検査と技術 45巻1号 (2017年1月)

病気のはなし

肺炎 関 雅文
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Point

●肺炎は市中肺炎(CAP),院内肺炎(HAP),そして医療・介護関連肺炎(NHCAP)と,場所によって分類するとわかりやすい.

●原因菌は,CAPでは肺炎球菌やインフルエンザ菌,マイコプラズマが多く,HAPでは緑膿菌やMRSAなどの耐性菌を考慮する.

●治療の中心はペニシリン系薬になるが,ニューキノロン系薬やカルバペネム系薬も切り札として適切に使用するとよい.

●ワクチンなどの予防や,耐性菌を防ぐ感染制御の考え方も必要となってきている.

技術講座 微生物

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Point

●市中感染症のなかでも,皮膚軟部組織感染症を起こすグラム陽性球菌の治療薬を選択するうえで,クリンダマイシン(CLDM)の薬剤感受性検査を行うことは大切である.

●薬剤感受性試験でエリスロマイシン(EM):耐性,CLDM:感性のときは,CLDM誘導耐性試験を行う必要がある.

●CLDM誘導耐性が認められたときは,CLDMを“感性”→“耐性”に変更して臨床側へ報告することが重要である.

技術講座 生理

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Point

●てんかんの発作型診断は臨床的な症候と脳波によって判断されるため,それぞれの特徴を把握する必要があります.

●賦活や刺激で誘発されやすいてんかん発作の特徴や対処法について確認しましょう.

●発作時の記録に臨床変化を書き込むことで,発作型の特定に有力な情報を残すことができます.

●発作時は患者の安全確保を最優先に,症候の確認,意識障害の程度,回復過程,脳波変化などを同時並行で確認する技能が求められます.

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Point

●胎児検査にかかわる基礎知識を把握し,スクリーニングに適した時期,適した内容を観察することが重要である.

●妊娠20週前後になると胎児心臓や各臓器の観察が容易になり,羊水も豊富に存在するため,胎児体表や全体の詳細を観察できる.

●出生前診断が有効な疾患を検出できるような検査を効率よく実施するために,確認すべき項目を決めておくことが望ましい.

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Point

●排液は有機溶剤(アルコール,キシレン),色素類,銀液,塩化金と区別され,ホルムアルデヒド(FA)は発がん性物質で特化則第3類から第2類物質となり,規制が強化された.水銀,銀液などやクロム酸を含有する試薬の廃液方法と回収方法を把握する.

●有機溶剤を扱っている病理検査部(病院,基礎医学教室および教育機関)では,特定化学物質作業主任者と有機溶剤作業主任者,およびそれぞれの職務内容と,有機溶剤の取り扱い上の注意事項を掲示し,注意喚起する.

●有機溶剤を使用する施設(検査部,基礎医学教室,教育機関)では,人体に及ぼす影響,中毒発生時の応急措置,さらに,実験者が容易に知ることができるように有機溶剤を色分け(第1種有機溶剤:赤,第2種有機溶剤:黄,第3種有機溶剤:青)したものを,見やすい場所に表示する.

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“量”から“質”へ

 dysfunctional HDL(high-density lipoprotein)という言葉がある.血中HDLコレステロール値と心血管疾患のリスクが反比例することは多くの臨床研究で示され,“HDLコレステロール=善玉コレステロール”という概念が定着している.しかし,多くの薬物療法によるHDLコレステロール値に対する介入試験では,冠動脈疾患患者におけるHDLコレステロール上昇がことごとく予後改善に結びついていない.その結果,“HDLコレステロール=善玉コレステロール”という既成概念に疑問が呈されている.このような背景から,HDLコレステロールは“量”ではなく“質”が重要とする考え方が提唱され,コレステロールを逆輸送できないHDLをdysfunctional HDLと呼ぶようになった.このような“量”ではなく“質”が重要とする考え方は,HDLコレステロールだけではなく,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor-A:VEGF-A)にも当てはめることができる.

 本稿では,VEGF-Aの“質”に着目した血管病評価への新しいアプローチについて紹介する.

ジカウイルス感染症 忽那 賢志
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ジカウイルス感染症

 ジカウイルス感染症とは,フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによって起こる蚊媒介性感染症である.ジカウイルス感染症を媒介する蚊は,主にネッタイシマカ(Aedes aegypti)とヒトスジシマカ(Aedes albopictus)である1).日本にはネッタイシマカは生息していないが,ヒトスジシマカは青森県〜北海道を除いた日本全土に分布している.このため,日本国内でも輸入例を発端とした流行が起こりうる.また,性交渉によって男性から女性,男性から男性に感染したと思われる症例も報告されている.当初,性交渉による感染例は全体のごく一部であると考えられていたが,決してまれではないようである.回復から6カ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告もあり2),現時点では,いつまでジカウイルスが精液中に残存するのか不明である.

 ジカウイルス感染症は近年,急速に流行地域を拡大しており,2015年〜現在にかけて,中南米で大流行を起こしている3).中南米以外にもオセアニアやベトナム,タイ,シンガポールなどの東南アジアでも症例が報告されている.日本では2016年10月時点で12例の輸入例が報告されている4)

過去問deセルフチェック!

血小板疾患の血液像
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 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
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 血液学的検査のなかで,血液像観察の重要性は申し上げるまでもありません.顕微鏡で芽球の増加を確認して急性白血病の診断がつくなど,本誌でも多く勉強されたと思います.一方,血小板の病気においても,血液像が重要ということは,ややもすると忘れがちです.今回は,血液像から血小板疾患を考えてみましょう.

 血小板の形態異常で最も重要なものの一つが,巨大血小板です.通常,血小板の径は2〜3μmですが,赤血球の大きさ(7〜8μm程度)よりも大きい場合に巨大血小板と称することが通例です.問題1の図で示されているのは,典型的な巨大血小板といえます.Bernard-Soulier症候群やMay-Hegglin異常に代表されるMYH9異常症などは先天性巨大血小板性血小板減少症として有名ですが,これらの診断の際には,鏡検で巨大血小板を確認することが必須です.問題2では図は示されていませんが,巨大血小板とリストセチン惹起血小板凝集能の障害という,Bernard-Soulier症候群の検査所見が問われています.なお,巨大血小板の際には血小板数偽低値を起こす可能性があることも知っておく必要があります(問題1).これは,自動血球計数器では血球の容積情報をもとに血球が判別されるためです.

連載 生理検査のアーチファクト・1【新連載】

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連載のはじめに

 生理検査に携わっていると,必ずといってよいほどアーチファクトに遭遇する.ベテランになると無意識のうちに,アーチファクトかどうかを鑑別して除去するか,軽減措置をとるが,初心者はそうはいかない.ほとんどは,そのまま記録して先輩から叱責されるのが常套だろう.アーチファクトは経験して覚えるということも事実であるが,知っているかどうかが重要で,誌面で勉強しておくときっと役立つ.この連載では,生理検査に現れるアーチファクトを順を追って解説する.今月号から5回分は,まず超音波検査のアーチファクトについてご紹介する.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・13

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 山藤:今回の対談の主旨ですが,この1年間「人の心に寄り添う医療人になる」というテーマで,対談と連載をしてきました.そこでは,まずはそれぞれの「己」がどう生きるかというところの話を,対談者の方とつめていった感じがしています.その中で,読者の方々から,寄り添うという部分で,実際に人とつながるコミュニケーションスキルみたいなものとして,実践的なものは何かないかとリクエストもあって,ちょうど1年の区切りということで,国語教育を専門にやっておられる「考学舎」の坂本先生に対談をお願いしました.坂本先生には本校にて,1年生には日本語表現法,2年生には日本語思考法という形の講座を持っていただいています.本日は,そこでも実践している論理的な思考法やワークなども紹介してもらえたらと思っております.実は,藤間君(市川染五郎)以来の高校同級生対談ですが(笑),よろしくお願いします.

 編集室:実はお伺いしたら…,坂本先生は私とも大学で同級でした(笑)

疾患と検査値の推移

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Point

●自己免疫性肝炎(AIH)の病因は不明であるが,肝障害の発症と病態の進展には何らかの自己免疫機序の関与が想定されている.

●肝炎ウイルス検査が陰性であり,さらに免疫グロブリンの上昇や抗核抗体(ANA),抗平滑筋抗体(ASMA),抗LKM-1抗体などの自己抗体が陽性となることが特徴の肝障害である.

●出現する自己抗体の種類によって病型が分類され,病型により副腎皮質ステロイド治療の反応性,臨床像や予後が異なる.

●適切な診断のもと副腎皮質ステロイド治療を行えば,わが国の多くの症例の予後は良好である.

臨床検査のピットフォール

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はじめに

 分染法による染色体検査は,細胞が有糸分裂する際の分裂細胞を顕微鏡下で観察している.造血細胞は,ある一定の周期で分裂し増殖していると考えられており,十分な細胞数があれば,通常行われている骨髄短期培養にて,分析に必要な数の分裂像が得られることが多い.しかし,腫瘍細胞のなかには細胞周期が正常造血細胞と大きく異なる例も存在し,分裂時期を通常の培養法では捉えられない場合がある.一方,間期核FISH(fluorescence in situ hybridization)法は,細胞周期に影響されることなく,目的とする染色体異常を検出しうる方法である.

 本稿では,分染法による染色体検査で異常が認められず,間期核FISH法において染色体異常を検出し得た,染色体検査のピットフォールについて解説する.

オピニオン

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 昨今,チーム医療の重要性が叫ばれ,臨床検査技師もその一員として参画し活躍している.患者を中心としたNST(nutrition support team)やICT(infection control team)をはじめ,診療現場の一員としての病棟臨床検査技師や救急検査技師,また,医師やその他スタッフからの検査相談や問い合わせ対応,患者に直接行う検査説明などもチーム医療の一環であり,非常に多岐にわたる.そこで今回は,私がかかわる救命救急センターでの救急検査技師について紹介し,その役割について私見を加えて述べてみたい.

 当院の救命救急センターは,いわゆる患者にとって最後の砦といわれる三次救急対応施設で,一次二次救急では対応できない重篤な疾患や多発外傷患者などが搬送される.院内PHSで患者搬入の知らせを受けると,医師や看護師とともに患者が搬入される初療室へと足早に向かい,患者の受け入れ準備に取りかかる.このような現場で思い浮かべる検査技師の業務は,“患者の血液検体を受け取り,適切なスピッツに分注して検査室へ搬送する”ではないだろうか.しかし,それだけでは救急検査技師とはいえない.では,救急検査技師の役割とは何だろうか?

ラボクイズ

微生物検査 大楠 清文

Laboratory Practice 〈管理・微生物〉

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はじめに

 これまで経験のない新たな感染症が世界各地で次々に発生し,世界的な広がりが懸念されている.過去においては2003年に重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)がアジアを中心に流行し,2009年には新型インフルエンザ〔インフルエンザ(H1N1)2009〕が世界的に大流行した(表1).最近では,2014年3月から約2年間,西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るうとともに,2015年には,隣国の韓国で中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS)の患者が発生し,日本国内への流入が危惧された.多くの人口を抱え,国際化が進む東京は,このような新たな感染症が流入するリスクが高く,ひとたび流入した場合には,急速な感染拡大につながり,都民の生命や健康に重大な影響を及ぼす恐れがある.

 一方で,2014年夏,約70年ぶりにデング熱の国内感染患者が発生し,都内で感染した患者は100人以上になった.これまで,デング熱は海外で感染し,帰国後に発症する輸入感染症として扱われ,国内で人→蚊→人とデングウイルスが伝播するという事態はあまり想定されてこなかった.過去に流行し現在ではほぼみられなくなった感染症にも,われわれは十分注意しなければならない.この他,同じく蚊が媒介する感染症であるジカウイルス感染症が2015年から中南米地域を中心に流行し,国内でも現地での感染による患者発生がみられている.

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)開催に向けて,今後海外との往来がますます盛んになるなか,これまで以上にさまざまな感染症の流入に備える必要がある.そこで,本稿では,まず東京都の感染症の発生動向と検査体制について紹介し,そのうえで,医療機関の検査室における東京2020大会に向けての備えについて考えていきたい.

書評

感染対策40の鉄則 青木 眞
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極めて密度が濃く,「リアリティ」のある感染管理の本

はじめに

 おそらく感染管理ほど日本の医療文化の病理・弱点を端的に象徴する領域はない.環境感染学会が大変な賑わいをみせる一方で,行政からの通達は実効性を欠き,各医療機関の感染管理担当者が抱く不全感が消えることがない.その理由は感染管理という仕事が,問題を定義し,その解決に必要な要素を決定,対策の効果を測定する……といった疫学的な業務に加えて,臨床各科や看護部,病院管理部など利害を異にする各部門間の調整をする……といった日本人が最も苦手なことを要求することにある.一人の患者の血圧を外来で目標値に移動させるといった作業とは,およそ対照的であり,どこか「巨大な軍隊組織の運用」対「一兵卒の射撃訓練」の対比に似る.前者には冷徹な数理・統計的な素養と人間関係の機微に対する洞察が求められるが,後者は基本的に個人が「匠の技で一生懸命やる」ものである(*感染症専門医に感染管理も期待するといった混乱も,この辺りの整理が不十分であることに起因している).

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うごめく感情の渦の中で,あるべき医師像とは

 「医療現場をこれほどまでに赤裸々に,リアルに書いていいものだろうか」という驚きがこの本を読んで生じた感情だった.いてもたってもいられず,本書の書評を書かせてほしいと出版担当者にお願いしてしまった.「医師はいかなる時も平静の心を持って患者と向き合うべきである」と説いた臨床医学の基礎を作ったウィリアム・オスラー先生の「平静の心」を揺るがす内容なのである.

 「医師は患者に必要以上に感情移入してはいけない」

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『臨床検査』1月号のお知らせ

あとがき・次号予告 矢冨 裕
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 明けましておめでとうございます.2017年1月号の「検査と技術」をお届けします.ただ,このあとがきを書かせていただいている現在は,2016年の11月で,今,国内外とも大変な状況です.

 私は東京都に住んでいますが,築地市場の移転先となる豊洲市場の盛り土問題,4年後に迫る東京オリンピック・パラリンピックの膨れ上がる費用への懸念と会場変更の問題がもち上がり,大混乱の状況になっています.前知事の急な辞任に伴い小池知事が誕生することによって問題が浮上したのは間違いなく,もし,知事の交代がなかったらどうなっていたのだろうと思います.本当に,リーダー一人が変わるだけでこんなに違ってしまうのかと思います.一方,お隣の韓国では,現職の大統領が検察の事情聴取を受ける可能性が報道され,国全体が揺らいでいます.海の向こうの米国では,クリントン氏とトランプ氏が大統領を争っていますが,お互いに非難の応酬ばかりが目立ち,残念に思います.新年になり,本号がお手元に届く頃には,完全解決とまでいかなくても,明るい方向性が見いだせるようになっていることを祈るばかりです.

基本情報

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検査と技術
45巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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