検査と技術 24巻12号 (1996年11月)

病気のはなし

ヘルペス 本田 まりこ , 新村 眞人
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新しい知見

 突発性発疹の原因ウイルスはヒトヘルペスウイルス6または7で,突発性発疹はそれによって起こることが明らかになったが,昨年にはヒトヘルペスウイルス8が発見され,エイズ愚者にみられるカポジ肉腫との関係が議論されている.

 ヘルペスの診断には血清学的な診断が行われていたが,最近ではDNA診断,モノクローナル抗体による蛍光抗体直接法が行われる.

技術講座 生化学

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新しい知見

 臨床検査値を解釈する際の基本的な尺度は健康人における生理的変動である.一般的には健康者集団の基準範囲が用いられるが,これは個体間・個体内変動の両者を合わせた尺度と理解される.しかし,臨床的には集団中における特定個人の位置を知ることと同時に,個人内における経時的変化の観察が重要であり,その場合,個体内変動の大きさが成績解釈の基準となる.一方,生理的個体間・個体内変動に関する従来の報告値には測定誤差が含まれている例が多く,本来,その推定には分散分析法などの統計的手法を適用する必要がある.また,生理的変動幅は分析技術の許容誤差限界を定めるための基準としても用いられる.

技術講座 輸血

抗赤血球抗体検出法 冨田 忠夫
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新しい知見

 1989年9月,厚生省は“輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準”を廃止し,“輸血療法の適正化に関するガイドライン1)”を定めた.この中で,輸血が予定ざれている患者については,事前に血液型〔ABO型,Rho(D)型〕と不規則抗体検査を行うことを推奨した.いわゆる“タイプアンドスクリーン”の導入である.しかし,診療保険点数では,不規則抗体検査を行っていても,無輸血であれば保険点数が請求できないシステムであった.ところが,今年4月の保険点数改正で,多くの出血が予想ざれる手術患者で,輸血歴,妊娠歴があれば,たとえ無輸血であっても不規則抗体検査の保険点数(300点)が請求できるようになった.これまでどおり月1回の制限付きではあるが,大きな前進と評価できる内容である.このことから,輸血予定患者の不規則抗体検査がこれまで以上に実施されることが期待される.

技術講座 微生物

真菌の感受性試験 仲宗根 勇 , 山根 誠久
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新しい知見

 易感染患者における日和見感染症として好発する深在性真菌症,特にカンジダ属やアスペルギルス属に起因する播種性あるいは侵襲性感染症の増加に伴い,これら真菌を対象とした薬剤感受性試験の必要性が強く認識されるようになった.米国NCCLSや日本医真菌学会において酵母真菌を対象とする薬剤感受性試験の標準法が提案され,すでにこれらの感受性用プレートの市販も計画されている.近い将来,日常検査への応用が進むと期待される.

尿細菌検査の進めかた 設楽 政次
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新しい知見

 尿分離菌の最近の動向としては,腸内細菌やグルコース非発酵グラム陰性桿菌のほかに,コアグラーゼ陰性Staphylococcus,Enterococcusの増加がみられるほか,MRSAやCandidaも検出される.

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新しい知見

 尿沈渣検査の標準化についての課題としては,精度管理の向上とともに標準化法の作成が必要と思われていたが,1991年に日本臨床衛生検査技師会(日臨技)より『尿沈渣検査法』4)が出版された.これをもとに日本臨床検査標準協議会(JCLLS)が検討し,1995年に尿沈渣の標準法“JCCLS GP1-P2”6)が作成され,これらの方法をもとに多くの施設で利用し,現在に至っている.

 また,『尿沈渣検査法』中の“V.結晶・塩類の記載方法”では,日常,健常者でみられる結晶を通常結晶,病的疾患で認める結晶を異常結晶として,各々の結晶を説明している.しかし,この記載方法について,日常検査に応用できない点も認めることから,検査に利用しやすい記載方法を以下に作成した.

マスターしよう検査技術

腎臓の超音波検査法 澤村 良勝
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はじめに

 腎臓の超音波検査を行ううえで大切なことは,正確な周囲臓器との位置関係を理解することにある.本稿では詳しい腎臓そのものの画像解剖は省略するが,腎臓の存在位置とその周囲臓器との関係を述べ,腎臓を明瞭に描出するための走査法について解説する.

生体のメカニズム 凝固・線溶系・7

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はじめに

 後天性血栓傾向をきたす疾患として近年注目されている疾患に抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome;APS)がある.本症候群は1952年,ConleyとHartmannにより初めて報告された1).この報告では,出血傾向の記載がみられるが,その後,凝固時間の延長がみられるのもかかわらず,臨床的のは血栓症がみられる症例の報告が相次ぎ,1986年,抗リン脂質抗体症候群の概念が提唱されるようになった2)(表1).リン脂質に対する抗体としては,従来,血清梅毒反応生物学的偽陽性(biological fasle positive;BFP)が取り上げられたが,その後,血漿混合試験などによりループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant;LA)が,ELISAにより抗カルジオリピン抗体(amti-cardiolipin ahtibody;aCL)の測定が可能となった.さらに最近,aCLは実際には血清中に存在するアポリポ蛋白の1つであるβ2-glycoprotein-Ⅰ(β2GPⅠ)が,カルジオリピンと結合することにより構造変化をきたしたものと反応することが報告され3),その意義が注目されている.

検査データを考える

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はじめに

 リウマチ性疾患という言葉のは,関節疾患を指す場合と,膠原病を指す場合とがあるようである.17〜18世紀のは,英語の“rheumatism”は“痛み”と“うずき”を伴う病気に対する総称であったと,19世紀初期のWilliam Heberdenは述べている.20世紀になってからリウマチ性疾患は“膠原病”,“結合織病”,“自己免疫病”からなることが解明されてきた.痛風や骨関節症のように明らかな代謝性疾患も含まれている.なかでも,免疫異常を伴う疾患が人々の注目を集め,特に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)や,進行性全身性硬化症(progressive systemic sclerosis;PSS)などでその病因を説明する理論が成功を収めた.

 しかし,慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA),ベーチェット(Behcet)病などまだ免疫異常だけでは説明がつかない疾患のあることも事実である.まずいかなる免疫異常であろうとも,痛風や骨関節症には現れることはないと断言できる.免疫異常をみた場合,疾患に特徴的な異常はそれだけで診断が確定する.共通の免疫異常しかない場合は,炎症マーカーと呼ばれる検査や臓器障害をとらえる検査を参考にして,ある程度診断を方向づけることができる.このような観点から本稿をまとめてみる.

検査法の基礎検討のしかた 血清検査・3

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はじめに

 免疫化学的検査法キットを用いる際のユーザー側における基礎検討は,メーカーでのデータを実践的に確認することである.

 本稿では,精密さ,共存物質の影響(特異性),キャリーオーバーについての試験法を示す.

ラボクイズ

問題:低コリンエステラーゼ血症

10月号の解答と解説

オピニオン

病院の中の臨床検査技師 岡村 啓子
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 病院のおいて臨床検査技師はどのような位置のいるのだろうか.ましてや,医療の中のおいてはどうなるのだろうかと常々考える.

 医療技術が発展・専門分化し,医師を中心に,看護婦,薬剤師,放射線技師,臨床検査技師などがそれぞれの分野で患者への医療のかかわってきた.そうなのだ,“医師を中心の”であって,“患者を中心の”ではない.しかし,近年,本来医療とは“患者を中心に”いろいろな職種の医療従事者がそれぞれの立場から患者にとって最良と思われる医療を行う“チーム医療”であるべきだという考えが常識的のなってきており,それを積極的の進め,実行している病院(医療従事者)もたくさんできている.

けんさアラカルト

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 リポ蛋白リパーゼ(LPL)はキロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL)の代謝の不可欠の酵素であり,この酵素活性の低下,さらの欠損のよって高トリグリセリド(TG)血症を呈することはよく知られている.このLPLの酵素蛋白量の測定キットが発売され,健康保険の適用にもなったので,今後この検査が増加することが予想される今日であるが,この測定法や臨床的意義のついてはいくつかの論文があるので,本稿ではこの酵素のまつわる発展のついて,筆者の過去の研究との絡みで記述してみたい.

 筆者は1970年のスウェーデンのルンド大学医学部生化学のB.Borgström教授のもとの留学したが,そこで膵リパーゼを中心としたリパーゼの反応機構について研究する機会を得た.余談になるが,その教室で感心したのは,合成を専門とした化学者がおり,教室員の希望のより,いろいろアイソトープラベルした調品をつくってくれることであった.筆者もTG,ジグリセリド(DG),モノグリセリド(MG)の1〜3位の脂肪酸はもちろん,種々の部位の14Cや3Hを導入してもらい,それを基質に用いて反応を検討した.そこで酵素,特にリパーゼ反応の面白さを覚え,帰国後検査関係の従事するようになったが,まず頭に上がったテーマはLPLであった.

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はじめに

 ユーイング(Ewing)肉腫は,従来,10歳台の小児の長管骨の骨幹部に好発する悪性度の高い腫瘍で,組織学的には未分化な小円形細胞を主体とすることを特徴としていた.しかし,ユーイング肉腫は軟部にも発生することがわかり,また組織学的に神経性の分化を示すものも報告され,1980年代後半から末梢性の神経外胚葉性腫瘍(peripheral primitive neuroectodermal tumor;pPNET)との関係が話題となっている1).近年の免疫組織化学的研究や分子生物学的研究により,ユーイング肉腫とpPNETに共通の染色体異常も見つかっている.ここでは,以下ユーイング肉腫とpPNETを包括して広義のpPNETとして扱い,主にその染色体・遺伝子異常について最近の話題を中心に述べる.

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はじめに

 耐熱性DNA連結酵素リガーゼ(ligase)を用いた遺伝子増幅法はligase chain reaction(LCR)法と呼ばれ,PCR(polymerase chain reaction)法,3 SR(self-sustained sequence replication)法,NASBA(nucleic acid sequence-based amplification)法,Qβ(Q-bata replicase)法などの遺伝子増幅法とともに遺伝子診断に応用されている(表).LCR法は,DNA連結酵素であるligaseを用いたDNA検出法として1988年にカリフォルニア工科大学のLandegrenらにより報告され1),これに耐熱性ligaseとサーマルサイクリング(thermal cycling)を応用し,PCR法と同様の遺伝子増幅法として1991年にコーネル大学のBaranyによって確立された2)

アジスロマイシン 井上 松久 , 岡本 了一
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はじめに

 マクロライド系薬は,代表的薬剤であるエリスロマイシン(EM)が臨床応用されて以来,40数年にわたり,いくつかの天然マクロライドあるいはその誘導体が開発され,主にグラム陽性菌やマイコプラズマなどに対する優れた抗菌力と,副作用が少ないことから,呼吸器感染症に対して広く用いられている.1980年代に入り,マクロライド系薬の半合成の研究が進み,EMの誘導体としてクラリスロマイシン(CAM)やロキシスロマイシン(RXM)などが開発された.これらの薬剤は,従来のマクロライド系薬に比べて抗菌力はそれほど改善されていないが,持続的な血中濃度と良好な組織移行性など,優れた体内動態を有することから,“ニューマクロライド”として臨床的に高く評価されている.

 アジスロマイシン(AZM)は,EMにメチル置換窒素を導入した15員環マクロライド(アザライド系とも呼ばれる)で,抗菌スペクトルの拡大と強い抗菌力,および優れた体内動態が評価されて現在臨床治験中の新薬である.ここではAZMの特徴について述べる.

標榜診療科名と病理 石河 利隆
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はじめに

 1996年3月末,医道審議会の答申により,要望のあった24科のうち5科の診療科名の標榜が許可されることとなり,他の19科は保留となった.日本病理学会は病理科を,日本臨床病理学会は臨床検査料を要望していたが,いずれも保留と決定された.

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はじめに

 ISO/TC 212とは,ISO(International Organization for Standardization,日本語で国際標準化機構,アイエスオー)に設置されている212番目の専門委員会(Technical Committee;TC)の略称である.ISOの本部はスイスのジュネーブにあり,現在80か国の“P”メンバー(participating member,積極参加会員)と20か国以上の“O”メンバー(observer member,オブザーバー会員)の加盟により組織されている.第二次世界大戦終了後間もなく,1947年に多国間貿易の国際調和を図るため,工業規格の国際統一と調整の促進をする目的で設立された.

けんさ質問箱

Q 尿中変形赤血球 古市 佳也 , K. M.
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 尿沈渣で変形赤血球の有無の検査依頼があります.しかし,長時間の放置やpH,浸透圧などの影響によっても形態異常になることが予想されるのですが,判定基準や臨床側(依頼側)における検査依頼に当たっての必要最低条件をご教示ください.また,採血後,直ちに提出できない場合の保存方法についてもご教示願います.

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 採血後,全血のまま37℃に近い温度に置くと,赤血球の代謝によって血清中のブドウ糖が消費され,それに伴ってカリウムが赤血球側に移行するため,赤血球の代謝が持続している間は,血清中のカリウム濃度は低下すると理解していますが,濃度勾配に抗してカリウムが赤血球側に移行するメカニズムをご教示ください.

今月の表紙

血餅退縮 巽 典之 , 樋口 智子
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 「血小板は動く」と話し続けて何年か経過した.先日,私のネガ・ファイルを眺めているうちに再度表紙に掲載してみようとの気になった.

 血餅が退縮するのに血小板がどの程度関与しているのかを推し量るのはなかなか実感しにくい.これは赤血球が阻止的に作用するためである.そこでPRP(血小板濃厚液)を作製し,その液中の血小板数をPPP(乏血小板血漿)で段階的に薄め,これにトロンビンを作用させて30分間も置けばきれいな血餅退縮像が観察できる.その退縮度は血小板数に比例する(図a.図内の数字はPRPの希釈率).この写真から,退縮とは血小板とフィブリンででき上がることが明確に理解できる.そこで,フィブリン糸を電顕メッシュ上で形成させ,ネガティブ染色を施し観察してみると,縞状の模様が浮かび上がってくる(図b.フィブリノゲンからフィブリン重合する過程の模式図が中央図で,右はネガティブ染色透過型電顕像).重合フィブリンが側々で結合し,きれいな縞模様を形成していることがわかる.次いで退縮現象のガラス板上での再現を試みる.電顕メッシュ上にPRPを載せ,トロンビンを加えてフィブリン糸を形成させ,直ちに走査型電顕で観察すると,血小板がフィブリン糸に何となく不安定に付着している像が見られる(図c).これを30分間ほど置いた後観察すると,血小板はフィブリン糸の集中中心に位置し,まさにクモの巣の真ん中に埋もれているような血小板像がとらえられる(図d).

基本情報

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検査と技術
24巻12号 (1996年11月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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