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■はじめに
高齢化の進行は医療および介護ニーズの複合化をもたらす.その結果,介護施設・福祉施設から急性期病院への搬送症例が増加している.国は在宅ケアおよび在宅看取りの推進を目指しているが,戦後70年間の社会および家族環境の変化の結果,現在の50歳代以下で自宅での親族の看取りを経験している者の割合は非常に低いのが現状だろう.療養病床や介護施設による慢性期ケア提供量の増大,そして冠婚葬祭業者の増加により,看取りおよび死後のケアの「社会化」が大きく進んだのである.日本全体として労働力不足が問題になっている状況は,男女を問わず現役世代の労働力化を要求する.従って,現在の看取りの状況を短期間で劇的に変えることは難しい.厚生労働省が提案する「時々入院,ほぼ在宅」は,本人が望む限りにおいて在宅生活を継続しながら,病状の急変時には入院医療を適切に利用し,そして臨終期にごく短期間病院に入院して死亡するというパターンを維持しつつ,徐々に在宅看取りを増やしていくというのが現実的な対応になるだろう.ケアに当たる人的資源面での制約を考えても,在宅看取りを急速に拡大させることは難しい.
しかしながら,他方でこうした臨終期の高齢者を受け入れる病院としてどのような病院が適切であるかについては検討が必要である.全くの私見ではあるが「時々入院,ほぼ在宅」を支える病院は,広域で専ら高度急性期・急性期を担うような病院ではなく,在宅での治療との継続性を担保できる日常生活圏域にある病院であるべきだろう.本来の趣旨からいえば,それが「地域包括ケア病棟」あるいは全日本病院協会が提唱した「地域一般病床」であると考える.また,平成30年度の診療報酬改定が看護配置基準にかかわらず病院の「医療機能」を評価したものになっていることを考えれば,療養病床で在宅患者緊急入院診療加算などを算定している病院もそうした病院として機能することが期待される.
いずれにしても,超高齢社会における病院の在り方を,われわれは今一度きちんと議論すべき時期に来ているのではないか,というのが種々の関連データの分析を行ってきた筆者らの正直な感想である.議論を進めるためには,さまざまな視点からのデータ分析が必要である.そこで,本稿では平成28年度のDPC研究班注1のデータを用いて,DPC調査対象病院の側から見た介護施設・福祉施設からの搬送事例の分析を行った結果について論考する.
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