書評
感染対策40の鉄則
青木 眞
pp.83
発行日 2017年1月1日
Published Date 2017/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206733
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極めて密度が濃く,「リアリティ」のある感染管理の本
はじめに
おそらく感染管理ほど日本の医療文化の病理・弱点を端的に象徴する領域はない.環境感染学会が大変な賑わいをみせる一方で,行政からの通達は実効性を欠き,各医療機関の感染管理担当者が抱く不全感が消えることがない.その理由は感染管理という仕事が,問題を定義し,その解決に必要な要素を決定,対策の効果を測定する……といった疫学的な業務に加えて,臨床各科や看護部,病院管理部など利害を異にする各部門間の調整をする……といった日本人が最も苦手なことを要求することにある.一人の患者の血圧を外来で目標値に移動させるといった作業とは,およそ対照的であり,どこか「巨大な軍隊組織の運用」対「一兵卒の射撃訓練」の対比に似る.前者には冷徹な数理・統計的な素養と人間関係の機微に対する洞察が求められるが,後者は基本的に個人が「匠の技で一生懸命やる」ものである(*感染症専門医に感染管理も期待するといった混乱も,この辺りの整理が不十分であることに起因している).
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