病院 77巻6号 (2018年6月)

特集 機能転換が拓く病院の未来

巻頭言 山田 隆司
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 進みゆく超高齢社会を背景に,限られた医療資源の中での地域包括ケアの実現に向けて,地域医療構想に基づく病院の機能転換が進められている.地域の各病院には,二次医療圏の中での自院の果たすべき役割分担を見据え,地域内のニーズに的確に応え得る変革が求められている.近視眼的な診療報酬制度の誘導に惑わされず,先を見据えた施設の役割を検討する必要に迫られている.本特集では既に機能転換を果たしてきた病院の実例から,それぞれの経緯や課題を通して,今後の方向性を探りたい.

 今村論文では,高齢化に伴う疾病構造の変化に即した病院機能転換の必要性およびその後の人口減少を見据えた対策を講じる必要性が説かれている.加納論文ではこれまで民間病院が果たしてきた役割を振り返り,今後それぞれの地域内で公的病院との協議を踏まえ自院の役割を明確にしていくことの重要性が説かれている.武久論文では療養病床に関する国の医療制度の変遷を踏まえ,今後は広域急性期病院と地域多機能型病院に収束するという論説が提示されている.いずれもこれまでの歴史的経緯を踏まえた現状認識が土台となっており,今後の方向性に対して説得力がある内容となっている.

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●直近に迫る医療・介護ニーズの爆発的な増加,長期的にみたニーズの激減,病院はこの両方の現象に対応できるよう備える必要がある.

●現状のまま進めれば,病院も地域の医療・介護も変化を支えきれず共倒れする可能性がある.これを防ぐためには医療のあり方を変えていく必要があり,よりスムーズな医療と介護の連携が求められるだろう.

●その対応策が「地域医療構想」と「地域包括ケア」であり,病院の機能分化と転換である.これからの医療の主体は,急性期医療から,地域で支える医療へと形を変えていくことが求められている.

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●65歳以上の人口は,人口集積度の高い地域で圧倒的に増加し,その地域では高齢者救急を民間病院が中心となって担わなければ地域医療の安定化は図れない.

●地域医療構想調整会議においては,民間病院と公的病院が担う役割について,地域特性を認識した上でしっかりと議論を行うことが必要である.

●平成30年度の診療報酬改定は「診療実績」「リハビリ」「在宅」に重点が置かれた.今後の姿を検討する選択肢が示されたと考え,自院のポジショニングを考える必要がある.

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●今回は,慢性期病院は“慢性期治療病棟”しか評価しないという改定であった.

●療養病床のみの慢性期病院は,やがて地域で評価されなくなるだろう.

●慢性期病院は地域多機能型病院を目指して,急性期以外の病床機能を持たなければならない.

●“自称急性期病院”に混在する慢性期患者を整理し,病床機能を明確にする必要がある.

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●過疎地の拠点病院である砂川市立病院の病床機能の転換について概説した.

●地域に必要とされる医療,貢献する医療の提供に取り組んできた.

●職員のモチベーション・自主性の向上,病院内・外での連携強化が重要と考えられた.

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●病院が機能分化していき,急性期が多いこの地域にあって,当院の果たすべき役割は亜急性期であると立ち位置を決め,10年間で10回の病棟改編を繰り返してきた.

●地域包括ケア病棟をいち早く70床取得できたのは,早くから副看護部長を専任の病床管理統括者とし,また,職員全員のベクトルを一つにできたことが大きい.

●結果として急性期病院からの紹介者数は5年で1.6倍,病床稼働率は90%から99%となり,改編は成功であったと思われる.

●2007年から体制の変化を年間目標にも挙げ,病院,診療所,地域,職員へと当院の機能を周知したことが今につながっている.診療報酬に誘導されることなく,ブレずに続けることは大変重要である.

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●持ち分なしの医療法人で市民病院の役割を果たして準公的運営を行っている.

●多機能型地域病院として,急性期から回復期,慢性期の機能を持つケアミックス型病院で,病病連携,病診連携,医療介護連携に力を入れている.

●医療制度の変化に迅速に対応し,病床転換,医療の質の向上を行った.

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●奈井江町においては,病床稼働率の改善を図り,さらに空床有効利用の方策として病院内「サ高住」を開設し,病院内に住宅を設け,住居と医療・介護サービスを一体的に提供する地域包括ケアシステムの拠点施設としての位置付けを提案した.

●健康で生きがいのあるまちづくりのために「奈井江版CCRC〜生涯活躍の街構想」として介護予防,健康づくりと社会参加の推進を兼ねた高齢者支援体制の新たな拠点づくりを全町的に取り組む方針である.

●国が策定する地域医療構想の実現に向け,地域医療介護総合確保基金の有効利用として医療機能の分化連携・再編ネットワークの推進を図る改築費用に利用できた一例を提示した.今後は収益性について検証していきたい.

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地域医療構想の中で,自院の機能をどう考えるか.

相澤氏は,病床数の議論ではなく,地域の「医療需要」を見据える必要性を説く.

日本病院会会長として,経営者として,そして一医療者として,これからの病院医療を語る.

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■はじめに

 現在,総合医あるいは総合診療医などの議論が再び注目を浴びつつある.2018年度から始まった予定の新専門医制度の議論の中で基礎領域として総合診療が専門医として位置づけられ,専攻医の募集も始まっている.こうしたなかで,総合医のなかのサブ領域としての病院総合医,ホスピタリストなども関心を集め始め,学会のみならず各病院団体も独自にその養成に乗り出す動きもみられる.それぞれが表明している理念や方針は,ニュアンスの違いはあっても,基本的には「幅広い診療能力」や「全人的医療」などに集約される.ただ,呼称はともかく,総合医あるいは総合医的な機能が以前にも増して求められている時代背景があり,急性期の病態を中心とした医療から亜急性期・慢性期の医療ニーズにも対応できる医師像を求める医療現場の求めは今後も大きくなるだろう.こうした社会の要請を念頭に置いて,わが国における病院総合医の現状と課題,そして期待について述べたい.

連載 「働き方改革」時代の労務管理・1【新連載】

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■連載の目的と概要

 「働き方改革」という言葉を聞くようになって久しいが,日本経済再生の施策として安倍内閣が掲げる「働き方改革」では,長時間労働の是正等が挙げられている.

 応召義務等の観点から,医師に対する罰則付きの時間外労働上限規制の適用こそ,一時的に見送られる見込みであるが注1,「働き方改革実行計画」を受け,厚生労働省は,各都道府県に対して,医師の時間外労働が長時間に及んでおり勤務環境の改善を促すべき医療機関(特に病院)を把握するとともに,必要に応じて助言等の対応を実施するよう依頼(要請)している状況にある注2

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■「腰痛は職業病」ではない

 医療現場では「腰痛は職業病」と我慢を強いる文化が根強く,腰痛による離職者は後を絶たない.

 戸畑けんわ病院では「健康で安心して働き続けられる職場づくり」の一環として2013年に日本ノーリフト協会による「ノーリフト」学習会を開催した.英国発祥のノーリフトとは,「押さない・引かない・持ち上げない・ねじらない・運ばない」をキーワードに人力のみの移乗を禁止し,ケアされる人の自立度を考慮した用具の使用による移乗を行うための技術や考え方である.学習会では,力任せの不安定な移乗や介助は,患者を不安にさせて筋緊張による拘縮を招くこと,介助者の腰痛を引き起こすことを学び,スライディングシートやリフトなどの道具を適切に使用する安全な介助方法を教わった.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・42

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■はじめに

 篠ノ井総合病院は1967(昭和42)年,初代院長・新村明氏によって開院した.新村氏は着任後に『患者本位の病院改革』1)を著し,当初から患者のための病院づくりを訴え,実行していた.

 自身の入院経験を基に,当時の一般的な病院における医療が,患者のことを考慮しない,医療者主体のものであったことを反省し,次々と病院サービスを変えていった.筆者が印象に残っているのは給食の変更である.夕食16時配膳が当たり前であった時代に,18時配膳を実施した(1975年).調理場には,調理師の資格のない板前を雇って「鮎の塩焼き」を提供し,患者の食欲を刺激したという.よく耳にする「いくらバランスのよい給食でも全部食べてもらわなければ意味がない」を40年以上前に実践されていたのである.

 このほか著書で示されているのは,看護師が看護に専念できる支援体制の構築,2交代制の導入,ベッドサイドケアを実現するナースコーナー(分散型の看護拠点)の採用などである.その後に病院運営・管理・建築の分野で議論されたこれらの取り組みが,すでに篠ノ井病院では実践されていた.

 わずか30床でスタートした病院は1998(平成10)年には433床にまで拡大し,2017(平成29)年,創立50年を迎えた.2013年から建築更新工事に着手し,本館棟は2016(平成28)年に稼動開始,その後既存棟の耐震改修,エントランス部分工事なども行い,2017年第1期工事が竣工し新時代を迎えた(図1).

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・23

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■はじめに

 医療法人真正会霞ヶ関南病院のルーツは,1972年に現理事長の斉藤正身氏の父である斉藤正男氏がその開設に努力した川越市霞ヶ関中央病院(48床)である.その後,1977年に特別養護老人ホーム真寿園が設立され,霞ヶ関中央病院も1984年には200床の病院となった.1987年に霞ヶ関南病院(100床)が開設され,以後,同病院で急性期後の医療・介護機能強化が図られる.具体的には,在宅医療開始(1990年),訪問看護ステーション「やさしい手」開設(1994年),訪問看護ステーション「スマイル」開設(1998年),療養型病床(127床)認可(1998年),総合リハビリテーション施設認可(1998年),在宅介護支援センター「かすみ」開設(1999年),障害者等一般病棟(すみれ37床・ふじ41床)承認(2007年),通所介護「デイリビング」開設(2009年)というように,急性期後の医療・介護の複合体としての機能拡充が積極的に行われてきた.ここで注目されるのは,こうした機能の拡張が国の制度変更を後追いする形で行われたのではなく,真正会の利用者が生きがいをもって地域で生活していくために必要であるからという「想い」によって,国の制度に先駆けて行われてきたことである.

 この点について斉藤理事長は「今は,入院だけでなく在宅も通所も含めて病院と長く付き合う時代で,ある意味でその人の生活の一部になっています.そのlifeやlivingが無機質なものであってはならないでしょう.病院もその人の生活の一部と考えることが必要なのです」と説明する.そして「良い病院とは患者さんが人間らしく生活することができ,一人一人と向き合うことを可能にする施設であり,人生に必要な3つの場所,『居場所,行く場所,座る場所』になっていることが必要であり,われわれはそれを利用者の方々のニーズに応える形で整備してきたのです」と強調する.

 霞ヶ関南病院を運営する真正会が創設来40年以上にわたって掲げている理念は「老人にも明日がある」というものである.これは同法人の提供する医療サービスの原点に常に福祉の心を持とうというものである.そして,徹底的な地域志向・地域貢献と先駆性が目指されており,そのために職員がチームとして協働的に動くことが行動指針となっている.

 この連載の目的の一つは,医療機関がまちづくりの中核として重要であること,そしてそうした試みのsocial businessとしての面白さを紹介することにある.本稿では,筆者より少し年上の斉藤理事長が,30代前半のころからこの分野の先駆者として創り上げてきた医療法人真正会および社会福祉法人真寿会の取り組みを紹介したい.

連載 多文化社会NIPPONの医療・9

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 外国人患者受け入れ体制整備において,業務手順や電子カルテなどを含めた「仕組み」を変えたり新たに導入しなければならない案件もある.費用もかかるし周知するのが大変だ.今回は,当院がこれまでに経験した事務管理・財務部門の課題について紹介したい.

連載 赤ふん坊やの地域ケア最前線!—病院と地域のかかわりを学ぶ旅・[21]

岡山県倉敷市 十河 浩史
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 岡山県倉敷市では,地域の中核病院が核となって病診連携の輪をつくり,市民の皆さんの積極的・主体的な関わりを上手に引き出して,地域参加型の地域連携を推進している病院があるんだ! 連載第21回目の今回は,企業で培った企画力を存分に生かして活躍する,倉敷中央病院の十河浩史さんにお話を聞きました!

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病院
77巻6号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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