臨床検査のピットフォール
肺癌EGFR遺伝子変異検査におけるピットフォール
安孫子 光春
1
1北海道大学病院病理部
pp.508-510
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206467
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はじめに
上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異検査は,非小細胞肺癌,特に腺癌におけるコンパニオン診断として実施され,分子標的薬の治療効果予測に用いられている.
EGFRは,細胞膜を貫通する膜貫通型受容体であり,腫瘍化との関連性が示唆され,研究が進められてきた分子である.
このEGFRの細胞外ドメインにリガンド(上皮成長因子など)が結合することにより,細胞内ドメインのチロキシナーゼ(tyrosine kinase:TK)が活性化,すなわちリン酸化され,細胞の増殖,形質転換の亢進,またアポトーシスの抑制が起こり,細胞の癌化を促進させるといわれている.
非小細胞肺癌における分子標的薬であるEGFR-TK阻害剤(ゲフィチニブや,エルロチニブ)投与の適否は,EGFR遺伝子変異の部位や種類によって異なるため,それらの検出が可能なEGFR遺伝子変異検査が必要となる.
この検査に提出される検体の量的,質的状態によっては,解析結果に影響を及ぼす場合も考えられ,その取り扱い方は重要である.
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