Neurological Surgery 脳神経外科 28巻11号 (2000年11月)

友とするにわろき者 種子田 護
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 兼好法師が徒然草に述べている.友とするによくないものが七つあるというのである.

 第一は身分が高く,重んずべき人.第二は若い人.第三は病なく,からだの頑健な人.第四,酒を好む人.第五,剛勇な武人.第六,うそつき.第七,欲深き人.

総説

三叉神経痛 大野 喜久郎
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I.はじめに

 疼痛は,他人にはわからず,またその程度を客観的に計る厳密な方法もない.しかし,人間にとってあらゆる悩みの中で最もつらく忌避すべきものである.疼痛には異常を示す警告という側面があるが,この三叉神経痛に関しては,多くの場合,そのような利点は全く認められず,拷問ともいえる苦痛以外のなにものでもない.患者の中には,「私はなにも悪いことはしていないのになぜこのような苦痛を与えられねばならないのでしょう」と訴える人もいる.そして,疼痛発作を繰り返すうちに,次の発作がいつ来るかと恐れるようになり,それを思うたびに不安にかられるようになる.また,口を動かすことによる痛みのために食事も思うようにとれず,仕事にも支障をきたすようになる.三叉神経痛の手術を世界的に広めたJannettaの三叉神経痛に関する仕事について書かれたSheltonの著書「ある脳神経外科医の闘い(森惟明訳)」42)には,「あんたにゃ分からないでしょうよ,あの痛みは.まわりからみれば,普段と変わらない様子にみえる.本人だけですよ,あの痛さを知っているのは….」と自殺まで考えた一人の三叉神経痛の患者が,微小血管減圧術(MVD)によって治癒し,正常な生活に戻ってゆく話が紹介されており,これを読むと三叉神経痛の典型的な症状と経過,患者の心理および適切な治療法の有効性,さらには真に画期的な治療法を確立することの偉大さが伝わってくる.一方,近年は以前と違ってかなり啓蒙されてはきたものの,いまだに歯科医にて何本か抜歯された後,はじめて診断が下されることがあるのも事実である.

 このように,大多数の患者では生命を直接脅かすことのない痛みとはいえ,三叉神経痛は人間の生存意欲にまで影響を及ぼしうる疾患である.そして,適切な治療を行うことにより,何も失うものもなく,全く元の生活に戻ることが可能な疾患である.それゆえ,三叉神経痛は,まず正しく診断することが重要といえる.本稿では,MVDなどの脳神経外科治療の対象となる三叉神経痛に限って,これまでの知見をもとに,症候の特徴,画像診断,治療法,治療成績について概説する.

解剖を中心とした脳神経手術手技

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I.はじめに

 後頭蓋窩の硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:DAVF)は主として横・S状静脈洞に発生するが,marginal sinus,tentorial sinusにも時に見られる.その血管内治療としては現在経静脈的な塞栓術(sinus coil packing)が根治的手術として最も普及しているが6,10,16,17,33,36,40),high shuntの場合や,正常静脈が開口していたりアクセスが困難な場合には経動脈的塞栓術も行われる.本稿では,両治療において必要とされる血管解剖,予期される危険に対する知識を含めた放射線学的解剖について概説する.

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I.はじめに

 悪性脳腫瘍(膠芽腫)に対する遺伝子治療として,herpes simplex virus-thymidine kinase(HSV-TK)遺伝子とganciclovir(GCV)を利用した自殺遺伝子療法がすでに臨床応用されている1-4,19,20).この治療法の原理はレトロウイルスをベクターとしてGCV感受性を示すHSV-TK遺伝子を腫瘍細胞に導入して,選択的な殺細胞効果を導く方法である11-13,16,23,25)

 チューリッヒ大学脳神経外科では,1996年から膠芽腫に対するHSV-TK/GCV遺伝子治療を開始した.この治療はNovartis Pharma,Ltd.(Basel,Switzerland)との共同治験(GLI−328)として初発例と合わせて再発例に対しても施行している22).今回の臨床治験は再発膠芽腫に対する治療効果を含めた生物学的安全性の検討を目的とした.治療開始から12カ月間経過を観察し得た再発例が5例存在し,再発からの1年生存率は60%でありHSV-TK/GCV治療法の効果が強く示唆された3,4).遺伝子治療の臨床応用においては抗腫瘍効果だけでなくその安全性の問題も解決しなければならない.特に本治療法のin vivo遺伝子導入にはマウス由来のベクター産生細胞とレトロウイルスベクターを使用しており,使用安全性を厳密に確認する必要がある.

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I.はじめに

 Three dimensional CT angiography(以下3D-CTA)はその低侵襲性に加えて,脳血管撮影では得られない有用な情報を提供してくれることから,脳動脈瘤を対象とした場合には,存在・部位診断だけではなく手術シュミレーションにも利用できる優れた画像診断法である7).特に,large〜giant7)あるいは紡錘形15)などの特殊な動脈瘤の治療戦略を考える場合には,必須の診断法と考えられる.筆者らも1993年の開院以来,未破裂脳動脈瘤症例を中心として,脳血管撮影(当院ではDi-gital subtraction angiographyのため,以下DSA)と併用して3D-CTAを行ってきた.その後,徐々に3D-CTAによる脳動脈瘤の診断に習熟するにつれて,通常サイズの嚢状動脈瘤の場合には術前検査として,DSAは行わずMR angio-graphy(以下,MRA)と3D-CTAのみで手術を行うようになってきた.しかし,3D-CTA,MRAのみでは十分な情報が得られず,DSAの必要性を感じる症例も経験するようになってきた.今回はこれまでに経験した問題例を提示し,脳動脈瘤の診断における3D-CTAの限界について報告する.

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I.はじめに

 本邦でも多くの施設で低体温療法が導入され,対象疾患も重症頭部外傷をはじめとして,蘇生後脳症,重症くも膜下出血や脳塞栓症などに広がってきている.しかし,実際には各施設毎に低体温療法の適応や方法が若干異なり,重症頭部外傷以外はまだコンセンサスが得られたとは言い難い.特に,小児に関しては,最近の報告例はほとんど無く,適応を含め,不明な点が多いと言わざるを得ない.今回,われわれは,低体温療法を行った頭部外傷患者の中で,16歳未満の小児例について,retrospectiveに臨床的な分析を行い,小児における治療上の有効性や問題点について検討した.

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I.はじめに

 下垂体手術は開頭手術から,1970年代以降は日本ではsublabial approachによるtranssphe-noidal surgeryが定着し,さらに近年ではendo-nasal approachが症例によっては積極的に選択されるようになり,本手術がより侵襲の少ないものとなってきた.今日,人口の高齢化と共に脳神経外科手術の適応者も高齢化の傾向にあり,さまざまな報告が,その結果と問題点を伝えている2,3,5,7)

 今回われわれは高齢者の下垂体腫瘍に対し,局所麻酔下でのendonasal transsphenoidal ap-proachによる腫瘍摘出を経験したので報告する.

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I.はじめに

 頭蓋内解離性動脈病変は脳血管障害の中で0.4-2.5%の頻度であり,比較的まれな疾患と考えられてきた.しかしながら近年報告例が増加しており,その発生頻度や臨床像,治療成績についてまとまった研究がなされてきている.本症の転帰不良となる原因のもっとも多くを占めるのは再発で,出血発症例では再出血が,虚血発症例では再梗塞が問題となり,治療を選択する際の重要な要因となっている7-9,11).今回われわれは虚血発症した椎骨動脈解離性病変が,経過中くも膜下出血を来した1例を経験した.虚血発症後にくも膜下出血を来す症例について若干の文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 全身性進行性硬化症(progressive systemic scle-ross,以下PSS)に中枢神経系の疾患を合併することは稀である.その理由は,脳実質にはPSSの病変の原因となるコラーゲンが身体の他の部分に比べて少ないためとされる4).今回,われわれはPSSに合併した左後頭葉出血の症例に対し,CT,MRI,脳血管撮影,組織学的検討を行い考察した.若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 前頭蓋窩に発生する硬膜動静脈瘻(dural arter-iovenous fistula,以下DAVF)は,横・S状静脈洞や海綿静脈洞部に生じるDAVFと比較すると出血で発症することが多く,脳神経外科手術の対象になることが多い12).1993年12月1日の開院以来の6年3か月の間に3例の前頭蓋窩DAVFを経験したので特に成因を中心に文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 急性大動脈解離(以下AADと略する)は急性期予後がきわめて不良な重篤な疾患6,9)である.AADは上行大動脈の解離の有無によりStanford type Aとtype Bに分類される7)が,type Aは大動脈弓分枝への解離の波及により脳血管の解離を合併することがある2,3,10-12).今回,AAD type Aの右頸動脈への波及による脳虚血症状で発症した症例に対して,経皮的血管形成術(以下PTAと略する)を施行し良好な結果を得たので報告する.

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I.はじめに

 血管内悪性リンパ腫症(intravascular malignant lymphomatosis;IML)は中枢神経,皮膚をはじめとして全身の諸臓器の血管内で腫瘍細胞が増殖する稀な疾患である8,22).その報告は1959年のPflegerらの報告15)に遡り,腫瘍細胞の由来が血管内皮細胞であると考えられていたため,neopla-stic angioendotheliosis,angioendotheliomatosis,malignant angioendotheliomatosis,cerebral an-gioendotheliomatosisなどと呼ばれていた10).現在ではその腫瘍細胞は主にBリンパ球系細胞に由来し4,11,12,18),非ホジキンリンパ腫の1亜型であると考えられている.また,本疾患に特異的症状・所見は乏しく,症状の進行も急速で予後も不良であることから,生前の確定診断は困難である.

 今回筆者らは,進行性の痴呆で発症し,画像上多発性脳梗塞の所見を呈し,開頭生検術により診断確定し得たIMLの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 細菌性髄膜炎に尿閉が合併することは比較的報告されているが,無菌性(いわゆるウイルス性の)髄膜炎にそれが合併することは稀で,報告例も非常に少ない1-8).今回われわれは,ウイルス性髄膜炎に尿閉を合併し,約1カ月の経過で軽快した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
28巻11号 (2000年11月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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