病院 78巻12号 (2019年12月)

  • 文献概要を表示

根拠に基づく医療(EBM)や診療ガイドラインが日本の医療現場に根付いた今,病院には医療の質の評価と改善が求められている.

長年にわたり医療の質評価を推進してきた福井次矢氏は,病院長が質評価の旗振り役として,病院の診療内容に目配りすべきと説く.病院医療の評価のあるべき姿を模索する.

特集 本格化する病院のアウトカム評価

巻頭言 松田 晋哉
  • 文献概要を表示

 国民が医療に求める第一のものは医療の質である.2014年,OECDのレポートは日本の医療について,体系的な質評価の仕組みがないことを問題点として指摘した1).本特集の池田論文でもわが国の質評価の取り組みが諸外国に比較して大きく遅れていることを指摘しているが,わが国でも種々の病院団体で医療の質評価に関する試みが行われてきており,伏見論文で紹介されているように,それが厚生労働科学研究の枠組みで共通指標としてまとめられようとしている.ただし,池田論文で指摘されているように,死亡率などのアウトカム評価を行うためのリスク調整の仕組みを実装するための検討が必要である.

 谷澤論文で詳細に説明されているが,平成30年度診療報酬改定により,入院基本料は看護配置基準10:1,15:1,20:1の3区分となった.さらに,看護配置基準10:1の病棟では重症度,医療・看護必要度,回復期リハビリテーション病棟ではFIM利得や在宅復帰率,地域包括ケア病棟でも在宅復帰率による段階的評価が導入され,当該病棟が期待されている機能をどれだけ行っているかというアウトカム評価的な仕組みが診療報酬に導入された.宮井論文ではFIM利得によるアウトカム評価の意義が評価される一方で,クリームスキミングおよびデータの信頼性の問題点が指摘されている.これはアウトカムを診療報酬に紐づける上で,重要な課題である.

  • 文献概要を表示

●わが国の診療報酬による医療機能に関する評価は,これまで専門職の配置基準などのストラクチャー(構造)や,地域連携パス策定などのプロセス(過程)を評価するものが多かった.

●平成30年度診療報酬改定は,アウトカム(結果・成果・成功報酬・実績)に着目した長期療養〜急性期までの入院基本料の再編という,歴史的な診療報酬改定となった.

●今後,ストラクチャー,プロセス,アウトカムをバランスよく組み合わせた,適切な医療機関の評価が期待される.

DPCを用いたアウトカム評価 松田 晋哉
  • 文献概要を表示

●厚生労働省の「医療の質の評価・公表等推進事業」によりDPCデータを活用した医療の質評価の取り組みが飛躍的に進んだ.

●DPCデータから作成されるプロセス指標・アウトカム指標を医療の質向上を含めた病院マネジメントに応用するための方法論開発も進んでいる.

●厚生労働科学研究「医療の質評価の全国展開を目指した調査研究」による共通QIセットの開発により,わが国の医療の質評価事業がさらに発展していくことが期待されている.

  • 文献概要を表示

●急性期病院のアウトカム評価は,医療の質を担保するために必要である.

●プロセス評価を用いたクオリティ・インディケーターの活用も有効である.

●DPCデータなどを用いた医療の質評価は,急性期病院に義務化される可能性がある.

  • 文献概要を表示

●診療報酬上の回リハ病棟のアウトカム評価は,在宅復帰率,重症患者の受け入れとADL改善,ADL改善効率が用いられる.ADL評価にはFIMが利用される.

●ADL改善効率を病院間で比較できる指標として,入退院時のFIM利得を在院日数で除したFIM効率の疾患差を補正する実績指数が2016年に導入された.

●改定年度には入院時FIMの点数が下がることで,FIM利得,実績指数が増加する傾向が明らかであり,第三者評価の受審などを通じた適正な評価が求められる.

  • 文献概要を表示

●慢性期病院の担当領域は拡大し,多彩な診療機能の病棟を包括する.特に,「地域多機能型病院」として,救急機能を含む「急性期機能」を整備した「治療病棟化」が強く求められている.

●策定当時,適用病棟を主に医療・介護療養病棟に想定した日慢協の「慢性期医療のClinical Indicator(CI)」の内容では,もはや質評価に対応できなくなっている.

●慢性期病院も,アウトカム評価を含む慢性期医療における新たな「慢性期指標」の策定とともに,DPCデータを基盤とした「医療区分」に代わる「慢性期医療における新たな診療報酬体系」の構築を目指す.

  • 文献概要を表示

●先進諸国では長年にわたり病院のアウトカム評価が実施されている.

●アウトカム指標は,死亡率,再入院率のほか,有害事象の発生率,QOLの改善,満足度や患者経験など,多岐にわたる.

●アウトカムデータの公開にはさまざまな課題はあるが,わが国においてもアウトカム評価の研究ならびに実践を進めるべきと考えられる.

  • 文献概要を表示

■はじめに

 高齢化の進行は医療および介護ニーズの複合化をもたらす.その結果,介護施設・福祉施設から急性期病院への搬送症例が増加している.国は在宅ケアおよび在宅看取りの推進を目指しているが,戦後70年間の社会および家族環境の変化の結果,現在の50歳代以下で自宅での親族の看取りを経験している者の割合は非常に低いのが現状だろう.療養病床や介護施設による慢性期ケア提供量の増大,そして冠婚葬祭業者の増加により,看取りおよび死後のケアの「社会化」が大きく進んだのである.日本全体として労働力不足が問題になっている状況は,男女を問わず現役世代の労働力化を要求する.従って,現在の看取りの状況を短期間で劇的に変えることは難しい.厚生労働省が提案する「時々入院,ほぼ在宅」は,本人が望む限りにおいて在宅生活を継続しながら,病状の急変時には入院医療を適切に利用し,そして臨終期にごく短期間病院に入院して死亡するというパターンを維持しつつ,徐々に在宅看取りを増やしていくというのが現実的な対応になるだろう.ケアに当たる人的資源面での制約を考えても,在宅看取りを急速に拡大させることは難しい.

 しかしながら,他方でこうした臨終期の高齢者を受け入れる病院としてどのような病院が適切であるかについては検討が必要である.全くの私見ではあるが「時々入院,ほぼ在宅」を支える病院は,広域で専ら高度急性期・急性期を担うような病院ではなく,在宅での治療との継続性を担保できる日常生活圏域にある病院であるべきだろう.本来の趣旨からいえば,それが「地域包括ケア病棟」あるいは全日本病院協会が提唱した「地域一般病床」であると考える.また,平成30年度の診療報酬改定が看護配置基準にかかわらず病院の「医療機能」を評価したものになっていることを考えれば,療養病床で在宅患者緊急入院診療加算などを算定している病院もそうした病院として機能することが期待される.

 いずれにしても,超高齢社会における病院の在り方を,われわれは今一度きちんと議論すべき時期に来ているのではないか,というのが種々の関連データの分析を行ってきた筆者らの正直な感想である.議論を進めるためには,さまざまな視点からのデータ分析が必要である.そこで,本稿では平成28年度のDPC研究班注1のデータを用いて,DPC調査対象病院の側から見た介護施設・福祉施設からの搬送事例の分析を行った結果について論考する.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:労働基準監督署が急性期病院へ交付した是正勧告書などから,急性期病院に対する労働安全衛生に関する行政指導の実態を明らかにし,医療従事者の安全と健康確保ならびに健全な病院経営のための提案を行う.

 方法:全国に病院を展開するA法人本部およびその全57施設,B法人本部およびその全33施設に交付された是正勧告書などを情報開示請求により入手し,分析した.

 結果:労働安全衛生法の違反条項で多いものは100条(報告等),66条(健康診断),18条(衛生委員会)などであった.指導票や安全衛生指導書では,長時間労働防止や安全・衛生委員会,産業医の面接指導など,さまざまなことが指摘されていた.

 考察,まとめ:労働者に対する健康診断や産業医の面接指導などを定める労働安全衛生法66条の順守やその実効性確保は,医療従事者の健康確保のために特に重要である.近年,労働基準関連法違反は病院にとって小さくない経営リスクとなるため,法令順守の徹底が重要である.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・60

福岡県済生会飯塚嘉穂病院 小菅 瑠香
  • 文献概要を表示

 博多駅から電車で山を越えて東へ約40分.かつては炭都として炭鉱で栄えた筑豊の土地に,済生会飯塚嘉穂病院はある.

 取材日は晴天で,JR天道駅から自然豊かな道を歩いて川を越えると,小高い丘の上に緩く円弧を描く背の高い建物が見えてきた.敷地は広大な緑地公園のようであり,風合いのある煉瓦や水盤を持つ建物外観は,地域に親しまれる美術館のようでもある(図1).休息をとりに,エントランス付近のラウンジへ立ち寄る地域住民もいるという.

  • 文献概要を表示

■病院の概要

 奈井江町立国民健康保険病院(以下,奈井江病院)は北海道空知郡奈井江町に,1935(昭和10)年に奈井江産業組合厚生福利施設奈井江協済病院として開設,その後1962(昭和37)年に奈井江町立国民健康保険病院として移管開設され,以来,同地区の医療を支えてきた中核施設である.しかしながら石炭産業の衰退とともに人口は減少し,それに伴い病院機能も当初の一般病床を中心としたものから急性期後に徐々に転換し,2016(平成28)年度に病棟再編によって病床数をそれまでの96床(一般46床・医療療養20床・介護療養30床)から50床(一般18床・医療療養32床・介護療養病床廃止)とした.さらに,2018(平成30)年度からは医療療養50床(入院基本料2,うち開放型病床12床)の病院となっている.常勤医師3名に加え,北海道大学,旭川医科大学,砂川市立病院の支援を得て,内科,整形外科,外科,眼科,小児科の外来診療を行っている.

 もともとは2階,3階の両方が療養病床であったが,病棟稼働率の低下,そして医療職確保の難しさもあり,2016年に2階部分のみを療養病床として残し,3階は約1億円をかけてサービス付き高齢者向け住宅(16部屋)に転換している.

連載 「働き方改革」時代の労務管理・19【最終回】

  • 文献概要を表示

■職務懈怠と懲戒処分

 職務懈怠(典型例として,無断欠勤・遅刻・早退,勤務状況不良および勤務成績不良など)は,雇用契約上の債務不履行に該当するが,直ちに懲戒事由の対象となるわけではなく,懲戒処分が使用者の組織秩序維持のために行われるものであることから,当該職務懈怠が服務規律に反したり,職場秩序を乱した場合に懲戒事由となる.

 しかし,チーム医療において,医療従事者一人一人の職務懈怠は全体の医療提供の質の低下を招き,場合によっては重篤な結果を招きかねない.それ故,医療従事者間では,職務懈怠と思しき従業員に対する不満が大いに募りやすく,重い懲戒処分を望む声が聞かれることもしばしばであり,病院経営者としても,どこまでの懲戒処分を実施できるか,頭を悩ませる問題である.

連載 多文化社会NIPPONの医療・27

  • 文献概要を表示

 2019年度から制度が始まった外国人患者受け入れの「拠点的な」医療機関は,自治体が選定して公表されることになった.現時点では,この指定を受けたからといって診療報酬上の加算などのメリットはなく,困難事例を引き受ければ訴訟や未収金のリスクが待っているということから,指定を「受けない」と判断した施設もある.「自治体が未収金の補てんなどの支援体制をつくるならば検討する」と回答した施設もある.今後,地域特性を踏まえた体制づくりが各地で進むだろう.そこで求められるのはどのような人材だろうか.その人材はどのように育成・確保ができるだろうか.まずは近年の状況を振り返ってみよう.

--------------------

目次

Back Number

Information

次号予告

「病院」第78巻 総目次

基本情報

03852377.78.12.jpg
病院
78巻12号 (2019年12月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月25日~12月1日
)