臨床眼科 74巻1号 (2020年1月)

特集 画像が開く新しい眼科手術

企画にあたって 坂本 泰二
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 古くから,人々は手術名人の素晴らしさを,鬼手仏心と呼んで称賛してきました。その意味するところは,外科医は残酷なほど大胆に手術をするが,それは患者を治そうとするやさしい心からであるということでした。これは現在にも通じることで,手術で最も重要なものは術者の心であることは変わりません。しかし,手術の技術やその概念は大きく変化しつつあります。

 以前は,手先の器用さが手術技量の巧拙を決めると考えられていました。しかし,顕微鏡手術の導入や生体染色技術の進歩により,手術の巧拙を決めるのは,手先の器用さもさることながら,手術部位を正確に認知する力がより重要であることが理解されるようになりました。例えば,網膜領域の内境界膜剝離術は,内境界膜がはっきりとは見えなかったために,きわめて難しい手術でしたが,生体染色で内境界膜が見えるようになり,最近では簡単な手術の1つになりました。

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●エキシマレーザによる角膜屈折矯正手術では,虹彩のデジタル画像による回旋補正が行われ,高次不正乱視量などの上昇を抑制する。

●白内障手術では,角膜輪部,輪部付近の結膜血管のデジタル画像による回旋補正が行われ,トーリックIOLにおける正確な軸合わせを行う。

●円錐角膜に対するCXLでは,形状解析のデジタル画像を使用し,紫外線の照射範囲,量をコントロールできる。将来,この技術は角膜感染症に対するCXLにも応用される可能性がある。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年1月)。

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●OCTを用いて術前評価を行うことにより,角膜内皮移植の術式を決定する。

●OCTを用いてドナー角膜のスクリーニングと計測を行うことにより,ドナー角膜の健常部位を有効利用し,正確なカットを行う。

●術中OCTを用いることにより,DSAEKでは層間の水分を確認して手術終了のタイミングを判断し,DMEKではグラフトを正しい向きに展開する。

●OCTを用いて術後評価を行うことにより,空気再注入の必要性を判断する。

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●ラーニングカーブ途上での術中合併症高リスク問題は,医療の中心課題の1つである。

●手術データの管理とその分析は,手術技術評価のために必須の方法論である。

●AIは手術技術をバイアスなく評価したり,左右眼などの取り違えアラートを行ったりする。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年1月)。

デジタル支援硝子体手術 井上 真
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●Heads-up手術では眼内照明強度を下げて光曝露を軽減できる。

●術中OCTで術中に切除する範囲や網膜との位置関係を把握できる。

●術中パラメータをモニターに投影することで硝子体切除の効率を向上させ,眼球虚脱などが予防できる。

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●硝子体手術の観察系は,非接触広角観察システムが現在の主流である。

●非接触広角観察システムは4機種存在し,それぞれ特徴がある。

●OCT付き顕微鏡は,Z軸方向の情報を詳細に得られ,手術の質を向上させる。

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●人工知能は,眼科分野への応用が進んでいる。

●黄斑手術の手術支援ツールとして,AIが活用できる可能性がある。

術中OCT画像の有用性 岩瀬 剛
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●術中OCTは,網膜硝子体手術をより安全で高度に行うための有用なツールとなってきている。

●術中OCTから得られる画像により,術中に病態の的確な解明を行うことが可能で,それに基づき手術方針を考慮できる。

●後眼部のみならず,周辺部あるいは前眼部の観察にも有用である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年1月)。

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●隅角検査は緑内障診療に必須である。

●UBM,OCTは隅角補助検査として隅角開大度の定量に有用である。

●OCTによる結膜・強膜のイメージングは緑内障手術成績に関連する。

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●デジタル映像を観察するheads-up surgeryでは,デジタル映像処理,高解像度の追求,低照度での手術,サージカルガイダンス情報のディスプレイ上での呈示が可能である。

●ディスプレイに呈示される映像の画質・解像度には,ディスプレイおよびカメラの性能だけではなく,眼球光学系・前置レンズ系の収差と手術顕微鏡の光学特性が直接影響する。4K・8Kといった高解像度ディスプレイの性能を十分に活かすには,これらの収差と顕微鏡自体の解像度限界を克服する必要がある。

●これらを克服することで,鏡筒の肉眼観察では実現不可能であった血管レベル,細胞レベルの微細な観察と外科的治療への扉が開くことが期待される。

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●2014年より8K超高解像度映像技術の眼科応用を開始した。

●顕微鏡へ接続しやすい小型軽量8Kカメラを開発し,臨床での撮影を行った。

●8Kをheads-up手術に活かすには,光学系・照明系を改良したシステムが必要である。

連載 今月の話題

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 緑内障は多因子疾患であり,血流障害は眼圧上昇以外の危険因子であると考えられている。本稿では,まず眼血流障害が緑内障進行のリスクである可能性について概説し,さらに一歩進んで血流改善治療が緑内障診療にもたらす可能性について述べたい。

連載 症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術後編24

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Q 白内障手術後は経過良好であったのに,どうして前囊収縮や後発白内障が生じるのですか?(図1) また,発症しないようにする方法はありますか? 進行してしまった場合はどのように対処すればよいですか?

連載 眼炎症外来の事件簿・Case17

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患者:64歳,女性

主訴:右眼視力低下,霧視,飛蚊症

既往歴・家族歴:特になし

現病歴:右眼の霧視を自覚し近医を受診した。虹彩炎・高眼圧を認めるも点眼で消炎し,眼圧は正常化した。経過観察中に角膜後面沈着物・前房内炎症・軽度硝子体混濁を認め,前医となる総合病院の眼科を紹介され受診した。ベタメタゾン点眼4回/日とプレドニゾロン(PSL)10mg内服を処方され,いったん炎症は鎮静化した。矯正視力は0.6であった。2か月後,硝子体混濁の増強と網膜耳上側に白色病巣を認め,精査加療の目的で大阪大学医学部附属病院眼科を紹介され受診となった。

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要約 目的:レーザービトレオライシスの誤照射によって,硝子体手術を要した1症例の報告。

症例:51歳,男性。近医にて,3回目のビトレオライシスを施行時にレーザーが左網膜に当たり,直後からの視力低下を自覚した。翌日,他の近医を受診し,黄斑下血腫の診断でSF6ガス注入術を施行するも視力は改善せず,受傷後4日目に当院を紹介され受診となる。初診時の視力は右(1.0),左手動弁,眼圧は右19mmHg,左18mmHg。左前眼部は清明,左眼底は硝子体出血のため透見不能であった。翌日入院し,左水晶体温存硝子体手術を施行した。術中,硝子体出血を切除するとアーケード内全体に広がるドーム状の網膜下血腫を認めた。内境界膜を剝離し,網膜下に空気を注入し,硝子体を空気置換し,手術を終了した。視神経乳頭から約3mm離れた上耳側アーケード内網膜に白点を認め,そこにレーザーが照射されたと考えられた。術後,黄斑下の血腫は消退したが,黄斑円孔を認め,二度の手術を施行するも左視力は(0.1)にとどまっている。

結論:レーザービトレオライシスによる飛蚊症に対する治療では,このような重篤な合併症が存在するので注意が必要である。

海外留学 不安とFUN・第49回

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病院スタッフたちとの思い出

 年に一度,年始めに丸一日眼科外来を閉鎖し,眼科業務に関するスタッフ全員が集う会がありました。前年のオペ件数や注射件数,外来患者数など,関連病院も含めたサマリーや,日頃の業務の問題点などがプレゼンされ,皆が問題解決に向けて一致団結できるような会に2回ほど参加させていただきました。会の後には恒例のカラオケがあり,皆が楽しく一緒に過ごせる機会があり,いろいろと参考になりました。また,眼科医の皆さんと一緒に,ラリボワジエール病院やカンズ・ヴァン総合病院での勉強会や授業,医局員の博士論文の審査会にも参加することができ,日本語でも英語でもなく,フランス語を通して見聞したことは,私にとって貴重な経験となりました。

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 書籍タイトルが面白い。また,随分と変わった形式としたものである。そんな思いを抱きながら通読したところ,編集の木内良明教授(広島大)の采配が随所ににじみ出ていることに気が付いた。良書である。

 内容を簡単に紹介すると,緑内障の診断や管理に関する独立した24件の症例が取りあげられている。症例はよく練られていて,例えば,「本当に正常眼圧緑内障でしょうか?」とか「認知症患者への緑内障診療はどのように進めればよいでしょうか?」など,日常診療でよく悩む状況が設定されている。症例ごとに,必要にして十分な症例呈示がなされ,それに対しての基本お二人の緑内障専門の先生の丁寧なコメントが並び,その後の経過へと続き,最後に木内師範のまとめとなる。

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目次

欧文目次

べらどんな 疾患の盛衰
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 ぼんやりしている間に昭和が終わり,平成も終わった。両方を合わせると90年以上になる。これは明治と大正を合わせたよりも長い。

 昔は身近にあった疾患でも,消えてしまったものがある。耳鼻咽喉科だと,中耳炎と扁桃腺炎がそうであり,蓄膿と呼んだ副鼻腔炎がそれであろう。虫様突起炎,いわゆる盲腸炎も頻度がぐっと減ったはずである。

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あとがき 井上 幸次
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 本号の特集は「画像が開く新しい眼科手術」です。眼科は,顕微鏡によるマイクロサージェリーが導入されたことによって飛躍的に進歩し,近代的な眼科へと生まれ変わったと思われますが,今回それを超える画像時代がやってこようとしているわけです。すでに診断面ではOCTが眼科診断における大きな革命を起こしていますが,さらにそれにAIが今後急速に導入されていくことは間違いありません。それと同じ流れで,今後は術中OCTの導入を始めとして,さまざまな形のデジタル支援が行われるようになり,またいろいろなタイプのAIがリスク管理を始めとして,手術を補完するさまざまな情報を提供してくれるようになるでしょう。そのうえ,ヘッドアップサージェリーが広まれば,顕微鏡手術が過去のものとなっていくことも考えられます。

 このようにものごとがガラッと変わる激変の時代,その変化にどうやってキャッチアップしていったらよいかは我々医療者にとって大きな問題です。新しい技術の中には,今後残っていくものがある一方で,一過性で消えていってしまうものもあるはずです。また,AIについては,診断面でもそうですが,我々人間にはわからないブラックボックス的なものがあるので,果たしてAIが正しいのかどうかをどうやって判断したらよいかというジレンマも発生します。しかし,この変化は不可避なものなので,新たな時代に適切に対応するノウハウを我々もしっかりと学んでいかなければなりません。私のような古いアナログ人間も,これからはデジタル人間に脱皮していかなければならないのだと思います。本特集は現在の手術における新しい画像技術のすべてが網羅されていて,読者の皆さんの脱皮に必ず役立つことと思います。

基本情報

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臨床眼科
74巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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