FOCUS
新WHO肺癌分類における改訂点—細胞診断にかかわる部分を中心に
藤田 奈央
1
,
植田 菜々絵
1
,
太田 裕子
1
,
青山 千得子
1
,
谷田部 恭
2
1愛知県がんセンター中央病院臨床検査部遺伝子病理検査科
2愛知県がんセンター中央病院遺伝子病理診断部
pp.458-461
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206450
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はじめに
2015年3月,「WHO肺癌分類第4版」が出版された1).2004年に出版された「WHO肺癌分類第3版」2)が10年ぶりの改訂となり,いくつかの点で大きな刷新がなされた.
従来,肺癌の治療方針の決定には,小細胞癌か非小細胞癌(non-small cell carcinoma:NSCC)であるかが重要であった.しかし,近年の飛躍的な分子生物学の発展に伴うEGFR(epidermal growth factor receptor)チロシンキナーゼ阻害薬やALK(anaplastic lymphoma kinase)阻害薬など分子標的薬の開発により,詳細な組織型,すなわち腺癌か扁平上皮癌かの診断が求められるようになった.これはEGFRの変異陽性,ALK遺伝子転座陽性患者のほとんどが腺癌であり,抗癌剤のメトレキセド(アリムタ®)は扁平上皮癌以外のNSCCでの有効性が示され,血管新生阻害薬であるベバシズマブ(アバスチン®)では,扁平上皮癌において重篤な喀血など,副作用のリスクが高いことが示されたためである.
改訂された新WHO(World Health Organization)分類は,上記の治療方法の変化や分子標的薬への対応を考慮した分類となっている3).これらの薬物療法は,再発あるいは進行癌症例が対象であり,生検・細胞診検体という限られた材料での診断が重要となる.そこで本稿では,これまでの分類からの改訂点と,細胞診断へのかかわり,遺伝子検査などの分子診断のための検体取扱を中心として稿を進める.
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