検査と技術 44巻6号 (2016年6月)

病気のはなし

  • 文献概要を表示

Point

●大腸癌の発生機序として,前癌病変として腺腫が発生し,腺腫の一部が癌化する説(adenoma-carcinoma sequence説)と,正常粘膜から腺腫を介さずに癌化する説(de novo carcinoma説)がある.

●わが国の死因第1位は悪性新生物であるが,大腸癌はそのうち第3位であり,大腸癌を原因とする死亡数は年間48,000人を超えた.特に女性の癌死因の1位である.

●ごく表層の癌であればリンパ節転移の可能性はなく,内視鏡的切除で根治が望める.一方,遠隔転移を認めるStage Ⅳ症例の5年生存率は2割を切る.早期発見,早期治療が重要である.

  • 文献概要を表示

Point

●四酸化オスミウムと重クロム酸カリウムを両方含んだ液で後固定することにより,脂質はアルコール不溶性となり,ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織からの脂肪染色が可能となる.

●オスミウム酸の浸透力が弱いため,後固定は厚さ2mm以内の組織で行う.

●通常のFFPE組織と同様の扱いができるため,各種染色にも応用することができ,手技も容易である.

技術講座 微生物

  • 文献概要を表示

Point

●腸管スピロヘータ症は,腸管洗浄液や糞便の塗抹検査で,多数のグラム(Gram)陰性らせん菌(スピロヘータ)が観察される.

●塗抹検査は採取直後の新鮮な材料であることが重要で,時間の経過とともに検出困難となり,鏡検でも判定できなくなる.

●グラム染色の後染色はパイフェル(Pfeiffer)液が推奨される.後染色の染色時間も,数分〜5分ほど長めに染色することで観察しやすくなる.

●腸管スピロヘータ症で強い炎症や消化器症状がある場合には,併存疾患,特にアメーバ性大腸炎などを考慮して,再評価する必要がある.

  • 文献概要を表示

はじめに

 近年肥満者の増加により,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が増加している.NAFLDとは,飲酒歴はないが,アルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害を示す疾患群の総称である.NAFLDは,肝細胞への脂肪沈着を認めるのみである単純性脂肪肝と,炎症や線維化を伴い,肝硬変や肝細胞癌へ進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に大別される.わが国では,1,000万人以上がNAFLDに罹患し,そのうち200万人がNASHと推測されている.NAFLD患者のなかから,進行性の疾患であり,治療介入を要するNASH患者を鑑別することが重要である.

  • 文献概要を表示

はじめに

 2015年3月,「WHO肺癌分類第4版」が出版された1).2004年に出版された「WHO肺癌分類第3版」2)が10年ぶりの改訂となり,いくつかの点で大きな刷新がなされた.

 従来,肺癌の治療方針の決定には,小細胞癌か非小細胞癌(non-small cell carcinoma:NSCC)であるかが重要であった.しかし,近年の飛躍的な分子生物学の発展に伴うEGFR(epidermal growth factor receptor)チロシンキナーゼ阻害薬やALK(anaplastic lymphoma kinase)阻害薬など分子標的薬の開発により,詳細な組織型,すなわち腺癌か扁平上皮癌かの診断が求められるようになった.これはEGFRの変異陽性,ALK遺伝子転座陽性患者のほとんどが腺癌であり,抗癌剤のメトレキセド(アリムタ®)は扁平上皮癌以外のNSCCでの有効性が示され,血管新生阻害薬であるベバシズマブ(アバスチン®)では,扁平上皮癌において重篤な喀血など,副作用のリスクが高いことが示されたためである.

 改訂された新WHO(World Health Organization)分類は,上記の治療方法の変化や分子標的薬への対応を考慮した分類となっている3).これらの薬物療法は,再発あるいは進行癌症例が対象であり,生検・細胞診検体という限られた材料での診断が重要となる.そこで本稿では,これまでの分類からの改訂点と,細胞診断へのかかわり,遺伝子検査などの分子診断のための検体取扱を中心として稿を進める.

過去問deセルフチェック!

輸血副作用
  • 文献概要を表示

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
  • 文献概要を表示

 輸血用血液の保管法や輸血による副作用の原因と対策は,安全かつ適正な輸血のために,血液を管理する検査技師がしっかり覚えて,医師や看護師などの医療従事者を指導する必要がある.

 濃厚血小板の保管は,室温(20〜24℃)で振盪保存することで,バック内のpH低下を防いで血小板の活性を維持している.輸血後感染症を少なくするために,新鮮凍結血漿は,最低6カ月間は血液センターに貯留保管され,分離した赤血球液で輸血後感染症の発症報告がなかったことが確認されたのちに各医療機関に出荷されている.融解した新鮮凍結血漿は,凝固因子が低下するため3時間以内に使用する.抗凝固剤にアデニン入りのCPDA-1(citrate-phosphate-dextrose with adenine-1)を用いると,血液の冷蔵保存期間は35日間に延長されるので,自己血などで利用されている.輸血を受けた患者は,製剤中の白血球上のHLA(human leukocyte antigen)抗原や血小板上のHPA(human platelet antigen)抗原に感作されて抗体を産生,血小板不応や発熱などの副作用を起こす.また,免疫能の低下したHLA抗原型が近い患者では,輸血されたドナーのリンパ球が排除できず,このリンパ球が増殖してGVHD(graft versus host disease)を起こす.さらに,白血球から遊離するサイトカインは,輸血を受けた患者に発熱などの副作用を起こす.

疾患と検査値の推移

  • 文献概要を表示

Point

●自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は,赤血球表面の抗原に対する自己抗体の産生により溶血が起こる.

●溶血貧血では,血清間接ビリルビン,LDHは増加し,ハプトグロビンは低下する.骨髄の赤芽球と末梢血の網赤血球の比率はともに上昇する.

●自己抗体の至適反応温度により,温式抗体による温式AIHAと冷式抗体による冷式AIHAに分類される.

●AIHAはクームス(Coombs)試験(抗グロブリン試験)が陽性となることが多く,診断に有効である.

●治療の第一選択は副腎皮質ステロイドである.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・6

  • 文献概要を表示

伝統と革新を生きる

 山藤(さんどう):そろそろ,まとめに入る時間かな.今日は,あっという間に時間が過ぎるね….染五郎は,今,歌舞伎界の歴史や伝統を紡いでいく責任や義務があると思うのですが,それは同時に,同じことをやっていればいいということではなく,革新も必要かと思います.歌舞伎は400年以上も続いているけど,守るものと同時に,時代に合わせて変えていかなければならないものもあるじゃない? そういう歴史のなかの一部として,後輩たちにつないでいる感覚とか,使命感とか,その辺の背負っているものとかをどう感じているかなと.そのあたり,「イマ」を生きる染五郎としては,どう考えていますか.

 染五郎:歌舞伎の世界では,子役から始めているわけですけど,子役の時代を過ぎると,突然環境が変わって「もうわかるでしょ」って世界なので(笑).そこで,“これはもう自分でちゃんとやっていかなきゃならないんだ”と気付かされました.そのうえ,教わる人たちというのは,お祖父さんやひい祖父さんみたいな人たちが多いので,この歳にしては,お世話になった人と別れる(亡くなる)という経験は,普通の人と比べてもたぶん多いと思うんです.

連載 忘れられない症例から学ぶ超音波検査・10

子宮平滑筋肉腫 木下 博之
  • 文献概要を表示

はじめに

 子宮に生じる病変の多くは良性平滑筋腫瘍である子宮筋腫であり,女性の20〜30%にみられます1).それに対し子宮肉腫は,子宮体部悪性腫瘍の約2〜5%とまれな腫瘍で2),組織型は主に癌肉腫,平滑筋肉腫,内膜間質肉腫の3群に分類されます.子宮に限局した早期のものでも5年生存率50%と予後が悪く3),早期発見,早期治療が重要な疾患です.しかし,確立した術前診断法はなく,超音波検査でも変性筋腫との鑑別に苦慮することが多い疾患です.今回,直腸癌手術後に外科外来で経過観察中に発見され,過去の検査所見を経時的に比較することが診断に有用であった子宮平滑筋肉腫の症例を経験したので提示したいと思います.

連載 やなさん。・18

Let's cooking! 柳田 絵美衣
  • 文献概要を表示

柳田家の箱入り娘・ブルドッグの“はな”は,生まれて1年目で,すでに体重23kgに到達.もう姿形は肉塊そのもの.顔に似合わず,ブルドッグはとても貧弱(「やなさん。・8」参照)なので,柳田家ではヌクヌクと育てられている.

先日,「減塩のパンって,どこかに売ってないかな?」と家族から連絡があった.「健康に気遣って,そろそろわが家も減塩活動開始か!」と思い,インターネットで減塩パンの購入を済ませた.家族に「家に減塩パンが届くように発注したから♪ 楽しみにしていてよ!」とメールを送ると,信じられない返事が返ってきた.「はながパン,大好きなもんだから.少しでも,はなの体のことを考えて,減塩パンを食べさせようかなと思ったんだけど」と.……え? はなが食べるの!? 自分自身,食べたこともないほどのお値段のパンですけどぉ!? ……溺愛ぶりにがくぜんとする柳田.だが,仕方あるまい.はなのかわいさは,すでにリミッターカット状態.あのかわいさを前にすれば,彼女の体調を大切に思うのも無理はない.

  • 文献概要を表示

Q 円柱上皮細胞と尿路上皮細胞の鑑別方法を教えてください

A 円柱上皮細胞と尿路上皮細胞は形態的に類似することがあり,判定が困難な場合もあります.それぞれの上皮細胞の局在やどのようなときに剝離するかを理解したうえで,患者背景を情報として得ることが重要になります.以下に要点を記します.

オピニオン

  • 文献概要を表示

 細胞治療認定管理師制度が,日本輸血・細胞治療学会と日本造血細胞移植学会共同で,昨年度から開始された.造血幹細胞移植の細胞処理・管理・検査などに携わる医療従事者に対して,その専門的な技術・知識や管理能力を有することを認定するもので,講習会や情報提供の場を設けることにより,認定者の永続的なレベル向上を図ることを主な目的としている.

ワンポイントアドバイス

  • 文献概要を表示

はじめに

 検体の採取部位や方法,患者の状態によって,極小の組織検体しか得られない場合がある.パラフィン包埋標本と凍結標本,それぞれの場合の極小検体標本作製法を解説する.

今月の表紙

食道カンジダ症 渡辺 哲
  • 文献概要を表示

Point!

Q.主な原因菌は? ⇒ C. albicansがほとんどを占める

Q.HIV/AIDS患者における合併率は? ⇒ 緩徐に減少してきており,近年では10%弱

Q.有効な治療薬は? ⇒ フルコナゾールが第一選択薬である

Q.治療期間は? ⇒ 薬剤耐性カンジダの出現を防止するため,1週間程度を目安とする

  • 文献概要を表示

はじめに

 平成26(2014)年,厚生労働省の「患者調査の概況」1)にて,わが国の糖尿病患者数が316万人超と発表された.糖尿病患者は血糖値を適切に管理することで合併症が起きにくくなることから,血糖値を管理することが最も重要になる.血糖値を管理する検査項目には,随時血糖,ヘモグロビンA1c(hemoglobin A1c:HbA1c),グリコアルブミン(glycoalbumin:GA),1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-anhydro-D-glucitol:1,5-AG)がある.本稿では,それぞれの検査項目について説明する.

臨床検査のピットフォール

  • 文献概要を表示

はじめに

 上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異検査は,非小細胞肺癌,特に腺癌におけるコンパニオン診断として実施され,分子標的薬の治療効果予測に用いられている.

 EGFRは,細胞膜を貫通する膜貫通型受容体であり,腫瘍化との関連性が示唆され,研究が進められてきた分子である.

 このEGFRの細胞外ドメインにリガンド(上皮成長因子など)が結合することにより,細胞内ドメインのチロキシナーゼ(tyrosine kinase:TK)が活性化,すなわちリン酸化され,細胞の増殖,形質転換の亢進,またアポトーシスの抑制が起こり,細胞の癌化を促進させるといわれている.

 非小細胞肺癌における分子標的薬であるEGFR-TK阻害剤(ゲフィチニブや,エルロチニブ)投与の適否は,EGFR遺伝子変異の部位や種類によって異なるため,それらの検出が可能なEGFR遺伝子変異検査が必要となる.

 この検査に提出される検体の量的,質的状態によっては,解析結果に影響を及ぼす場合も考えられ,その取り扱い方は重要である.

ラボクイズ

輸血検査 米岡 麻記

5月号の解答と解説 福崎 裕子

『臨床検査』6月号のお知らせ

あとがき・次号予告 大楠 清文
  • 文献概要を表示

あとがき

 はじめまして,今年から本誌の編集委員に着任した大楠清文です.「あとがき」の執筆も「はじめて」ですので,簡単に自己紹介をさせていただきます.私は東京医科歯科大学医学部附属臨床検査技師学校を卒業して,虎の門病院臨床化学検査部,千葉県こども病院で臨床検査技師として勤務した後,米国南カリフォルニア大学&ロサンゼルス小児病院に2年半ほどポスドクリサーチフェローとして留学,帰国後は岐阜大学医学部で助教,准教授として約10年間勤務しました.一昨年4月に東京医科大学微生物学分野に教授として着任,現在は医学部生への微生物学や感染症学の講義や実習指導の他,文京学院大学の非常勤講師として微生物検査学の講義と実習も担当しています.

 こうしたなか,臨床微生物検査や感染症の遺伝子検査に関する講演の機会をいただき,全国各地の臨床検査技師や医師との交流を深めており,講演後の「飲みニケーション」が何よりの楽しみです! ひいてはこの人と人とのつながりが,感染症診断に挑むモチベーションの原動力となっています.

基本情報

03012611.44.6.jpg
検査と技術
44巻6号 (2016年6月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月21日~9月27日
)