特集 病院建築の新しいデザイン
将来の病院建築
吉武 泰水
1
1東京大学・建築学
pp.19-22
発行日 1968年8月1日
Published Date 1968/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203404
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将来をどう把えるか
ここでいう"将来"は,"およそ10年後"と考えてほしいといわれた。漠然と"未来"とすると荒唐無稽なものになりかねないから,現時点でも十分見通しのきく,いいかえればエクストラポレーションのおよぶ確かな将来について書くようにという意味からであろう。しかし病院建築の寿命は,どんなに少なく見積っても10年を下回ることはありえないし,その計画や設計を云々する場合10年先というのはあまりに近すぎるのではないだろうか。まして病院と他の医療施設との間の関係のあり方などを問題にする場合には,どうしても長期にわたる展望によらざるをえまい。
とはいえ,何を基礎に将来の予想をするかということになると大変むずかしい。私の専門の建築計画は,将来想定を目標とするものであるが,その方法としてまず,a)過去の歴史や現状の精密な把握によって,変動の法則性を見出し,変化の方向や速度を知ろうとする。そのほかに,b)先進国のお手本をうまくとり入れることも,これまでは大切な仕事であった。これは,後進から先進への社会の発展モデルの存在を前提としているのだが,必ずしも先進国でなくても,他国の動きや考え方を知ることは,手本にはならないまでも大いに参考になるものである。しかし,こういう方法とは全く別に,エネルギー源の交替,社会資本の増加傾向などに基づいて,c)科学技術の進歩や社会の発展の姿を描いてみることはある程度まで可能と考えられる。
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