病院 31巻9号 (1972年9月)

特集 院内会議

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 今年の6月に‘かけがえのない地球を守り,後代に残そう’というスローガンの下に,人間環境会議が開かれた.かけがえのない地球と表現されているが,われわれの病院では,‘かけがえのない貴い人命を守ろう’ということで,多くの会議が開かれているということができよう.

 病院に勤務するようになって9年になる.その間わずかに3か所の国立病院の経験しかないが,それぞれ会議は一様ではないと感じた.国立病院では,業務基準に管理会議,診療会議,そして委員会と最低限の会議のあり方が定められているのだが,それでも,それぞれの病院で適宜にいろいろな会議がもたれている.しかしこれらの会議が実はたいへんな苦労を伴いながら開かれているのである.これらのことを,病院という特殊性を加味しながら考えてみようと思う.

病院における経営会議 奥田 幸造
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はじめに

 現在社会のあらゆる部門の中で,病院ほど複雑多岐なものはなく,ことに経営面において他の産業経営部門とその性質を大いに異にしている.

 院内に働く医療従事者の種別も何十種類と多く,また現在のわが国の医療体系,医療経済情勢では,病院の経営ほど危機に瀕している部門はない.かといって国民の人命尊重の立場から,すなわち国民の文字通り命の綱が病院であるので,1日も,いや1秒もゆるがせにできず,なかんずく地域医療の立場から地域住民の健康を守る唯一の医療機関となっている地方の公立病院のごときは,多くの不採算性をもちながらも病院医療高度化,近代化をはかりつつ地域住民の健康に対するニードにこたえなければならない.いわゆる地方自治体病院は,その経営面において全病院の約60%が赤字を多額に出している現況で,病院の経営会議も‘親方日の丸’式の生やさしいものではなく真剣勝負そのものであり,私自身,私の病院環境においてひしひしと感ずるところで,私がこれから述べる病院の経営会議の話も,かなりそういった現状に立った公立病院を中心とした傾向になることを,はじめにお含みいただきたい.病院といっても,病床規模,病院の経営主体別,立地条件など,さまざまな異なった状況下の病院の経営会議を論ずることは,むずかしいため,一般的に,根本的な問題について普遍的にも述べてみたい.

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生きがいのある組織づくり

 病院の危機は,人手不足(医師,看護婦,パラメディカルなど),経済的障壁(低医療費と高度医療の需要)によってますますその度を強めている.抜本的医療制度の確立が望まれる理由がここにある.しかしこの問題が,仮に解決されたとしても,病院自体を円滑な経営の軌道に乗せることができるかどうかは,病院長のトップとしての経営努力のいかんにかかってくる.換言すれば,病院の組織のあり方とその運営がいかに行なわれているかということが問題として残ってくる.

 病院にかぎらず,一般生産企業において,現在もなお,経営陣の最高の課題は‘組織の硬直化にどう対処すべきか’ということである.組織に活力を与え,硬直化にゆさぶりをかけるにはどうしたらよいか,具体的にどういう手を打てばよいか.いかに理想的な組織ができても,個個の細胞が,水を得たる魚のごとく,ピチピチと活動しなければ,‘動かない水は腐る’ように組織は死んでしまう.そこでなぜ組織が硬直化するのかということを考えてみたい.

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コミュニケーションの意味

 コミュニケーションというコトバは,もうれっきとした日本語になりきっている.‘マスコミ’や‘ミニコミ’などと日常生活のコトバとして定着している.しかしながら,その意味や内容については明らかになっていないものも多い.英語の辞書でコミュニケーションというコトバを調べてみると,伝達,通信,通知,連絡などという訳がみつかる.そして,その付近にはこれとよく似たコトバが並んでいる.コミューニオン(霊的な交わり),コミュニズム(共産主義),コミュニティ(近隣社会),などと親しみのあるコトバが並んでいる.これらのコトバには何かしら共通性がありそうである.原語はラテン語の‘公共’‘共有’といった意味のコトバからきている.お互いに通じあって共有できることを意味している.したがって,コミュニケーションは,意思の疎通というように,伝えるものと,受け取るものとが,相互に通じあうことによって成立するわけである.

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‘会議’と聞いただけでもヤレヤレ…とうんざりする人もいるかもしれない.しかし,病院によっては,それぞれアイディアを生かしたりして,りっぱな会議を運営している.まずは‘私の病院の自慢できる会議’をのぞいてみよう.

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 1814年,ナポレオン後の体制を協議するためウィーンで開かれた国際会議は,‘会議は踊る,然れども進まず’という有名なことばを生んだ.

 これを題材にとって戦前のドイツの名画,‘会議は踊る’が作られたのであるが,以来,いたずらに会議のための会議を重ね,核心にはいらない状態をこのように評するようになったことはご承知のとおりである.

病院と統計

大型化する病院 前田 行雄
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 全国の病院から毎月病床数や患者数が報告され,病院報告としてまとめられている.今回は,昭和46年の結果から,そのおもな内容を観察してみよう.

グラフ

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山陽本線徳山駅から,東北の方向へ約2km,にぎやかな市街を抜け,町並もそろそろとだえた道をさらに登ると,5階建の病院に着く.まわりは自然公園て,緑があふれている屋上からのながめは絶好である.遠く瀬戸内の島々から,徳山湾沿いに林立する工場の煙突,10万人の市民が生活するさまが手にとるように見ることができる.静かで療養するには環境もよく,しかも,健康な人のつくりだす社会からの隔絶感もない.

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 幡井ぎん——というよりおぎんさんとは昭和4年4月聖路加女子専門学校に入学して以来まる3か年ともに学び,ともに生活した,それこそお互いに喜びも悲しみもともにした友だちである.

 あれから40年の歳月が流れた.お互いに人生のさまざまな体験をしてきたわけであるが,最近のおぎんさんと話をしていると,なんと心ひかれる人になったのだろうと思う.若々しささえ感ずる.虎の門病院の看護婦さんたちがどことなくあかぬけがしていて,いかにもプロフェッショナルな感じを受けさせる源に,彼女の影響があるように思う.

話題

第23回日本病院学会ご案内,他
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学会長:河野稔(財団法人河野臨牀医学研究所附属北品川総合病院長)

会場:帝国劇場(東京都千代田区丸の内)

時評

"ホスピタル" えい
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新着映画の題名にひかれて

 "ホスピタル"(The Hospital)という題名にひかれて,この映画の試写会に出かけてみた.ベンケーシーのテレビのように,アメリカの病院のしくみが‘勉強’できるのではないかという気もしたからである.

 しかし実際は,ベンケーシーのようなまじめくさった物語ではなかった.病院を舞台にして連続殺人事件が起きるというすさまじさである.アカデミー脚本賞やベルリン映画祭賞など5つの賞を受けているだけあって,ひきこまれるおもしろさがある.

病院図書館

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病院薬剤師への道しるべ

 まえがきに,‘薬学生や薬剤師諸君に望みたいことは,薬学人としてのフィロソフィーを持った薬学生として学園を巣立ってほしいこと,医療人としての使命感に溢れた薬剤師になってほしいことである’と,著者は述べている.そして,序論,本論を通じて,あらゆる所に,この気持ちが織り込まれている.

 著者は,病院薬学の研究に徹した斯界の権威である.この本は,著者の多年にわたる研究と体験に立脚して,病院薬局の業務を体系化し,学としてまとめたもので,掲載されている資料は,いずれも原著に忠実に引用され,しかも,その解説には,いちいち,病院薬局,病院薬剤師の使命を明らかにしている点で,単なる病院薬局実務の指導書とは趣を異にし,医療人としての病院薬剤師の道しるべであるといえる.

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東京から急行で2時間.この病院は,群馬県伊勢崎市の郊外にある.本年6月に100床あまりの新館を増築し,総ベッド238床の脳血管障害者のための専門病院である.‘脳卒中患者は入院期間が長く,したがってベッドの回転率も悪く慢性病院になってしまう’との常識に挑戦し,早期入院・早期リハビリテーションを試み,3-4週間で家庭へ帰している.脳血管研究所を名のるとおり,これだけの症例を臨床研究しているところはほかにはないという.

美原博院長(写真左)は昭和18年の慶大卒,北里賞や日本医師会最高優功賞などを受賞した.

国民医療

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国民総医療費が2兆5000億円を越えた.これは自動車産業,住宅産業と肩を並べるものといわれる.しかしその実態はどうなのか,冷静に検討する必要がありそうだ.

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 公害の問題を全く感じさせない海と河と山のあるのが自慢であるという秋田県本荘市に地域医療センターとして自他ともに認めている由利組合総合病院がある.

 最近とくに地方では珍しく,近代的な医療設備の完備した病院として地方新聞などにも紹介され,和泉院長の功績が讃えられている.

看護管理・9

看護評価の考え方 吉武 香代子
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看護評価に内在する困難さ

 看護評価をめぐる論議が,最近少しずつ活発になってきている.看護の成果を客観的に評価することが容易でないことは,すでに多くの先人によって指摘されている.看護において先進国であるアメリカでも,この困難さは指摘されており,決して評価に関して絶対的な方法が示されているわけではない.

 昭和46年10月の第9回日本病院管理学会において,私どもは‘看護評価’についてのシンポジウムを行なった.このとき私が発表した要旨は,すでに看護学雑誌本年1月号に掲載されている.このなかで私は,看護の成果は医療全体の成果として総合的に評価されるため,看護単独で評価されにくいこと,一定水準に達している看護と達していない看護は見分けられても,一定水準に達してからの質的評価は困難であること,患者側の条件が種々であるため,同一基準で評価が行なわれがたいこと等々を述べて,看護を客観的に評価する尺度が未開発であることを述べた.そして現在も残念ながら私の考えは本質的にこの域を脱しているわけではない.Dr.ランバートソン,Dr.アブデラら,高名な看護研究者が結局‘困難である’といい,‘今後の研究の必要’を強調している分野に,そう簡単に新しいアイデアが浮かぶはずはないのである.

医事業務あれこれ事例集・9

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医療法第16条‘医師の宿直義務’

 医師の宿日直制に関することは,医師と病院管理者との問題であり,医事業務には直接関係のないことではあるが,かつて,私どもの病院で医師数が定員に満たないという要因と,その要因から生ずる医師1人あたりの診療業務の激増に加えて時間外患者の急増が誘因となって,医局員から宿日直制の拒否という爆弾声明があったことがあり,しばらくの期間,この問題の解決に病院管理者群が苦慮したことがあった.

 またちょうどそのおり,管理者から日ごろ医療関係法令に関係している医事課長に,宿日直に関する法規などについての調査をするよう依頼があったので,当時これらに関する法規を調べたり,関係官庁の意見を聞いたりして苦労した経験がある.最近のように交通事故の頻発による傷病者の増加とか,また地域における医療需要の増大などからみて,今後においても時間外診療はますます多くなってくることが推察されるので,そうなれば当然どこの病院でも一応宿日直制の問題について多少なりともトラブルが生ずることが予想されるし,もし,そういう事態になれば私と同様,大方の病院の医事課長さん方が関係法規などの調査役を命ぜられ,苦労されることと思われるから,老婆心ながら今回は標題のテーマを取り上げてみた.そして私の調査した資料を紹介することによって,少しでも参考になれば幸いと思い筆をとった次第である.

検査室の窓から・9

看護婦係物語 冨田 重良
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プロローグ

 大学病院から尼崎病院へ移っていちばんありがたかったことは,看護婦が私ら医師の介助をよくしてくれることであった.これは,460名の入院患者,1日1200名の外来患者の診療を,わずか30名かそこらの医師でしなければならぬ現実から生まれたやりくりであったのだろう.彼女らのおかげで診療の能率がどれくらい上がったことか.彼女らはまた,看護の技術が高度であるとはお世辞にも言えなかったにしろ,それなりに患者のため一生懸命努力していたようである.身寄りのない患者や貧しい患者のために,福祉的な世話まで何かと気を配っていたある主任看護婦の姿が,今でもなつかしく思い出される.

 ‘患者死後の剖検の許可はその病院の医療に対する家族の感謝の気持から’と言われているが,尼崎病院において非常に容易にその許可の得られたことは,彼女らの献身ぶり,またそれに対する家族の信頼,感謝を裏付ける何よりの証拠ではなかったろうか.あるときなど,主治医たる私が臨終の席に間に合わなかったにもかかわらず,婦長が代わりにその許可を得てくれていたのである.

病院史のひとこま

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 昭和24年6月に病院管理研修所が発足して,同時に2か月コースと1週間コースとの2つの病院管理者研修がスタートしました.前者を長期コース,後者を短期コースと称していました.長期コースは昭和38年まで継続し,その間326人が受講しました.

 大学出たての人で,一生病院のために働こうと考えている意志堅固な人に教育を与えて,有能な管理の専門家をつくろうとしたわけです.しかし発足当時は一般にはそういう希望をもっている人はなく.とりあえず国立病院の中堅職員か技官と事務官から13名集めて発足したわけです.これが今の専攻科に発展したのです.

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山口県・周防灘に面した徳山市の高台に,236床のオープンシステム総合病院徳山医師会病院がある.170名の会員医師によって運営される完全なオープンシステム病院である.

日本の土壌とは相容れぬシステムなのではなかろうかと,その意図の正しさは十分に認識されながらもなかなか実際の場に移されることのなかったものであった.しかし,ここ徳山においては,着実に根を下ろし,枝葉を広げている.その実情を,この病院を守り育ててこられた関係者の方がたに,くわしくお話しいただこう.

病院建築・44

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医学書院の"病院"編集子が東京逓信病院の改造計画について書いてくれといってきた.OKの返事をしてから,どんなプランで書き進めるか,しばらく考えた.そしてこの欄としては異例だが,対話形式を用いてみることにした.このほうが,実際の内容をうまく表現できそうに思ったからである.Eは"病院"のEditor, Tは私(Takeda)として読んでいただきたい.

精神医療の管理・9

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昭和大付属烏山病院における仮説

はじめに

 わが国の精神医療の展開場面に,いわゆるサイキアトリック・ソーシャル・ワークなるものが紹介され,すでに20数年になろうとしている.その発展・消化の過程において,いわゆるソーシャル・ワーカー(以下P.S.W.)と呼ばれる人たちの人数は確実に増しつつあるが,役割や地位など基本的なものについてはどの程度進展してきたのか疑問である.

 昭和38年,国立精神衛生研究所が実施した調査1)の業務内容で,その一端をうかがうことはできるが,柏木ら2)が‘業務内容は多種多様で,ソーシャル・ワーカー自身も,また病院側でも何が木来の業務なのかわからないまま,どこかに安住の場を見つけようと暗中模索していたと思われる……’と述べているようにP.S.W.の役割は不明確である.その後,日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会を中心に荻野3),杉田4),窪田2),岩本5),柏木2,6),小松2,7),伊藤8),小林9),早川10),竹村16),堀田11)らによりその役割が徐々に明確にされつつあるが,まだ普遍性のあるものを期待できる段階ではない.理論的根拠の相違による違いは当然としても,個人差,各施設間による差が大きく,理論的背景にも混乱がみられ,未整理・未発達の状態であることは,前述の調査時点と大差なく,今後もこの状態が当分続くものと思われる.

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 この論文は,大阪の淀川基督教病院の院長で,現在アメリカ・ジョージア州デケーターの病院で卒後訓練を兼ねて帰米中のフランク・ブラウン博士の日本の病院の問題点とその改善のための提案である.多年私的な,しかも公益的な病院の経営でご苦労を重ねている病院長らしい観察である本論文は,多くの読者の共感を呼ぶものであろう.

 健康保険の抜本改正が叫ばれる今日,実務からの貴重な発言であろう.保険支払方式は種々の要素をもつ複雑な問題であるので,ブラウン院長の提案特に在院日数の減少は,出来高払方式のもとでの効果は困難な面が多いが,現状を大幅に改革する実験が今ほど必要なことはあるまい.大胆な提案と実験による成果による議論のみが前進を約束するものであろう.

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 大阪市にある淀川基督教病院は,148ベッドのこじんまりした病院であるが,この病院で行なわれている卒後医師の教育は,虎の門,聖路加,東京女子医大などの各病院と並び称せられるほど,すぐれた内容とユニークな試みを備えたものである.ここに,スタート以来4年めを迎えた医師教育の実情をご紹介いただこう.

霞ガ関だより

医療基本法案 S.O
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法案作成の背景

 医療基本法案は,第68国会に提出されたが,審議未了のまま廃案となった.基本法案が閣議決定されたのが5月23日,国会に提出されたのが5月26日,そして廃案となったのが6月16日であった.国会においては衆議院社会労働委員会に付託されただけで審議は全然行なわれず夏蝉のごとく短命にはかなく消えていったわけであるが,こうした法案が提出されたこと自体今後の医療行政の方向に,大きな影響を及ぼすものと考えられるので,医療基本法案が国会に提案されることになった経緯,その内容および意義について若干霞ガ関より報告したい.

 昨年7月1日,保険医総辞退という事態が発生した.医療保険制度の改革をめぐって,日本医師会が保険診療をいっさい行なわない旨を決定し,これに基づいて一部地区を除き全国的規模で保険医総辞退が行なわれたわけである.これは医療自体を拒むものではなく,保険診療だけを行なわないとするものであるが,現在の医療はほとんどといっていいほど各種保険で支えられているので,その影響はきわめて大きいものであった.この保険医総辞退問題を解決すべく斎藤厚生大臣は,武見日本医師会会長と数度にわたって会談を行なったが,その結果7月28日に至って,両者の間に了解が成立し,保険医総辞退は収拾された.

基本情報

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病院
31巻9号 (1972年9月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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