは根付いた.ただ,市民運動が2病院統合に直接的に関わることはなかった.
●県立県営の新病院が2019年7月1日に開院する.3月末で閉院した赤十字病院にあった地域包括ケア病床,感染症病床は病院が,健診センターと1次診療機能は病院併設の丹波市健康センターが,それぞれ引き継ぐ.健康センターは県が指定管理者となり,総合診療医の育成拠点にする.県・市が投じる事業費は212億円.
●教育の充実により病院を再建する方針を掲げた院長の就任により,県立柏原病院は研修医が集まる病院に生まれ変わった.新病院は医学生の宿泊部屋を備えるなど,「教え学ぶ文化の醸成」をハード面から支えることも意識し整備された.
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