病院 27巻8号 (1968年8月)

特集 病院建築の新しいデザイン

将来の病院建築 吉武 泰水
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将来をどう把えるか

 ここでいう"将来"は,"およそ10年後"と考えてほしいといわれた。漠然と"未来"とすると荒唐無稽なものになりかねないから,現時点でも十分見通しのきく,いいかえればエクストラポレーションのおよぶ確かな将来について書くようにという意味からであろう。しかし病院建築の寿命は,どんなに少なく見積っても10年を下回ることはありえないし,その計画や設計を云々する場合10年先というのはあまりに近すぎるのではないだろうか。まして病院と他の医療施設との間の関係のあり方などを問題にする場合には,どうしても長期にわたる展望によらざるをえまい。

 とはいえ,何を基礎に将来の予想をするかということになると大変むずかしい。私の専門の建築計画は,将来想定を目標とするものであるが,その方法としてまず,a)過去の歴史や現状の精密な把握によって,変動の法則性を見出し,変化の方向や速度を知ろうとする。そのほかに,b)先進国のお手本をうまくとり入れることも,これまでは大切な仕事であった。これは,後進から先進への社会の発展モデルの存在を前提としているのだが,必ずしも先進国でなくても,他国の動きや考え方を知ることは,手本にはならないまでも大いに参考になるものである。しかし,こういう方法とは全く別に,エネルギー源の交替,社会資本の増加傾向などに基づいて,c)科学技術の進歩や社会の発展の姿を描いてみることはある程度まで可能と考えられる。

最近の病院建築−1968年 伊藤 誠
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(グラビア"病院建築の新しい芽"を参照)

 近頃の新しい病院建築を概観してみると,まだそうとうの不均衡はあるにせよ,機能面での最低限界条件を満たすだけで精一杯といったレベルからようやく脱して,どうやら病院のあるべき姿に近づこうとするきざしがほの見えてきたように思われる。それはごく一部に芽生えた程度のものにすぎないが,そこには将来を指向する何がしかの意義が含まれているといってもよさそうである。

 筆者は,最近たまたま,阪神地区のいくつかの新しい病院を訪ねる機会をもった。そこでの収穫の中から"新しい芽"らしきものをいくつか拾い出してみよう。

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 病院が新しく設計・建築され,それが実際に活用されるたびに,新しい実験が行なわれていることになる。

 このできあがった建築は,その建物を利用する患者の生命と福祉はもちろんのこと,職員のはたらきにも影響する。しかもこの建設にはばく大な建築費が使われ,その後の運営費にも影響を与えるものである。このように設計の良否は,患者の医療と福祉,職員の労働および資金の効果を左右するものであるから,設計は慎重にすぎることはない。日進月歩の条件の変化に応じ,その時点および将来をも考慮しつつベストを尽さねばならない。したがって病院設計には建築設計者の真摯な態度が要求されるばかりでなく,施主側の要求もこれらを洞察して賢明な衆知を結集しなければならない。

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 私に与えられた課題は"施主の立場にたった病院設計のチェックポイント"である。このような設計のチェックポイントを整理する必要があるのは,病院が他の住宅とか事務所建築などと違って,複雑な機能を要求され,しかもそれが多数の項目にわたるからであろう。

 もし設計のチェックポイントが整理されていると,いろいろに利用できよう。すなわち病院側は設計を依頼するときに,そのチェックポイントの各項目について病院側の要求を整理して設計者にわたせば,要求をもれなく伝えることができるし,設計者との打ち合わせの時にもこれに沿って行なえばおちがない。

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 現代は革新の時代である。これほどの急激さで社会の諸要素が変化していくことを,人類はかつて経験したことがない。病院の建築は病院に要請されるその時代の社会的機能の反映にほかならない。病院建築がすぐれているかどうかにはいろいろの評価方法が考えられようが,その根本をなすものは,この要請される社会的機能をいかに新しく広く理解し,表現したかということではないだろうか。最近のModern Hospital誌(1968年3月)は,この新しい機能理解のアイディアをいくつか特集しているが,そのうち興味深いものをとりあげてみよう。

設計の実例検討・1

病棟 石丸 健雄
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 病棟の新しいアイディアのプランを実例についてみよう。すでに外国で実施されたものに近いものもあるが,日本での実施の上では新しいものと考えて,きわめて簡単に特徴を記すことにした。病院名(総病床数,構造,階数,看護単位数と病床,竣功年,設計者)を記した。

設計の実例検討・2

外来診療部 中 祐一郎
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 最近の数年間に設計された病院の外来診療施設(開業,工事中をふくむ)のいくつかを眺めてみると,外来のあり方として,全く新しい形をとったものが出てきているわけではないけれども,設計上のいろいろなポイントについて,最近の傾向とか,新しい試みとかいえるものを多少とも指摘できそうである。以下,私の知るかぎりで,その辺の指摘を試みたい。

設計の実例検討・3

検査部 高野 重文
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検査部は動いている

 国際的水準にまで充実してきた最近の病院建築の中で,検査部はまだ流動的であり,病棟や手術部などにくらべて,はなはだつかまえにくい部分である。

 たとえば生理検査についてみると,ここ数年間に新築した病院ではほとんどが中央化されているが,1950-57年間に竣工した代表的な病院(100-920床)20例を見ると,竣工時に生理検査室,または類似の室名をもつものがちょうど半数である。それも1954-55年頃からで,最初は心電図室が独立し,やがて脳波測定も含めた生理検査室が現われている。しかも将来診療が各専門のディビジョン制になった場合に,中央生理検査室との関連がどうなるかなど,建築設計以前の問題が多い。

設計の実例検討・4

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はじめに

 新生児・未熟児施設の計画が病院において小児科学的観点から積極的に考えられ,実行されたのはそう古いことではない。

 近年,新生児・未熟児に関する医学の領域がより深く展開するにつれ,彼らに対して適切な環境のもとで適切な医療看護を与えるべきことが明らかになってきた。

病院設計の個々の問題・1

病室の照明 高野 隆
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病室にはどんな照明器具が必要か

 わが国で建築の照明設計に必ず参考にされるのが,JISにきめられている"照度基準"1)である。この基準によると,病室の標準照度は100 lx (照度範囲70-150 lx)となっており,べつに注意事項もなにも書いていないので,病室の照明設計を行なう場合,ウッカリすると照度の設計だけに終ってしまって,照明器具についてはあまり考えずに,家庭用あるいは一般室用のものを安易に選びがちである。

 これはひとつには,照明器具のメーカーがこの種の照明器具の開発にあまり熱心でなく,簡単に入手できる既製品の病室用照明器具がほとんどないことにもよるが,一方,病室照明の特殊性に対する一般の認識が十分でないことも事実である。

臨院設計の個々の問題・2

垂直コンベア 三矢 周夫
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はじめに

 大病院システムの機能化が広範囲に進められているが,院内の輸送の問題は重要な事項である。

 縦の交通機関としてのエレベーターは,乗用・寝台用および人貨用がおのおの設置され,それぞれ人員,ストレッチャー,看護機材の輸送に使用されるが,その設備としての能力は多くの場合,必要な適正サービス水準を下回っているというのが日本の病院の実情である。

病院設計の個々の問題・3

病院のユニット・バス 西野 範夫
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 病院の管理にたずさわっておられる方々には,"ユニット・バス"(Unit Bath, U.B.)という用語は耳なれない言葉かもしれない。病院で使われている例は,まだ多くはない。しかし,これからの病院建築としてこの種の概念は大きな意義と広い将来性をもっている。

病院設計の個々の問題・4

病院の階段 大場 則夫
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 階段はいうまでもなく垂直方向の通路である。日常的には院内動線の一環として,非常の場合は避難用としてという違いはあるが,廊下と同じように通路であることに変わりはない。

 近年,エレベーターなどの機械的搬送手段の普及のため,特に病院では,その日常的役割はかなり低下してきていることは事実であろう。しかし,エレベーターと同様,その垂直性のため,また動線計画上のかなめになるという性格のため,平面計画上各階共通のキイポイントとして設計上重視される。しかしこのことは階段プロパーの問題というよりは,もう少し病院の全体的な設計技法上の問題であって,ここで特に階段が一つの問題点となる"いわれ"ではない。病院の階段について--この廊下と同じように素朴な建築的手段について--設計途上にも竣工後にも,さまざまなトラブルが多いのはなぜであろうか?多少病院の設計を手がけられた建築家には自明のことであるが,理由はただ一つ,建築規準法関係の規制と医療法に基づく規制が,異なった立場で二重規制しているからにほかならない。

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 守屋 日本の病院管理,ことに病院建築は,だいたい輸入品なんだ。輸入には3つのタイプがある。1つは,向こうがやってるからそのまま持ってくる。反対に向こうのやつは何にも入れんと,非常に拒否的のもの。それからいいものは取り入れようじゃないかという型があると思う。われわれ病院に関しては,第3の中間派がわりあい多いですね。ヒントとしては,向こうのものを入れて,こっちでこなすというところが,いいところだと思います。

 病院管理を最近見てこられた方,向こうの病院の資料を豊富にお持ちになっている方にお集まり願って,何か取り入れるものがあるかどうか,ヒントを与えるという座談会にしたいと思います。

グラビア

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 病院は医療を行なう場であり,患者が生活するところである。新しい病院の機能を発展させるためには,それを受け入れるのにふさわしい病院建築が必要となる。新しい病院機能,新しい病院管理,そして新しい病院建築--この3つのものがそろったところに,病院は成長していく。

 わが国の病院建築は,病院管理の知識と技術とを吸収しながら,急速な進歩を示してきた。そして最近は,建築がもつ美を追求するゆとりも見えてきた。

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V.加圧蒸気滅菌器(つづき)

5.イジェクター,または真空ポンプによる減圧装置

 前号では加圧蒸気滅菌器の装置の一つであるサーモスタット弁(トラップとも呼ばれる)について述べたが,同じく滅菌器内の残存空気を除去する方法にイジェクター方式および真空ポンプによる方式があり,わが国では好んで使われている。イジェクターは流体の噴射による圧力差によって生ずる吸引力を利用して缶内の空気を除く方法で,3-4kg/cm2の蒸気圧を使用した場合,(−)300mmHg位の真空度が得られるという。真空ポンプ装置でも大体同様の真空度が得られる。しかしPerkinsによれば,通常のイジェクターや真空ポンプ装置では,滅菌器内に約50-60%の空気が残存し,たとえ(−)500mmHgの真空度を得てもなお器内に1/3の空気が残存するので滅菌が不完全になりやすく,質のよいサーモスタット弁を利用した,蒸気と空気の比重の差によって生ずる重力落下の性質を使って空気を排除するいわゆる重力型の滅菌器のほうが優れているという。しかしまた最近ではいわゆるハイバキュウム装置を使って(−)700mmHgくらいの真空度まで得られる滅菌器もできて,この場合の滅菌効率は高いともいわれる。

編集主幹ノート 吉田 幸雄
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 久しぶりに"病院建築"特集号をお送りします。本号の編集は伊藤幹事によるものですが,従前のものと比べて特別な意気ごみを感じられるでしょう。それは本号を出発点として,できるだけ毎号建築に関する記事を連載することが決定していることを反映しているからです。

 本誌創刊以来,努めて病院建築の論文を掲載し,この数年は毎年1回は病院建築の特集を行なってきました。そしてこのことは,病院側と病院建築家との知識と意志との交換に大きな役割を果たしてきましたが,最近のように注目すべき作品が急増してきた時代には,従来の方法ではその需要に応えられなくなってきました。

欧米病院偏見旅行記・8

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 ジュネーブからは久しぶりに汽車の旅であった。空を飛ぶことと,地面を走ることとの間に安全率ではあまり大きな差はないそうであるが,やはり足が地についていないと不安である。特に飛行機の着陸寸前のいやな気持はストレスとしてよくない。その点,汽車だと景色もよくみえる。スイスの汽車は電化され,広軌の車輌は,通路をはさんで片側2列,片側1列のゆったりした椅子配置の快適さであった。それがほとんどガラガラである。もったいないと思うのは,満員電車に慣らされたからなのか。

 調査団一行の連日の猛勉強,精進潔斎を天もめで給うたのか,ユングフラウ観光の1日は,快晴にめぐまれて忘れえぬものとなった。

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 来たる11月1日(金)2日(土)に,東京都千代田区駿河台日大病院において,第6回日本病院管理学会が開催されることになった。

 学会の代表として一言申し述べさせていただく。

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体験によるすばらしい病院哲学

 雑誌「医療の広場」に連載されたものを加筆して本にまとめられたものである。「医療の広場」が実際家向けに,わかりやすい読物,実用的な論文を主体としている雑誌であるから,本書も硬い学術書ではない。しかし,もともと連載されていたものに推考を加えたものだけに,十分な時間がかけられていて,読みやすく,おもしろい。私はこれを一気にむさぼるように読んだのである。

 著者の管理者としての日常の生活,病院に明け暮れる生活が手にとるようにうかがわれる。地下鉄に乗っていても,レクリエーションに出かけるにも,著者の頭は病院管理をはなれない。そして,非情な管理事務に忙しい著者は,人間回復の手段として俳句に親しむあたり,さこそと思わせられる。管理者の日々はまこときびしいものである。

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行間にあふれる情熱と信念

 本書は病院精神医学のために最近まれな有益な訳本であろう。訳者も指摘しているとおり,本書は病院精神医学の歴史的展望を入れながらも,著者自身の体験をふんだんに盛り込んだもので,行間に情熱と信念とがあふれている。

 管理療法とは著者の定義では,企画,協議,委員会開催,規律と書類の処理などの管理的諸技法を用い,主として精神療法(環境療法)によって治療する技術である。また彼はこれを治療共同社会の中で医師の真の役割を達成する技術だと大上段にかまえている。

病院を考える・1

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聞くべきことを聞く態度の重要さ

 はじめに,誤解のないように断わっておきたい。‘しゃもじを立てろ’といっても,これは病院人に呼びかけているのではない。社会の人たち,つまり病院を利用する人たちに向かって言っているのだ。したがって,しゃもじをおっ立てて攻めよせる相手は病院だ。社会の人たちは,もし病院に対して不満があるならば,蔭でぼそぼそ言っていないで,その不満をもっと公然と表明すべきだ。いや,もっと進んで,病院に対して改善と反省をうながすために一大社会運動を起こすべきだ。これに対して,病院側には拒むものは何もないはずだ。甘受すべきムチならば,それを受けるのは当然だからだ。

 その意味で,今回の第18回病院学会で,"病院医療への注文"と題するシンポジウムが行なわれたことは非常に有意義だったと思う。私は,この企画に全面的に賛成すると同時に,主催者の見識に対して,あらためて敬意を表わさざるをえない。

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 本編は退院患者の診療録を管理医学的に解析して,病院側からみた需要調査を行ない,それを施設再編成計画に利用することについて論述したものである。

ホスピタルトピックス 看護

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 アメリカの病院では,患者に対する直接看護の50%近くが無資格の看護助手によって行なわれている。したがって,看護助手をどのような方法で訓練するかは,患者の安全のために大きな問題であるといえる。

 アメリカには最近,看護助手だけを切り離して考えず,ひろく医療関係の職場で補助業務に従事する職種として考えるようになってきた。訓練の方法も,従来の院内の見習い的なものでなく,短期間職業訓練を行なうことが望ましいということは,1963年末にアメリカ看護協会から出されたPosition Paperにも明記されている。

ホスピタルトピックス 特殊病院

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 スウェーデンは森と湖の国で,面積45万km2,人口766万,その半分は中南部に住み,ストックホルムとその近郊に60万,エーテボリ45万,マルメ20万と都市人口集中化がみられるが地理的区画はコムニュティの大きさにほぼ一致する。

 1963年7月の内閣設置法改正により,衛生行政は社会問題省へ移管された。医療を実際に担当しているのは,英国とおなじく,Medical Bo—ard (国営医療)であり,医務,保健,精神衛生,社会精神医療と矯正医学,歯科,法制と統計,文書の7課をもち,それぞれに委員会が設けられている。

基本情報

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病院
27巻8号 (1968年8月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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