今月の表紙
血餅退縮
巽 典之
1
,
樋口 智子
1
1大阪市立大学医学部臨床検査医学
pp.1037
発行日 1996年11月1日
Published Date 1996/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902919
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「血小板は動く」と話し続けて何年か経過した.先日,私のネガ・ファイルを眺めているうちに再度表紙に掲載してみようとの気になった.
血餅が退縮するのに血小板がどの程度関与しているのかを推し量るのはなかなか実感しにくい.これは赤血球が阻止的に作用するためである.そこでPRP(血小板濃厚液)を作製し,その液中の血小板数をPPP(乏血小板血漿)で段階的に薄め,これにトロンビンを作用させて30分間も置けばきれいな血餅退縮像が観察できる.その退縮度は血小板数に比例する(図a.図内の数字はPRPの希釈率).この写真から,退縮とは血小板とフィブリンででき上がることが明確に理解できる.そこで,フィブリン糸を電顕メッシュ上で形成させ,ネガティブ染色を施し観察してみると,縞状の模様が浮かび上がってくる(図b.フィブリノゲンからフィブリン重合する過程の模式図が中央図で,右はネガティブ染色透過型電顕像).重合フィブリンが側々で結合し,きれいな縞模様を形成していることがわかる.次いで退縮現象のガラス板上での再現を試みる.電顕メッシュ上にPRPを載せ,トロンビンを加えてフィブリン糸を形成させ,直ちに走査型電顕で観察すると,血小板がフィブリン糸に何となく不安定に付着している像が見られる(図c).これを30分間ほど置いた後観察すると,血小板はフィブリン糸の集中中心に位置し,まさにクモの巣の真ん中に埋もれているような血小板像がとらえられる(図d).
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