連載 アーキテクチャー×マネジメント・42
JA長野厚生連 南長野医療センター 篠ノ井総合病院
中山 茂樹
1
1千葉大学大学院工学研究科
pp.454-459
発行日 2018年6月1日
Published Date 2018/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210724
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■はじめに
篠ノ井総合病院は1967(昭和42)年,初代院長・新村明氏によって開院した.新村氏は着任後に『患者本位の病院改革』1)を著し,当初から患者のための病院づくりを訴え,実行していた.
自身の入院経験を基に,当時の一般的な病院における医療が,患者のことを考慮しない,医療者主体のものであったことを反省し,次々と病院サービスを変えていった.筆者が印象に残っているのは給食の変更である.夕食16時配膳が当たり前であった時代に,18時配膳を実施した(1975年).調理場には,調理師の資格のない板前を雇って「鮎の塩焼き」を提供し,患者の食欲を刺激したという.よく耳にする「いくらバランスのよい給食でも全部食べてもらわなければ意味がない」を40年以上前に実践されていたのである.
このほか著書で示されているのは,看護師が看護に専念できる支援体制の構築,2交代制の導入,ベッドサイドケアを実現するナースコーナー(分散型の看護拠点)の採用などである.その後に病院運営・管理・建築の分野で議論されたこれらの取り組みが,すでに篠ノ井病院では実践されていた.
わずか30床でスタートした病院は1998(平成10)年には433床にまで拡大し,2017(平成29)年,創立50年を迎えた.2013年から建築更新工事に着手し,本館棟は2016(平成28)年に稼動開始,その後既存棟の耐震改修,エントランス部分工事なども行い,2017年第1期工事が竣工し新時代を迎えた(図1).
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