臨床眼科 73巻13号 (2019年12月)

特集 緑内障の新しい診療法とその評価—ホントのところは?

企画にあたって 鈴木 康之
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 今回の特集は,変化が著しい緑内障診療の最近の進歩について,「話はよく聞くけど実際のところはどうなの?」という疑問を解消しようという企画です。緑内障の新しい診療法が「実際にどこまで使えるのか? 使ったほうがよいのか?」について,各分野の第一人者の先生方にご解説いただきました。データが出揃っていない以上,はっきりした結論を出すのは難しかったと思いますが,現在得られるかぎりの最新情報と先生方の実際の使用経験をもとにして,読者の皆様の実診療に参考になるような内容をご執筆いただいたことに感謝いたします。

 検査法に関しては,角膜および眼球の生体力学的特性を考慮して眼圧測定を行える機器としてOcular Response AnalyzerならびにCorvis® STについて朝岡 亮先生に測定理論の基本的なところからご解説いただき,また,眼圧の日内変動測定の実現に向けて臨床的に使用可能になったトリガーフィッシュシステムとアイケアHomeについては井上賢治先生にご解説いただきました。視野検査の新しい大きな潮流として注目を集めているヘッドマウント型視野計imo®および新たに身体障害者認定の基準として用いられるようになったエスターマン視野測定に関して野本裕貴先生にご解説いただいています。さらに多くの種類の機器が市販され,同時にさまざまな測定手法が提唱されて読者の皆様も混乱しているであろうOCTならびにOCTAについて,赤木忠道先生に現状を率直にご評価いただき,新しく市販された隅角検査機器のゴニオスコープGS-1の実際の使用感に関して溝上志朗先生にレポートいただきました。

【新規検査法を評価する】

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●ゴールドマン圧平式眼圧計が現在のゴールドスタンダードな眼圧計である。

●Ocular Response AnalyzerやCorvis® ST眼圧計では,角膜ヒステレシスなどの角膜生体力学的特性を考慮することが可能である。

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●眼圧には日内変動があり,その把握が大切であるが,従来は入院しての眼圧測定が必要であった。

●眼圧日内変動を簡便に評価する方法としてトリガーフィッシュシステムとアイケアHOMEが開発された。

●トリガーフィッシュシステムは,コンタクトレンズを装用し角膜曲率を測定する。夜間の変動幅の評価に適している。

●アイケアHOMEは,麻酔不要で眼圧自己測定が瞬時に行える機器である。自宅での眼圧日内変動測定が可能である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

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●imo®は明室,両眼開放状態にて視野検査が行える自動静的視野計である。

●24plus測定点,測定プログラムAIZE,AIZE-Rapid,AIZE-EXでの検査。

●エスターマン視野検査は視覚障害者の等級判定に有用である。

OCTとOCTA 赤木 忠道
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●緑内障診療の基本OCTはcpRNFL解析と黄斑部網膜内層解析である。

●OCT加算平均縦スキャンも緑内障診断に有用である。

●実際の緑内障診療におけるOCTAの有用性はいまだ定まっていない。

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●ゴニオスコープGS-1は1回の検査で全周の隅角を撮像できる新しい隅角検査機器である。

●GS-1を用いると,隅角開大度,色素沈着のグレード,および解剖学的異常などの詳細な記録が可能となる。

●GS-1では構造上,動的隅角検査や圧迫隅角検査はできないため,隅角観察補助装置として用いる。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

【新規治療法を評価する】

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●近年,副作用回避・アドヒアランス維持の選択肢が増えているほか,ROCK阻害薬,EP2作動薬などが導入された。

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●白内障による視力障害が強い症例は満足度が大きい手術である。

●術後6か月で84.7%の症例が点眼フリーとなる。

●白内障+iStent同時手術は合併症が少ない。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

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●近年,ab internoトラベクロトミー(新しい線維柱帯切開術関連手術)が臨床の場に広まっている。

●トラベクトーム,カフークデュアルブレード,マイクロフックトラベクロトミー,360°スーチャートラベクロトミーが代表的な術式である。

●従来手術と比較して眼表面への侵襲が少ないという利点があり,低侵襲緑内障手術(MIGS)と称される。

●現時点でトラベクロトミー関連手術間の眼圧下降効果の優劣を論じるのは困難である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

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●チューブシャント手術の適応について,手術成績を踏まえて,トラベクレクトミー,バルベルト,アーメドの選択について解説する。

●チューブシャント手術特有の合併症についての解説とその対応を述べる。

●チューブシャント手術について,実際の臨床上での注意点を解説する。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年12月)。

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●マイクロパルス毛様体光凝固術の適応や特徴を述べ,当院での使用経験を報告する。

連載 今月の話題

新しい眼内レンズ 稲村 幹夫
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 眼内レンズ(IOL)は術後に患者を眼鏡から解放し1,2),老視を克服する方向へ進化している。2017年に焦点深度拡張型レンズ(EDOFレンズ)が国内で承認され,今までのような不満例が減ると見込まれるとともに先進医療が認められた。さらに,2019年に低加入度数の2焦点IOLが保険適用を認められたことで大きな転換期を迎えた。

連載 症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術後編23

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Q 白内障手術後3か月目に囊胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema:CME)が生じました(図1)。このような場合は,どのように対処したらよいでしょうか?

連載 眼炎症外来の事件簿・Case16

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患者:38歳,女性

主訴:両眼視力低下

既往歴・家族歴:特記すべき事項なし。

現病歴:2016年3月までは−0.25D程度のごく軽い近視であった。同年12月下旬に胃痛,膀胱炎症状,発熱,震え,しびれがあった。2017年1月初旬の深夜に両眼の視力低下を自覚し,2日後に近医眼科を受診したところ,−2.50D程度の近視の進行を指摘された。その3日後には,右−4.25D,左−5.25Dと近視化がさらに進行していた。1月中旬に原因の精査を目的に東京大学医学部附属病院眼科(以下,当科)を紹介され受診した。当科紹介時には,トロピカミド点眼液(ミドリン® M点眼液0.4%)を両眼眠前1回を処方されていた。

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要約 目的:涙腺または涙丘部に膨大細胞腫が生じた2例の報告。

症例:1例は67歳の女性,他の1例は65歳の男性である。第1例は9年前に左眼瞼が腫脹し,左涙腺の膨大があった。血液の甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb)の軽度上昇があり,バセドウ病関連涙腺炎と診断された。副腎皮質ステロイドの内服で軽快した。眼瞼腫脹の再燃が以後3回あり,MRIで左涙腺部の腫瘤の増大があり,腫瘍を全摘出した。切除組織にはHE染色で好酸性顆粒状の細胞質と,異型に乏しい円形の核を伴う多角形大型細胞があり,膨大細胞腫と診断した。第2例は約3か月の経過で出現した右涙丘部の腫瘤で,生検では第1例と同様の所見があり,膨大細胞腫と診断した。両症例とも,術後1年間に再発はない。

結論:膨大細胞腫が,1例は涙腺,他の1例は涙丘に生じた。稀な疾患であるが,眼瞼または涙腺部に生じる腫瘍として留意する必要がある。

海外留学 不安とFUN・第48回

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パリの治安

 私は日本で10年以上前に空き巣に入られたことがありますが,それでも日本は他の国に比べれば治安の良い国だと思っています。パリでの暮らしにも慣れてきたとある夕方,病院から帰宅途中に銀行へ寄り,現金を降ろそうとした瞬間に,銀行の中のATMにもかかわらず,4人の男の人に囲まれ,お金を渡すように言われました。幸いにも襲われたりはしませんでしたが,たとえ建物の中であっても気を付けなくてはいけないと,恐ろしい気持ちでその晩を過ごしました。

Book Review

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 本書を読んでまず感じたことは,「緑内障道場」はまさに「症例から学ぶ緑内障」の書であることです。本書は,日常の緑内障診療で遭遇するさまざまな症例を体系的に提示して,その解決方法を指南役のエキスパートの先生の経験やエビデンスに基づいて解説する方式で,各症例の最後に師範(木内良明教授)からの一言(コメント)でまとめられています。これは,私の緑内障の研究方法である「症例から学び研究する緑内障学」に通ずるものを感じます。

 緑内障外来は緑内障を勉強する教室(道場)であり,緑内障症例である患者さんこそが,緑内障を教えてくれる先生という思想を,私は本書から感じ取りました。患者さんの病態をどう解釈し,治療方針を立てるかについて,指南役のエキスパートの先生方(主に関西緑内障道場,中四国緑内障アカデミーのインストラクターの先生)が解説しますが,これがなかなかユニークで読んでいて面白いです。師範の一言も「緑内障の俳句」があり,ほっと一息つきます。さらに,この書に提示された症例の中には多くの研究のseeds(種)があります。症例から発生した疑問点を解決するための研究のヒントが満載です。

漢方処方ハンドブック 田原 英一
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 漢方界で北里大学東洋医学総合研究所の花輪壽彦先生を知らない人はいない。いわゆる「レッスン」書註)で漢方に引き込まれた者は枚挙にいとまがない。その花輪先生が日本東洋医学会学術総会の初学者向け「漢方入門セミナー」の「補助テキスト」にと企画されたのが本書であるという。否,これは「補助」などという手ぬるいものではない。北里東医研の,花輪流の奥義書である,と私は感じた。以下にどうしてそのように感じたかを記す。

 漢方の基本概念が極めて簡潔に記載されているその直後に,いきなり「Advanced Course」として,切診の極意が記されている。続いて畳み掛けるように「全身症状のとらえかた」が記されているが,私は個々の症状・症候をどのように解釈するかを,ここまで丁寧に記した臨床主体の本をほとんど知らない。しかも八味丸で食欲改善なんて……知らなかった。初学者には難しい面もあるが,中級者から上級者は大いにうなずくであろう。

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目次

欧文目次

べらどんな 夢
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 カタカナの名前をたくさん覚えることが医学部の学生の仕事の1つであるが,薬学部の学生も大変だろうと思う。卒業するまでに6年かかるようになったのである。

 それだけに,解剖や薬理の世界にギリシャ神話が出てくると嬉しい。アトロピンがその例である。運命を支配する3人姉妹がいる。1人は出産が専門で,名前はClothoである。もう1人は人生を支配するのが仕事で,その長さを計り,Lachesisがその名前である。末の娘は死を扱い,姉たちが織った人生の糸を鋏で切ることになっている。名前はAtroposで,これがナス科の植物Atropa belladonnaになり,これからアトロピンが造語された。

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次号予告

あとがき 鈴木 康之
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 『臨床眼科』2019年12月号をお送りします。ご存知の通り雑誌臨床眼科は臨床眼科学会の原著論文を多く掲載していることが大きな特徴ですが,年末から年始にかけての期間は前年の臨床眼科学会の原著掲載を終了した隙間の期間であり,一般投稿論文と「今月の話題」,そして特集と連載記事で雑誌が構成されています。

 本号の「今月の話題」では,次々と新しい製品が導入されるとともに来年4月の保険改定に関連して大変注目を集めている多焦点眼内レンズの最新情報について稲村眼科の稲村幹夫先生にご解説いただいています。今後の眼内レンズ選択に際し大いに参考になる記事と思います。

基本情報

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臨床眼科
73巻13号 (2019年12月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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